マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ   作:しろっこ

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技術参謀から怒涛の暴露情報を浴びせられて半ばダウンする司令。そして朝を迎えた。


EX回:第28話(改2)<暁の水平線>

 

「美保は特殊なところだ、少しは自覚しておけ」

 

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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)

 EX回:第28話(改2)<暁の水平線>

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 ふと窓を見ると、いつの間にか空が明るくなってきた。時計を見ると、もう4時を回っている。

 

軽くため息をついてから作戦参謀は言った。

「私もそろそろ部屋に戻る。お前も少しでも休んでおけ」

「ハッ」

 

彼女は立ち上がって窓の外を見た。

「今日はどんな事態になるか正直、予想できないからな」

 

私は敬礼した。技術参謀は特別職だが本省勤務であり元艦娘の実戦部隊だったらしい。下手したら階級だけでなく実力も大将より上かも知れないのだ。

 

 彼女は出口へ向かう。私も見送りで後に従った。

 

「あ、そうだ」

扉の前で部屋を出かけた彼女は急に立ち止まると私を振り返った。

 

「寛代のことだが」

「はい」

真剣な表情だ。

 

「イロイロ迷惑をかけるだろうが今後も頼む」

「ハッ」

参謀は珍しく恥ずかしそうな表情を見せた。

 

「私がこんな性格だからな。あの子は口数の少ない大人しい娘になってしまった……だが、お前には懐(なつ)いている」

 

「えぇ、それは成り行きというか偶然というか」

「フッ、それでも構わん」

彼女はアゴに手をやりながら私の顔を見詰めた。

 

そして意外な事を言う。

「お前は亡くなった私の亭主に雰囲気が似ているからな」

「は? ……あ、いや恐縮です」

 

ドアノブに手をかけた彼女は、また振り返った。

「それと美保の祥高だが」

「はい」

「あいつは私の妹だ」

 

「え! そ……」

絶句というのは、こういうときに出てくるのだと実感した。

 

だが私は思わず(全然似ていないのだが……)と思っていた。その考えを悟ったように参謀は続けた。

「真ん中の子は大人しくなるというが……あれも不器用でな。頑固で融通が利かないところもあるが、よく協力してやってくれ」

 

「はぁ」

驚いた私を見た彼女は、あれ? という顔をしていた。

 

「なんだ、もう気付いているかと思ったぞ」

「はぁ」

 

参謀は、ため息をついた。

「相変わらずだな、お前は」

 

ドアノブから手を離した彼女は腰に手を当てた。

「だが、よく考えてみろ。実験隊とはいえ単なる重巡が簡単に提督の代理をするわけ無いだろう。そもそも許可が下りないのだ」

「まぁ、仰るとおりです」

 

そこで彼女はニタリとした。

「だがな、そこは軍なれども同族故の縁故人事が通用するのだ」

「え?」

 

(軍隊で縁故人事なんて、そんなのアリ?)

私は苦笑した。

 

すると彼女は言う。

「疑っているか? だいたいお前の人事だって……」

 

勢いで何かを言いかけた参謀は一瞬、応接室の日向たちを窺(うかが)った。

 

大丈夫だと思ったのだろう。それから急に小声になって言った。

「関係者で密談して私が決めたんだ。美保は……そういう特殊なところだと少しは自覚しておけ」

 

「はっ」

さっきから凄まじい暴露情報だ。私の混乱にも拍車がかかる。

 

「じゃあな」

何も言えなくなった私を尻目に技術参謀は退出して行った。どこまでも男勝りの人だ。

 

「はぁ」

まるで魂でも抜かれたようにフラフラと応接室に戻った私は既に混乱していた。そのままソファに沈み込むとボンヤリと正面と左手に座っている五月雨と日向を見た。

 

(艦娘の寝顔なんて貴重だな)

そんなことを考えていた。だが混乱と睡魔で、それを堪能する気力も無かった。

 

私の邪心は「もったいない」と叫ぶが、いつの間にか意識を失った私はウトウトしていた。

 

「も、戻ります! 失礼いたします」

五月雨の敬礼で目が覚めた。時刻は4時半を回っていた。

 

「……あ、食事だな」

私が寝ぼけ眼(まなこ)で応える。

 

彼女は慌てたように言う。

「は、はい! 宜しければご案内しますが」

「そうだな」

 

私は軽く伸びをして立ち上がる。ふと見ると日向の姿は既に無かった。テーブルの上もキッチン周りも、すべてキレイに掃除されていた。

 

(さすが日向)

ぶっきらぼうに見えるが押えるところはキッチリしている。

 

 五月雨と共に私は廊下へ出た。

 

すると計ったように他の部屋の金剛姉妹に赤城さん、日向そして祥高さんたちも廊下に出て来た。

 

『おはようございます』

私に向かって敬礼をする。

 

私も敬礼を返しながら五月雨に続いて明るくなった廊下を歩いて行く。

 

「食堂は一階にあります」

「あぁ」

階段を降りると廊下で龍田さんや夕立と合流した。

 

 そのまま歩いていると夕立が窓の外を見て歓声を上げた。

「見てみて、すごくキレイっぽい」

 

窓の外は空がブルーからオレンジ色に鮮やかな諧調変化を見せている。

 

「キレイ」

「ほぉ」

赤城さんや日向が感嘆する。艦娘たちは窓辺に集まる。私も彼女たちに合わせて、立ち止まった。

 

 東の空は水平線に幾つもの雲がラインを描き、そこにまだ見えぬ朝日が当たって放射線状に灰色の旭日旗を描き出している。

 

「この世のものとは思えないな」

果てしなく美しい光景だ。

 

「こんなところで戦闘が行われてきたのね」

「信じられない」

龍田さんと夕張さんもしみじみと言う。

 

青葉さんは植え込みに片膝をついて風景や艦娘たちを連写している。

 

 確かに、この美しい暁の水平線の向こうには多くの犠牲が横たわっている。つまり今の平和は、その上に成り立つ血塗られた歴史なのだ。

 

そういった先人の志を受け止める覚悟無しに海軍の防人は務まらないだろう。もちろん艦娘たちも同様だ。

 

 だが私は彼女たちを信じている。無邪気に暁の水平線を眺めて歓声を上げるこの娘たちも単なる少女ではなく高い志を受け継ぐ現代の防人たちだ。

 

そもそも自然の景色に感動できる感性があることは、それだけ深い心情の世界を持ち合わせていることになる。

 

そんな彼女たちに、わが国と世界の運命が託されているのだ。そして私は彼女らを束ねる指揮官だ。

 

 艦娘だけでも人間のみでも、この重大な使命は全うできない。まさに私たちは一蓮托生だ。

 

それは美保鎮守府という特殊な場所であっても変わらない。むしろ私たちに課せられた期待の大きさを自覚してさらに前進していきたいと思った。

 

「司令」

祥高さんが時計を見ながら声をかける。

 

頷いた私は彼女らに声をかけた。

「そろそろ行くぞ」

 

『はい』

艦娘たちは返事をした。一人ひとりがとても輝いて見えた。

雄大な自然の前では人も艦娘も素直になるのだろう。

 

 そして海の向こうに朝日が顔を出した。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。


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