マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ   作:しろっこ

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艦娘たちによる水上集落からの要人脱出作戦が決行された。ほぼ丸腰で不安だったが、そこに心強い援軍が現れた。


EX回:第68話(改1.8)<渡河作戦>

 

「ここは私たちの泊地です。美保の先輩だけに任せられません」

 

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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)

 EX回:第68話(改1.8)<渡河作戦>

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 辺りは硝煙や何かが燃えるような焦げ臭い匂いが漂う。

二区画ほど向こうからは何度も爆破音が続き火の手が上がっている。時おり火の粉が降って来た。

 

人々は逃げ惑い水上や水面あちこちから人々の叫び声や、うめき声が聞こえる。そして銃声と爆音。

 

しかし丸腰では何も出来ないのが歯がゆくて仕方が無い。そんな自分への無力感もある。

 

 ただ何だろうか?

 だが妙に血が騒ぐ。

 

ここは戦場、そして最前線。

軍人の本分を果たしたいという想いが募(つの)って何故か頬が緩む。

 

それはブルネイ提督も同様らしかった。思わず二人で目が合い苦笑した。

 

すると、あの『王宮男性』が口を開いた。

『お嬢さん、こんな『荷物』で申し訳ないが、頼むよ』

 

彼はは金剛たちに丁寧に挨拶をする。

 

『了解です!』

そろって応える金剛と比叡。頼もしい。

 

「私たちも対岸までの護衛に就かせて下さい」

比叡2号と龍田さん2号がブルネイ提督に申し出る。

 

「お前たち……丸腰だが、それでも良いか?」

振り返った彼は艦娘たちを心配して言う。

 

だが比叡2号はニッコリして応えた。

「ここは私たちの泊地です。美保の先輩だけに任せられません」

 

提督は大きく頷いた。

「よし、行け!」

『ハッ』

 

敬礼している。二人とも成長したな。こういう戦場でこそ真価を発揮するのが艦娘なのかも知れない。

 

(こんな有事に備えて日頃から鍛錬してやるのが司令の役割なのだ)

そう思わされた。

 

『王宮男性』は金剛が。そして、お付きの女性秘書官は比叡が背負うことになった。

 

それぞれ比叡2号と龍田さん2号が護衛に就く。念のため私は美保の日向と龍田さんも護衛に就けた。

 

「了解よ」

「承知」

この二人にも飛び道具は無く刀剣だけだ。それでも丸腰よりは良いだろう。いつも通り龍田さんは無表情に近いが日向は妙にノッている。

 

私と目が合った彼女は一瞬、微笑んだ。

私に似て、この状況に血が騒ぐのだろう。

 

ただブルネイ出身の量産型伊勢が不安そうだ。この状況に対して、どうしようか葛藤している雰囲気だ。

 

それに気付いた日向が声を掛けた。

「無理しなくていい、伊勢」

 

日向は私をチラッと見ながら応えた。

「ごめんよ、済まないねぇ」

 

私も無言で頷く。

(そうだ、無理しなくて良いよ、伊勢)

 

声には出さなかったが想いは伝わったのだろう。少しホッとした表情を見せる伊勢。日向もまた頷いた。

 

『では、行きます!』

流ちょうな英語で金剛が号令した。

まずは彼女ら金剛姉妹が水に降り立つ。

 

それを見たブルネイ提督が言う。

「そういえば間近で艦娘が水面に立つ姿は、あまりマジマジとは見たことが無い」

 

私は彼を見た。

「そうか? 私はあるぞ」

 

彼は少し驚いた表情。

「そうか?」

 

「ああ、美保の港湾内に敵が侵入されたことがあってね。そのとき艦娘たちが頑張って食い止めてくれた」

「なるほど」

私は北上さんの雄姿を思い出していた。

 

暗い海の上では金剛と比叡が、それぞれ『王宮男性』と女性秘書官を背負っていた。

「私としては、彼女らが人を背負っている姿の方が意外だ」

 

「なるほど、確かに江戸時代の河渡りのようだな」

ブルネイ提督が呟く。それは言い得てる。だが艦娘たちが完全に水面に立っているところが違う。

 

それでも恰幅(かっぷく)のいい『王宮男性』を背負って金剛が轟沈しないか一瞬、心配した。

 

でも普段、巨大な艤装を背負うだけあって、ちょっと大き目の男性くらいではビクともしないようだ……正直ホッとした。

 

念のため寛代が索敵する。しばらく耳を澄ますような格好をしていたが、やがて『オッケー』サインを出した。

「今なら大丈夫そうだな」

 

まず日向と龍田さんが先導するように水上を進んで様子を伺う。続けて金剛と比叡が後から慎重に進む。その両側を比叡2号と龍田さん2号が護衛する。彼女らは念のため護衛官からピストルを借りて簡易武装している。少しは安心か。

 

『王宮男性』と女性秘書官が艦娘の背中から軽く敬礼する。残された桟橋の私たちも一斉に敬礼をした。

「何とか無事に渡り切って欲しいものだ」

 

私たちの背後の水上集落からの災に照らされ紅蓮(ぐれん)に染まる艦娘たち。

 

(情熱の色なのか? 流された多くの血の色なのだろうか?)

