面倒臭いとこは省略していきますので。
では、ごゆるりと。
『繰り返します』
『完成したばかりの自然工場アスコルドへ暴走した列車が脱線衝突し、大破しました』
『被害状況と死傷者の数は不明ですが、当局はリーゼ・マクシアとの和平に反対するテロ組織アルクノアによる、要人殺害を狙った自爆テロという見方を強めています』
「列車テロだってさ…物騒だねえ…」
覚醒した私に向かってワザとらしく話してきた男。今まで何が起きていたのか。あの身体の変化の後の記憶がない。
「一体どうなっている?」
詳しい事情を聞いた。私たちは先程の事件で大怪我をしていたが、病院はどこも手詰まり。仕方なく目の前のリドウなる男が治療し、一命を取り留めたと言う。
「ルドガー!目が覚めたんだね。痛いところはない?」
そっと安心した顔で駆け寄ってきたのはジュード。どうやら無事だったようだ。
「流石クランスピア社の医療エージェントですね」
「いやいや、俺の医療黒匣が精霊術より優れているだけだよ」
「…。」
電話が鳴る。どうやらジュードの携帯のようだ
「あ、すいません。もしもし?レイア?あ、いやちょっと取り込み中でさ。うん、分かった話しておくよ」
と、そのまま外へ出て行った。私はふと、ユリウスの時計を手に取る。2つとも似た時計だ。この型の時計がいくつあるのかは知らないが彼女はユリウスを知らないようだし、何か食い違いがあると見て間違いないだろう。すると、丁度エルが目を覚ます。寝ぼけ眼を擦りながらこちらを見ると
「…!エルの時計!返して!」
非常に焦った様子で取り返しに来た。しかし、これはユリウスの時計…いや、待て。ユリウスはどこへ行った?あのユリウスはなんだ?そう思考している間にエルに時計を取られてしまった。
「…取り込み中スマナイがね、2人合わせて」
「1500万ガルドだ」
「「!?」」
思わずエルと目を合わせて驚く。この国での通貨で1500万
となると、普通に働いても稼げる額ではない。もちろん反論しようとする。
「治療費、というわけか」
「勿論だ、君達の。命の価格」
「ブラックジャックのようなことを言いおって…」
「?…。エルお金なんて持ってない…」
彼は肩を竦めて、エルに詰め寄り脅すようにして座っていたソファーにドン。と叩きつけるように手を置いた。
「金を作る気さえあれば、誰でも稼げるさ。子どもであれなんであれ、ね?」
「…」
無言でその手を退ける。些か過ぎた真似ではある。
「暴力で解決か?いけないなぁ…。社会のルールは守ろうぜ、ルドガー君」
「あぁ、だが君のような行為を許さないのも社会のルールだと思うがね。子供に詰め寄り脅すのが君のルールかな?」
「減らず口を…」
「あのー、リドウ様はこちらにいらっしゃいますか?」
チリンチリンと来客を告げる音が鳴り、そこには列車で見た、居るはずのない女性。そう
「おぉ、ようこそ。ミス・ノヴァ。彼女はヴェンランド銀行のスタッフだ」
「ルドガー!?借金の申し込みって貴方なの?」
「君も無事だったのか」
「…無事?なんのこと?」
「ま、時間はある。好きに考えるといいさ」
リドウは待つと言わんばかりに手を挙げたあと、エルの手を引っ張ろうとする。すると後ろから唸り声が聞こえた。ユリウスが大事にしていたデブ猫のルルだ。どうやってここまで来たんだこいつは…。とりあえず無駄のない動きでエルへ届く手を叩き落とし、こちらに引き寄せておく。
「借金くらい私が払う。契約書はあるかね?」
あっさりと受け答えに応じたのにびっくりしたのかリドウは面食らった顔をしていたが、予定通りではあるのか笑顔に戻った。
「賢明な判断だ」
そして契約書を渡される。内容を確認。
「ちなみにサインした場合、どんな弊害がある?」
「何のことだい?」
「惚けるな、これだけの借金だ。夜逃げでもされたら困るように対策は打ってあるはずだ」
