遊☆戯☆王GERICHT   作:CODE:K

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EP-6:Welt ohne Gnade

 

 

 ◆◆◆

 

 

「紗瑠ー。こっちこっち」

 休日、私は近場の駅に来てました。

 私は呼ばれた方角に振り返って、ふたりを見つけると小走りで向います。

「苺ちゃん、シムーンちゃん、おはよう」

 私は嬉しさに飛びつくように……飛びつい、ちゃうのを我慢して直前でストップ。

 かわりに満面の笑顔をふたりに向けます。

「おはよう、紗瑠」

「紗瑠……おはよう」

 この日、私たち三人は電車で街に出ることになりました。

 目的地は……たぶん、カードショップも出展してるショッピングモール、なのかなぁ? 実はどの駅で降りるか以外計画してなくって。どちらかというとシムーンちゃんに色々な所を案内するのがメインです。

「……犬ね。あんなに尻尾をパタパタ振っちゃって」

「ううん。リスでもある、よ? きょろきょろしてて」

 何か話してる途中だったのでしょうか? 私は首をかしげて、

「ふたりとも、何の話?」

 すると、苺ちゃんとシムーンちゃんは口を揃えて、

『何って紗瑠のことに決まってるじゃない(よ)』

 早速、私動物扱いされちゃってました。

「わ、私そんなにワンちゃんみたいだったり、リスさんみたいかなぁ?」

『寧ろ動物そのもの(断定)(かっこだんてい)

 しかも人間扱いなのか疑わしいです!

「紗瑠ってば首輪とか似合いそうよねぇ?」

「両手を使うの禁止して、ミルクをお皿で飲ませてみる?」

「いいわね! 今度学校でやってみない?」

「私、尻尾のア○ルプラグ……あるよ?」

「わ、私ふたりのペットじゃないよぉおおおおお」

『え?』

「驚かないでぇええええ!!!」

 集合から一分未満。私は早速こんな扱いです。

 ところで、始業式に服装で一騒動を起こしたシムーンちゃんですけど、本当にあの一件で学んでくれたみたいで、以後学校にランジェリー姿でくることはなくなりました。

 基本的に孤児たち共同で使われてる洋服らしくって、今日もそうなんですけど。

「シムーンちゃん、その頭のスカーフ」

「……これ?」

「うん、すっごく似合ってる」

 今日のシムーンちゃんはヘッドスカーフを巻いてきてました。サウジアラビアとかあの辺りの女性が頭を覆ってる布(ヒジャブっていうんだそうです)を着崩したような感じです。

 というのも。

「ま、シムーンなら当然よね? 確か生粋のイスラム教徒のアラブ人でしょ?」

 苺ちゃんがいいました。シムーンちゃんはうなずきます。

 ちなみにこの情報を知ってるのは、私と苺ちゃん、担任の先生に、あとは旗枷くんくらいです。えへへ、友達の「秘密」を私たちだけが知ってるって、なんだか嬉しいよね?

 でも、それにしてはお酒が大好きで……あと実は豚肉も好きみたいで、おまけに露出に抵抗がなくって、シムーンちゃんは知れば知るほど不思議な子って感じが強くなっちゃいます。

「そういえば紗瑠。……その服」

 今度は、シムーンちゃんが私をまじまじと眺めてきました。

「この服? えへへ、この前買ってもらったおニューなんだけど、似合って……ない、かなぁ?」

 マネキン人形さんが着てたときは、すっごく可愛かったんだけどなぁ、このフリルのキャミソール。

 シムーンちゃんがいいました。

「この服、娼婦が着る服か、始業式の私と同じ……ランジェリー、だよ?」

「ふぇ!?」

 私はつい声が裏返っちゃいました。この服、下着フロアのものじゃなかったと思うけど。

「で、でも娼婦さんって人は着てるんだよね? 娼婦さんってどんな人か分からないけど」

「風俗嬢とか売春婦のことよ」

 って、苺ちゃんが横からいいました。

「ふえっ!?……え、えっ?」

 詳しい意味は知らないけど、なんだかエッチな言葉なのだけは分かって、私はかあっと顔を赤くします。

 すると、苺ちゃんはニタッてなって、シムーンちゃんも殆ど無表情だけど口元がほんの僅かにつりあがります。

 これは弄られ――

「援助交際のプロみたいな人よ。男の人にエッチなサービスをしてお金を稼ぐってやつ。シムーン、詳細お願い」

「うん。……結論からいうと、S○Xして男の×××を満足させること。中には牝○扱いされたり、××隷として扱わ――」

「やめてぇぇぇぇえええええええ」

 こ、こんなの予測可能回避不可能だよぉ。

「ちょっとシムーン。さすがにちょっと解説しすぎよ」

 ここで、まさかまさかの苺ちゃんがストップをかけます。よかったあ、やっぱり苺ちゃんは私の味か――。

「紗瑠はピュアで赤剥けしないほうが需要あるんだから、あまり教えすぎると後がつまらないじゃない」

「生かさず殺さず?……うん、納得」

「納得しないでぇえええええええええええええ」

 前言撤回、やっぱりこのふたり酷いよぉ。

「ふぇぇ、でも。……そんなこと聞いちゃったら、この格好で出歩くの恥ずかしいよぉ」

 私は手で体を隠します。すると苺ちゃんは、

「まあ、キャミ1枚が娼婦の格好ってのは日本以外の話だしね。私たちの年齢なら全然OKでしょ」

「本当? 苺ちゃん」

「まあ、この歳でもう股が緩いJSギャルって取られても知らないけど」

「私、すぐ上着買ってくるよぅ」

 だって、意味は分からないけど意図は分かっちゃったもん。私は近くに服を売ってそうなお店がないか目できょろきょろと探します。

 このとき、私は目よりも足を動かすべきでした。

「紗瑠。……駄目」

 直後シムーンちゃんが腕を組んできました。すると苺ちゃんも反対側の腕を掴んで、

「逃がすわけないじゃない。突発企画、ギャル服純真少女紗瑠、悲劇の電車羞恥プレイ! レッツゴー♪」

「うん。……ごー」

「やめてぇええええええ」

 こうして私は、駅の奥、そして電車まで強制連行されてしまいました。

 

 私たちが乗った電車はラッシュという程じゃないけど凄く込んでて、席に座るどころか押し競饅頭にならない程度に密集してました。

 私の後ろにはスーツを着た小太りのおじさんが立っています。背は私より頭ひとつ分くらい高くて、下を向けば胸元の内側覗けちゃうんじゃないかなって不安になります。電車に乗って数分、早くもキャミソールがエッチな服って意味、わかった気がしました。

「いち……タッちゃぁん」

 私は、少し涙目で苺ちゃんに助けを求めます。タッちゃんというのは素性を隠すために苺ちゃん自身が考えたカモフラージュで、高村苺(たかむらいちご)だからタッちゃんです。

 ちなみに、今日の苺ちゃんはカジュアルなパンツスタイル。変装も兼ねた帽子とサングラスが凄くかっこいいんです。

「タッちゃんはね。紗瑠弄りが好きなんだホントはね♪」

 そんな苺ちゃんから返ってきたのは、酷い替え歌でした。

「……本名で呼ぶよ?」

 さすがに今回は私にも分があるので言い返します。すると苺ちゃん。

「大丈夫よ、ピュアな紗瑠を視姦してるってわかったら即キンタマニーキック、痴漢したら問答無用で警察に突き出すから」

 って、小声でいいます。

 すると途端、後ろのおじさんは他の乗客に一言謝って別の車両へ行ってしまいました。

 私は、ちょっと顔を青くします。

「も……もしかして私」

 けど苺ちゃんは逆におじさんに哀れみの視線を向けるように、

「いやアレは冤罪怖くて逃げた臆病者の顔よ」

「冤罪?」

「そ、例えばさっきの場面。紗瑠がおじさんの腕掴んで『痴漢しました』って言えば、例え嘘でもおじさんは職場と家族の信用が-100になった上に紗瑠に賠償金を払う羽目になるってワケ」

