マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ   作:しろっこ

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お昼になり会議室で昼食をとる司令たち。そこでの艦娘建造の話題になったが、いろいろ疑問が湧いて考え込む司令だった。


EX回:第47話(改2)<戦場より辛いもの>

 

「そうですね、生気が無いというか……」

 

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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)

 EX回:第47話(改2)<戦場より辛いもの>

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 時間は、いつしか、お昼近くなっていた。

『ブルネイ』は時計を見て言った。

 

「もう……お昼か。昼食だな」

 

私は言った。

「昼食は、別に隊員食堂でも良いが」

 

だが彼は片手を上げた。

「移動も大変だ。この会議室で食べよう」

 

「あ、あぁ」

私は秘書艦を見た。彼女も軽く頷いている。

すると金剛姉妹たちが歓声を上げた。

 

(そうか……艦娘たちと席を並べて食事とは久しぶりだな)

私はふと、そんなことを思った。

 

「技術参謀は……?」

私は聞いた。

彼女は本省の上官なので同席しても良いのだろうか? と思ったのだ。

 

だが参謀は微笑んで言った。

「気遣い無用だ。午後の演習のことも含めて彼女(艦娘)たちとも、ざっくばらんに話したい」

 

「ハッ」

参謀の意向で、そのまま同席しての食事となった。

 

(これも通常はあり得ないことだな)

私はそう思った。恐らくブルネイも同じ気持だろう。

私たちが知る上官というものは、やたら格式張っている面々ばかりだったから。

 

 そう思う間もなく彼女は早速あのブルネイの技師の隣に移動すると、いろいろ打ち合わせを始めた。

 

(なるほど)

私は肩をすくめた。

 

(意外に技術参謀は、現場型の人間(艦娘)らしい)

 

私は指揮官同士ということでブルネイの隣の席に座った。

私の反対側の隣には祥高さんと、さらに日向が座った。

 

「失礼します」

ガタガタと音を立てて配膳ワゴンを押して入ってきたのはブルネイの駆逐艦娘たちだ。見ると吹雪、電、叢雲、漣……だな。

【挿絵表示】

 

 

ただ、やはり違和感がある。妙な感覚だが彼女たちは黙々と準備を始めた。

 

技術参謀が技師に聞いている。

「駆逐艦が安定しているとは具体的に?」

 

軽く腕を組んだ技師が応えた。

「筐体および精神状態が半年以上に亘り定常状態を保てます。ただ、それ以降はまだ不安定になる艦娘が多いです」

 

技師は頭をかいた。

「あくまでも日常生活レベルに限定で……実戦への投入は、まだ難しいです」

 

技術参謀も腕を組んで呟く。

「戦艦など最初から不安定というのは要するに安定期が短いということか」

 

技師は残念そうな顔をした。

「いま配膳しているこの艦娘たちは、ほぼ安定して短期間で建造できます。ただ最終的に不安定になる艦娘がほとんどで……難しいものです」

 

(そうか、まだこの時代では量産化は難しいのか)

配膳の吹雪たちは黙々と準備をしている。

 

(会話が、全く無い)

……なんだか寂しいというか雰囲気が暗い。ここでは彼女たちは単なる「機械」なのだろうか?

 

急に何かを思い出したような顔をした技術参謀が技師に話しかけた。

「切り札になるか試して見ないと分からんが新しいレシピ情報をいくつか持ってきた。午後から、それも投入してみよう」

 

「ほう、それは楽しみです」

技師は急に嬉しそうな表情になる。

 

(レシピって? 何だそりゃ?)

