マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ 作:しろっこ
「お願イ!私の名前ヲ、もう一度・・・」
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「艦これ」的「みほ3ん」
EX回:第87話<再会・白い海>
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<<不明:日本海>>
気が付くと私は冬の日本海に居た。そこはあの・・・忌まわしい"白い海"だった。
"茶髪の艦娘"が出てくるかと思って思わず身構えたが・・・いや海は静かだった。確か吹雪いていたはずの海上は、まだ強い風にあおられて多少白波が立っているが、さきの激戦時よりはかなり落ち着いたようだ。
いつのまにか雪は止んでいる。鉛色の空には切れ目が出て冬特有の水色の青空と徐々に傾いていく夕日に照らされたオレンジ色の雲がぼんやりと空全体を覆っていた。
だが・・・改めてよく見ると雲の反射で黄色く照らされた海面上には無数の残骸が・・・駆逐艦の部品と思われる浮遊物が散乱していた。そうか、ここはやはりあの"現場"なのか?
仮にそうだとしたら、あまりにも痛々しい光景だ。いやその原因を作ったのは私自身ではないか?そう思うと目を背けざるを得なかった。
ふとそのとき私は自分の真横にあの"茶髪の艦娘"が立っているのを認識した。彼女は私が先ほど見ていた同じ日本海を見つめていた。
私が必死に名前を思い出そうとしていると彼女が口を開いた。
「みんな、よく戦ってくれました・・・」
海面を見つめたまま淡々とした口調で呟く艦娘。その声にも聞き覚えがある。
「そうだな・・・」
意外なほど落ち着いて私は相槌(あいづち)を打ちながら再び海面上に目をやった。そこにはさっきと何ら変わらない光景・・・ただ無数の残骸があるだけだ。
風はまだ強い。時おり遠くから飛ばされてきた小さな雪が宙を舞っている。西の空は徐々に赤みを増しそれと共に青空の面積が広がる。天候は回復しているようだな。
いま隣にいる"茶髪の艦娘"こそ私が出撃命令を出した舞鶴の艦隊の"旗艦"だろう。ところがこの空間ではどうしても彼女の名前が思い出せない。だめだ、今何かを言わなければと思うのだが言葉が出ない。別に私の心情は抑圧も恐れもないが・・・。
<<冬の日本海:再会>>
そのとき急に隣の女性が話しかけてきた。
「作戦参謀・・・」
「あ・・・ああ」
ドキッとした。その呼称は舞鶴に居た時のあの"作戦"実行当時の私の階位・・・。間違いない、やはりこの女性は?
ハッとした私は再び彼女のほうを見る。彼女もこちらを見ていたがその目は決して私への恨みとか批判するものではなかった。すべてが終わった後の虚無感かちょっと空(うつ)ろな感じの目だった。
だがその瞳の奥には悲しみの色が感じられた。
いやそれはただ夕日に染まった空色に彼女の瞳が反射していただけかも知れないが。
再び彼女は口を開いた。
「最期にひと言だけ・・・」
私は少し身構える。でも彼女は微笑んだ。
「貴方の声が聴きたかった」
その瞬間、北風が彼女の髪を撫でサラサラと流していく。
「・・・済まない」
今の私には、ただそれだけしか言えない。歯がゆい。
「・・・」
彼女は黙っていた。
しばらく時が流れたと思う。目の前の冬の日本海の映像だけは時を刻んでいて夕日は既に宵(よい)の水平線の向こうへ沈もうとしている。
「最初は、何もワカラなかったの・・・」
再び彼女が口を開いたが少し発音がおかしくなっている。いやな予感がするぞ。鳥肌が立った。
「デモ・・・アナタと一度、神社で再会しテ・・・少シ思い出したのニ・・・」
彼女を見ると視線を遠くに向けながら両腕を押さえ震えを抑えるようにして苦しい表情を浮かべている。
次の瞬間、彼女は両手を夕日に差し伸べて言った。
「分かラナイ!」
夕日に叫んだ彼女の頬に涙が伝う。これはきっとまずい状況だ!しかし今の私に果たして何が出来るのか?
彼女は涙を流しながら再び私のほうを向いた。その表情は必死だ。
「お願イ!私の名前ヲもう一度・・・」
泣いている彼女を目の前にしてなぜだ?まだ思い出せない私。ああ自分のバカさ加減に呆れるよ!事態は深刻なのに!
「オネガイ・・・」
彼女は哀しい表情で再び私に手を差し出す・・・私は何も思い出せず、思わず彼女を抱きしめた。
・・・が、しかしそれでも何も出てこない。
「済まない・・・思い出せない」
私はそう答えるのが精一杯だった。
彼女もそっと私の背中に手を回した。もしかしたらこのまま彼女に?
・・・もし彼女が深海棲艦なら艦娘の腕力に匹敵するだろうから私如き、今この瞬間にでも簡単にひねり潰せるだろう。
だがもし今彼女が私を絞め殺しても構わない。そんな思いが湧いた。
「すまん・・・」
だが彼女は応えた。
「イイノ・・・マタ会えるから・・・」
その言葉に私はハッとして思わず上体を離して彼女の顔を見た。意外にも笑っていたが・・・徐々に彼女の映像は薄くなっていく。
「マタ・・・アエル・・・」
そのとき強い風が吹いて一瞬、目の前が真っ白になった。
「ワタシには・・・ワカルの・・・」
<<GR:ベッドの上>>
「ハッ!」
気がつくと私はブルネイ鎮守府のGR(ゲストルーム)のベッドの上だった。窓の外は薄っすらと明るくなっていた。
「朝か・・・」
あれは悪夢なのか何なのか?・・・ただ不思議と脂汗はかいていなかった。私は大きくため息をついた。
そのとき誰かがゲストルームのドアを、やや激しく叩いている。
(ドンドン!)
「司令、大変です!」
それは祥高さんの声だった。何か起きたのだろうか?
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。