※ EP-1の続きになります。
◆◆◆
紗瑠
LP3150
手札4
場:《フェアリー・チア・ガール(ATK-500)》
夜夢
LP2500
手札3
場:《伏せカード*1》
伏せカードを発動するタイミングさえない破壊。その正体は、先輩が発動した1枚の魔法カードだったんです。
先輩はいいました。
「魔法カード《ナイト・ショット》を発動したわ」
「《ナイト・ショット》は相手フィールド上のセットされた魔法・罠カード1枚を、発動の機会を与えずに発動するカードよ」
「じゃ、じゃあ私の伏せカードは」
「問答無用で破壊ね」
「ふぇええっ」
かっ、《神の宣告》がーーーっ!
「紗瑠、慌てるのはまだ早いわよ」
ふぇぇってなってる私に向って、先輩はいいます。
その強気な微笑み、威厳、風格。
幼い私でも、このターン先輩が大きく動いてくるだろうことが、はっきりと伝わりました。
「続けて手札から《アーマード・シャーク》を召喚。さらに魔法カード《浮上》を発動、墓地の《ハリマンボウ》を特殊召喚」
そこへ、とても堅そうな装甲の皮膚と巨大な目を持ったサメと、先ほども登場していたマンボウのモンスターが召喚されます。
「紗瑠。面白いものを見せてあげるわ。私はレベル3、《アーマード・シャーク》と《ハリマンボウ》でオーバーレイ・ネットワークを構築」
先輩は再びエクシーズ召喚を宣言しました。先ほどと同じように、地面に銀河の渦が浮かび上がると、モンスターが取り込まれていきます。
だけど、あの時と違うのは、直後銀河から「47」という数字が浮かび上がったこと。
「え。……これって?」
「エクシーズ召喚、現れなさいNo.47。悪夢という名の底なしの海より、いまこそ業の捌きを下す。浮上なさい、ナイトメア・シャーク」
そして出現したのは、両腕に鋭い刃みたいなヒレを持った、サメの頭をした竜の姿でした。
「これって。ナンバ-ズ!?」
紗瑠が驚くと、
「あら? 紗瑠、ナンバーズを知ってたの?」
うん、私はうなずきました。
デュエルモンスターズというカードゲームには、どうしてなのかは分からないんだけど、魔法みたいに何もない所から出てきちゃうカードがあるんです。
そういった不思議なカードを持ってる人は、フィールっていうみたいなんですけど、立体映像を実体化させたり、本当に魔法使いさんみたいになれるんだって噂されてるんです。
そして、そういった魔法みたいに出てくるカードで有名なうちのひとつが、このナンバーズなんです。
「そう。ナンバーズの噂も有名になったものね、実際に存在するのだから当然だけれど」
ちなみに、一般的にナンバーズみたいなカードは全部都市伝説扱いされてて、名前は知ってても殆どの人は『だれかが勝手に考えたオリジナルカード』って認識だそうです。
「……」
「? どうしたのですか先輩?」
「いえ。……紗瑠にしては驚きが小さかったような気がしただけよ」
「ふぇ?」
そ、そうなのかなぁ?
「まぁいいわ。それよりもナイトメア・シャークのオーバーレイとなった《アーマード・シャーク》の効果発動よ」
先輩はいいました。
「エクシーズ素材の《アーマード・シャーク》を持っている水族・魚族・海竜族エクシーズモンスターの攻撃力・守備力は1000ポイントアップするわ。ナイトメア・シャークの攻撃力は2000、つまり攻撃力は」
説明と同時に、ナイトメア・シャークの前に攻撃力を表示するビジョンが再生されて、
《No.47 ナイトメア・シャーク》 攻撃力2000→3000
「攻撃力3000、これがアニメなら初デュエル恒例の攻撃力3000の壁って所ね」
「先輩……」
なんだかメタメタしいよぉ。
「なんだか凄くメタ発言に突っ込みたそうね」
「っ!?」
「今度は心を読まれた、かしら?」
「っっっ!?」
「どうして分かるのかしらって? そんなの、貴方完全に顔に出てるもの」
「う、嘘……」
「ふふふっ、本当。紗瑠は可愛いわね」
「ふぇぇぇぇっ」
私、先輩にからかわれたぁーーーっ!
