聖杯奇譚 魔王降臨   作:ヤッサイモッサイ

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21日が近い。戦が近い。そんな思い出書きました。戦闘は次回に持ち越し。
久しぶりの本編なので自分も何を書こうとしてたかわかんなくなっちまったんだ……

あと最近グラブルにハマってます。土パ作ってたおかげで今の古戦場が楽しい


見よ、これぞ戦。合戦の全てはここにあり

燃え落ちる薪……目覚めた場所はさながら火事場であった。

 

いや、実際火事場なのだろう。大炎上する木造のこれは仏閣。仏が宿りし、坊主が集いし、信仰の高まりし一個の霊廟。

 

「我が名は魔王。第六天に座し、他を隔絶する魔性の大王」

 

世界へと燃え広がる紅焔が、黒煙すら焼いて飲み込む灼熱地獄の真ん中で、何よりも黒く、何よりも明るく化生が謳う。

 

それは冒涜の歌。背徳で、背信で、背理で、拝顔すら叶わぬ王の産声。

 

「この場を見る者があれば、今は黙って聞くが良い。されど夜が明け、命があればさも鳴き叫び給え」

 

長く垂らされた黒髪……世界の真ん中にあって炎が避けて通る唯一の空間に巣食うそれは、姿を変えていく。童子のような小柄な体躯より、悪鬼よりも壮絶な凶相宿りし天魔へと。

 

「我は第六天魔王・織田信長。世に明け方を差し入れる一草(いっそう)の欲よ」

 

 

ここに来れば嫌でも理解しよう。

 

この世界、この夢こそかつて信長が見た過去の日本……即ち、西暦1500年代後半───魔王の生きた戦国である。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

結界───近衛の得意とする本来の魔術。遠坂の宝石魔術による貯蓄と起点、目指すところは永続的な流動性。全くもって矛盾だらけ、魔術師として異端すぎて、廃れゆくのも納得がいくというものだ。

 

さて、ここまで自分の分野であると語り尽くした結界だが、ことこの結界に関しては───否、さながら芸術品のようなこの作品に関してはもはや全くの別ジャンルと言っても差し支えない。

何故かなどと言うまでもなく、違うのだよ。圧倒的にその存在から異なっているのだ。

結界とは完成に近づけば近づくほど“完璧”へと()()

こうして言葉にすれば細かいニュアンスの違いでしか表現出来ないのが心苦しいが、要はほかの魔術とはアプローチの方向性が異なるものだと理解してくれればいい。

効率よく、頭よく、流れよく、準備よく、成果よく、在ればよいものとして細かくまとまっていく。派手になるのではない、結界の完成とはその効果よりも無駄のなさこそが本質だ。そこにあると分からぬものほど怖いものはないだろう?

 

「さて、まぁそう焦らないでほしい。所詮君たちが私達の策にまんまとハマり、間抜け面を晒している───ただそれだけの事だ」

「ほぅ、わしのどこが焦ってると?よゆーじゃよゆー。かましてもかましても在庫切れが見えて来なくて逆に焦るわしの溢れる余裕が見えんのかと」

「それは初対面である私にもよく伝わってくるが、生憎と横の少年は逆に年がら年中品切れ状態らしい、余裕ならば自身のマスターの状態くらい確認してみせたらどうかね?」

 

そう嫌らしく、笑いもせずに言ってのけるロン毛野郎。

見ていればわかる、こんな結界宝具を持つ存在がまともなサーヴァントであるものか。禄な逸話を持ったサーヴァントじゃないぞこんなの。

 

「しかし先生は流石だね。本当にあの織田信長がこの戦場に今日現れると予測しちゃうんだから」

「予測ではない、推測だ。間違えるなよ、ニュアンスが違う。言葉を蔑ろにしていると、言葉に足をすくわれるぞ」

「アハハ、嫌だなぁ先生。その言い方だとボクが言葉に足をすくわれた事のある男みたいじゃないか」

 

軽快な口調で紡がれる掛け合いの波。どこか見覚えがあるような無いような、そんなノリに逆に調子を取り戻しながら。流れた汗が大地に飲まれるのを隠して、何とか笑ってみせる

 

「どうだ信長。この状況をどう見る?どうすればいい?」

「まぁ、赤毛の方はなんとでも成るじゃろう。体感ではあるが、曲者という感じはせぬ。まぁわしのスキルが変な働き方をしている故に何かしらの警戒はいるにしてもじゃ」

 

ならやっぱり問題はあのロン毛……魔術師の方だ

 

「まぁ、丁度いいと言えばいいんじゃがの」

「……はい?」

「特異点を二つ超えた。今までは目をつむってきたがの、そろそろ主も自覚すべきよ。もう一人のマスターと盾子にワシらが劣っている所をな」

 

言葉を区切り、そこで初めてこちらを見た信長がその紅に燃ゆる瞳で俺を射貫く。この俺をして数度しか見ぬ魔王の瞳。普段の従者(サーヴァント)ととしてではなく、将として───第六天に座する魔王としての姿。

 

「よいか、よく聴けよ戯け殿。これが聖杯戦争、魔術師とサーヴァントが揃って戦う戦である。なればこれは他化自在天王の与えし悦楽の境地───魔術という神秘においての秘奥が一つ」

 

いついつも、毎々度、事々ある事に俺は彼女を狂人(バーサーカー)であると評するが、やはりそれは間違ってなどいないとここに断じよう。

見ているだけで、こんなにもカラダが熱に浮かされる瞳が他にあろうか?

