誤字修正しました。
報告感謝です。>風早 海月さん
2020/1/19
体裁修正しました。
ネウロイと人類の戦いは未だ決着を見せず、拡大しようとするネウロイ勢力圏を人類は総力を上げて必死に食い止めていた。
一進一退を繰り返す戦いの中で人類は、唯一ネウロイに対抗できる力を持つウィッチと、その力を補強するストライカーユニットを始めとする数々の兵器を投入し、時にはネウロイを圧倒することもあった。だがネウロイも黙ってそれを見ているわけではなかった。奴等も進化するのだ。
1945年末、マレー半島に現れた大きなネウロイは、水を嫌うというそれまでの常識を覆し、海、それも海中へ潜るという最悪の進化を遂げたものであった。潜水型ネウロイの出現だ。
出現当初、まったくなす術のなかった人類だが、それまで使い道の見つからなかった固有魔法を持つ一人のウィッチが扶桑海軍に召喚される。
一崎天音 13歳
このネウロイが現れるまで使い道のなかった彼女の固有魔法、それは
「水中探信」
1946年1月。
潜水型ネウロイに対抗できる切り札として水上機部隊に配属された一崎天音は、その仲間達と共に今、出撃しようとしていた。
第46話:12航戦出撃!
「みんな準備はいいか?」
第427航空隊(427空)隊長の卜部ともえ少尉が隊員一同に声を掛けた。
「いいよ~」と緊張感の見られない緩い笑顔の勝田佳奈子飛曹長。
力強く「はい!」と答える筑波優奈一飛曹。
いつも通りもの静かに頷く下妻千里上飛曹。
そして不安を一杯抱えながらもきりっとした目で卜部を真っ直ぐ見て「はいっ」と答える一崎天音一飛曹。
横川少佐の訓練を受け、見違えるほど頼もしくなった天音。内面が鍛えられ、既に覚悟もできた天音に迷いは見られなかった。
元気なみんなの顔に満足した卜部は高らかに宣言した。
「よっし! 427空、出発する」
補給と整備を終えた特設水上機母艦『神川丸』が横須賀軍港を出航し、浦賀水道を通過したと連絡があった。
霞ヶ浦航空隊水上機基地に集結していた天音達もいよいよ神川丸へ乗艦する日が来たのだ。
◇◇◇
雑嚢を背負ってストライカーユニットに足を通す優奈と千里。
機体下に吊るされた60キロ爆弾のような運荷筒に雑嚢を放り込み、コックピットに駆け上がる卜部、勝田、そして天音。
水偵と水上ストライカーユニットが霞ヶ浦の湖面へ引き出されると、霞ヶ浦航空隊基地のみんなが帽子を振ったり手を振ったりして見送ってくれる。基地司令の田所中佐も第1種軍帽をゆっくりと円を描くように振っている。食堂のおばちゃんも両手を上げて「いってらっしゃーい」と叫んでいる。
「一崎、カッコよく敬礼して答えるぞ」
卜部の合図で、ゆっくり水上滑走する零式水偵から立ち上がって、卜部、天音、勝田の3人は陸のみんなに向けて敬礼した。零式水偵脚の優奈と、二式水戦脚の千里もそれに倣う。
離水水面まで進むと、制空担当の千里を先頭に、卜部機、優奈と離水し霞ヶ浦を飛び立った。
卜部機を先頭に三角の編隊を組むと、基地上空を一回りする。格納庫前に沢山の人が出て、上を向いて手や帽子を振っている。
翼を振って最後の挨拶をすると、3機は海の方へ機首を向けた。
畑や田んぼと少々の集落が散在するところを抜けると、クリーム色の砂の海岸線に到達する。砂浜を飛び越え海上に出ると、天音は後ろを振り向いた。
どんどん遠ざかっていく陸地。
急に寂しさがこみ上げてきた。
次はいつ戻れるのだろう。これが最後なんてことないよね?
そんな天音を察してか優奈が寄ってきた。
「おみやげ、一杯買って帰ろうね!」
そうだね。そうだよね! わたし達は絶対帰ってくる!
「もちろんだよ!」
◇◇◇
前方の静かな海原に1隻の貨物船がゆっくりと進んでいた。ダズル迷彩を施し、商船ではない証拠に軍艦旗を掲げたそれは、特設水上機母艦『神川丸』だ。扶桑海事変の頃に徴用されて既に8年目を迎える歴戦の猛者は、貨物船の姿形をしていても軍艦独特の威圧感を放っていた。
よく見ると神川丸前方の遠方にスマートな睦月型駆逐艦が4隻展開していた。神川丸を直衛する第22駆逐隊
これが特設水上機母艦『神川丸』を中心とする第12航空戦隊であった。
天音の乗る零式水偵、優奈の零式水偵脚の順に着水すると、デリックで水上機母艦に改造された神川丸の後部甲板に引き上げられた。最後はいつも二式水戦脚の千里だ。最後まで上空警戒してから降りてくる。
千里も引き上げられると、艦長が出迎えに後部甲板にまでやってきてくれた。
「おかえり、うちの娘たち。お、天音君いよいよ来たね。今日からここが君の家だ」
天音は慣れない敬礼をした。霞ヶ浦で優奈に教わった、脇を締めてコンパクトに敬礼する海軍式。狭い艦に乗るとその意味がよく理解できる。
「ひ、一崎天音一等飛行兵曹、水上機母艦『神川丸』に着任しました!」
艦長がニコニコして答礼した。
「待っていたよ。」
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夕方、全艦でブリーフィングが行われた。
「今日から我々の仲間になる、天音君だ」
「一崎天音一等飛行兵曹です。よろしくお願いします」
居合わせた下士官達が「うわおー!」と歓声を上げた。艦のあちこちからも水兵達の歓声が上がった。
商船時代からの伝統で、神川丸では乗組員には極力分け隔てなく色々な事案の共有や交流を心掛けていた。勿論階級の差により限度はあるのだが、問題ない範囲で士官も兵も、同じ釜の飯を食っているのだということを感じられるよう、艦長始め首脳陣は努めていた。
そういうわけで、この天音の着任挨拶も艦内に同時放送されているのであった。
「今回の作戦は天音君がいなくては成り立たないものだ。おかげで正規の軍艦を補完するはずの、この特設水上機母艦が主役に躍り出ることになった。各位その力を出し切って任務をまっとうしてほしい」
わあああ!