一瞬そんな思いがよぎる。金剛たちは徐々に暗くなった河を進んでいく。

 

彼女らが出発した直後、私たちが居た会議室が攻撃されたらしく、いきなり背後から大きな轟音が響いた。反射的に振り返ると水柱が上がり建物が半分水没し始めていた。

 

私たちの周りにも水しぶきが降り注ぎ、あたり一面に無数の木片や紙くずが舞っている。

 

私は言った。

「ムチャクチャになってきたな」

 

ブルネイ提督は言う。

「だが、あそこが攻撃されたということは、かなり形勢は不利だな」

「しかし要人は脱出した。とりあえず間一髪というところか」

「俺たちも退避しよう」

「ボートはないし、どこへ逃げるんだ?」

 

彼は少し明るい表情を見せた。

「この水上集落はかなり広い。敵の攻撃も、この会議室周辺に限られている。住民たちも反対側へ避難し始めているようだ」

 

「そうか、それであの警察や軍の人たちは、誘導とか何かで忙しいんだな」

私は納得した。

 

「逃げまショ。こっち、こっち」

あの運転手が顔を出して手招きする。

 

私は周りを見渡した。このままでは敵が撤退するまでは水上集落への攻撃は止まないだろう。

 

改めて軍人として『他国であっても何とかならないだろうか?』と思う。

しかし具体的な武力がなければ何も出来ない。

 

そのとき河の向こうから聞き覚えのあるエンジン音……振り返ると暗い川の向こうに見慣れたシルエットが現れる。

「二式大艇だ!」

 

夜の水面を、そのまま2発のエンジンだけでボートのように進んでくる二式大艇。

 

「離水しないのか」

「艦娘が居なくて、あの武装も威力を発揮できないのでは?」

提督と私が会話していると機体側面の銃座から川面(かわも)に向かって機銃掃射を始めた。

 

ふと見ると私の横で寛代が何かをぶつぶつ言っていた。

 

提督が反応した。

「弾着観測射撃か?」

 

「そうか大艇の中に居る相手は技術参謀か!」

私も思わず口走った。

 

その言葉に不思議そうな提督。私は直ぐに応えた。

「ケッコンしたとはいえ技術参謀も艦娘であることには変わりない」

 

「なるほど普通の人間が撃つよりは、はるかに効果があるわけだ」

彼は頷いた。

 

「しかし艦娘とはいえ自ら機体に乗って前線までくるのか?」

「凄まじいよ、あの人は」

私も苦笑した。

 

「あれに五月雨と吹雪、電も乗っている」

思い出したように寛代が言う。

 

「あ? そうなのか」

その間も二式大艇は渡河している金剛たちを援護しながら攻撃を継続している。

 

機体には電探があるらしく、水面の着弾地点からは次々と火の手が上がり敵が片っ端から撃破されていく。まさに、なぶり殺し状態だ。

 

「機銃掃射っていうのは、あまり気分の良い光景ではないな」

弓ヶ浜で敵機に襲われたときのことを思い出した私は言った。

 

「戦場が好きな奴はいないよ」

提督は吐き捨てるように言った。

 

とりあえず大艇が援護していれば、かなり心強い。

(だが、大丈夫か?)

 

二式大艇を持ち出したのは良いが、あまり水上で長居して、あの機体を壊されたら日本に帰れなくなるぞ。

 

だが受電したらしい寛代が言った。

「無事に渡りきった」

 

「そうか」

私たちは安堵した。

 

やがて二式大艇は、いったん機銃掃射を中断して離陸体制に入った。

 

だがそのときだった。

「魚雷!」

 

寛代が叫ぶと同時に暗い水面を白い航跡が大艇目指して進んでいく。

 

「2本……いや、もっとあるぞ!」

大艇も気付いたのか慌てている気配だ。

 

「早く逃げろ!」

思わず叫んだ。

 

 

 

 

以下魔除け

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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。

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