「チッ…。あぁそうだよ、GHSで君の行動は逐一監視される。預金残高もしっかりチェックさ」
「中には稼いでも盛大に使う者も居るからな」
何処ぞの金ピカは稼ぐ量が別格過ぎたが。
「その通り、人生棒に振るわけだ。君はそんな人じゃあないだろう?」
その時ジュードが戻ってくる。
「やっと話が終わったよ。って…ルドガー。何してるの?」
「治療費の支払いが出来ないものでね。契約書を書いているところだ」
「こんな額…。内容は」
「確認済みだ。トイレにも気が抜けないな」
失笑しながらサインをする。
「いいの?ルドガー」
「どの道助けてもらったのは事実だ。それは返しようもあるまい。それに、こんなことで公的機関から目をつけられるのは勘弁願いたい」
「身内に泣きつく手もあるぞ?例えば、兄貴とか」
「その手があるか」
「…」
「冗談だ、ジュード。そんな目で見るんじゃない」
「ところで、何故2000万に増えている?君の話では1500万ガルドだったはずだが」
「あぁ…すまない。君の家族の分を忘れていてね」
リドウの視線の先を見ると、そこにはルルの姿があった。
上手いこと家族という言葉を使ったものだと感服しつつ、サインを済ませる。
「契約完了です。これでリドウ様の口座に2000万ガルドが振り込まれます」
ノヴァが告げる。死刑宣告に近いが、まぁ金程度ならなんとかなるだろう。死地でないだけまだマシか。
「また治療が必要になったら言ってくれ。格安で相談にのるよ」
「死んだら考えるさ」
「えっ?」
エルが首を傾げながら「死んでから治す?死ぬ前にじゃないの?」とブツブツ言っているがジョークを真面目に捉えられるとこれほどいたたまれないとはどうも居心地が悪くなる気分だ。
「冗談を言える余裕があるなら大丈夫そうだね。それじゃ俺はこれで」
「…災難だったね。私も全力でサポートするから。頑張って、ルドガー」
ため息を吐きたくはなるがまぁ彼女が悪いわけではない。手を振ってその場を後にすることにした。しばらく路地を歩き、ふと思いついたことを口にした。
「そういえば、エルはどうして列車に乗ろうとしてたんだ?」
「カナンの地。パパにそこに行けって言われて」
「…?」
「カナンは、古い伝承の地でね。魂の循環を司る精霊がいるって言われてるんだ」
「何でも願いを叶えてくれる。不思議な場所なんだって!」
何でも願いを…か。かつての苦い経験を思い出し眉を顰めて腕を組む。
「ほんとなのー!エルのパパが言ってたんだから」
「いや、信じてないわけではないが」
「…一概に、お伽噺とは言えないかも。伝説では意志の槍を持った賢者。『クルスニク』が辿り着く地だとされているんだ」
槍、クルスニク。情報に合致するものが多過ぎる。
「槍!持ってた!」
「あれが本当ならカナンの地だって__」
「それと…エルって。迷子…だよね?」
「…」
いつもの事だが、足手纏いに絡まれるのはどうも運命すら感じかねない。面倒であり鬱陶しくある。
「…一緒にくるか?」
エルは先程まで沈んでいた顔をパアッと明るくさせた。その後表情を悟らせないためか横目を逸らして
「いってもいいけど…時計返してもらったし」
「あのメガネのおじさん。カナンの地、知ってるっぽかったし」
「…あの世界は、あの時見たユリウスさんは本当にユリウスさんだったのかな?」
「…さぁな。分からん」
「キョーダイなのに?」
「…」
兄弟、はて。私は一人っ子だがね。藤ねえが居たくらいだが。
「ユリウスさんに電話かけてみたら?」
「そうだな、気にはなる」
GHSから電話をかける。しばらくのコール音の後
『おかけになったGHSは、ただいま応答できな__』
ブツッと切る。どうやら連絡は取れないようだ。
「とにかくルドガーの家に戻ろう」
「ついて来てくれるんだ?」
「お節介かもしれないけどね」
「ニャァ__」
「そんなことないって」
「ありがとう、えっと…」
