マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ   作:しろっこ

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実験の実情を知るほどに苦しくなる美保司令。それは一部の察しの良い艦娘も同様だった。


EX回:第48話(改2)<誰かが悪役に>

 

「黙って止まっていく艦娘たちを見るのは辛い……」

 

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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)

 EX回:第48話(改2)<誰かが悪役に>

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 配膳の艦娘たちは目を丸くしながらも私たちに敬礼して、いったん退室した……でも始終無言だ。叢雲や漣は知らないけど吹雪や電などは、もっと喋るはずだ。

 

(妙な感じだなあ……)

 

 ブルネイ提督と私、それに秘書艦と日向……この辺りは、ちょっと沈んでいた。艦娘は未来には量産化されるとはいえ、そこに至るまでの道のりは簡単ではないようだ。

 

(しかし、誰かが通らねばならない関門か)

 

 そんな私の違和感をよそに美保の艦娘たちは気にも留めずペチャクチャと喋りながら昼食を食べていた。

 

(艦娘製造の困難さや葛藤を全然、自覚していないよな、お前たち……特に金剛姉妹と夕立!)

 

 私の殺気を感じたのか金剛はチラッと、こちらを見ると舌を出した。

その仕草に私は少しだけ怒気が収まった。

 

 技術参謀と技師は、さっきからずっと話し込んでいる。いろいろ情報交換して実験の予定など調整しているようだ。この辺りは実務担当の参謀らしい、さすがだ。あの怖い技術参謀も辛い重責を担っている立場なのだ。

 

(そんな人を相手に私はバカをやったものだ)

非常に反省せざるを得ない。

 

「oh!艤装も、ちゃんとしたのがあるネ?」

金剛が声を上げる。演習の具体的な内容を技術参謀に聞いたようだ。

 

「今回は正確なデータが欲しい。幸いここは我々の時代だ。いつも使っている型の兵装だからブルネイのものを使っても調整は簡単だ」

技術参謀が説明している。

 

「未来のブルネイのリベンジですね!」

比叡も、やる気満々だな。

 

「相手の錬度は、どのくらいですか?」

旗艦経験の多い赤城さんが聞く。

 

技師が応える。

「不安定なので実は、ほとんど実戦経験がないのです」

 

その言葉に青葉さんと夕張さんは不安そうに顔を見合わせた。

 

技師は続ける。

「今日の午後、最初の部隊は戦艦と空母を出しますが赤ん坊のようなもの……反撃も出来ないと思います」

 

金剛が嬉々としている。

「これは腕が鳴るネ」

【挿絵表示】

 

 

「おい金剛、チョッと待てよ」

「what?」

私の言葉に振り返る彼女。

 

「反撃しない相手をボコボコにするんだぞ? ……分かるか」

「mh……」

言葉にならない反応。

 

(分かってない感じだな)

 

やたら明るい金剛とは裏腹に龍田さんと日向も顔をしかめていた。彼女たちも次第に演習の状況が分かりつつあるようだ。

 

技師は、また続ける。

「今日の演習は戦闘時の受容ダメージを計ります。お互いの艤装や身体の一部にセンサーを装着しますので遠慮なく戦って見て下さい。沈みませんし……」

 

それを聞いて私は、なおさら嫌な印象を受けた。

 

(もはや公開のイジメじゃないか? これは……)

だが軍隊だから仕方がない。私は肩をすくめた。

 

「不安定なので駆逐艦以外は、まだ外洋にも出られませんから経験値も維持できません。結果的に我々の研究は行き詰まってしまいました。ですから今回は渡りに船、とても貴重な機会なのです」

そう言いつつ技師は嬉しそうにスープを飲んだ。

 

(そりゃ、技術者は楽しいだろうけど)

聞けば聞くほど私は苦しくなってきた。他の艦娘たちは気にならないのか?

 

 金剛姉妹と夕立はワイワイやっている。でも日向と龍田さんは既に黙ってしまった。赤城さんは……両方を見て、困った顔だ。

 

向かいの席の技術に詳しそうな夕張さんも同じく深刻な顔になって青葉さんに何か耳打ちをしている。

 

私はブルネイに話しかけた。

「こんな実験、無意味ではないか?」

 

「現状は、そうともいえる」

ブルネイは応える。

 

「今までも建造は繰り返したが軽巡や重巡、空母から戦艦と大きくなるに従って建造された艦娘の感情や身体そのものが安定しない。結局、彼女たちの最期は悲惨なのだ」

 

一呼吸置いて彼は続けた。

「大きい艦艇ほど建造時の出現確率が低い上、資材消費量は大きく失敗も多い。だから普段は駆逐艦でしか実験出来ない」

 

「実験……って」

私の言葉にブルネイは語気を強めて言った。

 

「美保の戦艦や空母と戦うことで、やっと安定的なデータが得られるんだ! 分かってくれ」

さらに彼は食器をガチャンと置き、こちらに向き直ると真剣な表情で語気を荒げて言った。

 

「俺だってこんな役は嫌だ! ……でも仕方ないだろう、誰かが悪役になって割り切ってやらないと新しい道は開かれないんだ。だから軍人は黙々と……そうだろう?」

会場は静まり返った。

 

私は友人の言葉に頷くだけだった。

 

 だがハッとしたように彼は直ぐに頭を下げた。

「済まない、つい感情的になった。悪く思わないでくれ……俺もこれ以上は黙って止まっていく艦娘たちを見るのは辛い……」

 

「……」

私も何も言えなかった。ブルネイは既に辛いものを何度も見させられているんだ。いくら軍命とはいえ精神的に参るよな。

 

 さすがの比叡たちも少し大人しくなって黙々と食事を続けていた。

 

お昼のブルネイの日差しは強くなり窓の外には椰子の木が黒いシルエットを見せていた。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。



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