酒呑童子vs侍と夜兎 2章
ーー酒呑童子の耳へ届く「おい」と言う声。
それと共に酒呑童子の顔を殴り、吹き飛ばす一振りの木刀。柄に洞爺湖と書かれたその木刀を握りしめる男、銀時。
銀時は倒れた神威を背にして立ち「こいつは俺のカミさんの兄貴なんだ......殺させてもらっちゃぁ困る」と口走る。
時光は思わず涙を流した。誰も来るはずが無い、誰も神威を助けられない、そうあの一瞬で感じた。
だが銀時の木刀はそんな思いを斬ってくれてほっとしたのか涙が止まらなかった。
岩に衝突した酒呑童子は、立ち上がる。酒呑童子の編笠はさっきの一撃で飛んで行ってしまった。
酒呑童子は笑みを浮かべながら「来たか、白夜叉」と口走る。
銀時はそっと口を開け「あぁ、てめェの最期を飾るのは、この俺だからな......酒呑童子」と口走る。
酒呑童子は笑みを浮かべ「やってみるがいい、こやつらは既に虫の息......お前1人で何ができる」と口走る。
銀時もまた「確かに俺じゃあどう足掻いてもお前に勝てねェだろうな......だがそれでも戦場から背を向けるわけにゃぁ、行かないんでな」と口走りつつ、地面に木刀を刺す。
「今からここに残るのは、てめェか、俺の屍だ」と喋りながら腰に収めた刀を引き抜いた。
その姿は凄まじいもので、幾多の戦場を支配した侍の姿勢を連想させる。
酒呑童子は笑みを浮かべながら「面白いじゃないか......」と口走り、右手に持った剣を握りしめ、空振りする。
その風圧は戦場を取り巻く。
また銀時も地面へ刺した木刀を左手で引き抜いた。
酒呑童子の空振りと、銀時が木刀を引き抜いたタイミングはほぼ同時。
その一瞬で向き合う2人の眼は幾多の修羅を潜り抜けた獣か、それとももっと危険な何かか......一つ確かなのは、人はその眼を見れば身体が竦むだろう。
銀時は飛び上がり「うおおおおおおおおお!!!!!!」と右手に持つ刀と左手に持つ木刀を握りしめ、力を込めた。
また酒呑童子の眼も本気になり、その恐ろしく冷酷な笑顔は狂気を伴う。
銀時の力を込めた刀の一撃が、酒呑童子へ振り下ろされた。
だが酒呑童子は左手で刀身を鷲掴み、簡単に受け止める。
「(動かな......「!?」酒呑童子に掴まれた剣が微動だにしないと感じた次の一瞬、あまりにも速く酒呑童子の剣の鋒が銀時の顔面へ向かった。
銀時は顔をそらせ何とかかわすも、隙のできた銀時の顔を酒呑童子は蹴り上げる。
夜兎よりも遥かに重く、速い蹴りを食らったためか、銀時は口の中を切ったせいか蹴り上げられた顔と共に血を吐く。それもまるで吐血かと思える程の量を。
血飛沫が顔についた銀時は、次の一瞬で眼を開けると、酒呑童子の刀の刀身が振り下ろされ、迫り来るのを目撃する。
銀時は心の中で「(もう鳳仙の時の様な間違いはしねェよ)」と思い、まだ空中に浮く身体で酒呑童子の腹を蹴り、ギリギリで間合いを取って酒呑童子の一撃をかわす。
空振りとなった一撃は地面へぶつかり煙を巻き上げる。
その速く重い一撃は、周囲の視界を封じた。
酒呑童子は何もせずただ立ち尽くすまま。何もせず、ただじっと。
次の一瞬、酒呑童子へ振り下ろされる二刀。酒呑童子は一瞬で刀を盾にして防ぐ。銀時は舌打ちしながら「っち、視界を奪っても意味はねェか」と口走る。
酒呑童子は口を開き「真の侍は眼では見ていないからだよ」と言い、とんでもない怪力で銀時を弾き飛ばす。吹き飛ぶ銀時はバランスを失う。
銀時は吹き飛びつつも酒呑童子から眼を離さなかった。酒呑童子はとんでもない速さで銀時が吹き飛ぶ方向の先に現れ銀時に追い打ちをかけようと刀を振り下ろす。
周囲を包み込む煙。酒呑童子は振り落とした刀身に違和感を感じると、その煙を吹き飛ばし銀時はその刀身に乗るという超技を見せ、そのまま酒呑童子の顔面へ剣を振るう。