そろそろ付いて行けない話題だ。初めて聞く内容だ。まるで料理のような……。

 

すると私の表情を見たブルネイが話しかけてきた。

「レシピのことか? お前が知らなくて当然だ。その技術によって艦娘の建造技術がが確立されたんだ」

 

「失礼します」

そこで配膳の吹雪がカットインしてきた。口数がほとんど無いが仕事はしている。彼女は黙々と私たちの前に配膳をした。他の駆逐艦娘たちも意外と手際が良い。

 

「この艦娘たちが、量産型か」

私は呟く。

 

ブルネイも続けた。

「俺も最初は半信半疑だった。もちろん最初は悲惨だったよ。もう殺人現場のような……」

 

そこまで話した彼は少し表情が暗くなる。

「やめよう、食事時だ」

 

彼を見て私は思った。

(そうだよ、開発の現場なんて修羅場だ)

 

ましてや艦娘の「建造」なんて生半可なことではない。

 

配膳する艦娘たちを見ながらブルネイは言う。

「限られた命……そんな艦娘たちを見ているというのは正直、戦場より辛い」

 

 その呟きに私はハッとした。

そうか。不安定だから、ここの艦娘たちは、いつかは止まってしまう。それは人間で言うところの「死」のようなもの。

 

 艦娘たちは日常会話も出来るだけに、その日を突然、迎えることは辛いだろう。

 

 もしかしたらブルネイたちは意図的に艦娘たちに「情」をかけるのを避けているのだろうか?

 

愛着が湧かぬように……別れの辛さを味わう事がないように?

 

人から情を掛けられないと艦娘たちは本当に単なる機械になってしまうのだろうか。

(だから、ここの艦娘たちは一様に暗いのか?)

 

 そういえば兵学校時代のブルネイはリーダー的なスポーツマンタイプだった。草食系の私とは、まさに正反対だった……なぜか妙に気が合った。引っ込み思案の私に彼は休日には、よく声をかけて引きずり出してくれた。

 

お陰で私も見識が広がり何とか卒業できたようなところもある。

(今思えば感謝だな)

 

そんなブルネイが厳しい現実に翻弄されて以前よりも暗く見えた。

(辛いだろう)

 

……だが今の私に何か出来るだろうか?

美保の艦娘たちすら満足に管理できない中途半端な私に……。

 

(やめよう、こっちまで暗くなる)

 

そこで私は気になっていたことを聞いた。

「お前は、いつからここに?」

 

「ここの設置が半年前……その直後だ。ただ艦娘の量産化はそれ以前から別の実験室のような部署で続いてたらしい。不安定ながら、ある程度の形が生成できるようになってから、ここに移されたんだ」

 

「失礼します」

私たちの前に叢雲が、ご飯を盛り付ける。

 

(お米か、日本とはちょっと違うな)

 

何気なく呟いた。

「叢雲……美保にも居たかな?」

 

 しかし、この無表情な艦娘たち。何とか出来ないものかなあ。

 

美保から来た他の艦娘たちも、さっきから黙っている。

恐らく私と同じ違和感を感じているだろう。

 

祥高さんと日向が小声で話している。

「何か、違いますね」

「そうですね、生気が無いというか……」

 

そうだよ。これじゃ本当に単なる機械だ。

 

あの未来の艦娘たちと、この艦娘たちの異なる点は、やはり「感情」の問題かな?

 

『ゴス!』

「痛てっ!」

ブルネイが私の脇を小突いた。

 

「お前が悩むな! 午後の仕事をしっかりやってくれ。頼むぞ!」

「あ、ああ……」

慌てて彼を見た。笑顔か……いつもの元気なお前に戻ったのかな。

 

やがて配膳が終わった。駆逐艦娘がワゴンをまとめ整列した。

 

それを合図にブルネイは立ち上がって挨拶する。

「今日は遠路はるばる貴重な実験のためにここブルネイまでようこそ! たいした歓迎も出来ませんが協力して海軍の未来の為に実験を成功させましょう! ……では、お召し上がりください」

 

『いただきます』

美保の艦娘たちは、きちんと手を合わせて自然に掛け声をかける。微笑ましい。

 

配膳の艦娘たちは目を丸くして見ていた。

「頂きます」って所作を知らないよな。

 

この試作の艦娘たちにも喜怒哀楽があるんだ……なおさら複雑な思いになる。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。


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