「ねえ、この子の名前教えて?」
「ルルだ」
「とりあえず列車に乗ろう。話はその後で」
駅前の賑わう商店街を掻き分けて、街行く人達の会話を聞く。どうやら列車事件でひとしお騒いでいるようだ。あれだけ大きな事件だ。無理もあるまい。さて、切符を買うとするか。いや、待てよ。
「駅員さん、少し聞きたいことがある」
「なんだね?」
「GHSで切符を買うが、私は借金で制限を受けた身だ。使えるのか?」
「…なんだ。そういうことか。あんた最近借金したってわけか。とりあえず言っておくがね。切符は売れない。見逃したらこっちが処分されちまう」
「やはりか…」
「どういうこと?」
GHSは個人情報管理にも使われている。背負った債務の分だけ、行動が制限されるようだ。ノヴァから電話がかかってくる。
『ごめーん。説明してなかったね。大方は分かったみたいだけど、これ多重債務者の逃走を防ぐためのシステムでね…』
「そういうのは先に説明しないか、全く。それで、制限を解除する方法は」
『待ってました!少しずつ返済すれば行ける範囲も広くなってくるよ!こっちでも色々考えてみるからさ。そんじゃね』
一方的に切られた。まぁ重く言われるよりはマシだが。何ともまぁ不便なものだ。
「お客様の邪魔だ。どいたどいた」
「なーにやらかしたんだか、まだ若いのに。人生詰んでるな」
駅員は呆れたように仕事に戻っていった。まぁそりゃそうだろうと思い、違う方向で動かねばなと考えを巡らせる。
「バーカ!何も知らないくせに!」
駅員に対して怒鳴るエル。全く、淑女がそう怒ってどうする。__何時ぞやの彼女を思い出す。感傷に浸っている場合ではないか。
「__行こ。ルドガー」
「街で仕事を探してみようよ」
しばらく歩くと、魔物退治をしないかと言う男に会う。報酬はそこそこ貰えるので受けることにした。魔物の素材は武器や防具にも使うから重宝するそうだ。まぁ魔力さえあれば自分で製作出来る私にとっては不要ではあるが。魔力無しで武器を使えるのは消費を抑える分楽だ。ありがたく受けさせてもらおう。
街の外に出るとすぐ近くで魔物が跋扈していた。なるほど、こういう稼業が人材不足なわけだ。ある程度の魔物を狩り終えた後戻る。
「…こ、こんなに狩ってきたのか」
「不満かね?」
「い、いや。他の奴素寒貧なレベルだぜ。こんくらいでどうだ?」
ある程度は返せる分の5万ガルドを手に入れた。そろそろ解除して欲しいところだが。
『ヴェッ!?もうそんなに稼いだの?…これは何か早く終わりそうな気がしてきたよー!お二人はどうしたの?』
「疲れたようでな。寝させておいた」
『ルドガー、なんか変わったねー』
「そうなのか?」
『うん、何というか昔より逞しくなったというかー。私より楽観主義と言いますか』
「お前は楽観主義じゃあないだろう。前向きなだけだ」
『えっ__』
「返済目標は4900ガルド。十分に返せるな。…どうしたノヴァ?」
『えっ!あ、あぁうん分かった回収しておくね。これでドヴォール駅の移動制限は解除されると思うよ!それじゃ』
いきなり電話を切られた。何だったんだ。ドヴォール駅で確かユリウスの家に戻れたはずだ。1日間狩り続けてやっとだ。少し疲れてしまった。料理は味わえる身としては食べておきたい。それと風呂だ。あれは素晴らしい。1日の疲れが吹き飛ぶ。まさに夢のようだ。
そう思いながら疲れでベッドに倒れ伏したのであった。
はい、という訳でここまでです。
内容確認すると列車内にルルがいたこと忘れてたり、色々矛盾発生してたりでガバガバ過ぎたので今回もゲームしながら内容確認してます。思い出すのも限界ってはっきりわかんだね。
本当は少女と羽根のクエストの話も書きたかったんですけど、細かいネタ含めて書いてたら話全然進まないので諦めました(血涙)次はユリウス宅に戻った時の話から始めたいと思います。ではでは