ユグドラシルでバランス崩壊がおきました   作:Q猫

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相変わらず計画したところまで話が進みません。
モモンガさんのアバターの容姿ですが小出しにすることにしました。
自分の首を絞めるような気もしますが頑張ります。


ナザリック地下大墳墓にて

事の発端は、モモンガのこんな発言からだった。

 

「しかしぷにっとさんなかなか格好いいアバターでしたね。いつの間に作ってたんです?」

「いや、私も『人化』スキルの活用方法を思いついたのはゲームに入ってからでしたよ。作る暇なんてありません」

「なにそれ、おかしくない? どうやってアバター設定すんのさ」

 

ユグドラシルにおいて、通常アバターの設定はゲーム内ではできない。

そのアバターを使ってゲームをするのだから当然とも言える。

るし☆ふぁーの疑問ももっともと言えよう。

 

「アバター設定をしないまま『人化』スキルを使うと、『使用可能なアバターがありません。ランダムでアバターを作成します、よろしいですか』って表示されるんですよ。で、特にこだわりもなかったんでそのままOKしたらこうなりました」

「そこが納得いかないんだよなあ。俺もいろいろ作成しているから言いたいんだけどさ。格好いい上に似合ってるアバターって作るの大変なのよ? ランダムでできると思いたくないねえ」

「ふむ、たくさん試せれば本当にランダムで格好いいアバターが作れるかわかるんですけどね」

「それだ!」

「え?」

 

 

*  *  *

 

 

「というわけでみんなにランダムでアバターを作成してもらいます!」

「どういうわけだ」

「もう少しわかりやすく説明しろ」

「何をどうしろってのさ」

 

などとるし☆ふぁーが総突っ込みを食らった後、ぷにっと萌えとモモンガの説明を受けてアインズ・ウール・ゴウンで突発的にランダムアバター作成大会が行われることになった。

要するにランダム設定でアバターを作って品評しようということだ。

人間種の職業を手に入れるならどのみち人型のアバターは必要になる。

なら今みんなで作っても問題あるまい。

 

「でも気に入らないアバターだったりしたらどうすんだよ? るし☆ふぁーの予想ではぷにっと萌えみたいに格好良いアバターになる保証はないんだろ?」

「大丈夫! 格好悪かったら俺がみんなの分もアバター再作成用に金払うから。俺は自分のクリエイターとしての腕がランダムごときに負けないと証明できれば満足!」

「格好良くても気に入らなかったり、似合わなかった場合は?」

「さすがにシラネ」

 

無責任に言い放ったるし☆ふぁーに非難が集中するのを横目に、モモンガが話をまとめに入る。

 

「まず格好いいの基準を決めねばなりませんね。るし☆ふぁーさんに任せるわけにもいきません」

 

基準を適当に決められても困りますからというモモンガに対する、るし☆ふぁーの俺はそんなことしねーという抗議は聞き流された。

日ごろの行いは大事である。

 

結局いつも通りの多数決で格好よさ(アバターの出来の良さ)を判定。

判定で過半数が良いとすれば、るし☆ふぁーは金を払わなくてよいが負けである。

ある意味彼らしいあまのじゃくなルールであると言えた。

おまけとして使ったほうがよい(要するに消すのがもったいないとか似合うということ)という判定が過半数を超えた場合は、3ヶ月間はアバター変更不可、変更時には自作して似合うと言ったメンバーの更に半数から了解を取り付ける事がルールとして定められた。

 

後者については正直余計なことを言った、とは後のモモンガの言である。

 

 

* * *

 

 

「とまあ、そんなことがあって私は女性アバターを使う羽目になったのです。決してネカマがしたかったわけではありません」

「ふーむ」

 

モモンガは職業についての情報を伝えにナザリック地下大墳墓に来たワイズマンに力説していた。

名も無き図書館に通うという案もあったのだが、ワイズマンの希望によりこちらでのレクチャーとなったのである。

恐らく残り少ない未踏破ダンジョンであるナザリックを見たかったというのもあるだろう。

見学したいというワイズマンの希望は、情報非公開とメンバーの都合に合わせて何回か来てもらう事で認可された。

 

「まさか性別や年齢までランダムになるとは思いませんでしたよ」

「性別は意図的に設定しない限りリアルと同じになるはずですが」

「『人化』の場合は違うようですね。明確に性別が設定されていない種族だとランダムに決められるようです」

「俺はそれも疑ってるけどね……」

 

 

今回の同席者のタブラとペロロンチーノがそれぞれに口を開く。

ちなみに全員人化済みである。

悪は簡単に真の姿を晒さないものというウルベルトと、教えを請う相手を威圧するのは良くないというたっち・みーの意見がそれぞれ受け入れられたからだった。

理由は違えど二人の意見が揃うのは良いことだと思いつつ、モモンガは密かにため息をつく。できれば別のことにして欲しかった。

なるべくなら人型アバターを使いたくないというのは変わらぬ思いである。

 

「そのルシファーさんはどれだけ『負けた』んですか?」

「ほとんどは『勝ち』でしたよ。やはりランダムだと微妙に目の大きさとか鼻の高さとか、あるいは色合いとかが噛み合わないんです。多少格好いいといえるアバターも、なんというかモブっぽいというか……どういうイメージで作りたいかという点が欠けているので、これだ! っていうものにならなかったんですよ」

