ユグドラシルでバランス崩壊がおきました   作:Q猫

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風邪をひいてました。今もひいているかも知れ得ない。
年内に完結するかは私も分かりませんが適当にがんばります。
今回もちょっとつなぎの回。
ゲームなんだしこんなのもあったかなというシステムです。

左半身が不運さんの「シユウ」、雷帝2さんの「カッチン」、人食い椎茸さんの「サイプレス」、飲み薬さんの「サタンクロス」を採用させていただきました。
まだまだ採用するかもしれませんが、とりあえず彼らはどこかで活躍させようかと思います。

追記
採用させて頂いたキャラにケツアゴさんの「わんこ十三世」が漏れておりました。申し訳ありません。


フレーバースキル ※武人建御雷視点

俺の家は「建御雷流」などとご大層な名前の古武術の宗家である。

この名前は由緒正しい、というわけではなく割りと近代になってつけられた名称である。

曾祖父の時代には古武術なんぞ流行らず、いくつもの流派が廃れて消えていく状態だったのだ。

要するに圧倒的な後継者不足である。

なので曾祖父は考えた。古武術統合しちまえばいいんじゃね、と。

 

元来戦場で使われた戦闘技法を体系化したのが、武術でありそれを比較的古い形で継承しているのが古武術である。

戦場において刀しか使えないだとか槍しか使えないとか言っていたら馬鹿である。

武器を失ったからといって諦めるようではそれこそ戦場では使えない。

どの流派もそれなりの理論を持っているが、目的は戦場で生き残ることただ一つなのだから統合はできなくはなかった、らしい。

実際は色々悶着はあったのだろうが、現実に統合されたのだからなんとかなったのだろう。

 

問題として俺の家に伝わっているのはこの時の流派の名前をどうするかということだったらしい。

俺の流派の名前を、いや俺の所のをと揉めに揉めた結果、新しい名前を、となったそうな。

そこで誰もが納得する名前として古代の武神の名を頂戴したのだとか。

戦いがないのに戦闘技術を継いでいるような奴はきっと馬鹿だったのだろう。

 

その武神の名前を継いだ現在の継承者が俺である。

まあ、俺もその名前をプレイヤーネームに使用しているのだから大差ないが。

 

俺の名は武人建御雷。

残念ながら曾祖父から続くセンスは俺の中でも健在な様である。

 

 

*   *   *

 

 

無形文化保護財団、という組織がある。

読んで字のごとく、物品として残らない文化の保護のために資金を提供する財団である。

俺の家も古武術がそれにあたるということでこの財団から支援を受けている。

弟子を取る以外に金を稼ぐ手段がない古武術としては貴重な収入源になる。

 

ただしこの財団も慈善事業でやっているというわけではないので、彼らの求める協力をしなければ援助は本当に金を出したという建前が成立する程度だ。

彼らの要求は無形文化の有形化である。理念の文書化、訓練風景の映像化といった活動で、これらは売り出されて財団の資金源になる。

当然、秘伝だとか一子相伝なんかの「文化」には喧嘩を売っているので「所詮金儲けに過ぎない」と財団を嫌う文化人も多い。

伝える人間が居なくて途絶えるくらいならと、俺の流派は父の代からこの財団の事業に積極的に協力している。

「古」武術なんぞといいつつ歴史が恐ろしく浅かったことが幸いしたのだろう。

だが、そのおかげで秘密でもなんでもなくなった流派に入門する人間はおらず、道場は閑古鳥が鳴いている。

 

さて、その財団だが彼らが最も注目しているといって過言でないのがダイブシステムである。

何しろ内部では運動したい放題。材料も無制限。この地球になくなった素材すらデータさえあれば再現できる。

動きを保存するのに、いや、体験を保存するのにこれ以上適切なツールはないだろう。

財団は俺にダイブシステムへのデータ入力の依頼をしてきた、というわけだ。

 

最早躊躇する理由はなかったのだが、俺が気にしたのはその再現性だった。

最低限俺の思うように動けないのであれば、データ入力を行っても意味がない。

下手なものを残すくらいならば結婚なり、養子なりで後継者を斡旋してもらい次代に協力させる方がいい。

そんな主張が通って俺はユグドラシルをプレイすることになったのだ。

なんでRPGなのかというと対戦型ゲームでは武器がなかったためである。

一応、現実の俺の技術に影響がないように魔法職か異形種を選んでくれと要求された。

むしろそちらの方が技術に変化がありそうなものだがスポンサーには逆らえない。

 

ここまで長々と財団について語ったわけだが、当然彼らはダイブシステムを用いたユグドラシルにも出資して体験コンテンツを導入させている。

説明がくどく「フレーバースキル」という特にゲーム上意味がないスキルとそこそこの経験値を得られる。

そのため超がつくほどの不人気コンテンツである。

わざわざゲームの中でまで勉強したくないし、モンスターと戦ったほうが圧倒的に経験値効率がよいからだ。

 

 

*   *   *

 

 

「みんなでフレーバースキルを取りに行きませんか?」

「レベル上げの戦闘ばかりで単調になっているところもありますしね」

 

