蓮は泥より出でて泥に染まらず   作:時雨ちゃん

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デート回だと思った?残念!ガハマさんでした!

いやもう本当にすいませんでした。

次回はいろはちゃん出てきますのでいろはすファンの方怒らないでください。


第6話

「いやー、雪乃さんは残念でしたね。用事で来れないなんて。」

 

「え、あぁうん、そうだね。結構急だったしね。」

 

「あぁーぁ、絶対面白いことになると思ったのに。」

 

「………ねぇ小町ちゃん。」

 

「何ですか結衣さん。」

 

「本音が出てるよ……。」

 

「あ、すいません。」

 

「もう…。」

 

「あ、お兄ちゃんはっけーん!まだ会長さんは来てないのかな?」

 

「え、……うん…いろはちゃんはまだみたいだね。」

 

あたし、由比ヶ浜結衣は今ヒッキーの妹の小町ちゃんと駅前のマックの二階、窓際の席に座っている。

小町ちゃんはあたしの指摘など無かったことのように入る時に買ったオレンジジュースのSサイズを持ちながら窓の外のヒッキーを眺めている。

つられてあたしも自分のジュースを飲む。

 

いろはちゃんとヒッキーが二人でその…デ、デートとか嫌だけどなんだかいけないことしてる気分になってきちゃった。

そもそもこんなことになってるのは昨日の夜に小町ちゃんからLineが来たからなんだよね。

 

 

「ふふんふんふんふ〜ん。」

 

「結衣どうしたの、随分とご機嫌じゃない。」

 

晩御飯を食べ終わって後片付けをしながら、あたしがこの間発売された好きなアーティストの新曲を鼻歌で歌っているとママが話しかけてきた。

 

「え、うん、好きな歌手の新曲がすっごいよくて!頭に残っちゃってるんだ。」

 

「へー、どんな感じの曲なの?」

 

「えっと、簡単に言うとなかなか好きな人が気持ちに気付いてくれなくて結局想いを伝えられずにいると最終的には違う女の子と好きな人がくっついちゃうって言う失恋の歌だよ。」

 

「あらー、それはまた重たいわね……しかも……。」

 

ママは何やらうーんって唸ってる。そんなに重たい曲かなぁこの曲。優美子にも重いって言われたんだよね。

あたしは妙に共感できるんだけど……。

 

「結衣。」

 

「ん?なに?」

 

ママがふっと顔を上げたと思ったら何やらちょっと真剣な雰囲気。

 

「その曲今の結衣にピッタリね!その曲の通り早くヒッキー君落とさないと他の子に取られちゃうぞ〜?」

 

…え?…

 

「……え?」

 

な!?

 

「な!?、なななななんで今ヒッキーの話になんの!?」

 

「だって結衣ヒッキー君のこと好きなんでしょー?」

 

「す!好きじゃないし!全っっっ然ヒッキーの事なんか好きじゃないし!」

 

あたしは全力で手を前でブンブンしながら否定する。

 

「あーはいはい、わかったわかった。もーほんとに結衣ったら素直じゃないんだからぁ。」

 

「だ!だから違うってばぁ!」

 

「ふふ。でも本当に、いつまでも動かないと他の子に取られちゃうよ。あんたも変なところで奥手なんだから。一発ガツンといっちゃいなさい!」

 

ママはすごい笑顔でさむずあっぷ?グッドポーズ?しながらリビングを出て行った。

 

もうほんとに恥ずかしい。

………やっぱバレてるし。私がヒッキー好きなこと。

でもなんであたしの好きな歌からこんな話になんの?

この曲は気持ちに気付いてくれない男の子への失恋ソングで……。ん?

…しかも想いを伝えられずに最後には他の子と付き合っちゃう……。……あ。

 

ああああぁぁぁぁ!!!!!!

そういうことか!

うーーー、わかったら余計恥ずかしくなって来ちゃった。これってあたしとヒッキーの状況にそっくりじゃん!だから変に共感できたんだ!

 

じゃあこのままじゃヒッキーは……。

あぁモヤモヤする!

もう!早くお風呂入っちゃお!

 

なんかソファに座ってテレビを見てるパパがプルプルしてるけどどうしたのかな?

 

……てかいたんだね。部屋だと思ってたよ。

 

 

 

お風呂からあがったあたしは今部屋のベッドでファッション誌を読んでる。

ヒッキーがいうところの偏差値の低そうな雑誌。

あたし偏差値ってよくわかんないんだけどなんなのかな?頭の良さ?