「ふぇ!?……で、でも。嘘だったら警察にばれるよ?」

「それがばれないのよね。アレって証言と状況以外に証拠がないから、冤罪側が何を言っても証明するものがないのよ」

「そんなぁ」

「それに、逆に本当に痴漢にあって警察呼んでも私たちが疑われたらどう思う?」

「そ、それは」

 すごく哀しいのと、嫌だよぉ。

「そういうことよ。だから警察も周囲も基本訴えた側の味方。おかげで痴漢冤罪は九割九分有罪って聞いたことあるわ」

「……ふぇ」

 なんだか、すっごく哀しくなってきます。

 そんな時でした。

 苺ちゃんの反対側に立ってるシムーンちゃんが、つんつんって私を突いてきたんです。

「どうしたの?」

 私は、小声でいい耳を傾けます。

 すると、シムーンちゃんはいいました。

「紗瑠? こっそり私の後ろの人、顔覚えて?……いま私、痴漢されてるから」

 なんて言葉を、淡々と、無表情のまま。

「ふぇええええええっ!?」

 一方私は、思わず叫んじゃって。

「あ、逃げた」

 シムーンちゃんがいいました。

「ふぇっ?」

 私は慌てて確認しますけど、もうシムーンちゃんの後ろには誰かが逃げたと思える不自然な空き空間が奥まで続いていて。

「ご、ごめんなさい」

 私はシムーンちゃんに謝ります。

「大丈夫。私はこの程度なら、慣れてるから。ただ……ぎょっとした痴漢のおじさんの顔、見れなくて残念」

 シムーンちゃんは、殆ど表情に出てないけど本当に残念そうにしてました。

「シムーンちゃんって、本当に人生を全力で愉しんでるね、斜め横に」

 私は一周まわって隣の新しい親友に尊敬を覚えちゃいそうです。

「ふふ~ん」

 そこへ苺ちゃんがにやけ顔でいいます。

「私は完璧に痴漢犯の顔を覚えたわよ。シムーン、そいつの顔見かけたら教えてあげるから煮るなり焼くなりしちゃって」

「……うん」

 シムーンちゃんはこくりと頷きます。

 このふたり、タッグを組むと怖すぎるよぉ。

「ただ、ね」

 苺ちゃんはいいました。

「なんか変だったのよ。その痴漢、紗瑠が叫んだ直後にパッと消えたのよ。まるで瞬間移動したみたいに」

「え、そうなの?」

 私は驚きながら、

「でも、シムーンちゃんの後ろ、誰かが逃げた跡みたいな空洞ができてたよ?」

「そこが余計に不自然じゃない。ふつーこんだけ混んでたら、その空洞だって一瞬で元に戻るわよ」

「あ」

 そっか。

「まるで、時間を止めて逃げたみたいな感じよねぇ」

 それはさすがに無いとは思うけど、でも苺ちゃんの言いたいことはすっごく分かります。本当にそんな感じだったんだもん。

「でも、どうしてシムーンちゃんだったのかなあ?」

 私はふと思いました。服装も流行的で明らかに魅力ある苺ちゃんでも、あまり言いたくないけどトロくて痴漢されたら何もいえなそうな私でもなく。

「たぶん、紗瑠のその服装のせいじゃない?」

 苺ちゃんはいいました。

「いま紗瑠は露出が高めだもん。キャラ間違われたんでしょ」

「そ、そうなの……かなぁ?」

 でも、もしそれが本当なら思わぬ役得だったのかもしれません。

 

『――次は、名小屋。名小屋』

 

「と、シムーン、紗瑠。ついたみたいよ」

 苺ちゃんがいいました。

 目的地についた私たちは電車を降り、改札口を通って外に出ます。

 そして、名小屋から広がる光景は、私たちの住む下町のような田舎のような微妙な場所とはかけ離れた都会の姿。

「……すごい、ね」

 シムーンちゃんが思わずつぶやきます。

「でしょ」

 苺ちゃんがいいました。

「T○kyoと比べたら月とすっぽんだけど、日本の都会のひとつだし、この辺の施設は覚えておいて損はないわよ」

「……うん、ありがとう、苺」

 密かに感動している様子のシムーンちゃんの横で、実は私も「わあっ」ってなってたりします。

 じ、実は私。あまり近所の外に出ることってなくって。あっても両親と車でって程度。

 そんな時でした。

「み~ぃ~つ~け~た~ぜぇ~」

 後ろから、男の人の声が聞こえてきたんです。

 私たちは後ろを振り返ります。そこには30~40代くらいの頬の削げた男性が異様な眼差しで私たちを見てたんです。

「あ、さっきの痴漢じゃない」

 苺ちゃんがいいました。

「げっへっへ、そうよぉ~貴様らのせいでサツに捕まりかけた痴漢ちゃんだあ」

「ふぇっ」

 私は思わず苺ちゃんの後ろに隠れました。だって、明らかにこの人……変。

「……捕まりかけた、って。そのサツから逃げてきたっていうの?」

 苺ちゃんが、顔を強張らせます。

 それに気付いて、私はさらに恐怖を覚えました。だって、普段怖いもの知らずな苺ちゃんが僅かでも怯えをみせる。それは本当に危険っていう証拠なんですから。

「苺、ちゃん」

「紗瑠は隠れてて。……アイツ変よ、体鍛えてるわけでもなさそうなのに警察を相手にしてここまできたって」

「凶器?」

 シムーンちゃんが呟きます。ですけど、痴漢さんは指をチッチッと振って、

「違うなあ。俺様のはもっともっと凄いやつだ。ほらあ!」

 痴漢のおじさんはいうと、懐から1枚のカードを取り出します。

 すると、カシャッていう音が聞こえて、カードから透明の波みたいなのが広がったと思ったら。

 ――気付けば、私はおじさんにデュエルディスクを装着させられる最中でした。

「ふ、ふえ!?」

 私は突然のことに目をまん丸にします。

「フィールだよお」

 おじさんは、ニタァっと笑いながらいいました。

「知ってるぅ? ある特別なカードを手に入れると、そのカードが持ってるフィールって力を手に入れるってことぉ? 普通の人は使い方も知らないから宝の持ち腐れだけどぉ、おじさんはねぇ……ほ、らあ」

 再びおじさんはカードからカシャって音をだし。――たと思ったら、すでにおじさんは私から離れてデュエルディスクを装着していたんです。

「『写真を撮ると魂を吸い取られる』って都市伝説を聞いたことがある? おぢさんが持ってる特別なカードはカメラでねぇ。ほんの数秒だけ君たちの体から魂……つまり意識を飛ばしてあげたのさあ」

 い、意識を……飛ばす?

 私はききました。

「もしかして、それで警察さんも」

「そう、意識を飛ばし逃げたのさあ。顔を見られる前にねぇ」

 ねちっこい言葉遣いでにやにやと説明するおじさん。怖いよぉ。

 そこへ、

「――え!? これって」

 シムーンちゃんが小さな驚きをみせます。意外にもいまの状況を分かってない、って顔をして。

 もしかして。私よりも長い間、意識が飛んでたの?

「へえ、スカーフの嬢ちゃんはサングラスの子よりも強いフィールを持ってるんだねえ」

 おじさんの言葉に私はハッとなりました。

「苺ちゃん、苺ちゃん!?」

「無駄だねぇ」

 おじさんはいいます。

「そこのサングラスの嬢ちゃんは、君たちの中で一番フィールを持ってないみたいだ。意識が戻るまでもぉ少し掛かるよぉ」

 おじさんの言う通り、苺ちゃんは立ったまま、私たちの言葉に反応ひとつ見せません。

「……お願い、クイラ」

 シムーンちゃんがつぶやきます。すると、私もよく知る《月影龍クイラ》のビジョンがデュエルディスクもつけてないのに現われて、おじさん向けて青白いブレスを吐き出します。

「へえ、これが嬢ちゃんが持ってるフィール源かあ。……けど」

 すると、今度はおじさんの傍にもカメラの形をしたモンスターが出現し、クイラのブレスを受け止めて耐えます。

「フィールを持っている者同士なら、よっぽどフィールに差がないと能力者リアルファイトは不可能だよぉ。……し、か、も」

 再び、今度はおじさんのモンスターからカシャって音が聞こえて。

 気付くとカメラは、私に向けてレンズからビームを発射してて、シムーンちゃんのクイラが私の盾になってたんです。

 おじさんはいいます。

「フィールのない友達と、フィールの使い方を知らないお友達がいるのに護りきれるかなぁ?」

「紗瑠。……ごめん、ね。護りきれない」

 シムーンちゃんはどことなく辛そうにいいました。

 フィールっていうのは、噂では立体映像を実体化させたり、まるで魔法みたいなことができるらしくって、普通のカードとは違う特別なカードを持ってると使えるようになるそうです。

 ですけど、私はNo.102を持ってるけどそんな力使えないから、てっきり噂だけだと思ってたんですけど。

「目的……聞いてもいい?」

 シムーンちゃんが、クイラで私を護りながら訊ねます。すると、おじさんは私たちを舐めまわすように見ながら、

「ホントーは魂抜けてる間に君たちを誘拐して[ピー]に励もうと思ったんだけど、どうやら君たちはフィールを持ってるみたいだからねぇ、特に嬢ちゃんがモンスターで護ってるその子」

「え? そ、それって、私?」

 しかも堂々と誘拐って!?

 気付けば、おじさんはさっきから相当危険な言動を沢山取ってるのに、周囲は誰ひとり反応しないんです。

 私は横目で辺りを見回します。予想通り、苺ちゃんだけじゃなくて周りの人間は全員意識が飛んでるみたいでした。

 私は更なる恐怖で足がガタガタしてきました。

「そう。君は下手すればおぢさんよりも高い、すんごいフィールを持ってるみたいだからね。先にデュエルで貰っちゃおうと思ったわけだよ」

「ふぇ、デュ……デュエルで?」

 私は思いました。人の意識を飛ばせるなら、どうして強奪しないのって。

「残念だけど、フィールを保有したカードはデュエルのアンティか本人の意思じゃないと受け取れないみたいなんだよぉ、過去にもおじさんのカードを取ろうとした人いたから検証済」

 だ、そうです。……え、それって、あれ?

「て……ことは、ももっ、もしかして」

 私、いまからおじさんとデュエルするの? させられちゃうの?

