蓮は泥より出でて泥に染まらず   作:時雨ちゃん

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こんにちは。

閲覧ありがとうございます。
駄文ですが楽しんでもらえれば幸いです。


第2話

今日も1日放課後まで、特に何もなく終えることができた。

あとは部活だけだ。

 

席からスッと立ち上がり鞄を持ち教室を出て部室へと向かう。

教室を出るときに後ろで何か聞こえた気がしたが気のせいだろう。

あー、寒い、自販機でMAXコーヒー買っていこう。

すると後ろから結構な衝撃がきた。

 

「うぐっ!」

 

振り向くと頬を上気させ、少し肩を上下させた由比ヶ浜がリュックを持って立っていた。

リュックで殴りやがったなこいつ………。

 

「ヒッキーなんで先行くし!待ってって言ったのに。」

 

「い、いや約束してなかったろ?てかそんなこと言ってた?」

 

「言ったし!ヒッキーが教室出るときに結構大きな声で!」

 

出るときに聞こえたのは由比ヶ浜だったのか。

イヤーハチマンワカンナカッタヨ。

 

「それは悪かったな。だが俺は今から大事な用があって行けないんだ、先行ってろ。」

 

「え?用事ってなに?遅くなるの?」

 

「あいつを迎えに行かなきゃいけない。」

 

「え?あいつって誰!…小町ちゃん?…あ…またいろはちゃん?最近行かなくなったと思ってたのにまたいろはちゃんとこ行くの?」

 

「ちげぇよ、MAXコーヒー買いに行くんだよ…。」

 

なんだよ、なんで一色のとこ行くの?ってところちょっと悔しそうなんだよ。

そのちょっとした上目遣いやめろよ、勘違いしちゃうだろ。

 

「なら最初からそういえばいいじゃん……!」

 

あ、ちょっと怒ってる。

なんだよ、冗談だろ?

 

「私も喉乾いたから一緒に行く!」

 

「えー…。はぁ、わぁーたよ、早く行くぞ。」

 

「うんっ!」

 

ったく…なんでそんなに嬉しそうなんだよ。

かわいいじゃねぇか。

 

俺と由比ヶ浜は横に並んで自販機を目指す。

 

自販機で各々飲み物を購入したあと由比ヶ浜が

 

「あ、ゆきのん紅茶いれてくれるんじゃ……」

 

あ、完全に忘れてた、ごめんゆきのん。

 

「まぁもう買っちまったし、飲んでから行くか?」

 

「ううん、あんまり遅くなるとゆきのんかわいそうだよ。」

 

俺的には何がかわいそうなのかよくわからないが確かにこれ以上遅れてしまうと入ったときにどんな罵倒が飛んでくるかわからない。

仕方ない、紅茶は遠慮するか。

 

「ヒッキー早く行こ?」

 

由比ヶ浜が急に手を引っ張ってきた。

え、なにこいつ手ちっちゃいな。

こんなに小さかったのか。

しかもちょっとあったかくてスベスベし……

って、やめて!勘違いしちゃう!

このまま勘違いで告白して、2秒で振られるまである。振られんのかよ。しかも2秒で。

 

「お、おう、わかったから手ぇ離せ。」

 

「あ、ごめん!つい……」

 

ついって。こんなことをついやってしまうのかこの子は。

しかもなんか顔赤いし。

ホント無邪気というかなんというか。

そういう行動が世の男子を勘違いさせるんですよ?

 

「…いっいや、別にいいけど…。」

 

「うん、ありがと。……じゃあ行こっか。」

 

「おう。」

 

そうして俺たちは部室へと向かった。

 

 

部室の扉を由比ヶ浜が勢いよく開ける。

 

「やっはろー!ゆきのーん!」

 

「うっす。」

 

由比ヶ浜に続いて俺も挨拶をする。

すると雪ノ下が読んでいた文庫本から顔をあげてこちらを向き、机に肘を預けていた一色が体を起こした。

 

「こんにちは由比ヶ浜さん、比企谷くん。今日は遅かったのね。」

 

「せんぱい!おそーい!!」

 

ん?あれ?遅くなったから俺に対する罵倒が飛んでくると思ってたんだけど普通だ……。

え、なに逆に怖い。

あ、もしかして俺たちが一緒に来たからクラスのHRが長引いたと思ってる?

