誤字修正しました。
報告感謝です。 >最焉 終さん
2020/01/04
体裁修正しました。
神川丸の艦橋で広げた海図にプロットした水偵の位置を見つめていた葉山少尉のところに、電探監視員から報告が入った。
「428空2番機、旋回を始めました。位置……」
葉山は2番機を表すピンを移動させた。そしてその近くに潜水艦を表す船形を持った手を置いた。
有間艦長が横にやって来て覗きこんだ。
「潜水艦らしき物を見つけたのかな?」
「そういうことじゃないでしょうか。磁気探知装置、結構使えるのかもしれないですね」
そこへ電探監視員から続報が入った。
「428空3番機も旋回を開始。位置……」
葉山は3番機を表すピンも動かした。他よりもゆっくり飛んでいた3番機は、北を上にした海図上だと2番機の左下にいた。これも何か捉えたんだろうか。
「どうしたのかな。もしかして優奈ちゃんと同じことしてるのかな?」
有間艦長が疑問を呈す。
427空で唯一電探を搭載している優奈は、電探で周囲を見回すためしょっちゅう旋回している。電探の八木アンテナは指向性があるため、設置向きの関係から正面方向しか見渡せないからだ。アンテナをグルグル回すか、機体を旋回させるかしないと360度方向スキャンできないのだ。当然機体を旋回させてばかりいれば余計な燃料を食うことになるが、そこは航続距離を2倍に伸ばせる体力お化けの優奈。まったく意に介さない。
◇◇◇
暫く経っても、428空の2番機と3番機は先程の海域をうろうろ飛び回っていた。
「何か捉えたけど確証が得られんという感じかね、この2機は」
有間艦長が腕を組んで肺に溜まった古い空気を吐き出した。すると428空3番機から通信が入った。
≪こちら428空3番機、哨戒線50度上で潜水艦探知。神川丸から距離44カイリ≫
◇◇◇
3番機の通信を聞いた2番機の機長は、磁気探知装置を操作していた中央座席の偵察員に振り向いた。
「取り逃がしたか!」
「す、すみません! しかし、まったく反応はありませんでした!」
「くそっ、ぜんぜん潜水艦と交差できなかったのか。これは後で飛行隊長にカミナリ食らうぞ」
つまり本来は2番機が捉えるはずだったが、見つけられず取り逃がしてしまい、そんな時のためにその先の伊5潜予定進路上で構えていた3番機が見つけたのだ。
「しゃあねえ、3番機の所へ向かうぞ」
◇◇◇
その頃、卜部機。
他の水偵とは違って、10キロ飛んでは着水して天音が水中探信をし、というのを繰り返していた。天音はフロートの上にいた。
後席の勝田が3番機の通信を傍受した。
「あちゃー、428空3番機が潜水艦を発見したって」
「ちっ、そっちにいたか。やっぱこっちは大外れくじだ」
3番機の哨戒線は北東である。卜部機は最も南側を索敵していたので、まさに大外れだ。
「おーい一崎、あの野郎共が見つけたってよおー」
卜部は憮然とした顔を出してフロートの上の天音に声を掛けた。天音は一瞬顔を上げ驚いた表情を見せたが、すぐまた顔を伏せた。そして目を閉じ、戻ってくる魔導波に神経を集中していた。
「一崎、どうした?」
卜部の問いかけに片手を挙げて制止すると、天音は暫く静かに水音に耳を澄ます。
と、突然
「な、何これ!」
と大声を上げた。
「なんだ、どうした?」
「標的の伊5潜水艦って、全長100mないんですよね?」
「ああ。ちょっと足りない97.5mじゃなかったっけか」
「ネ、ネウロイって、100m以上あるんでしたっけ?」
「南シナ海で暴れてる奴か? そうらしいな。香港船団が遭遇したのは百二、三十メートルって話だ」
天音はもう一度確かめた。
鯨じゃない。この反響は表面が金属のものだ。そして間違いなく伊5よりずっと大きい。
「どうした?」
着水して波間で揺れている零式水偵で、卜部は操縦席から少し身を出して、フロートの上で固まっている天音を覗きこんだ。
天音は青い顔になって卜部を見上げた。そしてわなわなと震える声で言った。
「あ、あの、南の方向、約15キロに、丁度それくらいの巨大なものが水中にいます!」
「何だって!!」
いつもよりかなり短いですが、切りよく盛り上がったところで次回に続く。
北と南でそれぞれ何かを探知してしまいました。
北で428空が見つけたのはハンデ通り伊5なのか。南で天音ちゃんが見つけたのはまさかのネウロイなのか。