「問題は数人っていうか3人だな。俺とモモンガさんとホワイトブリムのやつが『当たり』だったんだよなあ……」

「まったくです。なんだってこんな格好に……」

「まあ、お二人とも十分魅力的だと思いますよ?」

 

ワイズマンがフォローを入れる。実際モモンガのアバターは黒髪黒目に白皙の肌を持つ美女といって良かったし、ペロロンチーノは美少女と見まがう美少年といって差し支えないものだった。

もし、それを目的として作成したなら文句のつけようのないできであったが、偶然にそして不本意に押し付けられた二人にしてみれば非常に納得いかないものであった。

モモンガにも言いたいことは山ほどあったが、ペロロンチーノにはさらに言いたいことがあったらしい。

 

「俺の姉がですね、その、暴走したんですよ」

「はい?」

「女装させようとしてくるんです」

「……それは……えっと、こういう時はなんと言うべきなんでしょう?」

「触れないであげるか、笑い飛ばす方がいいんじゃないですかね。下手に同情する方がダメージが深いでしょう」

 

予想外のペロロンチーノの独白になんと声をかけたものか言葉に困ったワイズマンがタブラに助けを求める。

タブラの言葉は何の解決にもなっていなかったが、納得したのかこれ以上藪をつつくのを避けたのか、ワイズマンは話題を変えた。

 

 

*   *   *

 

 

「それで、私に人間種用の職業いついて聞きたいとのことでしたが、ほかの皆さんは?」

「差し当たり取りたい職業が異形種でも取れるメンバーはみんなそれを取りに行ってますし、アバターが気に入らなかったメンバーはアバターを再作成してます。私とペロロンチーノはどうしてもあなたに聞きたいことがあったメンバーですね」

「そういやタブラさんは何で参加したの? そのアバター作り直すんだよね?」

「私は単に話が聞きたかったからです。今後ナザリックの設定を考えていくに当たってあなたと懇意にしておいて損はないですからね」

「なるほど。それではお聞きしましょうか」

 

自分との顔つなぎが目的ならとりあえず後回しでよいと判断し、ワイズマンはモモンガとペロロンチーノに向き直る。

 

「まず俺からかな。何でもいいからアバターの見た目に影響するような職業はないですかね? できれば年齢とか別アバターを使えるとか」

「あるにはありますが……」

「あるの!?」

 

喜ぶペロロンチーノだったが、ワイズマンは申し訳なさそうに告げる。

 

「年齢を変える職業なんですが[魔法少女]なんですよ」

「なにそれ!? てか男でも取れるの?」

「なんだったかのコラボで追加されたネタ職業なんですが……一応、男性でも取れます」

 

ユグドラシルにおいて男性のみあるいは女性のみしか取れない職業というのは稀である。

やたら声のでかい男女平等主義者対策で、なぜかそういうことになっているのである。

その分人間種と異形種で取れるものを差別化する形になったのかもしれないが、事実は不明である。

 

「くっ! それを取るべきなのか……」

「ですが外装統一の効果で装備がすべて少女趣味のものに変化したはずです」

「うん、だめだ。むしろ姉ちゃんに燃料を注ぐ」

 

告げられた職業の特性に速攻で却下をするペロロンチーノ。

 

「複数アバターを取れる職業はあまりないんですよね。それこそ異形種の[ドッペルゲンガー]が代表なくらいでして」

「種族変更はなあ……他の職業はどういうやつ?」

「いや、それより何で課金アイテムの「デュアルアバター」を使わないんです? 別に禁じていないでしょうに。あれ職業とか制限なしにアバター追加できるじゃないですか」

「直接アバター追加するものを使ったらルール違反じゃないですか」

 

疑問を呈するワイズマンに、当たり前とばかりにペロロンチーノが答えを返す。

ワイズマンはため息をつくとはっきり言った。

 

「あるにはあるんですが、人間種で一年以上プレイし続けると別アバターが取れる[多次元存在]とかそんな条件ばっかりなんですよ。基本的に1アカウント1キャラを徹底してるんですよ、このゲーム」

 

言外に間に合わないと告げられ、がっくりしつつ何かを考え出すペロロンチーノ。

とりあえずこれ以上助言はできないと判断し、ワイズマンはモモンガに問いかける。

 

「ではモモンガさんはどんな職業の情報をお望みで?」

 

その問いかけにモモンガははっきり答えた。

 

「デスペナを限りなく軽減する職業はありませんか?」




モモンガさん最強化計画、ようやく第一歩です。

感想でも幾人かに書きましたが、一応、モモンガさんを女性アバターにしたのは理由があります。
本編で書くのが筋でしょうが自分の腕前で入れられるか分からんので、多少ここに書いておきます。

面白そうと思ったのも事実ですが、一番の理由はモモンガさんが「本気で嫌がりそうだったから」です。
モモンガさんはもうちょいメンバーの多数決に疑問を持つべきだと思うんですよね。
多数決なんてその場のノリで左右されることもあるのですから。
それにメンバーの意見調停ばかりで自分の意見をどれだけ出していたのでしょうか。
せっかくメンバーが帰ってきたのだから自分の主張をさせるために「嫌がりそうなこと」を「多数決の結果やらざるを得ない」ことになれば、自分の主張を出してくれるかなと思ったのです。
本編でも書けるよう頑張ります。

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