マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)前半コラボ 作:しろっこ
「チッ、お前か!」
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「艦これ」的「みほ3ん」
EX回:第90話<探索開始>
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<<鎮守府本館:探索開始>>
艦娘たちはさっと退室するとキビキビと散らばっていく。
ブルネイ司令は自らの補佐艦として試作型の電を連れ鎮守府の北方面へと出発するようだ。鎮守府の北側はエリアが広いので彼は自ら軍用車のハンドルを握るらしい。さっそく大人しい電を連れて車庫のほうへ向かった。
私は祥高さんとペアで鎮守府の南側を担当する。しかし考えてみれば私はこの鎮守府周辺の状況が分からない。ザッと聞いた話では私が担当する南側は比較的エリアが狭いらしい。そこは路地が多いため原則的に徒歩で移動する必要があるようだ。
しかし不慣れな土地だ。立場上指揮官になるとはいっても初めての土地で失踪者を探すなんて・・・艦娘とは違って地図システムも持っていない私は下手したら自分自身が"失踪"しかねない。さすがに軍隊の指揮官がそれでは恥ずかしいよな。
随伴する祥高さんも一応重巡だから電探も持っている。地図情報も寛代から貰ったと言ってたが現場の判断をするのは指揮官だ。私がこの辺りの地理を感覚的に分かっていなければ際どい。まして私は海軍だ。地上探索は正直得意ではない。
・・・という長ったらしい理由をつけて私はいったん屋上に上がって鎮守府周辺の様子を見ることにした。祥高さんは特に反対もせず大人しくついて来た。ごめんね・・・君を信じないわけではなく私も可能な限り鎮守府周辺の状況は掴んでおきたいんだ・・・と内心言い訳。
空母系の艦娘たちは早足で鎮守府本館の階段を駆け上がっていく。私たちもその後に続いて屋上へと向かう。
<<鎮守府本館:屋上>>
艦娘たちに続いて私たちは一番後に屋上に出た。そこには空母系艦娘が揃っている。これはこれで一種の機動部隊だからな。何となく迫力がある。
美保には一隻しか居ない正規空母が赤城さん。そこにブルネイの加賀さんが加わって二人揃うだけでも何か非常に頼もしいものを感じる。加賀さんといえば昨夜の扶桑姉妹と日向の対立の際には彼女の一喝が効いた。それを見て彼女の性格はかなりキツイんだろうという印象を受けていた。
でも今朝こうやって赤城さんと二人で軽く打ち合わせをしながら大弓をつがえて探索の準備を進めている姿を見るとさすが一航戦同士だなと思わせる。レシピがあるとはいえ量産型とは思えない完成度だ加賀さん。美保にくれないかな~。
そんな一航戦の二人に比べるとかなり地味な印象を受ける日向と伊勢だが。日向は妖精"ハル"を伊勢に見せている。いっぽうの伊勢にも妖精が居るようで小さいのを日向に紹介している。ちょっと気になったので私は二人に近寄ってみた。
「チッ、お前か!」
なんだ?いきなり妖精の声がした。見ると境港で見たあいつがいた。
「なんだ妖精"ハル"かよ」
私は上から目線でわざとぶっきらぼうに応えた。相変わらず口が悪いな、この妖精は。
「悪かったな"オレ"で」
"ハル"も負けじと腕を組んで睨み返してくる。小さいのに生意気な奴。"売り言葉に買い言葉"って言うのはこういうのを言うんだろう。
「こら!司令になんという口を利くんだ」
やや慌てて日向がたしなめる。
「良いよ別に」
私は笑った。・・・そう正直言ってこういう相手が一人くらい隊員に居ても良いかなと最近は思ったりもする。艦娘すなわち異性ばかりだと変に気を遣うし。
「・・・」
ふと見ると伊勢の妖精がこっちを見ている。この妖精は大人しそうだな。私はその妖精に声をかけてみた。
「初めまして。私は美保の司令だ。よろしくな」
その妖精はやや上目遣いに私を見上げながらぺこりと頭を下げた。艦娘もいろいろだけど妖精もイロイロだな。
「済みません~提督ぅ。私もまだこいつと付き合いが短くて~」
伊勢が申し訳無さそうに言う。
「良いよ。上手に使って早く慣れてくれ」
私は応えた。
「了解~」
伊勢はポニーテールのリボンを揺らしながら敬礼した。何となく少し明るくなったかな?この娘も。
<<鎮守府本館:朝の風景>>
私は改めて鎮守府周辺の景色を見た。夜明け前のブルネイの町並みは透明感があってとても美しかった。向こうに王宮の建物も見える。少し先にキラキラと光る水面(みなも)がある。よく見るとそれは大河であり、あの水上集落も見える。ただ遠目にも昨夜の戦闘でかなり被害を受けた状況が確認できる。
こんなに美しい場所で深海棲艦との戦闘が行われたとはにわかには信じられないことだった。出来れば戦争のない平和な時分に観光でのんびり訪れたい土地だと思う。
早朝のブルネイは気温も低く適度に風もある。特にこの屋上に上がると見晴らしの良さと相まって感動的ですらある。
雲の切れ間から朝日が差し込み街がくっきりと明暗のコントラストを反映させている。
「わぁ~すごいなあ~」
あの最上が偵察機の準備をしながら、ふと立ち止まって感嘆の声を上げる。このボーイッシュな娘は美しい自然の景色に対する美的感性もあるようだな。
「ホント、キレイですね・・・」
私の後ろに居た祥高さんも感動している・・・そういえば美保に居るときから彼女とは事務的な会話しかしていなかったな。
「そうだね」
ちょっと振り返りつつ私も同意した。もしトラブルがなければ、このままここで景色を眺めていたいくらいだ。
「これより探索部隊、発進します」
大弓を持った赤城さんが朝日を浴びながらこちらを見て報告する。凛々しいな。
「了解」
私は軽く敬礼をして応えた。
やがて屋上に居た艦娘たちは一斉に探索機を発進させた。その機体は軽快なエンジン音を響かせながら次々と早朝のブルネイの大空へと飛び立っていく。
やがて昇ってきた朝日に照らされて探索機はキラキラと輝いた。それは、まるで地上から飛び立った流れ星のようにも見えた。
艦娘はこの時代に現れた希望の星たちなのかも知れないな・・・ふとそう思った。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。