レベル上限の開放というアップデート。
それは12年にわたりゲームバランスの維持に尽力してきた人間には特に受け入れ難かったようで、中には上層部にまで強硬に反対を上申したものまで出た。
しかし2000以上のクラスがあるのである。
その中からバランス崩壊につながるような組み合わせを見出すのは容易でない。
どんな組み合わせがバランスを壊すレベルでチートなのか?
それに該当するプレイヤーがどれだけいるのか?
そもそも半年でどこまで問題が顕在化するのか?
これらの問題に答えられる人間はいなかった。
結局、反対意見は参考程度にとどめられアップデートは実行に移された。
* * *
アップデートの概要は以下の通りになる。
・レベル上限の開放
全プレイヤーのレベル上限が110になります。
更なる上限の開放のためには「限界突破チケット」が必要になります。
「限界突破チケット」は各地のボスがそれなりの確率で落とすほか、課金で四枚まで購入できます。
「限界突破チケット」は他プレイヤーに譲渡できます。
上限の上昇は以下の通りです。
~150(1枚につき+10)
~200(1枚につき+5)
~230(1枚につき+3)
~250(1枚につき+2)
~256(1枚につき+1)
<運営の目論見>
アップデートのメインとなるレベル上限開放。
古参プレイヤーほど、やりこんだ人間ほど、「あと少しのレベルアップ」を期待していたと予想されるため、カムバックが期待できる。
課金チケットの販売が見込めるほか、ボスドロップを狙うにもレベル上げにも相応の時間がかかるため最終月までプレイする可能性が高まる。
基本的にプレイヤーのレベルは150~200で収まるというのが運営の想定である。
バランス崩壊によってソロでボスモンスターを討伐するプレイヤーが現れることは考慮されてはいるが、リポップ待ちや取り合いが起きる事から極端に一人にチケットの取得が偏ることはない、はずである。
・全亜人種・異形種へのスキルの追加
全亜人種・異形種にスキル「人化」が追加されます。
人間種が亜人種・異形種をとった場合、取得済み職業は制限にかかりません。
亜人種・異形種のプレイヤーは人型アバターを設定する必要があります。
「人化」の仕様は以下の通りです。
変身開始から完了まで1分かかりその間無防備になる。
変身時に全MPの半分を消費する。
人化時は種族から得られるステータス補正は8割になる。
人化時は人間種として扱われるため、種族レベルで取得する一部スキルが使えなくなります。
<運営の目論見>
一見デメリット軽減による異形種優遇に見えるが、別にそういうわけではない。
最大の目的としては人化による異形種のPKの防止にある。
運営はPKを否定はしていないが、異形種が過剰なまでのPKの対象になっていることは当然理解している。
それを承知で異形種をプレイするのが正しいといえばそれまでだが、回避する方法が少なかったのも事実である。
せっかくなので最後くらい異形種も楽しんでほしいというわけである。
もちろん人間種が異形種をとれば8割に低減されたとしても大幅なステータスアップになるというメリットがある。
まあ、異形種のイメージはすさまじく悪いため人間種が活用するかは不明である。そもそも知っているか怪しい。
・贈答用限界突破チケットの配布
キャンペーン開始時点でプレイしている全プレイヤーに贈答用の「限界突破チケット」が配布されます。
チケットは運営メールを開くことでインベントリに入ります。
インベントリに空きがない場合は、お手数ですが空きを作ってから再度メールをお開きください。
贈答用「限界突破チケット」は他のプレイヤーに譲渡する以外の使用ができません。
相手のレベル上限が256に達していた場合、「限界突破チケット」は使用されず返却されます。
<運営の目論見>
様々な事情でプレイしなくなったプレイヤーは戻ってくる際に、未だ残っているプレイヤーに会うのが気まずいという場合がある。
極論するとそれを軽減するための賄賂となるのがこのチケットである。
無課金のプレイヤーも二人で贈答し合えば上限は120になるので、極端なボス狩りを行わなくてもそれなりに楽しめるようになる狙いがある。
* * *
このアップデートを聞いて多くのプレイヤーがユグドラシルに戻ってくる事になった。
そしてそれはアインズ・ウール・ゴウンのメンバーもまた例外ではなかったのである。
もちろん狙いはアインズ・ウール・ゴウンを強化することなわけです。
が、他のプレイヤーに益がない様なのは当然無理だろうな、と思ったわけで。
適当にでっちあげてみました。
次はようやくアインズ・ウール・ゴウンのお話になるかと思います。