でもなんかバカにされてるってことだけはわかるんだよね。

あたし的にはヒッキーも男子用のこういうの読んで勉強したほうがいいと思うんだ!

………絶対やんないだろうけど。

 

部屋の時計を確認するともう二十三時。

明日お休みだけど今日はもう寝ちゃおう…することもなくなったし。

あたしは雑誌を閉じて立ち上がり、本棚にしまう。そのまま机の上に置いてある帰ってきてから放置しっぱなしだったスマホのスイッチを押して画面をつける。

するとLineが何件か来ていた。

 

大体は優美子達とのグループトークで、あとはクラスの女子数人と小町ちゃん?なんだろう?

トークが来てたのは十九時過ぎ。結構前だなぁーとか思いながら優美子達のグループトークと友達のトークを軽く見て返した後、小町ちゃんからのトークが気になり画面を開く。そこには

 

『結衣さーん!やっはろーです!突然なんですけど明日暇ですかー??』

 

と書いてあった。

うーん、遊びの誘いかな?小町ちゃん受験終わって今が一番遊べる時期だもんね。

明日は別に何もないし暇だよね。

そのままあたしはメッセージを打つ。

 

『暇だよー^ ^どしたの?遊びに行くの( `・∀・)?』

 

とだけ送り、Lineを閉じようとしたらすぐに既読の文字がついた。

はやっ!小町ちゃん流石に早すぎるよ!

どんなだけ返事待ってたの。

 

するとほんの二十秒もしないうちにこう返ってきた。

 

『遊びにというかですね!明日お兄ちゃんが総武高校の生徒会長さんとデートに行くそうなんです!これは大事件です。一緒に尾行しましょう!』

 

え?ヒ、ヒッキーがいろはちゃんとデート?……あー、ヒッキーのことだからまたいろはちゃんに手伝わされてるんだ。昨日も部室で言ってたもんね。もう、ヒッキーいろはちゃんに甘すぎだよ!

 

『それは多分デートというかいろはちゃんのお手伝いだよ!うん!きっとそう!』

 

そうメッセージを送る。

なんであたしはちょっと焦ってるんだろう。

ヒッキーがいろはちゃんを手伝うなんて別にいつものことなのに。

 

……あ、さっきのママとのやりとりがそうさせてるのかも……。

うん、だっていろはちゃんもヒッキーの事多分…す、好き…だよね。

いろはちゃんだけじゃなくてきっとゆきのんも…。

 

頭にはママに言われた言葉がよぎる。

 

《早くヒッキー君落とさないと他の子に取られちゃうぞ〜?》

 

……確かにこのままじゃ、ダメだよね……。あの三人の空間…いや四人の空間を壊したくないのも確かだけど。

やっぱりこのままはダメ。

 

うん、あたしも気になるし行こう!

あたしだってまだディスティニーの時の約束とかはたしてもらってないし!

Lineを開いて小町ちゃんに一緒に行くことを伝える。

 

すると待ってましたとばかりに小町ちゃんから集合時間や場所が送られてきた。

たはは……。小町ちゃんには敵わないなぁ。

 

 

と、まぁこんな感じで今に至るのだ。

 

あの時は結構乗り気だったんだけど、今はヒッキーといろはちゃんが楽しそうにしているところを想像しただけで胸が締め付けられる。

 

あ、でもヒッキーは嫌々かも。

ふふっ、その方がヒッキーっぽい。

 

「あ、お兄ちゃん電話してますよ。会長さん遅れてるのかな?」

 

「何時に駅とか聞いてる?」

 

「九時半って言ってました。」

 

「えっと、今九時四十分だからいろはちゃん遅れてるね。」

 

あたしはスマホの時計を確認しながら言う。

 

「ほーー。これはもしや……。」

 

小町ちゃんは腕を組んで考え始めた。

 

「もしや…?」

 

あたしはその後に続く言葉を待つ。

 

「会長さんはお兄ちゃんとのデートが楽しみで昨日眠れなくて寝坊したに違いないです!!!」

 

……。なんか深刻そうに考えてた割には意外とあっさりした言葉が出てきた。

 

「え、あ、うん、そうかもね……。」

 

「絶対そうですよ!お兄ちゃんみたいな人と二人で出かけるなんてお兄ちゃんの事が好きか相当な物好きか妹のどれかですから!」

 

