なのでどっかに入れようと思ってた運営の話を閑話として書きました。
もうちょい前に入れるべきだったのですが、短いし入れるタイミングなかったしで放置してたやつです。
割とどうでもいい話な気がします。
「限界突破アップデート」の企画を通した達成感に浸っていた高橋は、上司に呼び出されて一つのデータメモリを渡されていた。
「なんです? これ」
「あのアップデートで起こりそうな問題データだ」
ぎょっとして手の中のデータメモリと目の前の上司を交互に見る高橋に、上司はため息をついて告げる。
「あのアップデートは収益という点で見るなら、上々だろう。だが、ゲーム内で起こりうる変化については、半年という期限で乗り切ろうとしている」
「そう、です。たった半年、ですよ?」
「お前はプレイヤーをなめすぎている。たった半年、じゃない。半年も、だ」
「え?」
やはりわかっていなかったかと再びため息をつくと上司は簡単に例をあげた。
レベル上げなどは初期は100なんていつ届くかわからないと言われたものである。
しかし、効率的なレベル上げが模索され、廃人と呼ばれる連中の中には一週間で再作成からカンストするものもいたりする。
絶対攻略不能と言われたボスがタイムアタックの対象になっていたりする。
ゲーム上可能であるなら、プレイヤーにとって困難であるだけで達成不可能ではない。
「問題は100%起きる。それがどの程度の規模かは知らんがな。だから
じゃあな、といって去っていく上司を高橋は呆然と見送るしかなかった。
* * *
データメモリの中身は予想される問題点と、大雑把な対策案が書かれていた。
軽度の問題としては、今回のアップデートで不利益を被るプレイヤーへの補填。
『人化』スキルによって既存の人間種に化けるスキルは劣化、あるいは重複扱いされることになる。
人に似た姿を取れるからという理由で、種族を選択していたプレイヤーの中には不満を持つものも出るだろう。
これは種族レベルを無駄にしたと認識されるためなので、お詫びとして1枚チケットを贈呈しておけばいい、と書かれていた。
これらはアップデート直後に発生が予想されるが解決も容易なものが多かった。
「重大な問題」の項目には高橋が完全に考慮していなかったものがかなりあった。
例としては、拠点防衛NPCの上限解放。
自分が強くなり、今まで難敵だったボスに楽々勝てるようになったプレイヤーは何を目指すか?
おそらくPvPであると上司の予想が記載されていた。
ギルド防衛を担わせているNPCが弱いままでは釣り合いが取れないため、楽しませる気があるなら1か月以内に修正をしろと指示があった。
多少の変更を要するが即座に実行しなくてはいけないものでもない。
軽度の問題の対象者を洗い出しつつ作業を並行するのは厳しいが、上司の予想期限の1月後までには対策できるだろう。
上司の置き土産に感謝しつつ、高橋は最後の「致命的な問題」の項目を読む。
『万が一ではあるが、他の全プレイヤーを相手にして勝てる勢力が現れる可能性がある。感知したらすぐさま接触してイベントに取り込む準備をしろ。交渉に失敗した場合は以前の二の舞になる可能性があるので注意すること。過剰な優遇は避けるべきだが、アカウント削除などの強硬手段を暗示させることもしてはならない。あとは祈れ』
言われなくとも高橋は問題が起きないように祈った。
残念ながら、遅かったが。
一応11/2中までアンケートは受け付けます。
思ったより皆さん楽しんでいただいているようで驚きです。
やっぱり格好いい名前考えるの楽しいですよね。
私は本気で苦手ですが。