ひゅーひゅー!
また下士官や水兵達が歓声を上げた。
「主役だってよ!」
「君のおかげだ!」
「特設艦なんて、おまけだの、頭数合わせだの、捨て駒だのと言われて肩身せまい思いしてきたが、とうとう俺たち注目の的だよ!」
乗組員のみんなが寄ってたかって天音に握手してきた。
「そして今回配備された428空。彼らも新兵器を持ち込んでこの作戦に大いに寄与してくれるはずだ」
合同訓練では敵愾心で溢れていた、男達の航空兵で編成された第428航空隊の搭乗員達も、今では天音の実力を認め、その中で自分達の能力を活かそうと、随分と角の取れた表情でここにいた。
「宜しく頼む。卜部少尉」
「おう! ネウロイに一泡吹かせてやろうぜ」
428空飛行隊長の荒又少尉と427空飛行隊長の卜部少尉がガッチリと握手した。これを見た将兵、あるいは放送で二人の掛け合いを聴いた乗組員達は、一層士気が上がるのだった。
「では我々の任務を告げる!」
艦長が部屋全体を見回した。注目が集まるのを確認すると、えへんと咳払いしてしゃがれ声を張り上げた。
「特設水上機母艦 神川丸は、第12航空戦隊の中核となり、次の任務を遂行する。
1.扶桑、シンガポール間の輸送船団とその積み荷を潜水型ネウロイから守ること。
重点海域はトンキン湾口、及びシャムロ湾口。これらは基地航空隊による航空援護が手薄な海域である。
2.潜水型ネウロイを南シナ海に封じ込めること。決してインド洋、太平洋に出してはならない。
3.航空隊、護衛艦隊の戦力が充実し、輸送船団護衛の任を移譲できる体制が整い次第、我々は潜水型ネウロイの殲滅戦に移行する。
以上だ。いいな? 海のネウロイなんざ我々が根絶やしにしてやる!」
おおーっ!!
雄叫びに艦が震えた。
「トンキン湾ってどこ?」
「シャムロ湾って、やっぱりシャムロ王国の辺りだよね?」
「シンガポールってったら赤道の近くじゃん」
「こないだは北極。今度は赤道か。海軍してるなあー」
天音や優奈ら航空隊員も乗組員達も、これから行く先々に思いを馳せた。
「当面の航海予定だが、本艦は九州鹿児島でもう1隻の船と合流する。それから香港へ向かう。香港で燃料補給したら、次のシンガポール向け船団HK02と一緒に出港、この船団をシンガポールまで護衛する。
香港までの航路ではいつものようにネウロイとの決戦に備え訓練につぐ訓練だ。諸君の活躍に期待する。では、解散」
「気を付けっ! 艦長に敬礼!」
ざわめきは一瞬で静まり、ざっ、と総員が敬礼した。
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神川丸の第12航空戦隊出撃と同時に、沿岸部の哨戒強化のための基地航空隊の展開も始まった。
扶桑海軍は台湾の高雄、香港、海南島の海口と三亜に水偵や飛行艇、まだ数は少ないが新型の対潜専用哨戒機『東海』を中心とした航空機を増派させた。南シナ海へ向かうそれら航空機の編隊は、神川丸からもいくつか見ることができた。
お互いこれから協力し合って戦うであろう仲間である。
“ブウンチョウキュウヲイノル”
海上と空で発光信号のやり取りが交わされるのであった。
ブレイブウィッチーズが始まって、ここの二次小説も作品が増えて賑わってますね。
作者は妄想を膨らまし、読者はお気に入りの作品を見つけて、共にワールドウィッチーズを大いに楽しんでいきましょう。
本作でもブレイブ放送前から既に雁渕ひかりちゃんを二度出演させてますが、他の502メンバーともどもだいたい予想通りで手直しの必要もなさそうでよかったです。
その本作ですが、第2章スタートです。ネウロイから船団を守る戦いに入りました。
オリキャラ中心ですが、今後もワールドウィッチーズ達と絡めていきたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
2016/11/1
漢字の間違いを修正しました。
ご指摘ありがとうございます。>烏瑠様