そして重大な問題が発覚。
私、かっこいい名前考えるの苦手みたいです。
モモンガの希望を聞いた後、ワイズマンはしばらくして口を開いた。
「なぜそんな職業を取りたいか聞いても?」
「えっと……いわないとダメですか?」
「できれば聞かせていただきたいですね。戦略などによってはお勧めする職業が変わるかもしれません」
「その、何かこう、深い考えがあるわけではないんです」
モモンガは少し己を恥じるように言葉を濁した後、意を決したように告げた。
「私は『死を支配する魔術師』というロールにこだわってキャラを作ってきました。だからそのロールの一環として死に打ち勝つような職業がないかと思ったんです」
その答えにワイズマンはしばし沈黙すると、いきなり愉快そうにくつくつと笑い出した。
「まさか、私に職業について相談すると同盟を持ちかけられて最初に相談されるのが、姉から逃げる職業とロールのための職業とは思いませんでしたよ」
「いや、強い職業に興味がないわけじゃないんですが、せっかく詳しい人に話を聞けるのですから、ちょっとありそうにないものを聞いてもいいじゃないですか」
「そうだそうだ! 俺は深刻なんだぞ!」
笑われて慌てた様に言い訳じみた言葉を重ねるモモンガと本気で憤慨するペロロンチーノ。
そんな二人を見てワイズマンは更に楽しそうに笑った。
「いえいえ、実に良いですね。正直に言えば今まで受けてきたどんな相談より良い。こういう相談が多かったら本当に良かったんですがね」
しみじみ呟くとワイズマンは切り替えるように頭を振って口を開いた。
「残念ですがデスペナそのものを軽減する職業は知りません。蘇生魔法を強化することでデスペナなしに仲間を生き返らせることは可能ですが、自分のデスペナを軽減するというのは聞いたことがありません」
「やはりありませんか」
モモンガもそれは分かっていたのか、それ程落胆した風でもなく答える。
不死身の伝説がある伝承存在の名を冠する職業は数多あれど、それらの不死性は[ジークフリート]の超回復性能、[フェニックス]の回数限定復活のように別の形で表現されている。
蘇生魔法に特化した回復職のようにそれ以外ができないというデメリットを背負うでもなければ、ゾンビアタックが容易に実行可能になってしまう。
ゲームにおいてバランスを著しく欠く職業は実装されないものなのだ。
「デスペナ軽減とは違いますが、『死を支配する魔術師』というロールにふさわしい不死性を持った職業の情報なら提供できるかもしれません。ただし、あなたが残り半年をありえないかもしれない可能性にかけられるならですが」
「ありえないかもしれない、可能性ですか?」
ぷにっと萌えといい、ワイズマンといい、この手の人間は変わったことを考えないと気がすまないのだろうか思いつつモモンガは疑問を返す。
「レベル100以上で取れる職業の情報です。モモンガさん、ボスの職業取ってみませんか?」
今まで黙っていたタブラが「ほう?」と身を乗り出し、ペロロンチーノがすさまじく胡散臭そうに「えー?」と言ったが、モモンガの答えは決まっていた。
「ぜひ聞かせてください」
* * *
第一回の職業相談会を終えた後、モモンガとタブラはワイズマンを連れてナザリック地下大墳墓の中を歩いていた。
ワイズマンのもう一つの目的であるナザリック見学の案内をするためである。
ちなみにペロロンチーノはアバター再作成を終えて襲撃してきたぶくぶく茶釜に拉致された。
ぶくぶく茶釜のアバターは、ペロロンチーノに見せられた彼女が出演したというゲームのパッケージのキャラクターに似ていたので、仕事を通じて得た人脈を活用したのだろう。
「動画で知ってはいましたが、すさまじい作りこみですね」
「そうですね、詳しくは主に担当したメンバーがいる時に説明を受けながらの方が良いでしょう」
「氷結牢獄ならすぐにでも案内するって言ってるのに……」
「あそこは我々のノリに慣れていない人を案内する様な所じゃないでしょうに」
