ユグドラシルでバランス崩壊がおきました   作:Q猫

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この前のアンケートの応募数にちょっとビビッてます。
おかしいよね? 私モモンガさんにやられるって明記したよね?
まあ、日本だから仕方ないと言われたので納得しました。
確かに仕方ない。

今回、墺業絨簸さんより「ダークン」「さまよう」、Isaacさんより「もょもと2nd」、影響を受ける人さんより「カーヌ」、ぼるてっかーさんより「やるO」「やらない王」を採用させていただきました。
ご参加ありがとうございます。


会議 SIDE:O

その日、やらない王は友人のやるOにつれられて森の中を歩いていた。

 

「おい、いい加減どこに向かっているか説明しろよ」

「お? 言っていなかったかお?」

「まったく聞いてねーよ。INしたらいきなり『さあ、もたもたしないで出発だお!』とか言って連行しただけじゃねーか」

「そうだったかお? まあ、人と会うだけだお」

 

結局誰と会うのかどこに向かっているのか説明しないままやるOはきびすを返した。

やらない王はやれやれとため息をつく。

この友人はやりたいことを見つけるとあっという間に段取りを立てて、こちらに断りもなく巻き込んでくるのだ。

付き合う自分も大概だが、いい加減ガツンと言ったほうが良いのではないかと思う。

思うだけで口に出さないのは、それが面白かったりするからなのだが。

 

「ついたお」

 

そう言ってやるOが立ち止まったのは、森の中にポツンとある洋館だった。

 

「こんなとこに建物なんかあったのか。てかこの表示は……拠点か?」

「そうだお。「幻想笛吹きの集い」っていう最近できたギルドだお。今日は場所を貸してもらってるお」

「そうか……って今更ギルド作ったのか!? 普通にありえないだろJK」

 

なにしろあと数ヶ月でこのゲームのサービスは終了するのだ。

今になってギルドを作るとは何を考えている集団なのだろうか。

 

「まあ、今日会う人たちに会えば分かるお。たのもー!」

 

やるOが声を上げると入り口のガーゴイルの目が光り、きしむような言葉を発した。

 

「合言葉ヲドウゾ。『桃』」

「『骨』」

「認証シマシタ。オ入リ下サイ」

 

この時点でやらない王にも分かった。

これ、ナザリックを攻略する……馬鹿の集まりだと。

 

 

*   *   *

 

 

案内された部屋の中には、既に数人のプレイヤーがいた。どうやらやるOとやらない王が最後だったらしい。

流れ的にこの集まりを主導したのはやるOだったはずだが遅れていて大丈夫なのかと心配になる。

ほとんどペアで行動していたためセットで扱われる身としては、いきなり知らないプレイヤーに悪印象を持たれるのは勘弁願いたいところだった。

 

「やあやあ、諸君。本日は集まってくれてありがとう。主催させてもらったやるOだお。よろしく頼むお」

 

対してやるOは罪悪感など微塵も感じていない様子で、気負うことなく集まったプレイヤー達に声をかけた。

こいつのこういう態度はいただけないと思うが、社交性だけは評価してやってもいいなどとやらない王は思う。

しかし空気が読めているかは別である。

 

「……御託はいい。俺たちを集めた用件を言え」

 

壁に寄りかかり瞑目して腕を組んでいた悪魔種族のプレイヤーが容姿にたがわぬ低い声で無愛想に応じた。

まさかこいつ何も言わずに人を集めたんじゃなかろうなと心配したが、やるOの態度に変化はない。

 

「そうだねえ。アインズ・ウール・ゴウンについて話がしたいってだけじゃあ良く分からないよね。彼らの名前を出されたんじゃ僕らは動かざるを得ないんだけど……あんまりふざけた内容だとダークンが怒っちゃうよ?」

「さまよう、余計なことは言うな」

 