酒呑童子は上半身を前方へ曲げてこれをかわし、再び剣で銀時を振り払った。
吹き飛ぶ銀時はバク転しながら受け身を取り、酒呑童子を睨みつける。
酒呑童子は銀時の眼前に現れる。流石のこの超絶な速度に銀時もはっとなるが、超速の斬撃は銀時へ何の容赦も無く放たれる。
銀時はその一撃を冷静に見極め、そっと左手の木刀を迫り来る刀につけて、鮮やかに滑られせる。
受け止めればこちらの体力がかなり消耗する。一撃を受け止め切れたとしても次の一撃で殺される。
だから体力をなるべく消耗せず、そうやって酒呑童子の刀を木刀で鮮やかに滑らせながら、バランスを失った酒呑童子をもう片方の剣で斬りつける。
だが酒呑童子の人間離れした速度で、銀時にも剣を斬りつけ、二つの剣はぶつかり鋭い音を立てる。
連続で繰り出される酒呑童子の剣を、銀時は攻撃を一切せず、感を全て尖らせそれを見切り受け流したりかわしたりする。
そしてその御合間にできた酒呑童子の隙を鋭く突き、攻撃する。だが酒呑童子も何とかそれをかわしたり受け止めたりする。
そんなやり取りが、そんな斬り合いがしばらく続く。
ガキィン!!!!ガキィン!!!!そんな鋭い音が周囲へ響く。
それを見る全員は驚愕していた。6人がかりでも全く歯が立たなかった酒呑童子に銀時はギリギリで張り合ってる。
そんなやり取りで銀時も少し焦りを見せている。この技術でもかなり苦戦している。
「(くそ......こんなんじゃ長く持たねェ......剣が折られちまいそうだ)」
だが銀時もバランスを崩し、跪き酒呑童子が振り下ろす刀から逃れられない。
「(ヤバイ!!)」銀時は心底から焦る。銀時は死を覚悟し、眼を瞑る。
ガキィン!!!!周囲を取り巻く鋭い音。銀時が眼を開けると、沖田と土方が酒呑童子の剣をそれぞれの刀で、力を合わせて受け止めていた。
酒呑童子が沖田と土方を振り払おうとした次の瞬間、酒呑童子の左肩を銀時の木刀が貫く。
一瞬力が緩んだ酒呑童子を沖田と土方の刀が振り払う。酒呑童子も何とかバランスを取り戻し体制を立て直す。
銀時も何とか立ち上がる。「すまねェな」と沖田と土方へ向ける。
土方は笑みを浮かべ「へっ、らしくねェ事を言うんじゃねェ......お前が謝るタマか」と口走る。
彼等3人の横に神威も立つ。神威は口を開き「女共は気絶させた......これで心置き無くやれるでしょ、侍」と口走る。
銀時は後方へ振り向くと、神楽、時光、信女の3人は気絶して倒れていた。
銀時は笑みを浮かべ「気が利くじゃねェか」と口走る。
酒呑童子は「女がいなくなって何が変わる?」と問う。
沖田は笑みを浮かべ「さぁな」と口走る。
4人は剣を構える。「さぁ、宇宙二を、刈り取るとするかねェ」と土方が口走る。
銀時は汗を垂らし、溜息を吐き笑みを浮かべ「はぁ、こんな化け物をどう倒せってんだ?」と口走る。
神威は笑みを浮かべ「同じ化け物が何弱気になってるんだい、それにあれを倒さなきゃ俺たち仲良く全員皆殺しに合うだけだよ」と言い放つ。
銀時は再び息を吐き出し「前にも言ったがな......」と銀時が言うと全員汗を垂らし笑みを浮かべ、それに続いて全員で「てめェらと心中だけは御免被る」と言った。
その次の瞬間、酒呑童子は笑みを浮かべ彼等に突進した。
相手の強さを、4人とも把握している。だからこそ、万事屋、真選組、春雨第7師団団長が手を組んだ。
銀時の眼はふと霞んだ。一瞬だけ霞みが消えた。
銀時の眼には、戦場が映った。死体や灰に塗れるこの場所に何度立ち、何度剣を振るったのだろう。
となりを見ると、かつての仲間が見えた。桂、辰馬、高杉......銀時の瞬きで、今の光景が帰ってきた。
銀時はどこか、今の仲間を昔と重ねてしまった。悲しげな笑みがこぼれる銀時。
そして眼の前に立つ酒呑童子。
全員汗を垂らす。
続く......。