 するとおじさんは、舐めるようにニタァっと笑い、

「嬢ちゃん名前は?」

「しゃ、紗瑠です」

 あっ!? 思わず名乗っちゃった。

「紗瑠ちゃんかぁ。可愛い名前だねえ。……さあ、デュエルしようか? 大丈夫。負けたらしばらく意識飛んで貰って、あとで夜のライディングデュエルを教えてあげるから」

 すると私のディスクは勝手に電源がONになって、おじさんのディスクを対戦相手と認識してデュエルモードに入ってしまいます。普通は、主電源がオフならそんなことないのに。

「ふ、ふぇええええええええええええ」

 だ……誰か助けてぇ。

 私は逃げました。おじさんに後ろを向いて、必死に、全力で。

 ですけど、すぐ私の足は進まなくなったんです。

 というよりも、ちょっと走った先に見えない壁があるみたいで、ぶつかる感覚は全くないんですけど、進めないんです。

「ど、どうして」

「紗瑠」

 シムーンちゃんがいいました。

「フィールを用いたデュエルは逃げられない。戦うしかない、よ?」

 そ、そんなぁ。

 私はうるうるとシムーンちゃんに助けを請うけど、

「ごめん、ね。……乱入したい、けど。もう参加人数は決定してるみたい」

 って、シムーンちゃんは首を横に振ります。

「そうそう早く観念しておぢさんとデュエルしようよ。だぁ~いじょうぶ、負けたらとってもキモチイイよ?」

「ふぇぇぇぇぇ」

 駄目ぇ、やっぱりこのおじさん生理的に怖いよぉ。

 そこへシムーンちゃんは続けていいます。

「だから紗瑠。……せめて、聞いて」

「な、なに?」

「フィールの能力は、カードが知ってるよ? 心の中でカードに問いかけて、出し方を覚えて?」

 シムーンちゃんの言ったことはあまりよく分かりません。でも私は、

「う、うん」

 って。目の前の恐怖でそれしか言えませんでした。

「――ハッ、ちょっ、何が起こったのよ一体」

 苺ちゃんがやっと意識を取り戻しました。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 紗瑠

 LP4000

 手札5

 

 痴漢のおじさん

 LP4000

 手札5

 

 

「先攻はおぢさんのターンだぁ」

 強引にデュエルを始められちゃった上に、先攻までおじさんに決定してしまいました。

「おぢさんは手札からねぇ、このモンスター。《企業戦士サラ・リマン》を召喚しちゃうよぉ?」

 おじさんが召喚し、フィールドに出現したのはスーツ姿の、現実でも溢れてそうなサラリーマンの姿。

「《企業戦士サラ・リマン》のモンスター効果。このカードの召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した時、フィールド上のモンスター1体のレベルを1つ上げる。サラ・リマンのレベルはこれで4から5だぁ」

 すると、サラ・リマンの上空に、『日々頑張って働いてます』って感じの映像が流れて、

 

 《企業戦士サラ・リマン》 レベル4→5

 

 って、最後にド○クエのレベルアップみたいなSEと共にモンスターのレベルが5になりました。

「さあ、次のターンまでレベル5モンスターを残しちゃうのは怖いよぉ? カードを1枚セットしてターン終了ぉ」

 おじさんが攻撃を誘ってるのは明らかでした。たぶん罠カードを仕掛けてるんだと思います。

「私のターン、ドローします」

 カードを1枚引いて、私は手札を確認します。

(どうしよう、伏せカードを除去する方法がないよぉ)

 とはいっても、おじさんの言う通り、レベル5になったサラ・リマンを放っておくのは危ない気がするんです。

 だから私は、勇気をもって誘いに乗ることにしました。

「私は、手札から《光天使ブックス》を召喚します」

 フィールドに出現したのは、私のデッキでよく《ホーリー・レイジ》を墓地に置きながら展開を補助してくれるモンスターです。そして今回も、

「《光天使ブックス》のモンスター効果。手札の魔法カード《ホーリー・レイジ》を捨てて《光天使スケール》を特殊召喚。このモンスターは特殊召喚したとき、手札の光天使を特殊召喚できます。私はさらに《光天使セプター》を展開です」

 これで、私のフィールドにはモンスターが3体。本当なら「おじさんの罠」殆どに対処できそうなグローリアス・ヘイローを出したいけど、いまは先輩の願いで封印されています。だから。――あ!?

「あ、せ……セプターのモンスター効果で、《光天使スローネ》をデッキから手札に加えます」

 ふ。ふぇぇぇ、緊張と恐怖で、大切な効果を忘れちゃう所でした。

「ふぇ、えっと……続けて手札から魔法カード《トランスターン》を発動します。このカードは私のモンスター1体を墓地へ送って、種族・属性が同じレベルが1つ高いモンスター1体をデッキから特殊召喚するカードです」

「……へえ。光天使なのに3体でエクシーズしないんだぁ」

 おじさんは、ちょっと意外そうにいいました。

「私は効果で《光天使スケール》をリリース。特殊召喚! 海洋の如く深き光、いまこそ目覚める。転生――《光神テテュス》!」

 スケールの体にひびが入り、まるで殻を破るように内側から大きな翼を持った天使様が出現します。

 シムーンちゃんがいいました。

「紗瑠。……厨二病?」

「ふぇええええ!?」

 苺ちゃんがずっと口上を強要するから言っただけなのに。ひ、酷いよぉ。

「い、苺ちゃん」

 私は責任を求めて、苺ちゃんに視線を向けます。すると、

「こんな時でも自然に口上を言うなんてねぇ、紗瑠はもう私よりずっと先の厨二ロードを走ってるわ」

「えぇええええ!?」

「き、君たち。……いまの状況分かってるのかい?」

 お……おじさんに心配されちゃったよぉ。

 私は、しゅんとなっていいます。

「ごめんなさい」

「い、いやぁ別に謝ることでは――って、じゃない!! ひゃあ素晴らしい! すばらひぃ口上だぁ凄く厨二だよへっふぇっふぇぇぇっ!!!」

 おじさん! 無理にキャラを元に戻さなくてもいいよぉおおおおお!!

 あまりの出来事の連続に、私は数秒ほど次のプレイングを忘れちゃってたけど。

「えっと、あ! 続けて私は天使族レベル4モンスター《光天使ブックス》と《光天使セプター》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築します」

 すると、地面に渦巻く銀河の映像が出現し、素材のモンスターたちが霊魂になって飲み込まれる定番のモーションが発生します。

 それで……私は、つい。

「無垢なる想い、いま(てん)の祝福を。――って、駄目えぇっ!? 《フェアリー・チア・ガール》をエクシーズ召喚します」

 口上は途中で終わらせましたけど、両手にポンポンを持った妖精はちゃんと召喚に成功しました。

「君。……苦労してるんだねぇ」

「……はい」

 痴漢のおじさんが妙に常識的で、なんだか奇妙な安心を覚えそうです。

「……あれ。苺?」

「なに?……まあ、いいたいことは分かるけど」

「うん。これって紗瑠、痴漢のおじさんルートに突入?」

 一方私たちの傍では変な話をはじめる親友たちがいました。

 しかも苺ちゃん曰く、

「いざデュエルを見てたらとんだ小物じゃない、あのおじさん。警戒して損したわ」

 らしいです。おじさん、ごめんなさい。

「えっと、チアガールの効果で、オーバーレイユニットを1つ使って1枚ドロー。ここで《光神テテュス》の効果、このカードがフィールドに存在する限り、私がドローした時、そのカードが天使族モンスターだらもう1枚ドローする事ができます」

 私はそう伝えてから、カードを1枚引きます。

「引いたカードは《光天使ソード》です。もう1枚ドローします」

 私はさらにカードを1枚引きます。今度は天使族モンスターじゃなかったから、効果はこれで終了です。

「バトルフェイズに入ります。《光神テテュス》で《企業戦士サラ・リマン》に攻撃」

 テティスは両手から光のエネルギーボールを作り出して、おじさんのモンスターに投げ放ちます。

 おじさんは伏せカードを発動することなく、サラ・リマンの破壊を許します。

 

 おじさん LP4000→3000

 

 《光神テテュス》の攻撃力は2400、《企業戦士サラ・リマン》の攻撃力は1400だったので、1000ポイントの超過ダメージがおじさんのライフを削りました。

「ぐ……しかし、《企業戦士サラ・リマン》の効果を発ど……じゃない! 効果を発動しちゃうよぉ!」

「おじさぁん! 無理しなくてもいいよぉ!」

「なぁんのことだぁい? げっへっへ」

「もうおじさん本当はいい人だって分かっちゃったから、痛々しいよぉ」

「し。……し、知らない、ねぇ」

 おじさん、凄く葛藤してます。

「き、《企業戦士サラ・リマン》は、実はリクルーターなんだよぉ。サラリーマンはひとり倒されても幾らでもかわりはいる、サラ・リマンは戦闘で破壊された時、デッキから企業戦士を特殊召喚できる。おぢさんはレベル6の《企業戦士ブ・チョー》を召か……呼んじゃうよぉ~だぜぇ~~」

 すでにおじさんのキャラはブレブレですけど、指摘はしないことにします。

 そして、新たにフィールドに現れたモンスターは小太りした中年サラリーマンの姿。攻撃力は2100だから、チア・ガールでは戦闘破壊できません。

「バトルフェイズを終了します」

 私はいいました。すると、

「なら、その終了時に罠カードを使っちゃおうかなぁ? 伏せカードオープン、《仕組まれた冤罪》を発動お!」

「えっ!?」

 こ、このタイミングで罠カード?