悪魔の隣にいた空っぽの鎧の台詞で最低限のことは伝えていたと分かった。

二人の名前と会話の内容からして安心はできなかったが。

名前が偽りでないのならば、この二人は「黄昏の騎士団」、通称「魔王親衛隊」のギルド長とサブマスターだ。

黄昏の騎士団はアインズ・ウール・ゴウン入団条件の「社会人」に合致しなかったメンバーで構成されたギルドとして有名である。

社会人でない=学生やニートであるため、社交性が低く結局に公認を受けることもないままであったと記憶しているが、悪のギルドであるアインズ・ウール・ゴウンに強い憧れを持ったメンバーで構成されている。

メンバーの若さもあいまってやや暴走気味なので話し合いの場でもまったく安心できなかった。

 

「そうさな。我が主神に仇なすような事があればただではおかんぞ」

 

こちらにも不穏なプレイヤーがいる、とやらない王は警戒を強める。

こちらはより直接的に「冥府親衛隊」を名乗っている傭兵団の長であるカーヌというプレイヤーだった。

メンバーはアインズ・ウール・ゴウンに助けられたプレイヤーで構成されており、影ながらアインズ・ウール・ゴウンを援護していることでこれまた一部で有名だった。

リーダーであるカーヌに至っては最早(RPではあろうが)モモンガを崇拝していると言っても過言ではないという有様である。

元2ch連合の自分たちが下手なことを言えばこれまた危険だろう。

 

「私たちも暇じゃない。呼び出したんならさっさと本題に入れ」

 

これはこの場では唯一の女性プレイヤーの台詞だ。正直口調はお世辞にも女性らしいとはいえなかったが。

 

(もょもと2nd……? どっかで見た名前…… ワールドチャンピオンじゃねえか! つか女性って本当だったのか)

 

彼女は元々男性アバターを使っていた頃から中の人は女性だと公言していたが微塵も信用されていなかったはずだ。

何しろ相性の問題はあるとはいえ、全プレイヤー頂点の9人に名を連ねているのだからそれも仕方ない。

唯一の黒星が腕試しでナザリック地下大墳墓に攻めたときの即死だったというのだから恐れ入る。

勝てない戦いでも死なずに撤退しリベンジしたなどの逸話にも事欠かない傑物……いや女傑だった。

 

(そもそもどうやってこいつらに声をかけたんだ……俺らがメール送ったって反応しないだろJK)

 

やらない王は内心やるOの謎のセッティング力に戦慄する。

良くも悪くもアインズ・ウール・ゴウンに関わる有名どころが集まっているのだからその手腕は大したものだといえた。

 

「まあまあ、やるOさん達も来たばかりですし、いきなり脅すようなことをしなくてもいいでしょう?」

 

にこやかに割って入った旅人のような格好をしたプレイヤーにやらない王は見覚えがなかった。

誰なのかといぶかしむ全員の視線に気がついたのか、そのプレイヤーは帽子を取ると胸に当て笑顔を絶やすことなく自己紹介をした。

 

「申し遅れました。わたくしはハーメルン。この幻想笛吹きの集いの代表のようなことをさせていただいております」

「……己を代表と明言しないやつは信用できないな」

 

相変わらず無愛想に呟くダークンだったが、彼の発言に同調したのか、カーヌももょもと2ndも不審げな視線をハーメルンに向ける。

ハーメルンは困ったように笑うとおどけたように両手を挙げて頭を振った。

 

「いえ、本当に「代表のようなもの」なのですよ。なにせこのギルド3日前に作ったばかりでして。ギルド設立時に便宜上ギルド長にされただけなのです」

「そうだお。彼には場所を提供してもらったのと、これから話す内容にできれば協力してもらいたいんで同席してもらっているんだお」

 

今度は一斉にやるOに視線が集まった。

 

「さて、また怒られない内に用件を言うお」

 

そこで一度やるOは言葉を切ると、普段のロールでやっている口調を消してはっきりと告げた。

 

「ナザリック地下大墳墓を最深部まで攻略したい。ついてはアインズ・ウール・ゴウンに詳しいあなたたちに協力してほしい」

 

部屋の空気が変わったのをやらない王は感じた。

 

 

*   *   *

 

 

意外にも即座に同席したプレイヤーたちの中に激高した者はいなかった。

 

「理由は?」

 

ダークンが言葉短く問いかける。

 

