大学生活、忙しいのも確かなのですが、まさか自分でもここまで小説から離れることになるとは驚きでした(読む方は欠かして無い模様)
どいつもこいつもモチベーションとかいうやつの仕業ということにしておけば問題がないようなのでそいつにすべてをぶん投げてこの話はここまで 。
いや、最近FGOの方もなかなか手付かずで、ハロウィン辺りからイベントはほぼスルーするという有様になっております。というか途中参加して間に合わないとか、途中から用事でまともに参加出来なくなるとかで完走できてないです。おかげで水着ノッブのチョコももらえないし悔しいのなんのって……普通に血涙ものですわ。ようやく暇になったのと久しぶりに筆が乗ったので書いては見たのですが、マジで久しぶりすぎて前の話とは雰囲気ガラリと変わりすぎてんじゃないかと思ったりね。ついでにこのタイミングでイベントが復刻なのかよと悲しかったりしてね。空の境界知識としてしか知らないのでテンション上がらないのです、ファンの方は楽しんでください……泣
さて、数ヶ月分の話はこれでしたはずだ。なので本編行きましょう。今回はあとがきは無しです。誰を紹介したか忘れてしまったのと、説明するだけの知識をまだ蓄えてないので次回にまわそうかな、なんて……ね?
燃ゆるは我欲、栄えるは人の業。背負った骸の熱にすら身を焼かせ、それでも大欲の世界を背負いし天魔は人に問いかける。
彼の者の行いは全てが毒、人の身には過ぎた恩恵である。故に
しかしそれはそれで問題ではなかった。少なくとも魔王は問題にはしなかった。与えられたものがそれをどう扱おうが勝手、受け入れようが捨てようが自由であると断じていたが故。
故に彼女が許さぬ愚劣はただ一つ───生きざま一つ選べぬ臆病さのみ。
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被詠紙の貯蓄は充分、懸念はこの結界の効果だが……読み取れる表層の構造からして常時作用系の効果ととれる。太極図を用いて陰陽を分けたのが、俺の還元のような使い方を想定しているのであれば、何らかの
そして何よりも、この結界の名前である。
「石兵八陣……まさかそんな形で稀代の大軍師を名乗る訳じゃあねぇよなMr.ロン毛」
「さてはてどうだろうな。彼の策を学んだもの、彼の軍略に屈したもの、或いは近代まで生きた彼そのものということもある」
「どう見てもチャイニーズじゃねぇだろブリティッシュが」
戯言も過ぎれば随分な毒だ。彼が先ほど結界を発動する時に述べた名称、石兵八陣……それは紛れも無く中華が誇りし大軍師、諸葛孔明が用いた究極至高の奇門遁甲、そしてそれを用いた超戦略陣形。
「一瞬描かれた太極図、俺達を囲うように出現した巨石群。史実の諸葛孔明が危機の際に使用したそれに間違いない……そんじょそこらの魔術師風情が真似られるような、甘ったれた軍策であるものか!」
「では何とする異郷の魔術師。君の知識、経験、加えて直感が真実だとして、ではこの二流魔術師風情が世界に名を轟かせる彼の軍師であると?否、あんな人外の人類を代弁できるほどの器ではない。君の言う通り、私は稀代の大軍師を名乗れるような器ではないさ」
……クリアすべき問題はそこだ。このロン毛はどういう訳か、真の石兵八陣を用いし超跋の魔術師。如何に軍隊規模の力を持つ信長とはいえ、これの攻略無しにはあの少年サーヴァントを超えることは到底叶わない。
見極めろ、本物との相違点を!
突き入れ、虚実の狭間を!
そここそ此度の戦の突破口なり!
