せっかくなので一人称を試してみました。
最初はぷにっと萌えさん視点。
なんか三人称でも良かった気がします。
とりあえず改稿するにしても完結してからかな。
新たに知ること ※ぷにっと萌え視点
ダイブシステムが普及し始める前後、当然のように安全性が問題として上げられた。
流石に意識がネットワークに取り残されるのではなどという妄言を吐く人間はごく少数だったが(逆に言えば僅ながらいた)、ショッキングな映像を見て心臓発作を起こす人間がいるように、より実体験に近い臨場感を提供するダイブシステムが現実の人体に影響を及ぼすと考えるのは自然なことだった。
そのための対策の一つとして強制ログアウトがある。
これはダイブ中の人間の心拍数や脳波が著しく乱れた時などに実行され、俗に「気絶」などと呼ばれる。
ダイブシステムが一般的に使用されるようになってからは、滅多にない事象だったがワイズマンにとってはそれほどショックだったのだろう。
長らくゲームから離れていたためか、あいつの入れ込み様を忘れてしまっていたらしい。
後で謝る必要があるだろう。
申し遅れたが、私はぷにっと萌え。
アインズ・ウール・ゴウンで軍師と呼ばれる男である。
* * *
「取り合えず、ワイズマンさんを連れて行かないっていう選択肢もあるかと思いますが、それを支持する人はいます?」
モモンガさんが、本当に取り合えずといった様子で話を切り出す。
ありがたいことに、その意見に賛成するメンバーはいなかった。
あいつがいなければワールドアイテムの真の力がわからなかったというのもあるだろうが、友人の望みが否定されなかったことは素直に嬉しい。
「となると、何かしら連れて行く方法を考えないといけないわけですが」
「ギルドに加入させるのではだめなのか? 彼は社会人だろうし、異形種を取ってさえもらえば問題はないだろう?」
たっちさんが挙手をしてそんな意見を言う。
モモンガさんが何か言おうとした瞬間、ウルベルトさんが口を挟んだ。
「そう簡単にはいかんだろうな」
「……なんだ、ワイズマンさんの加入に反対するのか? ワールドアイテムを鑑定してもらったというのに薄情だな」
「別にお前の意見だから反対しているわけじゃない。現実的に考えて問題があると言いたいだけだ。ワイズマン氏がソロプレイヤーだったり、ごく普通のどこにでもいるプレイヤーなら特に問題もなかったんだが。彼は第二位のギルドのリーダーだ。こちらの都合で引き込むわけにもいくまい」
「それは……」
たっちさんがこちらに視線を向ける。ワールド・サーチャーズを知っている私に意見を聞きたいということだろう。
頷きを返して私は口を開いた。
「この前、モモンガさんと「名も無き図書館」を訪ねたときですが、数人とはいえプレイヤーに会いました。彼らに引き継げるなら移籍してくる可能性はあると言えます」
「それだけではないな」
ウルベルトさんが更に問題点を上げる。
「ワイズマン氏が入ること事態は喜ばしいし歓迎したい。だが、ワールド・サーチャーズとの同盟、いや、より正確には彼らの持つ知識か。ワイズマン氏がワールド・サーチャーズを抜けてしまえばその知識は利用しにくくなってしまう。何しろ同盟と言いつつワイズマン氏個人の関係によって知識を利用させてもらっている状態だからな。ワールドアイテムの真の力なり、限界突破職業なり有益な情報があるだけにワールド・サーチャーズとはできれば関係を維持したい」
「それはこちらの都合だろう? ワイズマンさんの移籍には関係なかろう」
「直接は関係ないな。だがワイズマン氏がワールド・サーチャーズを抜けることで損があるのも事実。せっかくだから関係を維持したいというのは間違いか?」
ウルベルトさんとたっちさんの意見を軸にメンバーが議論を続ける。
大筋で加入は認めても良いという意見が多く、ワールド・サーチャーズの知識利用については意見が分かれるといったところか。
結局のところ、「未知のワールドに連れて行く」という事にどの程度価値をつけるのか、が焦点になるのだろう。
ワールドアイテムを使わなければ行けないワールド。
その価値は低くは無いが、ワールド・サーチャーズが今まで集めた情報に匹敵するのか、と言われたら私も即答はできない。
膨大な時間をかけた情報と今まで発見されなかった希少性のある情報。その天秤はどちらにも傾きうる。
「そうですね。結局ワイズマンさん次第なところが大きいです。加入を申請してくるようであれば受け入れで、知識の利用についてはそのときまた相談しましょう」