「けれど」
心の中で嘆いていると、先輩はそっといいました。
「間違ってはいないのよ。私と紗瑠が再会しての、新たな始まり、私には新たな記念だもの」
先輩……。
返事は、しませんでした。だって、それは独り言みたいでしたから。……独り言に返事されるのって、恥ずかしいですよね?
でも心の中では返事しました。“はい”って。そして、“私にとっても同じです”って。強く、強く心を込めて。
「デュエルを続けるわ。《No.47 ナイトメア・シャーク》の効果、オーバーレイ・ユニットの《ハリマンボウ》を取り除いて効果を発動」
「あっ」
その宣言に、私はついさっき使われたコンボが脳裏に浮かびました。
先輩は《ハリマンボウ》の効果を使いまわしてきたのです。
「ナイトメア・シャークの効果は、自分フィールド上の水属性モンスター1体を選択し、そのモンスターに直接攻撃の効果を与える。もちろん私はナイトメア・シャーク自身を選択して効果を発動したわ」
すると、フィールドに暗い水の映像が出てきて、ナイトメア・シャークは上昇しながらその波に身を隠します。
「そして《ハリマンボウ》の効果ね。以下省略」
《フェアリー・チア・ガール》 攻撃力1400→900
浮かんだ《ハリマンボウ》の幻影は口を開けると。――って、本当にビジョンも効果の演出をスキップしちゃった!?
デュエルディスクにスキップ機能なんてあること初めて知りました。
私、ずっと……。
「――生真面目に全てのビジョン演出をみていた、とか考えてそうね」
また、先輩に心を読まれてしまいました。
「ふぇぇ……。と、とりあえずえっと」
私は何とか話題を誤魔化そうとして、
「せ、先輩。《ハリマンボウ》を使いまわしたのは凄いですけど、またそのためだけにオーバーレイユニットを使って」
「本当に、そう思ったのかしら?」
「え?」
「ナイトメア・シャークで、紗瑠に直接攻撃」
「ふぇっ!?」
攻撃力が900まで下がったチア・ガールに攻撃しないの!?
私が驚いた矢先、水の波はいつの間にか私の背後にまで浮かび上がってて、
(えっ?)
振り向くと、私の至近距離で、ナイトメア・シャークが輪郭だけ浮かび上がらせ、私の腹部に刃を突き立てます。ドスッ!……って。
「――っ、きゃああああ!」
私は思わず叫んじゃいました。だって、まるでお化け屋敷のお化けさんみたいにモンスターが後ろにいて、ビジョンだけど私を突き刺す映像と、それと血飛沫まで。
「しゃ、紗瑠!?」
慌てて先輩が叫びます。どうしてか、少しだけお顔を青くしながら。
「ふぇ?……ご、ごめんなさい先輩」
私は慌てて返しました。ただの立体映像なのに、それも初めてなわけじゃないのにあんな反応。……すっごく恥ずかしいです。
「紗瑠? さっき、何かあったの?」
「え?」
私は、先輩の言葉にきょとんとします。
「え、えっと。ナイトメアシャークの登場の仕方にびっくりして」
「本当にそれだけなのね?」
「う、うん」
「そう、ならいいけれど。カードをセット、ターンを終了するわ」
先輩は凄く心配そうにいいました。
一体、どうしちゃったんでしょうか?