それなら仕方ないって思って罵倒しなかったのか?

しかもなんか一色もいるし。なんだよ準レギュラーなの?

 

「ごめんねゆきのん、ヒッキーと飲み物買いに行ってたの。」

 

ちょっと由比ヶ浜さん?なに早速自供してるんですか。せっかく罵倒されなかったのにこれじゃあ罵って下さいって言ってるようなもんじゃねぇか。

 

「あら?そうなの?拉致谷くん。」

 

「ちょっとせんぱいどういうことですか?結衣先輩と二人で自販機行くとか。」

 

「おいちょっと待て、なんで俺が由比ヶ浜を無理やり連れてったみたいになってんだよ。由比ヶ浜からついてくるって言ったんだ。俺は無実だ。あと雪ノ下お前最近谷付ければいいと思ってるだろ。」

 

「そんなこと考えているわけがないじゃない。」

「まあまぁゆきのん、いろはちゃん。今回は私からついて行ったんだ。」

 

おお!由比ヶ浜がフォローしてくれている。

 

「それなら仕方ないわね。」

 

「むぅ…しょうがないですね。」

 

なんでちょっと一色は不満そうなんだよ。

 

「それでは今日は紅茶はいいのかしら。」

 

「うん、ごめんねゆきのん。」

 

「ええ、かまわないわ。」

 

なんで俺の時とこんなに扱いが違うの?ねぇ?

あ、前からでしたね。そうでした。

 

「ていうかおい一色、お前今日はどうしたんだよ。」

 

俺はさっき買ったMAXコーヒーを取り出し、開けて一口飲んでから一色に質問する。

そう、最近は一人で頑張っていると思う。

ここ数週間は受験関係で忙しかったらしく部室に顔を出すのが週1.2回くらいで由比ヶ浜がちょっと寂しそうだった。

それでも普通に来すぎだとは思うが。

 

「あ、そうなんですよ!せんぱい!来週終業式したら春休みじゃないですか?その後すぐに入学式で使う備品を

 

「断る!」

 

「ちょっと!まだ最後まで言ってないじゃないですか!」

 

「どうせあれだろ?その備品買いに行くから付き合えっていうんだろ?荷物持ちだろ?そんなん無理だ。葉山んとこいけ葉山んとこに。」

 

「葉山先輩は部活が忙しくて無理なんですよ!ですからようするに戸部先輩もダメです。だからもう先輩しか頼れないんですよぉ」

 

 

いやいや、いろはす?君も一応サッカー部のマネじゃないのん?

しかも相変わらず戸部の扱い酷いな…。

 

「お前もサッカー部だろうが……。」

 

「私は生徒会があってそっち優先しろって先生に言われてるんですよ!ねぇーぇーせんぱぁい、お願いしますよぉー。」

 

そう言いながら上目遣いで袖を摘みながら揺らしてくる。

クッソ!なんだこれはあざとい!流石いろはすあざとい!…だがこれは…悪くない。くっ…!これは仕方ないな、小町も入学するし、手伝う意味はあるだろう。うん。小町のためだ小町の。

若干2名からの視線が突き刺さってますけど気にしない。

 

「わっわかった!わかったから離せ。」

 

「わー!ほんとですかぁ?ありがとうございまぁす!」

 

パッと一色が手を離す。クソ、こいつわかってても心臓に悪い。

 

「……比企谷くん?」

「……ヒッキー?」

 

俺は悪くない。うん、悪くないんだ。

 