「───
選択しろ、戦場の流れを制御する術を。俺が超えるべきは魔術の腕にあらず、この戦場を支配する力である。
それだけが俺に出来る唯一。サーヴァントを突破する唯一つの勝算なる。
「我が術理を突破する気か……愚かな。数ある中でも最も下策を選んだぞ、魔術師。ライダー、君は織田の姫君に集中するがいい。援護はこちらでしよう」
「おや、いいのかい先生?仮にも魔王の臣下、侮るには大きな魚だと思うけど」
「あれは臣下などでは無いよ。そうだな、言うなれば……身分不相応にも天に藻掻く灯篭が如きもの、半刻もせずに消炭になる様な芥に過ぎん」
……言ってくれる。だが侮ってくれるというのならば好きに侮って貰おう。そうして出来た穴を、貫かれたあとになって埋める事なぞ出来やしないのだから。
「信長、宝具の使用は控えろ。対軍宝具でもってこの陣形は超えられない」
「して、超えられないのであればどうする?まさかここで踊って見せろと言うでもなし。宝具も使えぬサーヴァントなんぞに何をしろと?」
「愚かは俺達の基本戦術、前提条件さ。無論、この難攻不落の結界のその向こうで叩き潰してやればいい。君は今しばらくライダーと遊んでいればいい」
そうだとも。歴史においても詳しく記されることのない天災が如きこの結界……何時だって天に仇なし、怒りを買うのは愚かな人間様だ。その事を教えてやるさ。
「“火事場に盃、呑まずは仏僧、我が身にその恩寵を与えたまへ”」
礼装は節約だ。ロン毛の正体がなんにしろ、そのクラスは魔術師。この距離こそが奴の領域である。
結界術式における最良の対処法その一……つまりは───
「───結界からの脱出だ」
信長すら置き去りにしての脚力強化による高速移動。行き先は自身から見て右方、全方位を塞ぎし石柱の狭間である。
「うわぁ、かえって潔いなぁ」
「放っておけ。理を知らぬものに此れは抜けん」
高速で戦場を割って辿り着いた戦場の端、つまりは結界の境界。石兵八陣とは史実において敵を寄せ付けなかった術理、結界術式に区分すれば「対外結界」の類である。こうしたものは得てして外から内よりは強くとも、内より外への拒絶は甘いはず───
「ガァッ───!?」
「───“地理把握”」
衝撃。
大地をそのままの速度で横滑りする肉体が、その砂鑢に削られて血を塗す。
何が起きたかも理解せぬままに自身の痕跡をたどるように後方を振り返ると、脳内の認識と異なる結界内の人間の位置関係に疑問符が浮かぶ。
「結界内における地理、それを自身の認識のままに置き換える……どうやら君の認識と私の認識では、地面の向きが三十度程異なっていたらしい」
そう、加えた葉巻より紫煙を燻らせて、自身の認識より三十度ズレて続く足跡に戦慄する。
“大地を回転させた”
言葉にしてしまえば単純である。結界の効果としては存分に在り来りな幻覚作用であると、切り捨てることも可能だ。人間の神経系に作用して、現実とは異なる光景を見せる。自身の命令と異なる結果を生ませる。それは正しく結界術式の十八番である。
……しかし、これは違う。結界の内部にこそ限定されるが、間違いなくこのサーヴァントは現実を歪めて見せたのだ。
修正力すら働かぬ、否、むしろ修正力を利用した事象のすり替え。
「畜生が……!」
しかし足を止めるわけにはいかない。直接的な攻撃ではない、妨害をするという事は、結界外部に出る選択が正しいという事でもあるのだから。
視界の端で黒馬に跨った赤毛の幼貌が、信長に噛み付くのを見送りながら再び走り出す。地面が回転したところで、結界外までの距離が変わった訳でもなし。何十回転ぼうが走ればいずれは───
「“地形利用”───あまり無駄な手間をかけさせるな」
ブッ、と血が吹き出す音。生命のひしゃげる音。衝撃に対して肉体を守るべき肉そのものが、壊されていく爆音。
強化した速力で自身が突っ込んだのは、突然隆起した岩壁。加えて天に突き上げられた俺を待ち受けるのは、大陸の抱擁である。
「ぁ───ガァアアアあああ!!!」
英雄の跋扈せし戦場において、これほど見苦しい着地も無いだろう。強化した肉体すら貫いて内蔵を捩る衝撃か、粉砕した骨が突き刺さるその痛みなのか。何にせよ身体機能を毟られていくその感覚がいやにおぞましく、湿った音を届けてくる。
「一つ勘違いを正しておこう。石兵八陣はそもそも対外用の結界でもなんでもない」
こちらへと歩み寄るその黒影から逃れる様に、地面を掻き毟る。砕けたその爪先から粒子が入り込む不快感よりも、てんで正体の掴めぬその男の恐怖が勝っていた。
「確かに、史実においては結界に入り込ませなかったと表現されることの多いこの陣形だが、その本質は“中に入れば出ることが叶わぬ事”……それ故の不可侵。それ故の絶対戦略。かつては英霊ともされるような戦士達をして攻略不可能とさせたこの結界に入った時点で、君達には勝利など存在しない」
……思考を読んでるのか?
「あぁ、“情報処理”。処理であるが故に、同時に複数の観測は無理にしろ、単一の情報であればどのような偶発事象ですら予見して見せる。最も、石兵八陣を作りし諸葛孔明にとっては最も不要な機能ではあるがね。」
「め、滅茶苦茶だ……そんな結界が存在するはずが無い……!」
「……あぁ、そうか。君の家系は結界に特化したものだったか。ならばこそ、君たちの国で言えば釈迦に説法というものだろう。完全なる結界とは、それ即ち一点のほころびすら存在せぬ無欠の術式。試行錯誤を繰り広げるのは結界の中へ相手を連れ込む過程であり、入ってからのことではない。なぜなら、結界術師にとっては発動したが最後、決着はついたも同然であるからだ」
……分かっているさ、分かっているとも。近衛が求めた流動する結界とは、正しくそうした試行錯誤の末のものなのだから。なればこそ断言出来るのだ、完璧な結界など存在しないということが!