紗瑠 LP3800→800
「私のターンですっ」
先輩を心配させないよう、私は必死の笑顔でいいます。
だけど、ゲーム上での私は重傷。LPが一気に800になって、これ以上攻撃を耐えるのが難しくなっちゃいました。
デッキに指を置きます。少しだけ、目を閉じて、次のドローに願いを込めて。
そして、
「ドロー」
カードを引きました。
すると。
「ふぇっ?」
「えっ?」
私たちは同時に驚きます。だって、ドローしたカードと私の手が光ってたのですから。
私は、「えっえっえっ?」ってなりながらカードを確認します。
すると。
(《RUM-七皇の剣》?)
光輝くカードは、一瞬だけ見たこともないカードを映し出し、そして。――光が消えたと同時に、それは《死者転生》になっていました。
(なにが、おこったの?)
たしかに《死者転生》はこのデッキに投入しているカードです。でも、だけど、どうして?
「紗瑠……」
「せん、ぱい?」
「いいえ、なんでもないわ」
呆然とした様子の先輩。たぶん、さっきの光のせいだと思います。
「デュエルを、続けましょう」
けど、何か聞くことなく先輩はいいました。ただ、先輩はさっき私が叫んじゃった辺りから何だか様子がおかしいように見えます。
本当に、どうしちゃったのかな? そんな先輩に不安になりながら、私はそんな気分を紛らわそうと一回深呼吸をして、他の手札と照らせ合わせました。
(あ)
この手札、もしかしたらあのカードを出せるかも!
「先輩!」
私は先輩に向けて、精一杯想いを込めていいました。
「いまから、私の切り札を召喚します」
「紗瑠の切り札?」
「はい」
私が大きく返事をすると、先輩は、
「ふふっ、なら見せて頂戴。いまの紗瑠の切り札を」
って。やっと、少しだけ笑顔を取り戻してくれました。
私は、カードを1枚ディスクに読み込ませます。
「いきます。私は手札から《死者転生》を発動。手札の《大天使クリスティア》を捨てて、墓地の《光天使ブックス》を手札に加えます」
《大天使クリスティア》は私の切り札のひとつですけど、いまは召喚できそうにないので仕方ありません。
「そして、私は《光天使ウィングス》を召喚します」
さらにモンスターカードを1枚、ディスクに読み込ませると、フィールド上に鳥のような姿をした天使族モンスターが、空の上から舞い降ります。
「そして、ウィングスの効果発動。このカードが召喚に成功した時、手札の光天使モンスター1体を特殊召喚する事ができます」
言いながら、私は続けてカードをディスクに読み込ませて、
「いきます。《光天使ブックス》!」
2体のモンスターは共にレベル4。
「クリスティアを捨ててまで手札に加えたモンスターね」
「さらに、ブックスの効果発動です。手札から魔法カード《神の居城-ヴァルハラ》を墓地に送ることで、手札から《光天使ソード》を特殊召喚」
そして最後に現れたソードもレベル4モンスターです。
「レベル4モンスターが3体……。ついにきたわね。光天使が一番得意なレベル4×3のエクシーズ」
先輩のフィールドには攻撃力3000のモンスター、その上あの噂のナンバーズ。
だったら私も、あのカードを出さないと。……って思ったんです。
私のナンバーズを。
「いきます、先輩! 私はレベル4の光天使ウィングス、ブックス、ソードをオーバーレイ! 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築します」
3体のモンスターは光に変わって、今回は上空に現われた銀河に吸い込まれて、地上に一本の光の柱を落とします。
そこから最初に浮かび上がったのは、No.102の数字。
すると、さっきまで微笑んでいた先輩の顔が、みるみる内に目を見開き驚いたものに変わっていきます。
「な、No、ひゃ……え!?」
その驚きの意図も分からず、私は嬉しげに前々から用意していた口上をいいました。
「エクシーズ召喚、お願いNo.102! 紗瑠の想い
数字に続いて姿を現したのは、弓を掲げた金色の人型天使。
「紗瑠! どうして、どうして貴方がこのカードを持ってるのよ」
