ユグドラシルでバランス崩壊がおきました   作:Q猫

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前回書き忘れましたが、ユニークアクセス十万、お気に入り2500行きました。
やはり嬉しいですね。
今回は「生命の木の丘」のさわりだけ。
早いところアンケートで貰った名前使いたいです。


魔境 ※ペロロンチーノ視点

ログインしたらギルドメンバーが13人増えていた。

わけわからん。

 

どうやら強制ログアウトさせられたワイズマンさんは、目を覚ますやいなや稼働しているワールド・サーチャーズのメンバーに連絡をとったそうだ。

最初はワイズマンさんがギルドを止めるという話だったそうだが、聡いメンバーに新発見があったことを嗅ぎ付けられ、渋々「生命の木の丘」のことを打ち明けたらしい。

ワイズマンさんの今までの調査結果から、そこが謎の新ワールドであるらしいとわかった瞬間、我も我もと行きたがったというのだ。

そしてどうせみんな行きたいなら、合併してもらおうと決議されたそうだ。

仕事が早すぎると言わざるを得ない。

 

まだ、見にも行っていないのに気が早いというか勇み足過ぎるだろう。

 

あ、そうそう。俺はペロロンチーノ。

姉に虐げられる哀れなエロの求道者である。

 

 

* * *

 

 

何が彼らを駆り立てるのだろうかと、姉ちゃんにこぼしたら、「あんたがエロゲ買うようなもんよ」と返された。

 

未知の世界と我が人生が同等とな?

……つまり未知の世界とはクリアしてないエロゲであり、彼らはそれをパッケージ買いしてしまったと言うことか。

それならば仕方あるまい。好みの子がパッケージで誘ってたら手を出しちゃうよね。

大抵、姉ちゃんが声を当てて萎えるのは忘れよう。俺は可能性にかけたのだ。

下調べしろとか無粋なことは言わないでくれ。

 

 

* * *

 

 

さて合併であるが、ユグドラシルのプレイヤーが減った時期にギルドの統合をやり易くするために実装されたシステムである。

拠点が双方にある場合、移築もできたりするのだが二つを一つにまとめることもできる。

大抵は渡り廊下をつけたような不恰好なものになるのだが、ナザリックなら余裕で内部に図書館を飲み込める。

場所は第10階層の図書室付近。

近日中に資料を図書館で管理することになり、図書室のNPCも移動することとなった。

ちなみに資料は申し訳程度にしか整理されておらず、源次郎さんがはりきっていた。

 

問題は彼らの拠点のNPCだった。

NPCそのものはポイントが足りれば引き継ぐことも可能なのだが、そのポイントはアインズ・ウール・ゴウンに依存するのである。

モモンガさんがレベルアップすれば、直に解決する問題なのだが今すぐには足りない。

そこでモモンガさんが得たチートスキル『魔王軍』の出番である。

なんとこのスキル、ユグドラシルのプレイヤーやNPCを魔王軍=アインズ・ウール・ゴウン所属にできてしまうのである。しかも無制限に。

彼らが俺の(ここ大事)シャルティアのように愛を注いだNPCがいても安心である。

 

なぜかこのすごいスキルを話すのをモモンガさんは躊躇っていた。

そしてウルベルトやぷにっとさんの反応がおかしかった。

拠点が強くなるんだから特に問題ないはずなんだがな?

 

 

* * *

 

 

いろいろあって、数日後。

俺たちは全員揃って「生命の木の丘」に突入した。

総勢54人、なんと9パーティーも作れる人数である。

なので、たっちさん率いる物理系パーティー、モモンガさん率いる魔法系パーティー、死獣天朱雀さん率いる機動力重視パーティーの三チームに分けて統率することになった。

どのチームにもワールド・サーチャーズのメンバーがいて懇親をはかる目的である。

ちなみに俺は機動力チーム。飛べるからね。

 

「生命の木の丘」の第一印象は「きれいな場所」である。

特筆すべき特徴があるわけでなく、静謐な森、太陽光を反射して煌めく湖、穏やかな空といった風景が広がっている。

森の先が盛り上がっており、そこに遠目からでもわかる巨大な木が見えた。

恐らくあれが「生命の木」なのだろう。

 

出たところは世界の端っこだったようなので、最初は三手に別れて行動を開始した。

俺たちのチームは自前の飛行能力や≪飛行/フライ≫を使っての空中移動である。

空中からざっと見た限り、この世界は他の9つの世界ほど広くはない。

正確に測っているわけではないが体感で3分の1くらいに思えた。

 

で、平和だったのはここまで。

空中をショートカットとか許してくれる運営じゃないと思っていたが、レベル160のドラゴン系エネミーが出やがった。

まあね、1体ならどうにでもなったよ?

