ユグドラシルでバランス崩壊がおきました   作:Q猫

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そろそろモモンガさんに怒ってほしいがなかなか仲間に対して怒りゲージがたまらない。
早いところ一回は怒ってもらおう。


今回は守護者ではないですが葵ふうたさんの「ハンマー・ザ・コヅチ」に影響を受けたモブを出してみました。
アイデアありがとうございます。


防衛戦(3) ※ぶくぶく茶釜視点

モモンガさんから自作アバターを見せられた。

……うん、あれだ。良く言えば、いや、言葉を選びに選べば独創的と言っていいような気がしなくもない。

 

一応何がしたかったのかはわかる。おそらく女性アバターが見事なまでに黒一色だったから白をコンセプトにしたかったのだろう。

そしてステッキにシルクハット、スーツにコートを羽織っているあたりからイメージはイギリス紳士だろうか。

下手に白だけで統一しようとせず手袋や襟の辺りは色がついている。

そう、服装は悪くない。

 

問題はやはりというか人体部分だ。

パーツは既存のものを組み合わせたのだろうから、目だけ口だけを見れば整っている。

しかしながら、全体で見るとどうにもバランスがよろしくない。

なんだろう? 下手にイメージがあるとちょいちょいいじってしまうのだろうか?

こちらも幸いにしてコンセプトはわかる。

たぶん狂気的な表情を演出したかった……はずだ。ごめんやっぱり自信ない。

 

「あー、モモンガさん。やっぱりこれは許可できない」

「うん、モモンガお兄ちゃん、これはちょっと……」

「あ、もういいです。これ以上言われたら心が折れそう」

「あーあーわかった。いったんまとめよう」

 

言葉を濁しつつも否定的な意見に凹むモモンガさんという流れを遮るように、手を打ちながらるし☆ふぁーが話をしめる。

こいつが建設的な話をすることはめったにない、というか本当に数えるほどである。

それだけにこいつが主導しだすと一気に話が進むのだがものすごい納得がいかない気分にさせられる。

今回は事前に根回しがあったにも関わらずそう思うのだから大概である。

 

「じゃあモモンガさん、約束通り別条件をここでみんなで採択しよう」

「あれ、るし☆ふぁーさんが決めるんじゃないんですか?」

「んなわけなかろう。みんなで決めたルールを俺だけの裁量で変えたらだめだろう」

「なんでこんなときだけ正論なんですか」

「こんなときだからに決まってるだろ」

 

うん、モモンガさんわかるよ! 納得いかないよね。

こいつの正論とかおかしさMAXだよね!

でも、ここは乗るべきだと思うんだ。

 

「モモンガお兄ちゃん抑えて抑えて。それで、るの字。どうやって決めるよ?」

「いつも思うけど俺の扱い酷くね?」

「いい扱いして貰えると思う方がおかしい」

「それもそうか」

 

納得しやがった。なんかやりにくい。

こいつに大人の対応をされると自分がひどく子供っぽく思えて非常に嫌だ。

私はロリキャラを演じているのであってロリになりたいわけではないのだ。

しかしまともなこと言ったと思ったらいきなり変な提案をしやがった。

 

「んで、俺から提案するぜ。一つは「デュアルアバター」買って今のアバター消さないこと。これはモモンガさんが自作するわけじゃないから受け入れてくれ」

「え」

「あと俺は未だに会えないわけだが、みーにゃちゃんがかわいそうだろ」

「いや、でもアバターを変えることを機会に教えようと思うわけで」

「……無理じゃないですかね。今まで言えなかったわけだし」

「ぷにっとさん!」

「俺も本当に申し訳ないが、できればサービス終了までごまかしてくれるとありがたいんだが」

「たっちさんまで!」

 

モモンガさんは女性アバターが嫌だから変えたいと言っているのに。なんたることだ。

ぷにっとさんが乗ってしまい、おまけにたっちさんまでが賛成に回ってしまうとモモンガさんに勝ち目が薄い。

だがたっちさんが人の嫌がることをしてまで、るし☆ふぁーの提案に乗るということは……

ここは聞いてみる必要があるね。

 

「あのさ、たっちさん。ひょっとしてみーにゃちゃん大分まずい?」

「まずい、というのが何をさすかによるが……だいぶ」

「え! 健康に不安があるとか病気とか! まさかいじめられているとか!」

 

なんてこった。みーにゃちゃん相当入れ込んでいるな。

そしてモモンガさんまったくわかってない! そんだけ心配してくれるお姉さん(・・・・)だから懐かれているんだよ!

どうしよう、モモンガさんのために反対してあげたいけど、みーにゃちゃんのことを考えると賛成しなきゃならんし。

くっ、なんと言う二律背反。

 

結局私は投票を棄権した。そしてその結果、モモンガさんは女性アバターを消せないことになった。

モモンガさん本当にごめん。変わりにならないかもしれないけど、男性アバター作成は全力で支援するから!