小町ちゃんは腕を組んだままえっへん!っと胸を張っている。

あ、あたしはそれ何て言えばいいのかな…。

たまに小町ちゃんヒッキーの事軽くディスるよね。でもちゃっかり妹って入ってるし、やっぱりヒッキーの妹なんだなぁ。

悪口みたいな言葉の中にも兄妹の絆みたいなのが見えてちょっと羨ましいな。

 

「あ!お兄ちゃん動き出しましたよ!」

 

あたしも外を見てみるといつのまに電話を終えていたのかヒッキーが背を預けていた壁から離れ、どこかへ行こうとしているところだった。

 

「結衣さん!行きましょう!」

 

「あ!うん!」

 

あたしと小町ちゃんはジュースを大急ぎで飲み干し、荷物を持ってゴミを片付け、ヒッキーを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って、そこの喫茶店入っただけじゃん!!

ヒッキーは店内の窓際の席に座った。

いろはちゃんが来るまで時間潰す感じなのかな?

 

「なんだ、カフェに入っただけか。本読み始めちゃったし。どうします?戻りますか?」

 

小町ちゃんがそう提案してきた。

うーん、確かにヒッキーが動かない以上あたし達はどこにも行けないし。

でも確かさっきのマックからじゃあそこの喫茶店は見えなかったはず。

あたしは辺りを見渡して丁度いい場所を探す。

すると喫茶店が見えるであろうギリギリのところにコンビニを見つけた。

 

「あ。小町ちゃん、あそこのコンビニで立ち読みでもしてよっか?」

 

「いいですね、そうしましょうか。」

 

そうしてあたしたちはそのコンビニへ向かい歩き始めた。

 

 

 

 

あたしたちが立ち読みを始めて一時間も経たない頃、やっといろはちゃんが息を切らして現れた。

かなり急いで来たみたいだね…。でも本当に大寝坊したんだね。

おかげであたしと小町ちゃんはかなり店員さんに見られちゃってるけど。

まあ今深めに帽子被ってるし、しかも小町ちゃんはガチガチのサングラス。そんなのよく持ってたね……。

かくいうあたしも薄い色付きの伊達眼鏡をお母さんから借りてきている。しかも雑誌を読みながらコソコソしてるしもう二人とも完全変だよ。ごめんなさい。怪しいものじゃないんです店員さん。

 

あ、いつものお団子は解いてるよ?バレるかもだし、帽子かぶる時も邪魔だしね。

あれ、誰に言ってるんだろ。

 

「小町ちゃん小町ちゃん、いろはちゃん来たみたいだよ。」

 

「え、ほんとですか、どの人ですか?」

 

「あの周りをキョロキョロしてる亜麻色の髪の子だよ。」

 

「……え!あの人ですか!?遠めですけどめっちゃかわいいじゃないですか!!」

 

「ちょっと!小町ちゃん声大きいよ!」

 

ここ一応コンビニだから!

一層店員さんに睨まれちゃってるから!

 

「あ、ごめんなさい。それにしてもあのごみぃちゃん、何が可愛い方だよ。全然方じゃないじゃん。ガチじゃん。」

 

まぁ確かにいろはちゃんは同性から見てもかなり可愛い。

男子にもすごく人気があるってこともわかる。

 

ヒッキーはどうなんだろう。

どう思ってるんだろう。

 

そんなことを考えていると窓際のヒッキーを見つけたのかヒッキーのいる喫茶店に向かってトテトテと歩き始めた。

 

すると窓の前まで来たいろはちゃんは窓を鏡代わりにして身だしなみを整え出した…?

え、え、いろはちゃん気づいてないの!?目の前にヒッキーいるよ!いろはちゃんで隠れて見えないけど絶対ヒッキーガン見してるよ!

 

「ゆ、結衣さん。あれって……。」

 

隣で同じ光景を見ている小町ちゃんも固まっている。

いろはちゃん、流石にそれはシュールすぎるんじゃないかな……。

 

あ、いろはちゃん気づいたのかな?

めっちゃ後ずさってる。

 

あたしと小町ちゃんは声を揃えて言った。

 

「「…あれは恥ずかしいよ。」」と。

 

 

end





今回もお読みいただきありがとうございました。

女の子視点難しすぎて泣きそうでした。
もう二度とやらないかもしれない。(やらないとは言ってない)

お気付きな点がありましたら言ってください。

ではまた次回


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