蓮は泥より出でて泥に染まらず   作:時雨ちゃん

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遅くなってしまい大変申し訳ありません。
あとなんかいきなりお気に入りが200件を超えて困惑している、どうも作者です。ありがとうございますほんとに。

それでは続きをどうぞ。

あ、最後に茶番があります。読まなくても問題はないです。


第7話

「………。」

 

「………。」

 

………うーん、気不味い。

俺が一色のキッラキラでニコッな笑顔を目撃し、一色が机に突っ伏してからしばらく経ったが未だにこいつは顔を上げない。

俺は男だしあんな経験は無いしでわからないが多分相当恥ずかしいのだろう。

でも他人ならまだしも知り合いの俺なだけマシだとは思うんだが……。あ、そういや店員さんにも見られてたっけ。

 

まぁ何かきっかけがあればこいつも顔を上げるだろうと思ったので俺から声をかけることにした。

 

「…おい一色。何か飲むか。」

 

「………………………………ミルクティー、お願いします。」

 

しばらくの沈黙の後一色はそう答えた。

遅っ!俺頭んなかで勝手に、……Now Loading。って遊んじゃうくらい遅かった。

返事までにすごい間があったから俺無視されたかと思った。良かった。

 

俺は、すいません。と店員さんを呼ぶ。

するとさっきの一色と俺を見ており、一色が入ってきたときに少し笑っていた店員さん(可愛い)がはーい!と返事をして近寄ってきた。

 

「あの、ミルクティー一つ追加お願いします。」

 

「アイスとホットがございますがどちらにいたしましょう。」

 

「一色どっちがいい。」

 

「……………。」

 

「あー……、じゃあホットで。」

 

「かしこまりました。」

 

要件を済ませると店員さんはサッとペンを走らせた伝票を机に置いて去っていった。

その時突っ伏したままの一色をチラ見したのを俺は見逃さなかった。

あぁ、あれはもうあの人友達とか他の店員さんに『今日物凄いカップルのお客がいたの!ww』とか言いふらすんだろうな。あの人明らかにリアル充実型だもん。まずカップルじゃないし。

……いろはす、南無三。

 

さて、今後のためにも一色には立ち直ってもらわなねばなるまい。

 

「い、一色。その……なんだ、気にすんなよ。あれはまぁ仕方ねぇよ。お前も人間だしこういうこともあるって。」

 

「…………。」

 

無言。無反応。スルー。ピクリとも動かない。

うーん、女の子って難しいのね。

 

「それにほら、まだ間近で見られたのが赤の他人じゃなくて俺で良かっただろ。」

 

そう、あんなのを他人に見られてみろ。きっと黒歴史間違いない。

 

「………ぱいだから………しいんですよ……。」

 

お、ちょっとなんか喋ったっぽいが声が小さすぎてよく聞こえなかった。

 

「ほら、なんなら好きなもん奢ってやるから。そろそろ顔あげろって。」

 

「………。」

 

「ふぅ。」

 

また黙った。

あぁーーもう、どうすりゃいいん……お。

 

俺がどうすればいいのかと次の慰めの言葉を考えていると一色はムクッとゆっくり体を起こした。

顔を見てみるとまだ少し恥ずかしいのかちょっとだけ顔が赤い。

 

「……忘れてください。」

 

「………え?」

 

急に起きてしゃべったかと思ったらなにいきなり。

すると一色はこれでもかと顔を近づけて

 

「わ!す!れ!て!く!だ!さ!い!」

 

「ちょっ、え、…は、はい。」

 

あまりの近さと剣幕に体を引き、訳も分からずYesマンになってしまった。しかもちょっといい匂いし……ゴホッ。

これはぼっちの悪い癖ですね。いきなり命令されたりすると勢いのあまり、え。あ、はい!ってなっちゃうやつ。ほんとやめてほしい。

 

ていうかいろはす。もう開き直って、俺には見たことを忘れさせようということなのね。

 

 

すると一色は俺の返答に満足したのか、上に着ていたムートンのダッフルコートを脱いで椅子の背もたれにかけた。

コートを脱いでも一色のファッションはそれはもう一色らしく、しっかりとした可愛らしさの中になにか大人びた雰囲気を感じた。コートもかなりすらっとしたシルエットだった。