唐突にワイズマンとぷにっと萌えがそんな提案をしてきた。

その主張はわからないでもないのだが、先に言った通りこのコンテンツは拘束時間が長いわりに経験値はさほどではない。

 

「別に構わないと言えば構わないが、わざわざやるようなコンテンツか?」

「娘にやらせるには悪くないから行ってもいいんだが、確かにあえて今やらねばならない代物とは思えんな」

 

ウルベルトとたっちがそれぞれ肯定とも否定とも取れる返事をする。

実際微妙なのだから仕方ない。

何より発言が変だったから指摘することにした。

 

「それよりなぜ『フレーバースキル』を取ることがメインなんだ? あれはゲーム的な意味がなかったはずだ。わざわざそれを理由にするということは何かあったのか?」

 

俺の指摘にみんなの視線が二人に注がれる。

 

「実はですね。フレーバースキルと称号に相乗効果があるんではないかと思っているんですよ」

「どうもこいつが調べた限り称号とフレーバースキルはかなり対応している様に思えるとのことでして」

「試してはいないのか?」

「流石に時間がかかるので、称号一つにつき対応するフレーバースキルがいくつあるのかまでは検証できてはいません。職業の最低レベルから推測するに5つではないかと思うのですが……」

「実際に確認できているのは『宰相』で『事務処理』と『法律』、『王国軍師』で『軍略史』と『謀略論』ですね。ほんのちょっとですが称号の効果が増えました」

「ぷにっとのはまだしも、ワイズマンさんなんでそんなつまらなそうなものを……」

「検証のためです」

「あ、はい」

 

言うまでもないかもしれないが、ぷにっと萌えは『王国軍師』を選んでいる。

ワイズマンさんは元ワールド・サーチャーズを代表しているということもあり『宰相』を選ばされた。

探索にまったく関係ないので本人は残念がっていたが、モモンガさんが『国王』相当の『魔王』である。

それなりの立場についてもらわねばならないということで我慢してもらうことになった。

 

「そういえば『魔王』というか『国王』のフレーバースキルってなんなんですかね……」

「『法律』だったらどうすんの?」

「う……それは『宰相』だったそうですから同じものはないと思いたいです」

「『園芸家』と『造園師』みたいにほとんど被っているやつもあるからなあ」

「いやなこと言わないでくださいよ」

「今のところ「王宮」とか「宮廷」とかついているやつは『宮廷作法』が共通しているのではないかと」

「共通しているのか……というかどこからそんな講習出してくるんだ」

 

みんながそんなことを言い合っているが、自分も気になることがある。

 

「俺は『武芸百般』を選んだんだが何が対応していると思う?」

 

 

*   *   *

 

 

答えてもらえなかった。

いや、正確には候補が多すぎてどうにもならなかった。

なんでも『剣道』『剣術』『刀術』の様に被っているんじゃないかと言いたくなるフレーバースキルも多いらしい。

5つでは全く足りなさそうだがどうしたものか。

 

などと思っていたら、あった。

いや、分かってしまった、というのが正しいか。

『建御雷流』がフレーバースキル化されていた。

 

俺がこのゲームと疎遠になったのは、まさにこれの元データを作るためだったというのに。

そして誰よりこの体験コンテンツに詳しいというのに。

わざわざ時間を費やしてやる意味がないにも関わらずやらなければいけない。

ゲームの不条理を感じる。せめてこれくらい免除にならんものだろうか。

 

 

*   *   *

 

 

よく考えれば当たり前だったのだが、これらの体験コンテンツは好きな人は本当に楽しめる。

ユグドラシルであえてやる意味がないだけで、コンテンツの元データは財団が金になる程度に価値があるとの判断で選抜したプロなのだ。

俺が製作側について知っていたせいでやや偏見があったようだ。

このコンテンツだって体験者一人当たりいくらとかで財団に金が入るのだろうから、裏側を知っているとなんだかなと思うのは仕方ない。

俺にしてみると、知識系は本当に勉強させられて面白くもないが、クリエイト系や戦闘技能系、芸術系などでは本当に体験ができるので意外に面白い。

 

知識系だって楽しい人は楽しいのだろう。

ブルー・プラネットが『植物博士』、源次郎が『昆虫博士』、わんこ十三世が『動物博士』、シユウとカッチンが『刀剣博士』なんかを楽しんでいた。

こっちはまだいいのだが。

サイプレスの『拷問史』、サタンクロスの『完全殺人マニュアル』、るし☆ふぁーの『いたずら大全集』のような字面からして碌でもないものを楽しんでいた連中もいたことを付け加えておこう。

実際にやらなければ問題ない。

 

そんなこんなで息抜きに自分の称号にあったフレーバースキルを探しつつ俺達の強化は着々と進んでいった。

 

そして復帰から3カ月。

ついにぷにっと萌えから2ch連合攻略の概要が説明された。




ぼちぼち時間を進めたいですが、ちょっと戻ってワールドアイテム探索に付き合うウルベルトさんとかモモンガさんが作ってきたアバターを論評するるし☆ふぁーとかを書きたいところです。
あと誰書こうかな。

最後のは残り3カ月から本格的に動くよってことだと思ってもらえれば。

あと活動報告にもう一つアンケートを。
せっかくアンケート使いまくっているのでとことん活用しましょう。

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