「これによる問答は無用だな。そもそも、サーヴァントという存在を君達の尺度で図ろうという考え自体が間違えているのだから……さておき、どうしたものか。君を殺してしまってはライダーの望みは半分果たせなくなる。結果として、私は君をこのまま放置しておくしか出来ない訳だが……」
そう言って彼方の戦いへと目を向けるキャスターのサーヴァント。
地べたで這うことしか叶わぬ俺には、そんな彼方の光景は瞳に映らない。
「……ふむ、やはり今のライダーには荷が重いか。ジレンマだな、彼の目的を果たすには君が邪魔で、しかし君がいなければそもそも前提が成り立たない。せめて君がもう少しまっとうなマスターであれば、話は違うんだがね」
「こ、の……好き放題言いやがって……っ!」
言葉とは裏腹に、力を込めど破壊の限りを尽くされた肉体は思うように動かない。
自身の体を少しばかりすら浮かすことが出来ないほどに、完全に壊されている。
「まぁ、動けないのであれば今しばらくそこで置物になっているといい。やりようはいくらでもある。力で不可能なことは言葉で可能に変えるまで……私は向こうの加勢に行くとするよ」
端から俺には興味が無いのだろう。自身の仕留めた獲物に執着すら見せず、足早に男は去っていく───俺は男の言うとおり、置物のようにただそこで転がることしか出来なかった。
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───随分と手酷くやられたようじゃの。まぁそもそも、そんなに急に人間変われるわけもなし、変わったところで所詮は生身の人……サーヴァントの相手には十二分に役者としての格が足りていない。
「思っていたより、焦らないんだね」
「……そんな事もなかろう。貴様らの目論見通りの展開。わしは奴が死ねば、消えゆく身。弓兵のクラススキルがあるとはいえ、宝具も乱発できなくなり、奥の手は封じられる上に相手は増える。いやはや、さしのわしも今回ばかりは流石にお手上げよ」
「本当かな?僕は先生じゃないから人の心までは読めないけれど、でもわかるよ。君は魔王を自称し、本当にそうなった人……万物に期待を寄せる振りをした所で、実際には諦観が根付いた天下人のなり損ない、それが君だ」
遠くでの戦いの決着を機に、剣を休めて今度は舌戦。正体もわからなければ目的もわからずじまい。不利に不利を重ねた最悪の状況というやつか。これでも軍略は得意なつもりなんじゃが、やはり穴だらけの軍略は死んでも治らんのかの。
「君は端から誰にも期待なんかしていない。破天荒を気取ったところで、その実誰よりも運命論を信奉する一種のシステムに過ぎない。だからなにかに執着なんかしない。だから死後の未練なんて存在しない。英霊なんてものは、大なり小なりそんなに気質を抱えるものだけど……君の場合はそれが特別強いね。故にこそ過程を軽視していつも危機に陥るのさ」
「戯言よな。だとして、否、であればこそそんな言葉遊びになんの意味がある。戦場においては生か死か、それこそが全て。そう考えるわしに、貴様の言葉が如何程の価値を持つ?」
「……知りたいんだ?」
“見透かしたような瞳”
見惚れそうな微笑みを携えながらも、ただその眼だけは何処かゾッとするような遠くを見つめていた。それは深遠か、夢か、未来か、或いはそれこそ運命であろうか?
「さて、気にする事はないさ。ライダーの言うことも所詮彼のエゴ……自身の尺度上の考えである以上は君と何ら変わりないのだから」
「……ようやく来たか、ロン毛」
「キャスターだよ、アーチャー殿」
待っていた、とは程遠い気持ちであるが、来てしまったものはしょうがない。せいぜい手厚く、全力で、死力を尽くした歓迎をしてやろう。
舌戦如きはここで終い。これここよりは鋼ぶつかりし死線が寝床。どちらの牙が相手の脳を噛り、心臓を汚すかと言うだけの至極簡単な原初の戦い。
「あらら、また戦闘モードに入っちゃったか。まぁそれならそれでもいいさ。ここすら突破するのなら、それはそれでひとつの答えなんだろうしね」
「些か優雅さにかけるが、戦場に贅沢は持ち込むまい。それでは極東の魔王よ、こちらも全力で返礼するとしよう」
二者の魔力の高まりに応じて、自身の枷を外していく。望みとあらば応えよう、それらが欲こそ、我が第六天魔王奉りし贄とならん。
「“天候予測”・“人心掌握”───」
「
───三界神仏灰燼と帰せ
ワレコソハ
第六天魔王────
“来い、信長”