タートルネックのセーターに明るい色のミニスカート。顔も少し薄めだが化粧をしている。

今は見えないが確か足は白ストッキングにコートに合わせた素材のブーツだったはずだ。

我ながらよくもまあそんなところまで見ているものだ。一歩間違えれば俺、超気持ち悪い。

 

でもなるほど、よく考えられていると思う。

まぁ、かなり可愛い。

 

これは小町に服選んでもらってなかったらやばかっただろうな……。

『え。せんぱいなんですかそのカッコ。ちょっとマジで隣にというか近くにもいて欲しくないレベルなんでほんともうごめんなさい。』とか余裕で言われてたに違いない。

 

そうこうしているうちに注文していたミルクティーを持ってさっきとは別の店員さん(イケメン)がやってきた。

 

「お待たせいたしました、こちらホットミルクティーでございます。」

 

「あ!ありがとうございますぅ。」

 

うっわ。いろはす早速営業あざとスマイル全開ですか。キラッキラッですね。

さっきの落ち込みようが嘘のようだ。

ほんと、イケメンだからってもう…ぬかりないんだからっ!

おっと、裏声になってしまった。

 

「ごゆっくりどうぞ。」

 

そう言い残してイケメン店員は去っていった。

今度はさっきの店員さんとは違い一色ではなく俺をチラ見してきた。

んだよ。その『え、こんな目の腐ったアホ毛の奴がこの子の彼氏なの?』みたいな目は。

言っときますが彼氏じゃないですからね。

あとアホ毛は仕方ないでしょ?

それにわかってますよ?一色と俺じゃ全然釣り合わないことぐらいは。

プロぼっちたる俺はこんなことでは自惚れのうの字もないですからね。

 

「せんぱい、なんか急に目の腐り具合が増してませんか?」

 

一色はミルクティーをスプーンでかき混ぜながらそんなことを言ってきた。

 

「……そんなことないだろ。俺の目はいつだって死んだ魚みたいな目だし。どんなに櫛でといてもアホ毛ははねるし。」

 

「なんでいきなりアホ毛の話なんですか。せんぱいなんか拗ねてます?」

 

「いや、別に拗ねてないし気にしないでくれ。」

 

クソ。さっきのイケメン店員のせいだ。俺のことあんな目で見るから。

……まあ完全なる自意識過剰ですね。

自意識高い系も考え物だな。

 

「そうですか……。」

 

一色はこれ以上俺の目について触れたくないのか話を打ち切りミルクティーに口をつける。

あ、なんか熱っ!とか言って口離した。

そら熱いだろホットなんだし。

するとスプーンでかき混ぜながらふーふーしている。

……素でやってるんだろうがなんかあざといな。

もう素であざとさが出るとか訓練されすぎだろ。

 

「あ、あとせんぱい、遅れてすいませんでした。私から誘ったのに。」

 

ふーふーしたあと一口ミルクティーを飲みカップを置いた一色は俺に向き直し謝罪してきた。

あぁ、そういや遅れてきたんだったな。

色々あって忘れてたわ。

 

「あぁ、別に気にしてない。むしろちゃんと来てくれてよかったよ。」

 

ほんと、ドッキリとかじゃなくて良かった良かった。

 

「??なにが良かったのかわかりませんが、まぁ、はい、ありがとうございます。」

 

一色は頭に疑問符が浮かんでいるような顔で少しずつミルクティーを飲んでいる。

 

「それはそうと一色、どっか行きたいとかあるのか?」

 

「え、あ、そうですね……。特に考えてなかったです。」

 

マジか。誘ったのお前なのに?