「この効果によって、ねぇ。紗瑠ちゃんはこのターンに攻撃宣言を行った自分のモンスター1体を破壊しなくちゃいけないんだよぉ」

「ふぇ!?」

 私がこのターンに攻撃したモンスターはテテュスだけです。ですから、

「ふぇぇぇ、テテュスを破壊します」

 すると、テテュスは左右に出現した警察さんに手錠をかけられ「墓地」とかかれた牢屋に放り込まれました。

「悲惨だねぇ。紗瑠ちゃんのモンスターは冤罪で死刑になっちゃったんだ。可哀想にぃ……まあ、冤罪をかけたのは紗瑠ちゃん? 君なんだけどねぇ」

「ふぇ、ふぇぇぇぇっ」

 そ、そんなぁ! ごめんなさいテテュスさん。

「紗瑠、純真……だね」

 シムーンちゃんが、どうしてか哀れむような目で私を見ます。

「で、そんなピュアな紗瑠のハートを傷つけたのが、そこの痴漢のおじさんなのよねぇ」

 続けていったのは苺ちゃんです。

「うぐぐ……」

 おじさんは居た堪れなさそうに胸を押さえます。ですけど程なくして、血走った目でおじさんはいいました。

「き、君たちに何が分かる、この世の責務も道徳も何も知らないゆとりが! 《仕組まれた冤罪》には続きがある。この効果を受けたプレイヤーはさらに1000ダメージを受ける。君の大切なテテュスが受けた心の痛みだよぉ? さぁ、よぉく味わってねぇ?」

 すると、私はビジョンの縄で首を巻かれて《仕組まれた冤罪》から出現した腕の持つピストルに発砲されました。

 

 紗瑠 LP4000→3000

 

「ぅぅぅ」

 ビジョンっていうのは分かってるんです。だけど、おじさんの雰囲気もあって、この縄とピストルはすっごく怖かったです。それと、

「さあ、紗瑠ちゃんまだ何かあるかぁい?」

「ふぇ……。カードを2枚伏せてターンエンドです」

 やっぱり、そういう話し方をするときのおじさんは、少し苦手です。

「それじゃあ、おぢさんのターンだねぇ。ドロー」

 おじさんはカードを1枚引き抜くと、すぐそれをディスクに読み込ませました。

「いやぁピンポイントで《企業戦士エイ・ギョマン》を引けたよぉ。おぢさん、カードに選ばれすぎぃ!」

 沢○さ……おじさんのフィールドに現れたのは、眼鏡をかけ、汗をハンカチで拭うサラリーマン。

「《企業戦士エイ・ギョマン》は召喚に成功した時、デッキからレベル4以下の企業戦士を手札に加える。おぢさんはデッキから《企業戦士ヒラ・Shine》を手札に加えるよぉ」

 すると、苺ちゃんとシムーンちゃんが、

「ヒラ・Shineねぇ、一見格好良いネーミングだけど、それって」

「うん。……平社員」

「よねぇ」

「ごめんなさい、ごめんなさい、お友達がごめんなさい」

 私はその場でペコペコと平謝りしました。

 おじさんは遠くを見ていいます。

「おぢさん、どうして君たちをターゲットにしたんだろうなぁ。まさか糞餓鬼共の中に紗瑠ちゃんみたいな子が混ざってるなんて」

「……ふたりはそんなに悪い子じゃありません。でも、ごめんなさい」

「おぢさんは、何をしてもそういう目にあう運命だったんだろうねぇ」

「おじさん……」

 遠くを眺めるおじさんの姿は、凄い重みと哀愁があって、過去に何かあったんだって私でも推測できてしまいます。

「ふ~ん」

 苺ちゃんが、何やら悟ったようです。

「何かわかったの?……苺」

 シムーンちゃんが訊ねると、

「まあね。……ところでおじさん」

 苺ちゃんがいいました。

「なんだぁい?」

「さっきの《仕組まれた冤罪》の効果なんだけど、紗瑠が1000ダメージ受けるって。それって本当はアレ、テテュスを冤罪にかけたの、紗瑠じゃなくってアンタじゃない?」

 さっきは私、思わずおじさんの話術でショックを受けたけど。気付けばそれって、演出を元にしただけの作り話だったんですよね。

 なんですけど。

「……え?」

 今度は、おじさんが苺ちゃんの話術を真に受けて反応したんです。

「酷いよねぇ、他人を冤罪にかけた上に、さらに真犯人さえも偽造したって」

 なんてさらに煽る苺ちゃんに、

「う……。煩い、うるさい! うるせぇええええええ!!!」

 おじさんは怒り狂います。

「この糞餓鬼共め! 大人を怒らせるとどうなるのかその体に教え込ませてやる! フィールドの《企業戦士ブ・チョー》と手札の《企業戦士ヒラ・Shine》の効果。この2枚は、ブチョーは1ターンに1度、平社員は手札から捨てる事で、それぞれフィールド上の企業戦士1体のレベルを上げることができる」

 おじさんは、さっきサーチしたヒラ・Shineを捨てていいました。

「対象は《企業戦士エイ・ギョマン》! 2回分の効果でエイ・ギョマンをレベル4からレベル6に!」

 すると、先ほどのサラリ・マン同様、エイ・ギョマンの上空に必死こいて営業する映像が流れて、最後にどこかで聞いたことがあるBGM(F○のファンファーレ)と共に、レベルがあがります。

 

 《企業戦士エイ・ギョマン》 レベル4→6

 

「そして、レベル6《企業戦士ブ・チョー》と《企業戦士エイ・ギョマン》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 銀河の渦に入っていくおじさんのモンスター。そして、25のナンバーが浮かび上がります。

「あ、ナンバーズ」

 私が呟くと、

「へえ……そのあまり驚いてない所をみると、紗瑠ちゃんはナンバーズの所有者だったんだねぇ」

「ふぇ?……あっ!?」

 も、もしかして確信されちゃった? 先輩にバレたら駄目って言われてたのに。

「紗瑠ちゃんはどんなナンバーズを持ってるのかなぁ?」

「ふ、ふぇええええええ」

 ごご、ごめんなさい先輩ーっ!!

「まあ、おぢさんが勝てばいいことだねぇ? エクシーズ召喚! No.25、俺は貴様と契約してやる! この世の全ての、青い血をした糞雌共の全てを赤裸々にひん剥け! 重装光学撮影機フォーカス・フォース!」

 おじさんの口上によって出現したのは、ついさっきフィールによって姿を現してたカメラのモンスターでした。

 その攻撃力は2800、やっぱりランク6だもんすっごく高いよぉ!

「やっぱり。……ここまでくると確定ねぇ」

 苺ちゃんが呟きしました。さっきも何かを悟ってたけど、おじさんの口上で確信に変わったみたいです。

「おじさん、あんた」

 苺ちゃんがいいかけた時、でした。

「《No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース》で《フェアリー・チア・ガール》に攻撃。……キル・ショットぉ!」

 再び「あの」カシャって音が聞こえたのです。

「ぁ……」

 私は確信しました。

 意識を飛ばされちゃう、デュエル中なのに。

「紗瑠……!」

 直後、シムーンちゃんがシムーンちゃんなりに叫びます。そうでした。

 フィールの出し方は、カードから聞くことができるって。どうすればいいかはわかりませんけど、やるしかありません。

(教えて、No.102……間に合って)

 私は、カードを取り出す暇がなかったので、咄嗟に頭の中でグローリアス・ヘイローを思い描き、問いかけます。

(お願い、おじさんのフィールから護って)

 それでも間に合わず、私は咄嗟に「願う」方向にシフトします。目を瞑って。

 そしたら、

「スカーフの譲ちゃん? 紗瑠ちゃん意識飛んだよぉ」

 ――って、聞こえてきたんです。

 私の意識は飛んでないのに。

「紗瑠……お願い」

 シムーンちゃんの声。心配する声。

 もしかして。私、成功したんでしょうか? フィールを出すことに。

 私は、目を瞑ったままほっと息をつき。――あ!?

「ざぁん、ねん。だねぇ」

 おじさんの声と、モンスターがビームを発射する音が聞こえたんです。

 私は目を開け、攻撃が受理される寸前ギリギリで伏せカードをオープンします。

 ――すると舞い降りる、一束の白百合の花。

「罠カード、《フローラル・シールド》を発動します!」

 なんとか発動は成功して、フォーカス・フォースの攻撃の攻撃を防ぎ、私は効果の続きでドローしました。

(ま、間に合ったよぉ)

 私は今度こそ、ほっと息をつきました。

 あのまま安心してたら、せっかく《フローラル・シールド》を伏せてたのに攻撃を通してしまう所でした。

「紗瑠……。フィール、覚えたん、だね」

 シムーンちゃんが訊ねます。私は「うん」って小さく頷いて、

「まだ、たぶん……だけど」

 けど、実はこのとき私の感覚はすでに「フィールの出し方」の術が刻み込まれてたんです。知らないはずの知識が私の中にあるっていう、その異質さに気付かないまま。

(あ、そういえば!?)