「純粋に攻略したいっていうのが一つ。できればギルド長のモモンガさんに会いたいってのが本命かな」

 

やるOの答えもまた明確だった。ほかに理由などないという自信に満ち溢れている。

よく言うよ、とやらない王は思ったが口には出さなかった。

 

「それは戦いたいということか?」

 

カーヌがこれまた簡潔に質問をした。

 

「まあね。非公式ラスボスとも言われたプレイヤーだし、最後に挑戦したいなって思ったんでね」

 

モモンガをほめたのが良かったのか、カーヌは少し考えるように黙り込んだ。

何を言おうか迷っているようにも見える。

 

「貴様らだけで行けばよかろう。数だけは多いのだからな。私は人数が減って弱体化した拠点に攻撃を仕掛けるなんて卑怯なことはしたくない。全盛期ならば考えたかもしれんがな」

 

もょもと2ndの言葉に対して、やるOはそれを待っていたとでも言いたげに頷くと姿勢を改めて言った。

 

「2ch連合は壊滅したよ」

「何?」

「どういうことだ?」

「過疎化しても1000人以上所属していたはずだぞ? そう壊滅するものでもなかろう。冗談は止せ」

「いや、本当だぞ。2ch連合はアインズ・ウール・ゴウンにギルド武器を破壊されて消滅した」

 

2位のギルドが解散でもなく消えたことはそれなりの衝撃があったのだろう。

口々に疑問の声を上げるメンバーに対して、やらない王はやるOの発言に補足をすることで事実を伝えた。

今まで黙っていたやらない王が発言したことで部屋中の目が集中する。

多少の居心地の悪さを感じつつもやらない王は言葉を続ける。

 

「ああ、だからって復讐戦に参加してくれってことじゃない。そいつももう終わってるんだ。俺たち2ch連合の負けって形でな」

「参加者は?」

「あん?」

「攻略に参加した人数だ。2ch連合、いややられたから旧2ch連合か? その反撃となればそれなりの人数が集まったはずだろう」

 

ダークンの問いにやらない王は肩をすくめて答えた。

 

「以前とほぼ同規模……1500人以上だな。もっとも……ほとんどプレイヤーに会わないまま全滅させられたがな」

「その時の動画がこれなんだな。まず見てほしい」

 

 

*   *   *

 

 

「ダイジェストだけどどうだったかな?」

「どっちかってーとDIEジェストだがな」

 

動画を見た5人の反応は様々だったが、今のナザリック地下大墳墓が容易ならざるダンジョンであることは伝わったようだった。

 

「すごい」

「これは……凄まじいな。というか何を考えたらこんなダンジョンになるんだ?」

「おお、我が主神! なんというお姿に……いやしかしお強い」

「しかし闘技場を見る限りかつてのメンバーがそろっている?」

「はっはっは。壮観ですねえ」

 

ひとしきり反応を確認すると、再度やるOとやらない王は5人に話しかけた。

 

「見てもらえばわかると思うんだけど、1500人程度(・・・・・・・)じゃ攻略できないんだお」

「まあ、レベルが足りてなかったのもあるんだろうけどな。問題なのは今回はプレイヤーに一切迎撃されていないってことだ。モモンガさんだけが強いとも思えないしこれ以上の苦戦は確実だろ、常識的に考えて」

「恐らく攻略にはユグドラシル全プレイヤーの総力を結集するレベルでのマンパワーがいると思うんだお。だから」

 

みんなでアインズ・ウール・ゴウンに挑まないか?

 

「ま、考えておいてほしいお。答えはすぐじゃなくていいから……そうだな。3日後には一度返事がほしいお。その間に他にも色々声をかけるから」

 

そういったやるOにダークンは本日最後となる問いをかけた。

 

「これ、なんで俺たちのところに持ってきた?」

 

そしてやるOは胸を張って答えた。

 

「もちろん、一番この攻略を楽しんでくれると思ったからだお!」




俺らたちも攻略のために動き出しております。
まだいきなり協力体制は組めないでしょうから事前の打診といったところでしょうか。
とりあえず情報共有はしました。

今年はさすがにこれで最後ですかね。
良いお年を。

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