案外、全部覚えているかもしれませんよ、などとモモンガさんが先延ばしを提案する。
さすがに覚えてはいないと思うが、700以上ある取得魔法を全部丸暗記して活用できる人間がいうと信憑性があるのが困りものである。
話が一段落したので、私はもう一つの可能性を口にした。
「一応、加入なしでも「生命の木の丘」に連れて行けるだろう、方法はあります」
「え? ならなんで早く言わないんだよ。加入の議論する必要なかったじゃないか」
「いや、加入させられるならそれが一番簡単なんです。こっちは可能は可能なんですが」
そこでいったん切ると「面倒?」「難しい?」とみんなが続けてくる。
「面倒で難しくて、恐ろしく簡単です。ワールドアイテムを装備してもらうだけなんです」
私がそういうと、メンバーがそれは考えてなかったとい表情をした。
以前我々が【ウロボロス】で封鎖された世界をワールドアイテムによって突破したように、ワールドアイテムの影響によって進入制限があるなら、ワールドアイテムあるいはワールドクラスの職業で突破は可能なはずである。
試していないから確実といえないのがアレだが、突破できる可能性は十分ある。
「そっちの問題は?」
「まず、ワールド・サーチャーズはほとんどワールドアイテムを持っていないはずなんです。あいつらはワールドアイテム一つより、未知のデータクリスタル一個に価値を見出すやつの集まりでしたからね」
「でも持っているには持っているんだろう?」
「個人の所有じゃないので持ち出しに制限があるでしょう。何より我々はPKギルドですよ? そんなところにワールドアイテムを装備した人間を一人で送り込みますか?」
「……まあ、ありえんな」
「でしょう? かと言ってうちから貸し出すのも違うでしょう。持ち逃げするようなやつでは無いと言わせてはもらいますが、ワールドアイテムはギルドメンバーでないものに貸すような代物じゃない」
「でも、それならば知識を利用させてもらうのに問題は起きないわけか。ワイズマンさんに異形種を無理にとってもらう必要も無いしな」
「これまた条件次第、か」
そう、結局のところどれだけあいつが未知の世界に行ってみたいと考え、どれだけこちらに対価を払えるかが重要になるのだ。
入れ込みようは知っている。だから行く事を諦めないのは確実だ。
しかし、あいつは我々の協力者であって、いまだ仲間ではない。
回答待ちか、と思っていると、モモンガさんが遠慮がちに口を開いた。
「えーと、なんと言うか。私が得たスキル『魔王軍』をつかったら何とかなるかもしれません」
私を含めてメンバーの視線が集中する。
そうしてモモンガさんが語った内容は確かに彼が発言を遠慮する「酷さ」があった。
取り合えずそれは最終手段ということで保留にされた。
あの様子なら明日にでも談判に来るだろうということで、ワイズマンの出方を待ちつつ扉を設置することになった。
* * *
そして次の日。
「えーと、これはどういうことでしょう?」
モモンガさんが困惑している。ついでに私も他のメンバーも困惑している。
ワイズマンだけでなく、他にも10人以上のプレイヤーがそろってモモンガさんに頭を下げていたからだ。
どうしてこうなった。
「ですから、我々ワールド・サーチャーズ現メンバー全員がアインズ・ウール・ゴウンに移籍したいのです。どうせなので合併をお願いしたい」
……どうやら未知のワールドはワールド・サーチャーズにとって今まで築き上げたギルドを投げ捨ててもいいほどに価値があるものだったらしい。
正直アインズ・ウール・ゴウンにとって利益がありすぎて信じられない気分である。
「え、でも、みなさんずっとワールド・サーチャーズを守ってきたのでしょう? 簡単に決めちゃっていいんですか!?」
そうだ、モモンガさん言ってやれ。
「もう半年ないんです」
「え?」
「一つのワールドを調べつくすのに半年ないんです。行ったら終わりではないのです。隅から隅まで回り、アイテムを探しつくし、素材を確認しレシピをあさり、情報を纏め上げるには時間が足りません。手段を選んでいる場合ではないと言うのが我々の結論です」
私の友人は想像以上に、「馬鹿」だったらしい。知りたくなかったかもしれない新しい発見である。
だが、悪くない。
そう思える私は、やはりやつの友人なのだろう。
とりあえずワイズマンさん達の行く末は次回。
なんかもう結論は出ている気もしますが。
この章ではメンバー切り替えつつ一人称で書いてみようかなと思ってます。
難しいけど。
でもできないと言うことに挑戦することが大事! のはず。