だけど先輩は、モンスターそのものに視線を向けないで、私の口上も聞いてなかったみたいにいきなり声を荒げます。
「えっ?」
それはあまりに予想外で、そして初めてみるかもしれない程にヒステリックな姿でした。
「えっと、ある日突然、私の手元に浮かび上がって、えっと」
軽くパニックになりながら説明すると、何故か先輩は疑うようにじっと紗瑠を凝らし見て、
「そう」
と、視線を落とします。どうしたのでしょうか? 私は、ちょっとどころじゃなく心配になります。
「もしかして、私の手に入れ方おかしかったのですか?」
本当は販売側がこっそり流通させてる説が真実で、本当に魔法みたく出てきた私のカードはおかしい、とか。
「いえ、手に入れ方をいえば、私のナイトメア・シャークも同じよ」
だけど、先輩が声を荒げた原因はそこじゃないみたいで。
「それじゃあ……」
「後で話すわ」
そう伝えてきた先輩からは、何やら張り詰めたようなものを覚えました。
そういえば先輩の様子がおかしくなったのも、私がナイトメア・シャークに攻撃された時でした。なにかあるのでしょうか? ナンバーズに、本当にフィールっていう魔法みたいな力が。
「デュエルを、続けましょう」
先輩はいいます。
「は……。はい」
僅かな間のあと、私はいいました。
「とりあえず、私は《フェアリー・チア・ガール》を守備表示にします。
ディスクに置かれているモンスターカードを横向きにすると、ビジョンに映るモンスターがその場で膝をついて待機の姿勢をみせました。
すると直後、地面から巨大鮫が現れて私のモンスターたちに喰らいついたのです。
「ふぇ!?」
気付くと、先輩の伏せてあった2枚のカードのうち1枚がオープされてました。
「罠カード《メガロドンの大顎》を発動。このカードは相手モンスターが攻撃表示から守備表示になった時に、相手モンスターを全て破壊して、破壊できたモンスターの数×700ダメージを与えるカードよ」
「攻撃表示から守備表示に、そんなカードを。……あっ」
ここで私はひとつの可能性に辿りつきます。
もしかして、《ハリマンボウ》の効果を2回も使ったり、わざわざナイトメア・シャークでチア・ガールを破壊せず直接攻撃したのって、私にチアガールを守備表示にさせて、あの罠カードのバーン効果で私のライフを0にする為?
私は、慌ててグローリアス・ヘイローのエクシーズ素材を全て取り除きます。
「《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》のモンスター効果です。このカードは破壊される場合に、代わりにこのカードのオーバーレイ・ユニットを全て取り除く事ができます」
グローリアス・ヘイローは咄嗟に遥か上空へ飛び上がることで、なんとか巨大なサメの一口から逃れることができました。
「そして、この効果を適用したターン、私が受ける戦闘ダメージは半分になります」
「けど、《メガロドンの大顎》で《フェアリー・チア・ガール》は破壊され、このバーンは効果ダメージだから半減はされないわ」
すごくピリピリした、余裕のない声で先輩はいいました。
紗瑠 LP800→100
「……」
なんだか、先輩が少し怖いです。
私は、少しだけおどおどとしちゃいながら墓地のカードを1枚抜き取り、読み込み治します。
「えっと、墓地から《ホーリー・レイジ》の効果を発動します」
《ホーリー・レイジ》は私の最初のターンにブックスの効果で墓地に送ったカードです。
「このカードは、墓地から除外することで私のモンスター1体の攻撃力を2000ポイントアップさせます。代わり、そのモンスターが相手ライフに与えるダメージは自分も受けるんですけど」
「グローリアス・ヘイローの効果で自分のダメージは半分になる、というコンボね」
「は、はい……」
私は、先輩の様子をうかがいながらカードを除外。すると、グローリアス・ヘイローの体中から荒々しく光が走り出します。
《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》 攻撃力2500→4500
