水音の乙女   作:RightWorld

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2019/12/30
脱字修正しました。
報告感謝です。 >mstk5039943さん

2021/01/04
pixiv掲載版に合わせる修正をしました(再生するのをスターデストロイヤーからデススターにした)。





第149話「マジカルソードコンビネーション」

落ちていくネウロイの白い破片は急に空中で止まり、また集まりだした。最初はどうなろうとしているのか分からなかったが、それは次第に球形を成してくる。左の方からつるりとしたハニカム模様の表面が出来上がりはじめ、ささくれ立つ右側も少しずつ埋まっていく。一か所がクレーターのように丸くへこんでおり、そこに赤い六角形の粒々が集まりだし、ゆっくりとクレーターを埋めていった。クレーターが全部赤いパネルで埋まったら、とてつもないビーム砲台になるに違いない。

 

「なんで? どうして? 確かにコアを壊したのに!」

 

シィーニーが当惑した顔で叫ぶ。横にいる天音も目を白黒させた。だがシィーニーの比較的近くにいたイオナが指摘する。

 

「確かにコアがあったところを切り裂いたが、私はコアが直接壊れるところを見なかった」

「わたしが切り損ねたって言うんですか? もしかして植民地兵いじめですね?!」

「違う。コアは装甲の奥にあって、軍曹は装甲ごとその一帯を切ったが、その時そこにコアが本当にあったかは確かめられなかったという事だ」

 

イオナの説明に美緒が納得顔になった。

 

「なる程、コア移動タイプか真コアタイプだったかもしれないというんだな」

「真コアタイプなら、あれだけ豪快にぶった切れば真コア含めて砕いてるよ。魔法力持った刀やハンマーは加害範囲が大きくてそういう利点があるんだ」

 

勝田の補足に美緒も頷く。

 

「という事はコア移動タイプだな。移動するコアを確実に捉えて破壊しないとダメだ」

「コアが移動?! そ、そんなのどうやって探すんですか?!」

「悩んでる暇ないですよ! ネウロイが再生しちゃいます!」

 

優奈が半分再生したネウロイを指さして叫んだ。

 

「まだ完成しきってない小さいうちに探した方がいいよ、行こう!」

 

天音がシィーニーの腕を引っ張る。

 

「ああもう、そんじゃ適当に切りますよ?!」

 

天音とシィーニーは再生中のネウロイに再び取り付いた。シィーニーは手あたり次第あちこちをナタで切りつける。

そして何ヵ所か目の切り口に偶然にもコアが現れた。

 

「「あったー!」」

 

だが突き刺そうとしたとたん、コアが中にひゅっと消えた。

 

「「ええー?!!」」

 

≪移動するコアは、だいたい移動経路が決まっていて一定のサイクルで回っている事が多い。だが攻撃を受けると移動速度を頻繁に変えて躱そうとするんだ≫

 

「移動経路ってどうやって見つけるんですか?! それに移動速度を変えるって、そんなのどうやって壊すんですか、見えないのに!」

「シィーニーちゃん、またここを通るって事だよ。次来たら切って!」

「そ、そっか! 了解! ってタイミング難しくないですか?」

「やるしかないよ! 再生終わっちゃう!」

 

さっきコアが出たところを何度かナタで切って切り口を広げると、シィーニーはナタを上段に構える。無線から卜部の逼迫した声が聞こえてきた。

 

≪ヤバいぞ! 早くしないと本当に再生が終わりそうだ! 皆、ビームパネルが再生したらシールド張って軍曹を守る準備しとけ!≫

≪卜部、コアを見つけられる魔眼持ちはいないのか?≫

≪私らはあんたんとこみたいにチート集団じゃねえって言ってんだろ!≫

 

その時一瞬、切り口にコアが現れた。

 

「「出たー!」」

 

天音とシィーニーが同時に叫び、シィーニーがナタを振り下ろす。

だがナタは虚しくスカッと空を切った。コアはまた中へ消えてしまった。

 

「む、無理ですこんなの! 姿見てから切るなんて、どんな反射神経ですか!」

「扶桑には居合い抜きっていって、刀の鞘に収まってる状態から一瞬で反応して切るっていうのがあるよ。名人芸以上の国宝級の技だけど」

「そんなの今から習得できるとはとても思えません! せめてもうすぐ来るってのがわかれば……」

「来るのが分かっていれば? あ……そっか。ちょっとやってみる」

 

天音はネウロイの体に手を当てた。そして魔法力をみなぎらせる。尻尾の魔導針の輪が眩く光り、当てている手にも光が増していった。魔導針の輪が直視できないほど明るくなった時、天音が探信魔法波を開放した。

 

「非破壊検査モード!」

 

ぱひんと魔導針の輪が弾けると、天音の体を通り越し、手から魔法波がネウロイの体に伝わった。ネウロイの体全体に青白い波紋がいくつも流れていく。以前修理された零式水偵の修復具合を見る為に使ったあの方法だ。

 

「いた! コア、向こう側を右に移動中!」

「ええ?! わかるんですか?!」

 

天音が指でコアの軌跡を追う。

 

「後ろ回った! 曲がって……こっち来る!」

「わああ、降り下ろすタイミング教えてくださーい」

「もうすぐだよ、構えて!」

 

シィーニーがナタを大きく振り上げた。

 

「5、4、3、2、1、今!」

 

シュオッと勢いよく空気を切る音とともにナタが振り下ろされる。

 

ズバッ!!

カンッ!!

 

振り下ろしたナタはネウロイの装甲に突き刺さって切り口の真ん中で止まった。だがコアには刺さってなかった。

しかし、二人の顔は赤々とした光に照らされていた。コアはナタにぶつかってそこで止まっていたのだ。一抱えもあるでっかいコアだ。

ナタの表面を揺らぐ妖気とコアがぶつかりバチバチと七色の光を散らし、二人の顔がアーク溶接の火花を見ているように瞬き照らされる。

 

「アアアアマネさん! 止まってる! とどめ! とどめ!」

「ええ?!  ぶ、武器が! 武器何も持ってな……そうだ!」

 

天音は下げていたポーチをひっくり返した。あめ玉や鉛筆、消しゴムなどが落ちてくる中で、小さな金属板のようなのを拾い上げると手に取った。折り畳まれていた部分をカシッ引き出す。それは肥後守。扶桑の子供たちがよく使う簡易ナイフだ。しかも肥後守の刃はゆらゆらと揺らぐ魔法力を纏って眩しいばかりに妖気で輝き、青白い焔がライターの炎のように立っていた。

 

「アマネさん、それ?!」

「わたしもこれ鍛えてたの、あれからずっと。えーい!!」

 

勢いよくズバアッと肥後守でコアを切りつけた。

グェアアアアとネウロイが聞いたこともない悲鳴を上げる。ぶわあああっとコアとネウロイが光だし、内側から膨れてきた。

 

「あ、あ、アマネさん、これやばああああい!」

「シ、シィーニーちゃん! シールド! シールド!」

 

目が開けてられない程眩しくなってついに膨張が限界を迎えた。

 

「あぶなーい!」

 

という叫び声と同時にバアーンと大爆発が起こり、目の前が真っ白になった。

 

 

 




いかにも思わせぶりなところで短く切って、次回は次の日曜日に続く!


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