 私はちらっと苺ちゃんを見ます。

 苺ちゃんはポーズを取って、おじさんに指さそうとしながら……硬直していました。

 意識を飛ばされちゃったみたいです。

「苺、ちゃん」

 命に別状はないって分かってるけど、やっぱりこういうの寂しくって、哀しくって、辛くって。

「いちご、ぢゃん……」

 私はもう一度呟きます。

 たちまち涙が出てきて、しゃくり声になってきて。

「やっぱり口の減らない糞は黙らせるに限るよねぇ? あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~」

 そんな私を、おじさんの罵倒が更に抉ります。

「紗瑠」

 シムーンちゃんがいいました。

「まずは……目の前の相手、倒そ?」

「……う、うん」

 でも、苺ちゃんが。

「デュエルしている紗瑠が、ずっと苺の心配している暇、ない……よ?」

「……う、うん」

 でも、苺ちゃんが。

「あの人を倒さないと、苺は何度意識が戻っても、何度だって意識が飛ぶよ?」

「……」

 でも、苺ちゃん。

「紗瑠、やさしいね」

 シムーンちゃんはいいました。けど、続けて。

「でも。やさしすぎて、見えるもの狭くなるんだね」

「え?」

「相手は、待ってくれないよ」

 シムーンちゃんがおじさんを指さしていいます。

 そこには、

 速攻魔法《ダブル・アップ・チャンス》を発動したおじさんの姿がありました。

「まさかフィールの使い方を覚えたのは意外だったけど、おぢさんのデュエルタクティクスの前には無意味だったみたいだねぇ」

 私から視線を逸らしながら、血走った目でおじさんはいいます。

 《ダブル・アップ・チャンス》は、モンスターの攻撃が無効になった時に発動できるカードです。その効果は、そのモンスターでもう一度攻撃できるというもの。ダメージステップの間だけ攻撃力を倍にして。

「この効果で攻撃中、おぢさんのフォーカス・フォースの攻撃力は5600、紗瑠ちゃんのモンスター越しでもライフは一発でゼロになっちゃうよぉ?」

 再びフォーカス・フォースがチアガールに向けてビームを発射します。

「紗瑠、聞いて?」

 シムーンちゃんがいいました。

「苺は私が護る、から。……紗瑠は、紗瑠しかできない事に集中、して?」

「シムーン、ちゃん」

 ……そっか。

 そうだったね、えへへ。私は大切なことを忘れてたみたいです。

 デュエルをしながら、同時に苺ちゃんを護り続けれるほど、私……器用なはずがないのに。

 助けられなかったって、手遅れにしちゃったって思いこんで。ひとりで背負い込んじゃって。

 馬鹿ですね、私。シムーンちゃんのこと信頼してないわけがないのに。

「うん。シムーンちゃん、ありがとう」

 私はシムーンちゃんを信じて、私にしかできないこと、デュエルに向き合います。

 そして。

 ――再び舞い降りる、一束の白百合の花。

「フォーカス・フォースの攻撃宣言時、2枚目の《フローラル・シールド》を発動します」

「2枚目ぇ!?」

 再び白百合の花はチアガールの盾になります。

「さっきは説明できなかったけど、このカードは相手モンスター1体の攻撃を無効にして、カードを1枚ドローするカードです。効果で私はもう1枚ドローします」

 私は宣言通り、カードを1枚引いて手札を4枚にしました。

「……ろよ」

 おじさんが呟いたのが聞こえます。その肩は震えてて、それが「怒り」によるものだって分かった瞬間でした。

「早く負けろよ! この糞餓鬼共がぁああああ!」

 おじさんは怒声を撒き散らします。

「俺のターンはまだ終わってねぇ! 魔法カード《ストレス・エクスプロージョン》発動! このカードはバトルフェイズ中に1回以上攻撃宣言して、1度も相手にダメージを与えられなかった場合に発動できるカードだ!」

 すると、カードの効果でしょうか? フォーカス・フォースの体から段々と湯気が立ち上り、その全身が真っ赤に染まっていったのです。

「《ストレス・エクスプロージョン》は俺のモンスター1体の攻撃力分のダメージを互いのプレイヤーに与える、俺も貴様も2800のダメージだぁ!!」

「え、ふぇっ!?」

 フォーカス・フォースの体がガタガタと震えたと思うと、文字通り怒りの「爆発」で私とおじさんを巻き込みます。

 

 紗瑠 LP3000→200

 おじさん LP3000→200

 

 どうみてもコストでモンスターを破壊しそうなエフェクトでしたけど映像の設定上はただ怒りが爆発しただけみたいで、効果の処理が終わったとき、フォーカス・フォースはまだフィールドに残っていました。

「はぁ、はぁっ……これで、文字通りお互いライフは鉄壁ラインだねぇ」

 一方、おじさんはまだ怒りが収まってないみたいで、息を切らせながら未だ血走らせた目でいいました。

「おかげでこのカードが発動できるよぉ。魔法カード《社畜の意地》! このカードは俺のライフが500以下のときに発動可能。デッキからカードを2枚ドロー」

「ふぇっ!?」

「まあ、このカードを発動しちゃったらエンドフェイズ時に手札1枚につき500ダメージを受けるけど、こうすれば関係ないよねぇ? 俺は手札2枚、全てセット、ハンドレスでターン終了」

 私は、そんなおじさんのデュエルがとても破滅的に映りました。だって、さっきのドロー。もしモンスターを引いたら負けが確定なのに。

 おじさんは、苺ちゃんに酷いことをした人です。

 だけど、私はもう知っちゃったから。本当は、おじさんはすごくいい人で、なにかとっても辛いことがあって、だからああいう行動をしてるんだって。

 ですから、私は思っちゃうんです。おじさんが痛々しい言動を取れば取るほど、私になにかできないかなって。

「私のターン、ドローします」

 私が引いたカードは《死者転生》。どうすることもできません。

「《フェアリー・チア・ガール》の効果、最後のオーバーレイ・ユニットを使ってドロー。そしてチアガールを守備表示にしてターン終了します」

 私は、もう1枚カードをドローして、それでも駄目と確認してから、すぐにターンを明け渡しました。

「俺のターン、ドロー! フォーカス・フォースでチアガールを攻撃」

 おじさんの攻撃、ついにチアガールも破壊されてしまいます。

「カードをセット、俺はこれでターン終了するよぉ」

 気付けば、おじさんの一人称も「おぢさん」から「俺」へと完全に変わっていました。口調も表情も、初めてあったときと比べて随分と荒々しさが増してます。

 私は、もう限界でした。

「おじさん。何があったんですか?」

「はァ?」

「本当はおじさんがすっごくいい人で、けど過去に何か酷いことがあったから、痴漢したり私や苺ちゃんを目の敵にしてるっていうのは私でも伝わっちゃいます」

 デュエルで勝って、苺ちゃんの意識がもう二度と飛ばされないようにしないといけないんですけど。

 辛そうなこのおじさんになにかしたいって、そんな私の気持ちを抑えてデュエルし続けるのは、もう無理でした。

 私は、精一杯の心を込めていいます。

「私に何かできませんか? 教えてください!」

「煩ぇ!!」

 おじさんの怒声が響き渡りました。

「お前には関係ないだろっ! 大体、手前らみたいな餓鬼共に一体何が――」

 その時でした。

「冤罪で逮捕されたでしょ。それもたぶん、痴漢冤罪ね」

 言ったのは、苺ちゃんでした。

 ポーズを取って、おじさんに指さして、あの時言うはずだった台詞の続きが苺ちゃん本人の口より語られます。

「汗水たらして糞真面目に会社勤めに励んだ末路が、社会の厳しさな~んも知らないお子様のおふざけひとつで転落人生。誰からも信用して貰えず会社も家庭も失って、あとは首を吊るか自分をこんな目にあわせた社会と牝ガキに復讐か、そんな所でしょ」

 そういえば、電車の中で苺ちゃんがいってました。痴漢冤罪がどういうものかって。

 おじさんはいいます。

「その通りさ。あいつらのおかげで俺は刑務所にブチ込まれ、面会の席で会社をクビになったことを聞かされ、その場で離婚届にサインを書かされたよ。務所では作業をしないからって殴られたっけ、ハハッ」

「そんな、酷い」

 私は思わず呟きました。するとおじさんは、

「ああ、酷い有様さ。俺にできたことは、いつどうやってこの世を去ろうかって事だけだ。……そんな時だったよ。こいつに出会ったのは」

 おじさんは、フォーカス・フォースを見上げます。

「俺は思ったさ。仮に務所から出れてもこのご時世、雇う会社なんて何処にも無ぇ。どうせ無実だろうが何だろうが俺は一生痴漢した男だ。だったらいっそ本当の痴漢になって、こいつの力で復讐してやろうってなぁ!」

「そんな、どうして!」

 私は思わずいいました。

「そんなに凄い力が手に入ったんだったら、復讐なんかじゃなくてもっと別の方法があったはずです。なのに……」

「だから手前ぇには分からねぇって言ってんだ!」

 再び、おじさんの怒号が響きます。

「綺麗事で飯が喰えるのか? 無実の罪が消えるのか? 失ったモンを取り戻せるのか? 俺の怒りを鎮められるってのか? それが出来るのは金ある奴と漫画の世界だけだろ!」