「そしてグローリアス・ヘイローでナイトメア・シャークに攻撃します。ライトニング・クラスター!」
グローリアス・ヘイローはその場で一筋の光を創造すると、それを真ん中で握って双矛の槍にしてナイトメア・シャークに斬りかかります、
直後、先輩はいいました。
「罠カード、発動」
その言葉によってもう1枚の裏側カードが表向きになります。
それは、先輩が最初のターンからずっと伏せていたカードでした。
先輩は、淡々といいます。
「罠カードは《ポセイドン・ウェーブ》。この効果によって、紗瑠のナンバーズの攻撃を無効にするわ」
直後、ナイトメア・シャークの背後から巨大な波が押し寄せ、グローリアス・ヘイローは攻撃を中断します。
それだけではありません。波はそのままナイトメア・シャークを飲み込みながら私の下まで押し寄せてきて、
「さらに、私のフィールド上に魚族・海竜族・水族モンスターが表側表示で存在する場合、その数×800ポイントダメージを相手ライフに与えるわ」
と、先輩の説明が終わったとき、ナイトメア・シャークのヒレは、再び私の腹部へと突き立てられていました。
「私のフィールドには海竜族モンスター。ナイトメア・シャークが1体。よって800ポイントのダメージを紗瑠に与えるわ」
デュエルモンスターズというゲームは、自分のライフポイントが0になった時、負けになります。
私の残りライフは僅か100、そしていまから受けるダメージは800、防ぐ手段はありません。
私の負けが確定した瞬間でした。
◆4◆
「あ……」
こういうことって、ありますよね?
頭では状況を理解したのに、どこか認識しきれてないっていう感覚って。
「紗瑠? どうしたの、デュエルは終わったわよ」
「ふぇ?……あ」
「しっかりなさい。そんなに私に負けたのが信じられなかったの?」
ち、違うんです。私は小さく首を振り、先輩の様子をうかがうと、
「そこまで必死に否定しなくてもいいわよ」
「ふぇ?」
「また顔に出てたわよ、今度は『そこまで思い上がってない』かしら?」
「せん、ぱい……」
やっぱり先輩はすごいです。久しぶりに会ったのに、紗瑠のこと、いつでも何でもわかってくれる。
私は、正直に感じたものを伝えることにします。
「……本当は」
「本当は?」
「負けたのが信じられなかったわけじゃないんです。ただ、まるで先輩、デュエルを早く切り上げたみたいで」
紗瑠はいいました。すると、
「すごいわね、紗瑠」
「へ?」
「久しぶりに会ったのに、私のことそんなに分かるのね」
「ふえぇっ」
その反応が信じられず、私はつい驚いてしまいました。
「紗瑠のいう通り、私はデュエルを早く切り上げたわ。理由は、察っしてるかしら?」
「もしかして。私のナンバーズ、ですか?」
「正解」
「どうして、なのかはわかりませんけど。……でも、なんとなく先輩は凄く思い悩んでるって、そんな気はしました」
「そう」
先輩はどこか安心したような、そんな表情でつぶやきます。
「ところで」
先輩はいいました。
「このデュエルのルールは覚えてるわよね?」
「えっと、負けたら、罰で勝者の願いをひとつだけ聞くこと。ですよね?」
「ええ」
先輩の表情は、いまから願いをいう側とは思えない、どこか哀しげなものでした。
「紗瑠」
先輩はいいました。
「貴方は今後、私が『いい』っていうまで、グローリアス・ヘイローの使用を禁止するわ」
「……え」
って、私は返しちゃったけど。なんとなく予想できたことでした。
「そもそも、ナンバーズを持ってる事自体、誰にも口外せず隠しなさい。もしばれてしまっても、番号は99以下ということになさい」
そういえば。
都市伝説で語られているナンバーズは、確か全部で1~100の番号だけだったんです。私が102を持っちゃったから、てっきり噂のほうが間違いなんだと思ってたけど。
「100以上のナンバーズは、ナンバーズの中でも特殊なのよ」
と、先輩はいいます。
「貴方にこんな事を言うのは酷だけど、これから安全に人生を歩みたかったら、100以上の存在は絶対に隠し通しなさい。いいわね」
「ふぇ!?」
な、ナンバーズって、そんなに危険なものなんですか?