でもまぁ普通は男がこういうのを考えるって聞くしな。

だがそういうのを俺に期待されても困るわけで。

 

「どうすんだ?」

 

「えっと、とりあえずららぽにでも行きますか。」

 

ららぽーとね。うん、まああそこなら本屋とか映画館とかもあるしなんとかなるか。

 

「そうだな。了解。とりあえず冷める前にそれ飲んじまえよ。」

 

「はい。」

 

俺が促すと、もうさほど熱くないのかすぐ飲み干してしまった。

 

「じゃあ行きますか。」

 

「もう行くのか?」

 

「はい、私、遅れちゃいましたし。」

 

そういうもんかと思いながら俺は席を立つ。

一色がコートを着ている間に俺は伝票を持って歩き出す。

途中一色があっ。となにか言いかけたが俺は奢ってやるから気にすんなと言ってレジへ向かった。

 

 

 

 

レジで会計を済ませ一色と外へ出る。レジの店員はあのイケメン店員だった。またあの目してやがった。クソッ。

店内が暖かかったからか余計に寒さが際立つ。

 

「せ、せんぱい。」

 

「ん?どした?」

 

「その……どうですかね。…今日のかっこ。」

 

「え、あ、あぁ、服ね。」

 

一色は寒さからなのか恥ずかしさからなのか、ほんのり顔を上気させ上目遣いでモジモジしながら聞いてくる。

いつもの一色らしからぬ雰囲気に一瞬ドキッとしてしまった。

な、なんだよそれ、恋する乙女みたいで勘違いしちゃうだろうが。

お前には葉山が……。あぁそれはもう違うんだっけか。

 

とにかく、感想を求められてしまった。

小町によるとここはなにか気の利いたことを言えばいいらしいのだが………。

 

「お、おう、似合ってんじゃねぇーか?」

 

この有様である。

小町に聞かれていれば

『は?ゴミぃちゃんなにそれ。まだまだ全然ダメだよ。やり直し。』とか。

 

由比ヶ浜なら

『ヒッキーまじないよねぇー。ヒッキーまじヒッキーだよねぇー。』とか。

 

雪ノ下なら

『あら比企谷君、あなた国語学年三位のくせしてボキャブラリーが貧困すぎやしないかしら。もっと言葉の引き出しを増やしてから出直して来なさい。そうすれば幾分かマシになるはずよ。マイナスからのスタートだけれどね。』とか。

 

なにこれ。脳内再生余裕なんだが。

 

「ふふっ、もー。まぁせんぱいですからね。それぐらいだとは思ってました。」

 

……あれ、なんか許してもらえたようで一色は呆れたように微笑んでいた。

……いっつもそれぐらい素の笑顔ならいいのによ。

 

「さて、じゃあ行きましょうか!」

 

「おう。」

 

「あ、せんぱいの服も、似合ってますよ!」

 

「お、おう、サンキュ。」

 

確か小町に選んでもらったって言っちゃダメなんだったな。

そんなことを考えながら俺と一色は横に並んで駅へと向かい歩き出した。

 

 

これはとある休憩室の一場面である。

 

 

 

「お疲れ様でーす。」

 

「店長ぉ、交代です。」

 

休憩室に休憩時間となった二人の人間が挨拶と共に扉を開け入ってくる。

 

「はーい、お疲れ様。ほい、高城君秋ちゃん休憩終わり。行くよー。そろそろお昼時なんだから。」

 

「えー、もう終わりっすか店長ー。」

 

「もう一服させて下さいよ。」

 

「もう充分一服してたしオセロにも付き合ってあげたでしょ。文句言わない。」

 

この店の店長である人物が休憩室を出た後、高城と呼ばれた青年と秋と呼ばれた女性は渋々といった感じで休憩室を後にした。高城の方はなにやらブツブツと小声で「喫茶店の昼時なんかたかが知れてるでしょう。」などと文句を垂れていた。

 

 

「やっと休憩っすね。」

 

「だねー。」

 

今しがた休憩室へ入ってきた二人は先ほどの三人と入れ替わりで席に座る。

 

休憩室といっても席はパイプ椅子、机はよく学校の会議室等で使われる木の長机が二つあり、端っこには流し台、冷蔵庫があるだけの質素なものだ。

 

机の上には先ほどのメンバーが残していった白が負けたままのオセロ、飲みかけのお茶、灰皿、タバコの箱、ライター、お茶請けのお菓子やらが散乱していた。

 

「また高城のやつ店長に挑んだみたいっすよ。懲りないっすねあいつも。」

 

「関西人だし負けず嫌いなんじゃない?でもほんと店長ボードゲーム最強よね。」

 