「そ、それは……」

「お前はアリをわざと踏んづけたり、頭と胴を引っ千切ったことはあるか?」

「え、ふぇ?」

「俺はアリなんだ、アリがどれだけ必死に働いてようが踏んだ奴には知った事じゃねぇ。どれだけ殺した所で何の罪もないし責任もない。ただあるのはスカッとするだけ。で、俺を潰せばそこにプラス賠償金も貰えてとっても素敵だっていう話だ」

「そんなっ」

「だから俺は蜂になった。針を持って蟻潰しを愉しむやつらを逆に潰してやるんだ。今度は俺が、ストレス解消にあいつらの心と社会をズタズタにして、ビジネスにしてやるんだ」

「つまり既に盗撮にも手を出したってことね」

 苺ちゃんが「うわあ」って顔でいいました。

 するとおじさんは、再びにやぁっとした顔に戻って、

「当然だよねぇ、そのデータを有料で流したらさあ、いままで汗水垂らして働いたのが馬鹿に感じるほどボロ儲けさぁ。ナンバーズ様様ってわけだぁ」

「それだけじゃない」

 続いていったのはシムーンちゃんです。

「デュエルする前、私たちを誘拐して行為に及ぶっていった……よね?」

「高く売れるよお? まあ、君たち餓鬼共だっておぢさんたちを社会的に犯して金貰ってるんだし、当然の報いってもんだよねぇ?」

「あの……」

 私は訊ねました。おどおどしながら、違って欲しいって願いながら。

「もしかして、私たちのような年齢の女の子は全員、おじさんに酷い事して愉しんでるって思ってるんですか?」

「違うのかぁい?」

 即答でした。

 私は、いまでも感じています。おじさんは、本当は凄くいい人だって、優しい人だって。

 デュエルでたまに見せた、おじさんの優しい言葉。あれは嘘なんかじゃありません。嘘でああいう言葉をかけてくれる理由が見つかりません。

 そんな、優しいおじさんなのに。だったのに。

「ふぇ、ひぐ……っ」

 私はつい大粒の涙を流してしまいました。

「酷い、ひどいよぉ」

「ひどいぃ? おぢさんがかぁい?――ざけんな! 酷いことしたのは、手前ぇら糞餓鬼共だ!」

「そうです」

「!?」

「おじさん優しいのに、どうしておじさんがここまで酷い目にあわなくちゃいけないんですか? 変わらないといけないんですか?」

 私は、その場で号泣します。うわーんって声を出して、泣いてしまいました。

「どうして、どうして」

 おじさんの悲劇が哀しくて、おじさんの心が血塗れのズタズタなのが哀しくて。

「なんだよ、おまえは」

 おじさんは呟きます。

「俺はいま正におまえに酷いことをしようってのによぉ。そんなおっさんの為にぴーぴー泣きやがって」

「でも、ですけど……」

「そのくせ、何かできないかって聞いたくせに、ナンバーズは渡さねぇ、黙って俺についてくることもしねぇんだろ?」

「……」

 おじさんの言葉に、私はだんまりしちゃいます。

 だって、その通りですから。

 否定したいけど。なんとかしたいって気持ちは本当だって伝えたいけど。負けてあげることも、おじさんについていくことも、してあげられないんです。

「紗瑠?」

 シムーンちゃんがいいました。

「おじさん、助けたいの?」

「……うん」

 私は涙声で、だけどしっかりと頷きます。

「なら」

 シムーンちゃんは視線をフォーカス・フォースに向けます。すると、今度は苺ちゃんが、

「尚更このデュエルに勝たないといけないわね」

「ふぇ?」

 どうして、助けるために勝たないといけないの?

 私が目で問いかけると、

「デュエルに勝って奪い取るのよ。フォーカス・フォースを」

 苺ちゃんの言葉に、私は「え?」ってなります。

「ど、どうして? どうやって?」

 すると、苺ちゃんはいいました。

「相手はデュエルに勝って、アンティで紗瑠のナンバーズを奪おうとしてるんでしょ? で、ナンバーズは本人の意思かアンティでないと奪えない、だっけ?」

「う、うん」

「なら。逆に紗瑠が勝てばアンティでフォーカス・フォースを入手できるんじゃないの?」

「あ……」

 そっか。

 さらに、今度はシムーンちゃんがいいます。

「フォーカス・フォースを持ってる限り、おじさんはこれからも犯罪を犯し続ける。……そして、残念だけど私たちには、おじさんを説得で改心させる力、ない……よ」

 シムーンちゃんの言葉は、私の心にグサッときました。ですけど。

「そう。……だよね」

 いま、誰かが。私たちが止めないと、おじさんはもっともっと悪い人になっちゃう。

 まだ「優しいおじさん」が残ってるうちに、何とかしないと。

「じゃあ、紗瑠? もうひとつ言わせて貰うわよ」

 苺ちゃんがポケットティッシュを差し出しながらいいます。

「紗瑠ってば私が一回意識飛ばされただけで心が折れたそうじゃない。……おじさん助けると決めたなら、以後それ禁止よ」

「え?」

「私がそんな事望んでると思ってるの? 紗瑠の足を引っ張るなんて、恥ずかしいことさせないで頂戴」

 意識を飛ばされるなんて、命に別状がなくても少しの間無防備にさせられるなんて、いくら苺ちゃんでも怖くないはずがないのに。

 本当に、私って心配すると見えるものが狭くなっちゃうんですね。

 知ってたはずなのに、苺ちゃんのそういう性格も分からなくなってたなんて。

「うんっ、ありがとう苺ちゃん、シムーンちゃん」

 私はティッシュで鼻をかみ、涙を拭いて泣くのをこらえます。

「デュエルを続けます。私のターン、ドロー」

 そして、まっすぐおじさんを見据えて、カードを引きました。

 

 

 紗瑠

 LP200

 手札6(《光天使ソード》《光天使スローネ》《死者転生》

 場:《伏せカード(*1)》

 

 痴漢のおじさん

 LP200

 手札0

 場:《No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース》《伏せカード(*3)》

 

 

「へえ~。おぢさん可哀想とかどうにかしたいって言いながら、結局はおぢさんを陥れようとするんだねぇ」

 おじさんの言葉が、決意しかけたばかりの私の心を抉りかけます。ですけど、

「紗瑠。相手の言葉に耳を傾けたら駄目、だよ?……私たちは、まだ弱いから。全部受け止めてたら、身がもたないよ?」

「うん」

 シムーンちゃんのフォローが、崩れかけた私の心を立て直してくれます。

 苺ちゃんとシムーンちゃん。

 ふたりが助けてくれるから、私はいまのおじさんを相手に戦うことができて、

 だからでしょうか?

(あ)

 私、気付いちゃったんです。もう、私の手札は前のターンからずっと、フォーカス・フォースを倒す手段が出来上がっていたことに。

 しかも、いま引いたカードのおかげで手段はさらにもうひとつ。

 手札を1枚引き抜いて、私はディスクにカードを読み込ませました。

「いきます。私は手札の《デュナミス・ライトニング》を捨てて《死者転生》発動します。私の墓地から《光天使ブックス》を回収します」

 そして、私はいいます。

「私の墓地の天使族は、これで4体です」

「へ?……あ、はぁ!?」

 おじさんはその意味をすぐに察し、驚愕といった顔をみせました。

「私は手札からこのモンスターを特殊召喚します。――戦場の嘆き、いま天へと届く。光の使者よ、哀しき争いに終焉と癒しを! お願い、《大天使クリスティア》降臨!」

 フィールド上に異空間と繋がった大きな光輪が出現すると、その奥から赤い翼の天使様が降臨します。

 すると、おじさんは叫びます。

「終焉と癒し? そんなもの必要ないんだよ! 罠カード《奈落の落とし穴》! 地獄に落ちてもらうぜぇ」

 おじさんの伏せカードの1枚が表向きになりました。

 苺ちゃんがゲッて顔で、

「クリスティアに奈落って相性最悪じゃない。……紗瑠!」

「うん」

 私はうなずき、いいます。

「手札から《禁じられた聖槍》を発動します。この効果でクリスティアの攻撃力はターン終了時まで800下がるけど、その間このカードは、――ふぇ!?」

 宣言の途中で、私の声は裏返ってしまいました。

 だって、このタイミングでおじさんの伏せカードがもう1枚オープンされて、しかもその正体が。

「おぢさんも意地ってものがあるんだよぉ! 罠カード《奈落の落とし穴》2枚目えぇえええ!」

 まさか2枚も同じカードを伏せるなんて。私は一瞬そう思いましたけど、

「紗瑠ちゃんの《フローラル・シールド》のおかえしだよぉ?」

 そういえば私も同じカードを2枚伏せてたのでした。

「さぁて、この罠カードは相手が攻撃力1500以上のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時に、そのモンスターを破壊し除外するカードだよぉ?」