「それでも、どうしてもナンバーズを使わないといけなかったら、No.99以下をお使いなさい」
先輩は、デッキホルダーからカードを1枚抜き取って、はいと渡してきます。
「先輩、これって。……えっ!?」
それはナンバーズでした。番号が99以下の。
「緊急用のお護りよ。気軽に使って欲しくないから、あえて相当弱いカードを選んだけれど」
「先輩、ナイトメア・シャーク以外にも持ってるんですか? ナンバーズ」
「深く追求はしないほうがいいわ。それよりも、これからはこのカードが貴方が所有する唯一のナンバーズよ、いいわね?」
私は、
「はい」
と、言うしかありませんでした。
「以上よ。家まで送るわ、紗瑠」
そう切り上げて、背を向けて歩きかける先輩。そこへ、私はいいました。
「あの、先輩。……本当はどんな願いを言うはずだったんですか?」
「え?」
先輩は振り返ります。
「だって、さっきの願いは私が102のナンバーズを持ってるって分かっちゃったから言った事ですよね? じゃあ、私に賭けデュエルしようとした時には、別の願いがあったんじゃないかなって?」
「紗瑠。……ええ、あったわ。けれど、そう大した事じゃないもの。貴方は気にしなくてもいいわ」
どうしてか、先輩は気まずそうに視線をそらします。
「いいですよ」
私は、真っ直ぐそんな先輩を見上げていいます。
「もうひとつ、お願い聞いちゃっても」
「紗瑠?」
「だって、さっきの願いは、さっきの願いを言う事になったのは私のせいだから。だから、先輩の本当の願いも、ちゃんと叶えてあげたいです」
先輩は考え込みます。
それは、10秒だったか20秒だったか。ほんの少しだけ長くて。
そんな末に先輩はいいました。
「わかったわ。紗瑠」
今度は、先輩もちゃんと私に向き合って。
「はい、先輩」
私は笑顔で返しました。
すると先輩、私の頬をそっと、やさしく撫でてくれます。
「紗瑠。……少しだけ目を閉じてくれるかしら?」
「? は、はい」
言われた通り、私は目を閉じます。
するとふと、私は思い出したような気がしました。初めて会った時の、賭けデュエルで負けた時のことを。
そういえばあの時も、私は先輩にいわれて目を。
なんて思い出した束の間、何となくだけど、先輩の顔が、吐息が、ゆっくりと近づいてくる気がしました。
それも『あの時』と同じで。目を閉じているせいでしょうか、私は当時といまが混濁しながら、少しずつ頭の中で記憶が駆け巡ります。
確かその後、頬を撫でる手が両手になって、そして。
――ハッ、と。完全に思い出したとき、『それ』はすでに起こっていました。
唇で感じる、先輩のあたたかい温もり。
目を閉じてもわかる、先輩の吐息。
そう。
――私は、先輩にキスをされていました。
使用オリカ
アーマード・シャーク
効果モンスター
星3/水属性/魚族/攻1100/守1200
①:メインフェイズ時、手札・自分フィールド上のこのカードを、自分フィールド上の水族・魚族・海竜族エクシーズモンスターの下に重ねてX素材にできる。
②:このカードをX素材としている水族・魚族・海竜族Xモンスターおよび「ブラック・レイ・ランサー」Xモンスターの攻撃力・守備力は1000ポイントアップする。
(元ネタ:ヨロイザメ)
メガロドンの大顎
通常罠
①:相手がモンスターを攻撃表示から守備表示に変更した場合に発動できる。
相手フィールド上のモンスターを全て破壊し、その効果で破壊したモンスターの数×700ポイントダメージを相手に与える。
次回はEP-3およびEP-4の同時アップになります。