「で、いつまでなんだそれ。」

 

一旦咳払いをしてから一色に質問する。

…さっきから由比ヶ浜が頬を膨らませながらこっちを見ている。なんだそれフグかよ。

雪ノ下はこめかみに手を当てている。

もう諦めたようだ。

 

「えーと、期限はなるべく早くって言われてます。」

 

「ん、了解。でも春休みは予備校とかあるから行けない日もある。」

 

「それじゃあ先輩、春休み連絡取りたいんで、連絡先交換しましょう!」

 

「えー………まぁしゃあねぇか。………ほら。」

 

確かに行くといってしまった以上、連絡を取れないのは面倒臭い。連絡を取らずにバックレる事もできるが別に断る理由もないし……。

俺はポケットからスマホを取り出し一色に渡す。

 

「え、わたしがやるんですか?」

 

「俺やり方わかんねぇもん。頼むわ。」

 

「よくそんな簡単に人に携帯渡しますね………。」

 

「別に見られても困るものなんて入ってないし。」

 

「うわ。せんぱい連絡帳1桁って。」

 

うるせぇ、ほっとけ余計なお世話だ。

だいたい戸塚か小町か由比ヶ浜か戸塚としかメールとかしないし。

 

「はい、せんぱい、登録しましたよ。」

 

「おう、サンキュな。」

 

携帯を見ると☆いろは☆で登録してあった。

由比ヶ浜然り最近の女子高生って☆とか付けるの流行ってんの?

 

「じゃあまた連絡入れますね!それでは私は仕事があるのでこれで失礼しますね。でわでわ〜!」

 

そう言って一色は満足気で部室を出て行った。

 

春休みのパシリは確定だな……。

嫌な予感的中だわ。こういう予感って無駄に当たんだよなぁ。

 

「………あなた、ずいぶん一色さんに甘くなっているんじゃない?」

 

いきなり雪ノ下がそんなことを言ってきた。

 

「いや、別に前からこんなんだろ。」

 

「いーや!ヒッキー前より甘くなってるよ。だって今の連絡先も前なら絶対変なこと言って何回も断ってるもん!」

 

そう言われると確かに……。

これも俺の一つの変化なのだろうか。

丁度いい機会だ。ちょっと考えてみるか。

 

 

俺は一色に甘くなった。

これは俺の変化だと思う。

朝自分でも思ったぐらいだしな。

一色に対しては最初、俺の都合で生徒会長をやらせたみたいなもんだから責任を感じて手伝っていた。それは間違いない。

 

でも最近はどうだろう。あいつは最近俺に頼ることが少なくなり一人で頑張っている。

まぁたまに部室には紅茶飲みに来たり簡単な仕事手伝わされたりしてるけど。

 

俺としては面倒が減っていいんだがやっぱりあいつに頼まれるとさっきのように断りづらい。

これは責任を感じているというのではないような気がする。

俺の中で一色を手伝うことが苦ではなく普通になりつつあるということなのだろか?

やはり一色の言う通り俺は年下には甘いのか?

それか小町と少し被っているからなのかもしれない。

何にせよ俺の中であいつが、あざとい後輩からあざと可愛い後輩に変わっていっているのだろう。

そう思うくらいにはやっぱり俺は変わっていっているのかもしれない。

だがこれが大きく成長しているかと言われれば別だと思う。

蓮の花の話から得たこの疑問は、答えが出るまでまだしばらくかかりそうだ。

 

雪ノ下たちはなにやら楽しそうにしながら時折こちらを気にしているようだった。

 

俺は飲みかけのMAXコーヒーに手を伸ばす。

一体どれくらい考えていたんだろうか。

ホットだったMAXコーヒーはもうすっかり冷め切っていた。

 

 

 

 

end

 

 




更新は早かったり遅かったりすると思います。

今回も短くて申し訳ありません

気になる点ございましたら教えてください。

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