 《大天使クリスティア》は、フィールド上から墓地へ送られる場合、持ち主のデッキの一番上に戻る効果があります。ですけど。

「この方法ならクリスティアは復活しない。奈落に落ちろぉ!」

 おじさんの叫びとともに天使様は出オチ同然にフィールドから姿を消してしまいました。

「で、ですけど一応《大天使クリスティア》の特殊召喚には成功しました。効果で墓地の《フェアリー・チア・ガール》をエクストラデッキに戻します」

 実はこのクリスティアは、私がNo.102を手に入れる前の切り札だったんですけど。まさか簡単に対処されちゃうなんて。

 ですけど。

「まだです。私は手札から《光天使ソード》を召喚、続けて《光天使スローネ》を特殊召喚します」

 このカードは、最初のターンにセプターとテテュスの効果で手札に加わったカード。そして、これが私の「前のターンにできた」フォーカス・フォースを倒す切り札です。

「《光天使スローネ》の効果でドローします」

 スローネの効果は、私が光天使の召喚・特殊召喚に成功した場合に、このカードを手札から特殊召喚し、1枚ドローするものです。そして、

(あ……光天使)

 そのドローしたカードが光天使だった場合、さらにそのカードを特殊召喚できる効果を持っています。

「私は、《光天使スローネ》の効果で、いまドローした《光天使シールド》を特殊召喚します」

 こうして、私のフィールドには一応剣らしいモンスター、玉座のモンスター、そして盾型のモンスターが出現します。

 そこへ、おじさんの3枚目の伏せカードがオープンしました。

「罠カード《悪夢の休日出勤》! このカードは墓地の企業戦士モンスター1体を特殊召喚するカード。おぢさんは墓地の《企業戦士サラ・リマン》をフィールドに臨時出勤させちゃうよぉ」

 すると、フィールドには再びスーツ姿のサラリーマンが出現します。しかし、その表情はとても疲れきっていて、目も虚ろです。

「サラ・リマンのモンスター効果を発動」

 おじさんはいいました。

 そのカードの効果は覚えています。サラ・リマンは召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した時、フィールド上のモンスター1体のレベルを1つ上げるんです。

 でも、私は「どうして?」と思いました。だって、その効果でサラ・リマンがまたレベル5になるとしても、この状況でサラ・リマンを出す意味は殆どないように思えたからです。手札も、ほかの伏せカードもない状況で。

 けど、そんな私の考えは間違ってました。色んな意味で。

「おぢさんは、ねぇ。今回は紗瑠ちゃんの《光天使ソード》のレベルを1つ上げちゃうんだ」

「ふ、ふぇ!?」

 私のモンスターのレベルを?

 

 《光天使ソード》 レベル4→5

 

 サラ・リマンの効果が受理されてソードのレベルが1つ上がります。ただし、今回は回想みたいな演出はありません。

「これで紗瑠ちゃんは3体でエクシーズができないよぉ、残念だったねえ」

「ふぇ?……あ!?」

 そっか。ソードのレベルが上がっちゃったから、いま私のフィールドは「レベル4モンスター×3」じゃなくなっちゃったんです。

 その、えっと。元々エクシーズをする気はなかったから、すっかり忘れてました。

 私がやろうとしてたことは、ソードの効果を使って手札の《光天使ブックス》をコストに攻撃力を3000まで上げて、フォーカス・フォースを戦闘破壊することです。

 おじさんのライフは僅か200、フォーカス・フォースの攻撃力は2800なので、この攻撃が通れば倒すことができます。

 なんて、安心してた所でした。

「紗瑠。いますぐソードのレベルを何とかして」

 って、苺ちゃんがいいました。

「ふぇ、どうして?」

「なんっか嫌な予感がするのよねぇ。相手、光天使のこと少しは知ってるっぽいし。だったらソードの効果も知っててもおかしくないじゃない、それにブックスをサルベージしたのも見られてるのに」

 するとシムーンちゃんが、

「フォーカス・フォース」

「そう、それよ。まだ効果使ってない切り札とか不気味すぎじゃない」

「……チッ」

 おじさんが舌打ちしたのがみえました。どうやらふたりの推測はビンゴだったみたいです。ソードのレベルを上げたのには、フォーカス・フォースの効果が関係した何かが含まれてるんだって。

 そして苺ちゃんが、私がいま「ソードのレベルをどうにかできる」ことを知ってて指示したってことも、私は気付いてました。

「墓地の《デュナミス・ライトニング》を除外して、その効果を発動します。このカードは、フィールド上のモンスターを3体まで選択してレベルを4にします。私はこれでソードのレベルを4に戻します」

「クッ……なら、ここで俺は《No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース》の効果を発動!」

 ついに、おじさんはフォーカス・フォースの効果を使います。

「フォーカス・フォースのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除き効果を発動。このカードはレベル5以上のモンスターの効果をターン終了時まで無効にする!」

「ふぇ!?」

「いまは《光天使ストレングス》の効果が受理される前、ソードのレベルはまだ5だよねぇ? ソードの効果は使わせないよぉ?」

 そんな、ソードで倒せなくなっちゃった。

「危なかった、ね」

 シムーンちゃんがいいました。

「このままソードの効果を使って攻撃したら、攻撃宣言時に効果を無効にされて返り討ちになってた」

「あ……」

 そっか。じゃあ私、意味がなかったんじゃなくって、ちゃんと助かったんだね。

(でも……)

 私は手札とフィールドを確認します。

 ソードのレベルを戻したから、3体でエクシーズはできます。でも、グローリアス・ヘイローならフォーカス・フォースを倒せますけど、いまは使うことができません。

(本当は、先輩にもらったもう1枚も使ったらいけないんだけど)

 だけどこちらは「どうしても必要なとき」に許可は貰っています。それに、おじさんにはもう私がナンバーズを持ってることは知られてるから。

「私は、レベル4の光天使ソード、スローネ、シールドでオーバーレイ! 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築します」

 私の声に反応し、ビジョンはフィールド上に銀河の渦をつくりだして、モンスターたちは霊魂になって飲み込まれていきます。

 そして、銀河から10のナンバーが浮かび上がりました。

『え?』

 そのナンバーに、苺ちゃんとシムーンちゃんが反応します。そういえば、ふたりには先輩からのこと、まだ話してなかったんです。

 あ、あとでちゃんと話さないと。ふたりは私がNo.102を持ってるって知ってるから。

「エクシーズ召喚、お願いNo.10! 紗瑠の願い、光り輝くロードへと(てん)じ、神(せい)なる騎士を導く。その輝ける魂にて、いまこそ全てを照らす刻! 白輝士イルミネーター!」

 こうしてフィールドに出現したのは1体の白馬の騎士様。攻撃力は2400とグローリアス・ヘイローよりも100低いです。

「へぇ、これが紗瑠ちゃんのナンバーズなんだねぇ」

 おじさんはいいました。

「でも、この攻撃力じゃあフォーカス・フォースは倒せないよぉ」

「一応倒すことはできる、でも」

 シムーンちゃんが呟きました。恐らく墓地の《ホーリー・レイジ》を指しているんだと思います。

 《ホーリー・レイジ》には墓地から除外することで、モンスターの攻撃力を2000も上げる効果を持っています。ですけど、相手に与えるダメージが私にも返ってくるっているデメリットがあって。いま、あのカードを使って攻撃したら引き分けになってしまいます。

 だから、このままでは私は勝利することはできません。ですけど、

「いきます。私はイルミネーターで、フォーカス・フォースに攻撃!」

 私は、あえて攻撃を宣言しました。

 騎士様を乗せた白馬はその場でフォーカス・フォースに向けて駆け出します。すると、苺ちゃんが。

「あ、もしかして紗瑠。まさかあの系のカード伏せてる?」

 って反応しました。苺ちゃんは気付いたみたいです。

「っ、伏せカード……かい?」

 おじさんはいいました。

「はい。リバースカードオープン! 速攻魔法《禁じられた聖衣》を発動します。この効果によって、フォーカス・フォースの攻撃力・守備力を600ポイントダウンさせます」

 すると、フォーカス・フォースの機体は一着の衣類に着飾られ、その攻撃力を封じ込められます。

 

 《No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース》 攻撃力2800→2200

 

「お願い、イルミネーター! シマーリング・ソード・スラッシュ!」

 シャルの声と同時に、イルミネーターはその一刀を振りぬき、フォーカス・フォースを両断します。

 イルミネーターとフォーカス・フォースの攻撃力の差は200、おじさんの残りライフも200、ですから。

 

おじさん LP200→0

 

 この瞬間、おじさんのライフはちょうどゼロになって、私の勝利が確定したのでした。

 

 

 企業戦士サラ・リマン

 効果モンスター

 星4/地属性/戦士族/攻1400/守1200

 ①:このカードの召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した時、フィールド上のモンスター1体を対象として以下の効果から1つを選択して発動できる。

 ●選択したモンスターのレベルを1つ上げる。

 ●選択したモンスターのレベルを1つ下げる。

 ②:このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから「企業戦士」モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚できる。

 

 ホーリー・レイジ

 通常魔法

 このカードが墓地へ送られたターンには ②の効果を発動できない。

 ①:自分フィールド上の光属性モンスター1体を破壊する。

 ②:このカードが自分の墓地に存在する場合、このカードをゲームから除外して発動できる。

 このターンのエンドフェイズ時まで、自分フィールド上のモンスター1体の攻撃力は2000ポイントアップし、そのモンスターが相手ライフに与えるダメージは自分も受ける。

 (アニメ遊戯王ZEXAL/テキスト修正)

 

 企業戦士ブ・チョー

 効果モンスター

 星6/地属性/戦士族/攻2100/守2000

 ①:このカードのアドバンス召喚に成功したターン、自分はもう1回だけ「企業戦士」モンスターを通常召喚できる。

 ②:1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体を対象として以下の効果から1つを選択して発動できる。