見つめられるだけで、カラダの肉が爛れ落ちる……それ程の劫火。なればこの身は既に餓者髑髏が如きモノ、魔王が意のままに操られし黒曜の亡者である。

 

見たものを狂わせる───そんな存在は狂っていなければ成り立たぬ。

 

「お主は将としては小娘に劣っていよう。しかして魔術であれば、貴様は紛れもなく優秀の部類よ。誇れよ、48人が中で生き残り、挙句世界を背負って戦うその身を誇れ。今だけは過去も因縁も全てを脱ぎ捨てて、1人の男子としてこの戦場に我ありと名乗りを上げよ」

 

そのような存在にここまで言わせて、俺はなぜ冷や汗が止まらぬ?この灼熱の中でどうすればそんな機能が残ろうか?

俺に皮は要らぬ、毛も肉も臓器(はらわた)とてこの青天へとくれてやる。

だがこの骨だけは……俺という存在をなすこの骨子だけは火葬の中でも捧げてやる訳にはいかない───そも、信長を従えるなんぞ端から器では無い。俺は指揮者に非ず、戦士でもなければ、凡人でもない。

 

「言われるまでもない。魔術師はただ道を探求する者───俺は魔術師だ」

 

だからこそ出来ることがある。研究者であるからこその戦い方がある。

だからこそ、この魔王は俺を使うことをようやく決めた。恐らくはここで立ち上がれぬのなら切り捨てると覚悟を決めてまで、今問いを投げたのだ。

 

 

 

 

 

「───ロンゲ野郎は俺が倒す」

 

 

 

この一言を、言わせるがために

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

戦場の真っ只中にあって、静寂が支配した。それ程までに俺が放った言葉は破天荒。俺達主従が十八番───至っていつも通りの基本に習った定石である

 

「ほぅ、君が……私を?」

 

故に、そんな声すらかき消すほどの嗤い声が轟くのも当然である。

 

これほど滑稽なことはないだろう。

これほど愉快なことはないだろう。

これほど愚昧なこともないだろう。

 

それほどに恐れ知らず。道理を知らぬ小僧の戯言。

 

「アッハッハッハッハッ!正気か主!?魔術師(キャスター)とはいえ相手はサーヴァント。魔術師であるからこそ、圧倒的な上位互換である魔術師のサーヴァントには勝るところがない」

 

嗤い飛ばしたのは他の誰でもない、俺の唯一無二の相棒である織田信長その人である。

なにせこの相棒は何よりもこうした戯言が好きなのだ。

 

「大丈夫、勝てるさ」

 

だからこそ、こんなにも軽快に嗤っているのだ。

 

「───なら任せよう。チーム戦じゃのぅ、赤髪ショタ」

「いやいや、無理があるでしょ黒髪ロリ。まさかとは思うけどここまで先生の思惑だったりするの?」

「馬鹿を言え。相手を馬鹿だと思いながら計を練る軍師がいるものか───悲しめライダー、相手は馬鹿だ。私の計略が通じないぞ」

 

顔を引きつらせてそういう相手に、俺達は笑みを深めて一歩踏み出した。

 

「「叩き潰すぞ、バカ殿ォ!!」」

 

 

気合十分、今ここに聖杯戦争は成った。

紅顔の美少年と近代を生きた軍師

第六天魔王波旬と現代に生きる魔術師

 

戦いの行方は定まった。秤がどちらへ傾くかなぞ、軍師にとて計れない。

 

 

 

 

 




さて、今回紹介いたしますはロン毛ことロードエルメロイ二世……つまりウェイバーベルベット君です。
fate/zeroとかを知っている人は知ってると思いますがこのウェイバー君は現代に生きている人物、つまり凜くんと同じ時代に実際にいる人になります。この人自身は魔術師としては凡人の域をでないのですが、その教育能力は尋常ではなく、時計塔の講師としてロードの名を継いでからは生徒がすごい勢いで大成していったそうな。今となっては無数に存在する型月作品の中でも、比較的多数の作品に顔を見ることが出来、特にロードエルメロイ二世の事件簿なる作品では主人公格でございます(見てない)。
さて、それではなぜそんな現代を生きる人がサーヴァントになっているのか、というのが問題ですね。これはデミサーヴァントならぬ擬似サーヴァントという存在に原因があります。元となったサーヴァントは諸葛孔明、三国志で有名な軍師ですが彼(彼女?)は諸葛孔明として力を振るうことが出来るのであれば、それは自分でなくとも問題ないという考えを持っていて、ロードエルメロイ二世に力を預けてしまったんだという話です。それなのでFGOの世界線では諸葛孔明の代わりに「諸葛孔明を演じるロードエルメロイ二世」が召喚されるんだとか。宝具は二つ、片方は手に持つ扇ですが詳細は不明。もう一つは作中で既に使われた「石兵八陣」と呼ばれる結界宝具ですね。結界内に継続ダメージ等の相手へのデバフを与え続ける空間を作り出すというもので小説は通します。これも実際の効果がアバウトなので……!
ゲーム性能は人権とまで言われるほどに優秀なサーヴァントです。タイプとしては支援系ですね。NPを全体に20ばら撒きながら攻防バフをつけて、単体に30のNPを与えながらクリティカル威力アップのバフを与えて、宝具は防御ダウンスタンチャージ減少呪い付与といったデバフを付与する非常に優秀な性能を持ってます。
元々はそこまで強いサーヴァントではありませんでしたが、だいぶ初期の時にテコ入れが入って一気に強キャラに変化しました。また、fate/zeroとのコラボイベントでは案内役の役割を持って、fate/zeroを見ていた人にはどこか微笑ましい一幕を演じてくれます。
再臨状況に応じてボイスや見た目が大きく変わるのも魅力ですね。性能的にもキャラ的にも人気が高いサーヴァントです。持っている人は大事にしてくださいな。それではまた次回お会いしましょう

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