「オセロ、囲碁、将棋、チェス、トランプ、どのゲームでも負けたところ見たことないっす。あとなんすかその関西人へのイメージ。他の関西人は完全に風評被害っすよ。」

 

二人は机の上に広げられたままのオセロを見ながら話す。

本来なら盤上を見ただけではどちらの人物が勝ったかなどわかるわけもないのだが、この二人は見ただけで勝敗がわかってしまっている。それほどにこの店では頻繁に行われているのだろう。

 

「昔一回だけバイトの大学生に負けたことあるみたいよ。」

 

「え、まじっすか。いいなー、なんせ店長にボードゲームで勝ったら時給150円アップっすもんね。あ、先輩なんか飲みます?」

 

「ほんと。店長も突飛な事考えるわよね。私オレンジジュース。」

 

「うっす。マジで俺も勝ちたいっすよー。」

 

少年は椅子から立ち上がり歩いていく。

先輩と呼ばれた人物は大人の女性と呼ぶにはいささか若く、少女と呼ぶには少し大人びているような見た目だがかなりの美少女である。

彼女は休憩室の隅に置いてある冷蔵庫を開けている少年に、目撃してからずっと誰かに話したかったある客の話をする。

 

「そういえばさぁいしっちー!」

 

「何ですかぁー。あといしっちはやめてくださいとあれほど。」

 

冷蔵庫を漁っているいしっちとあだ名で呼ばれた少年は自分は何を飲もうか迷いながら返事をした。

 

「あのカップルおもしろかったね!」

 

「あのカップル……?あぁー、あの窓際に居た。」

 

「そうそう!彼女の方がもうそれは可愛くってさぁーー!」

 

彼女が言っているのは彼女達の接客中に店に来ていた目が腐っていた少年と入ってそうそう机に突っ伏した少女のことだろう。

 

「確かにすごく可愛いかったですね。」

 

彼は純粋な外見の話をしていた。

そう、少女の方は超がつくほどの美少女だったのだ。彼女ならばもっといい男性を捕まえられるだろうと彼氏を見て心中で思ったし、10分程度机に伏していたのでよく覚えている。

 

「いしちゃんが言ってるのは見た目の話でしょー。違うんだよ!店の窓鏡代わりにしてたの!しかもそれを目の前の彼氏に見られて顔真っ赤にしてたのよ!んはぁー!あの子なにー!ほしぃー!!妹にしたい!連れて帰りたぁーーい!!!」

 

「ちょっと先輩また!落ち着いてください!向こうに聞こえちゃいますって!ほら、ジュース!あといしちゃんもやめてください!」

 

彼は例のやつが始まってしまった彼女へ持ってきたオレンジジュースを渡す。

 

「おおー、ごめんありがと。」

 

それを受け取った彼女はプルタブを開けて一気にあおった。

 

「ぷはぁーー。」

 

「落ち着きました?」

 

「ふぅー、うん、落ち着いた。」

 

「ほんとにもう、可愛い子見つけたらすぐこれなんすから。店に出てる間我慢できるなら家まで我慢してください。」

 

「それは無理な相談ですなぁ。がんちゃん。」

 

「がんちゃんもダメです。……はぁ。」

 

彼は、まぁいつものことか。と自分を納得させる。あのカップルがまたこの店来たらめんどくさい事になるだろうと彼は自信を持って言えた。

 

「いんやーー!でもほんとに可愛かったなぁー。あの子モデルかなにかなのかな。…いや、モデルにしては胸と身長が……。」

 

「ちょっと先輩、いくらもう居ないとはいえ失礼ですよ。」

 

「また来てくれるかな!来てくれたら話しかけちゃお!ねぇアニキ!」

 

「……聞いちゃいないよ。あともはや誰ですかレベルなんですが。キャラ定まらないっすよ。普通に石田でいいでしょう。」

 

彼は名もわからぬ少年と少女に、先輩がシフトの時には来ちゃダメ!と心の中で祈りながら結局何を飲むか決まらず適当に取ってきたコーラを喉に流し込むのだった。

 

 

 




オリキャラ二度とかかないと今決めました。
むずすぎ。
この子たちは今回限りだと思うので何卒御容赦を。

ではまた次回。
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