 

 

*   *   *

 

 

「ん、シャルティアが後続倒しきったみたいだぞ」

「よっしゃ! さすが俺のシャルティア!」

「墳墓をどのくらい通したんだっけ?」

「確か7割くらいだったか。予想では2割くらい削れればいいと思ってたが想像以上に倒せたな」

「平均レベルが相当低かったな」

「レベル200に達しているプレイヤーがいなかったのもあるし」

「なんでかしらんがシャルティアに突っ込んできた奴が多かったのもあるなあ」

 

うむ、馬鹿が多かったらしい。さすが2ch連合だ。

どうせなら美少女に殺されたいとか考えた奴が何割かいたに違いない。

あと、弟黙れ。

 

「全体の脱落はどれくらいかな」

 

正確な数は分からなかろうが目安は知りたい。とりあえず聞いてみる。

 

「そうだなあ。んー、概算になるが残り5割きったな」

「え、だいぶ脱落してるね」

 

まだ第4階層だというのに、びっくりである。

本当に空中庭園で全滅するのではなかろうか。

 

「先頭はそろそろ深海に突入するかな」

「下手に事前知識仕入れているっぽいからなあ。驚きすぎてそこで全滅するんじゃね」

 

さすがにそこまで間抜けと思いたくはないが、シャルティアの件を考えるとないとはいえなくもない。

うちも他所の事をとやかく言えないが、2ch連合だしなあ。

 

 

*   *   *

 

 

深海のエリアに敵が突入すると同時に歌が響き始めた。

餡ころもっちもちさんが作り上げたマーメイドとセイレーンを種族に持ちバードをメインにした守護者である。

水中だと音の届く範囲と音の速度が跳ね上がるので、進入直後から攻撃が可能なのだ。

名前はコリエンテ。見た目はおっとり系の美人さんである。

 

侵入者たちはいきなりの水中に放り出されはしなかったものの、狭い入り口で立ち往生だ。

いきなり水に突っ込めるほど現代人は図太くない。

だがもたもたしていれば、何もできないまま死ぬことになる。

そう、今コリエンテが歌っているのは魂を死へと誘う歌。

かなり長時間にわたって聞かせないと効果が無いのでネタ扱いされているが、一定時間聞くだけで魂が抜かれる極悪な歌だ。

ちなみに即効性がないから「即」死攻撃ではないらしい。

 

その攻撃の性質上音耐性が高ければ、一応死ぬまでの時間は長くなる。

が、音属性攻撃というのは「子守唄」なら睡眠耐性、「破壊音波」なら単純な物理防御力といった別の手段で対抗できるものがほとんどであるため、音そのものに耐性を持たせるプレイヤーは少ない。

何より完全に音耐性を得ると周囲の音が聞こえなくなるのでプレイに支障がでるのだ。

しかしながら泳ぎが必須のため攻略に時間がかかるだろうこのエリアにおいて、この攻撃は実に性質が悪いといえる。

 

おまけにコリエンテはテイマースキルも所持している。

そしてこの深海エリアにはクラーケンを筆頭に大海蛇、家を丸呑みできそうな巨大なアンコウ、水面に擬態した超大型クラゲ、動く要塞のような鯨といった彼女の使役する大型モンスターがかなりいる。

よほどのことがない限り襲い掛かってこないが、海上でならまだしも水中で戦いたいと思うやつは少数派だろう。

戦えば無駄に高いHPを削るのが大変なので時間をとにかく浪費する。

戦わなければ今度は大回りを余儀なくされて移動に時間がかかる。

レベル200にしては本体は強くないがテイマー系で強化されまくった彼女のペットは非常に凶悪な存在となるのだ。

 

餡ころもっちもちさん、本人に自覚ないけどギルド内部でも1、2を争うえげつない仕掛けを考える人間なのである。

繰り返すが本人に自覚は、まったくない。

たまにではあるがうちの軍師が引くことがあるといえばどれだけかは想像できるのではなかろうか。

 

何人かはこの歌の正体を知っていたのだろう。意を決したかのように少しずつ水の中に入っていった。

そしてその行動を後押ししたのは、下手くそな泳ぎで前を進む人影の存在だろう。

そう、このエリアには人型のモブが配置されている。決してプレイヤーのそばには寄らないが遠距離から姿を見せるためだけに配置されているのだ。

彼らは暗くて広い深海でプレイヤーの動きを誘導する罠なのである。

 

ただでさえ動きにくく薄暗いのにクラーケンをはじめとした超大型モンスターが徘徊しているエリアである。

攻撃にさらされなくとも簡単に逃げられない中で大型のモンスターの直近にいるのは神経がよほど太くないと、いや、たとえ神経がワイヤーでできていても遠慮したいところだろう。

考えてみてもほしい。自分からたった(・・・)3Mくらいのところに巨大生物の触手が通ったりするところを。

想像してみてほしい。自分の頭上を自分より圧倒的にでかい生物がゆっくりと移動していくところを。

しかもそれらは怒らせたら確実に襲い掛かってくるのだ。

せめて人が多いところに行きたくなるのは当然の心理といえる。

 

ちなみに人影のリーダー固体は作成者のブランク・ルックより「オトリ」「デコイ」「ギジエ」の名前が与えられている。

ちなみに「ギジエ」は女性だ。水着を着てるからプレイヤーでないとすぐばれそうなものだが、「水着の女の子がいれば絶対に引っかかる男はいる!」と力説していた。

とりあえず弟が深くうなずいていたので合わせて殴っておいた。

 

その何も考えていないような作戦は見事当たって、遠目におっぱいがみえて露出度が高いのがわかっただけでノコノコ寄って行った馬鹿はそれなりの人数に上った。

これだから男ってやつは。

 

そして沈没船や海底神殿で力尽きてログアウトしたプレイヤーも相当数いたようだった。

たどりついたは良いもののゴールでないことに気がつき、もう一度探索に出る気力がなかったらしい。

ナザリック所属者以外がそんなことをしたら強制ログアウトだというにやってしまった辺り、本気で気力をへし折られたに違いない。

 

そんなこんなで深海を突破できた敵はさらに少なくなっていた。




未だに深海まで。というか本来ここで全滅してもおかしくないね。
話の都合上もうちょっと残ってもらわねばならないけど、本番ではきちんと猛威をふるえるだろうか?

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