「ほう、そう聞くと行ってみたくなりますね」
「ほらワイズマンさんもこう言っているし、ギルド長行こうよ」
「駄目です」
そんなことを言いながら入り口から順に第7階層まで進み、第8階層は危険ということで飛ばして第9階層に戻ってくる。
すると先ほどまではいなかった暗紅色の髪をしたメイドが近寄ってくる。
正統派の作りをしたメイド服を一部の隙もなく見事に着こなしている。
そしてこれまた完成された所作で綺麗なお辞儀をして出迎えの言葉を口にした。
「お帰りなさいませ、お嬢様。タブラ様。いらっしゃいませ、ワイズマン様」
「……ホワイトブリムさん。その呼び名と口調はなんですか」
一瞬、反応に迷ったモモンガがなんとか言葉を発すると、ホワイトブリムは良くぞ聞いてくれたとばかりに答えた。
「もちろんナザリックのメイド長たる私にとって、ギルドの長たるモモンガ様の呼称は『お嬢様』以外にありえません」
「やめてほしいんですが」
「……あれ、本気だったんだな。となるとメイド達の設定変えないといけないか。なんか希望ある? メイド長」
「そうですね、まず……」
モモンガの力なくも本気の抗議はスルーされた。
大真面目に言っているらしいホワイトブリムにほとんど動じず、タブラが設定の聞き取りをはじめる。
既にメイド長呼びである当り、頭のなかでは設定が出来つつあるのだろう。
対するホワイトブリムも語りたいことが山程あるようで、嬉々として聞き取りに応じている。
話が長くなりそうな気配を感じ、ため息をつくモモンガにワイズマンが声をかける。
「彼女が先ほど言っていた『お遊び』で当たりを引いたメンバーですね?」
「彼ですがね。あのアバターがあたった後『俺、メイド長になる!』と言ってログアウトしようとしたのでみんなで止めました」
「……それはまた」
「彼にとってメイドは命らしいですから。この階層にいるメイドのデザインはすべてホワイトブリムさんによるものです。おそらく自分のメイド服を作っていたんでしょう。私にはあんまり差が分かりませんが、本人が着ている服に尋常でない気合が入っていることは分かります」
「なんというか。個性的なメンバーぞろいですね」
ワールド・サーチャーズという巨大すぎるギルドを運営していたワイズマンにとって、アインズ・ウール・ゴウンのあり方は新鮮なものだった。
もちろんその口調は多分に呆れを含んでいたが、間違いなく賞賛でもあった。
何かを考えるかのように沈黙した後、ワイズマンはモモンガに向き直った。
「同盟したときに話さなかったことをお話しましょうか」
* * *
「モモンガさんは私がなぜ、2ch連合とトリニティを倒したいと考えているか、わかりますか?」
「いえ、あの時もいいましたが理由はわかりません。ただ、あなたは私たちが訪ねた時点で引退する意思がなかったように見えた。となるとその段階であなたは目的を達していたことになります」
ならば、我々が持ちかけた2ch連合とトリニティを倒すということそのものが目的なのではないかと思っただけです、とモモンガは言った。
「間違ってはいませんね。まあ、別に大それた理由があるわけではないんです。私はあの二つのギルドが嫌いなんです」
「……うかがいましょうか」
大したことではないと言いつつもワイズマンの口調にぬぐい難い苛立ちがあるのを感じてモモンガは続きを促した。
やっとこモモンガさんにボスモンスターの職業を取らせる準備ができました。
が、前書きで書いたように、モモンガさんに取らせたい職業の良い感じの名前が思いつきません。
活動報告にその職業というかボスモンスターの情報を書いて名前募集とかやって良いのでしょうか?
あとさっさとワイズマンさんを玉座の間に送り込まないとナザリックが強化できません。
※大丈夫そうなので活動報告にモモンガさん用ボス案を掲載しました。
ネタバレしても良いと言う方は名前案いただけると嬉しいです。
名前を考えるだけでえらい時間かかるのです。