こちらは100レベルをちょっと越えた程度とはいえ3パーティーいるんだしね。

だけどさ、それが4体ってどうよ?

あいつら普通にボスとして配置されるエネミーだよ? ラスダンではボスが雑魚として出て来るっていっても限度があるだろ。

幸いなことに(?)ボスからは逃げられないなんていう仕様は無かったため撤退できたわけなんだが……

やっぱ空中ショートカットは無理だねーなんて話ながら戻っている最中、モモンガさんからヘルプが飛んできた。

 

「天使系エネミーと遭遇! ボスクラスが2体、100レベルの熾天使が取り巻き(・・・・)としてついてます。可能なら救援を!」

 

魔法チームの主力はウルベルトさん。当然属性は極悪であるため被ダメージ的に大変不利である。

こっちの攻撃も多少通りやすくなるから致命的ってわけでもないが、ボスの攻撃を食らえば即座に瀕死である。

できるなら避けたい相性の敵だ。

 

「ふむ、2チーム回して撤退を支援すべきかの。天使系が多いならたっち君は恐らく問題ない。じゃあペロロンチーノ君、君が指揮をとって……」

 

朱雀さんの采配に俺が了解を返そうとした時だった。

今度はたっちさんから救援要請が届いた。

 

「こちら、たっち・みー! 同じく複数の悪魔系(・・・)ボスエネミーと交戦中! できれば、救援を頼みたい!」

 

俺たちは顔を見合わせた。ユグドラシルの常識的に考えてボスエネミーがそんなに近距離にいるのはおかしい。

いや、RPGとして考えても当然だろう。

ボスに集中して戦ってたら横から別のボスが殴りかかってくるとか、クソゲーにも程がある。

おまけに天使と悪魔という属性的に真逆のエネミーが比較的近距離に湧くというのもおかしい。

何よりこの難易度がおかしい。

だってここは限界突破前に来るはずの場所(100レベルが適正の狩り場)であるべきなのだ。

 

「……悩むのはあとだ。俺のパーティーはモモンガさん達の救援に行く。朱雀さんは全体を管制して出口確保して。この分だと入り口付近もどうなってるか考えるのが怖い。残りがたっちさん達の救援だ!」

「! 承知した!」

「オッケ。みんな急ぐよ!」

 

その後、俺はモモンガさん達に合流して大火力でヘイトを稼ぎがちなウルベルトさんを援護しつつ撤退した。

驚いたことにボスエネミーは「名持ち」だった。ガブリエルとハニエル。超のつく有名どころである。

正直こんなところでうっかり出会っていいモンスターではない。

運良く、本当に運良くモモンガさんの即死攻撃が取り巻きを倒してくれたので回復持ちのガブリエルを落とすことに成功。

全員が切り札を投入してハニエルを撃破すると即座に遁走した。

 

たっちさん達も敵を撃破して戻ってきていたがやはり切り札を使いきっていた。

さすがに誰もこれ以上探索しようとは言わず、「生命の木の丘」への第一回遠征は散々な形で幕を閉じたのだった。

 

魔境すぎんだろ。

 

 

* * *

 

 

その後のワールド・サーチャーズの資料再確認と推察でわかったことだが、「限界突破チケット」は「生命の木の実」のデータを流用しているらしい。

そして丘に突入したメンバーが使用した「生命の木の実」の総数でワールドの難易度が変動するとのことである。

俺たち既に1000個以上使ってることになるんだよな……

試しにワールド・サーチャーズのメンバーだけで突入したところ大分ましではあったそうだが彼らは戦闘能力が低く、奥地まで探索を継続するのは困難であるとのことだった。

中心部ほど敵が強くなるのできついらしい。

引き際を弁えてくれる人達で本当に良かった。

 

ちなみに門近辺で取れる素材だけでも高位のポーションが作れるとかでタブラさん以下製作班がめっちゃ喜んでいた。

あの状況で採取とか試していたとかさすがすぎる。

 

なんにしてもあの魔境探索は全員のレベル上げをしてからになりそうである。

サーチャーズの何人かは敵を避けつつ調査にいってくれるそうなので次は地形くらいは把握できているはず。

久々に事前準備を万全にしなければならないマップにワクワクしてくる。

 

最後にやまいこちゃんがあの混戦の中「限界突破チケット」を拾ったらしい。

さすがの豪運であるが、運営の設定の適当さにワイズマンさんが怒り狂ってたのを付け加えておこう。




散々な初回攻略でした。
本当はワールド・サーチャーズの誰かが新ワールドに入った瞬間どこかに突撃したりするかなと思いましたが、自重させました。
アインズ・ウール・ゴウンの心証を下げる意味もないですしね。

全く反省せずにまたアンケート。
例によって活動報告の方で答えて頂けたら嬉しいです。

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