 ●選択したモンスターのレベルを1つ上げる。

 ●選択したモンスターのレベルを1つ下げる。

 

 仕組まれた冤罪

 通常罠

 ①:相手は自分フィールド上に存在するこのターンに攻撃宣言を行ったモンスター1体を選択し、破壊し、1000ポイントのダメージを受ける。

 

 企業戦士エイ・ギョマン

 効果モンスター

 星4/地属性/戦士族/攻1600/守1200

 ①:このカードの召喚・反転召喚に成功した時、自分のデッキからレベル4以下の「企業戦士」モンスター1体を手札に加える事ができる。

 ②:このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた場合、フィールド上のモンスター1体を対象として以下の効果から1つを選択して発動できる。

 ●選択したモンスターのレベルを1つ上げる。

 ●選択したモンスターのレベルを1つ下げる。

 

 企業戦士ヒラ・Shine

 効果モンスター

 星1/地属性/戦士族/攻800/守800

 ①:自分の手札・フィールド上に存在するこのカードをリリースして発動する。このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた場合、フィールド上のモンスター1体を対象として以下の効果から1つを選択して発動できる。

 ●選択したモンスターのレベルを1つ上げる。

 ●選択したモンスターのレベルを1つ下げる。

 

 フローラル・シールド

 通常罠

 相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。

 相手モンスター1体の攻撃を無効にし、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 (アニメ遊戯王5D'sおよびタッグフォースシリーズより)

 

 ストレス・エクスプロージョン

 通常魔法

 ①:バトルフェイズ中に1回以上攻撃宣言を行い、相手プレイヤーにダメージを与えられなかった場合のみ、

 メインフェイズ2で自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

 お互いのプレイヤーは、選択したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。

 この効果で自分のライフが0になる場合、引き分けにならず、マッチに敗北する。

 

 社畜の意地

 通常魔法

 ①:自分のライフは500以下の場合に発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 エンドフェイズ終了時、自分は自分の手札の枚数×500ポイントのダメージを受ける。

 

 光天使シールド

 効果モンスター

 星4/光属性/天使族/攻 0/守1800

 ①:相手モンスターの直接攻撃宣言時に、自分の墓地に存在する「光天使シールド」以外の「光天使」モンスター1体を選択して発動できる。

 手札からこのカードを自分または相手フィールド上に特殊召喚し、攻撃を無効にする。その後、選択したモンスターを手札に加える。選択したモンスターがエクストラデッキに戻った場合、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 悪夢の休日出勤

 通常罠

 ①:自分の墓地に存在する「企業戦士」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ終了時に破壊される。

 

 デュナミス・ライトニング

 通常魔法

 このカードの①②の効果を使用するターン、自分は光属性モンスターしか特殊召喚できない。

 ①:フィールド上のモンスターを3体まで選択して発動する。選択したモンスターのレベルは4になる。

 ②:自分ターンに墓地のこのカードを除外し、フィールド上のモンスターを3体まで選択して発動する。選択したモンスターのレベルは4になる。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 正直、このデュエル。シムーンちゃんと苺ちゃん、ふたりのサポートがなかったら勝てないデュエルだと思いました。

 それだけ、おじさんは強かったんです。やっぱり、相手は大人の決闘者なんですから。

「負け、ちゃったかあ」

 おじさんは、いままでのにやけも、怒った様子もなく、まるで真っ白になった様子で呟きます。

「やっぱりおぢさんはこういう運命だったみたいだよ。何をやっても失敗する。出来損ないさ」

「おじさん……」

 そんなことない。私はいいたかったけど、どうしてでしょうか? 私はその一言をいうことができませんでした。

 納得したわけじゃないんです。ただ、いまのおじさんを見てると「言う」空気じゃない気がしちゃって。

 すると、おじさんのデュエルディスクからカードが1枚、光を放ちながら浮かび上がります。

 《No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース》でした。

「これで俺の復讐も終わりか。……紗瑠ちゃん、持ってくといいよ。おぢさんのナンバーズだ」

 おじさんがいうと、カードは私に向って飛んできます。

「紗瑠? あとは、このカードを受け取れば。私たちができることは終了、だよ?」

 シムーンちゃんがいいました。ですけど私は、

「ううん」

 傍に寄ってきたナンバーズに、私は小さく首を振ります。

 そして、やさしく突き放しました。

(行ってあげて、おじさんの下に)

 って。

 すると、ナンバーズはUターンをしておじさんの下へと戻っていきました。

「紗瑠……ちゃん」

 おじさんは目を丸くしていいます。

「ちょっと、紗瑠?」

 苺ちゃんも問い詰めるようにいいます。

「だって」

 私は、いいました。

「確かおじさん。全てを失って、もう死ぬか復讐するかだったよね? 駄目だよ、死んじゃったら」

「紗瑠……ちゃん?」

「だから、私やっぱり受け取れません。おじさんに死んでほしくないもん」

 そういって、私はおじさんに近づきます。

「そのかわり。……約束してくれませんか?」

「……なんだい?」

 おじさんの顔からは覇気でいいのかな? そういうものがなくなってて、一気に何年も歳をとっちゃったようにさえ見えました。

「もう、フォーカス・フォースの力を、悪いことに使わないでください」

「じゃあ、どうすればいいって言うんだい? 紗瑠ちゃんは」

 今度は怒らず、かといってにやける感じもなく訊くおじさんに、私は、やさしく笑みをつくっていいました。

「えっと、私ずっと考えてたんですけど、痴漢さんになって復讐するんじゃなくって。本当の痴漢さんと、冤罪しようとする悪い女の人を探して捕まえる、正義のヒーローになったら駄目なんですか?」

「……へ?」

「あれって、証言と状況以外に証拠がなくておじさんみたいな人ができるんですよね? だったら、おじさんが『あの人はやってない』って証拠になってあげればいいんです。そうやって冤罪そのものを地道に解決していけば、やろうって人は減るんじゃないかなって」

「そんなに簡単じゃないよ」

 おじさんは哀しげにいいました。

「みんなが紗瑠ちゃんみたいだったら問題ないけど、世間がおぢさんの証言を信じてくれると思うかい? 無実とはいえ、痴漢の前科ありのこの俺を」

 すると、私が反応するより先に、

「無理ね」「無理」

 苺ちゃんとシムーンちゃんが同意しちゃいます。

 ですけど、はっきり言ったにしては、ふたりとも重い表情をしてました。ふたりとも、本当は「大丈夫」っていいたいんです。

 私がやさしい嘘をつく前に、ふたりは悪者になってくれたんです。

 おじさんは、続けていいました。

「そういう事だよ。それに、おぢさんじゃなくても加害者の味方をした所で『グル』と疑われるんだ。警察にとっては痴漢冤罪を見逃しても本当の痴漢は絶対に見逃したくないだろうしねぇ。世間的にも」

「あ……」

「それに、おぢさん……さ。脱獄犯なんだ。まだ、痴漢の罪を償い終えてないんだよ。そのうえ、脱獄してから痴漢の罪を重ね、フォーカス・フォースの力で色々悪さもしている。今度捕まったら10年じゃあ済まないかもしれないねえ」

「そんな……」

 私にはその言葉がとても絶望的に聞こえて、「しゅん」としちゃいます。

「だから、さ。……紗瑠ちゃん」

 おじさんはフォーカス・フォースのカードを出していいました。

「このカード。受け取ってくれないかい?」

「え?」

「おぢさんはこのカードを持ってる限り、罪を重ねることしかできない。だから、紗瑠ちゃんに使って欲しいんだ。このカードの力を」

「で、でもそうしたらおぢさん」

「おぢさんは死なないよ、ただ自首するだけさ。……だから」

 すると、苺ちゃんがいいます。

「受け取ってあげたら?」

 シムーンちゃんも、

「カードも、そのほうが喜ぶと思う、よ?」

「うん」

 私は、うなずきました。

「ありがとう」

 おじさんはいって、フォーカス・フォースを持った手を私に向けて伸ばします。

 

 

 ――その時、でした。

 

 

 

 

 

 

 

 後

 ろ

 か

 ら

 銃

 声

 が

 聞

 こ

 え

 た

 の

 は

 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 その日の夜。

 私はニュースでこんな報道を目にしました。

『では、次のニュースです。今日の昼頃、受刑中に脱獄した男が名小屋駅で少女3人に凶器を突きつける事件が発生しました。警察はやむなく男に発砲、運ばれた病院先で死亡が確認されました。男は某日、痴漢の罪で逮捕された所、刑務所から脱獄、痴漢や盗撮等複数の罪に問われ凶器を所有していた所から、署内では銃の使用が許可されており――』

 




こんばんは、CODE:Kです。
今回の投稿によって、帝国時代に発表したものを全てこちらに置かせて頂いた形になります。
また、ネタ切れにつきサブタイトルも帝国時代のものに戻させて頂きました。
サブタイトルは翻訳サイトを用いたドイツ語を使用。EP1~2はエキサイト翻訳、今回のEP6はGoogle翻訳で日本語での意味の解読を確認。
EP3~4は、どこかから某有名なワードのドイツ語版を引っ張ってきた覚えがあるのですが、直接検索しても現在確認が取れません。

では、今回はこれで失礼します。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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