ネルソン商会記 ~黒い商人の道筋~   作:富士富士山

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いつも読んでいただきありがとうございます。

久しぶりに長くなりまして、13200字ございます。

よろしければどうぞ!!

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申し訳ありません。説明不足であるところを感じまして1000字ほど加筆修正しております。ご容赦下さい。


第29話 魂は歓喜しているか

偉大なる航路(グランドライン)” サンディ(アイランド) アラバスタ王国 レインベース

 

 

 

 僕がこの国に来て思ったことは暑いのも悪くないかなってことなんだ。

 

 

 生まれてからずっと寒いところで暮らしてて、それが当たり前だったわけで、暑いなんてやだな~って思ってたんだけどね。いざ、本物の暑さってのを味わってみたら、これがまた気持ちいいんだよ。汗をいっぱい掻いたりしてさ。

 

 あ~、僕は生きてるんだな~って思えるんだ。

 

 でも、その事をジョゼフィーヌ会計士に言ってみたら、指差されながら、

 

「カールのくせに生意気よ」

 

って言われて、頭をくしゃくしゃにされたんだよね。

 

 う~ん、ジョゼフィーヌ会計士は確かにキレイなお姉さんなんだけど、ジョゼフィーヌ会計士にそんなことされてもあんまり嬉しくないのはなんでかな?

 

 あ~あ、ロー船医だったらきっと頭を撫でてくれただろうにな~。

 

 

 

 今僕たちはレインディナーズっていうカジノがある湖の(とばり)にいる。

 

 朝方この町に入って取り敢えずご飯を食べた後、ジョゼフィーヌ会計士が王女がいるって言いだして、総帥と行ってしまった。僕も連れてって欲しいって頼んだんだけど、やって貰いたいことがあるって言い(くる)められてしまったんだよね。

 

 キレイな王女さんにまた会いたかったのにな~。

 

 言い(くる)められた僕たちが取り掛かった仕事って言うのが、この町を出発する時の移動手段の確保と今こうしてこの場で待機しておくこと。

 

 一つ目は結構簡単だった。今僕たちはカジノの裏手側にいるんだけど、そこには巨大な亀が気怠そうに佇んでて、側には馬が曳きそうな客車も停まってたから、それで一丁上がり。

 

 でも二つ目はなんだかな~って感じだよ。ただただ待つっていうのは大変だ。ず~っと待機することができるオーバンさんってすごいんだな~って今になって思えてくる。

 

 こんな時は目の前に広がってる気持ち良さそうな湖にダイブするのが一番だと思うんだよね。

 

 そんなこと考えながら僕は湖の周囲をぐるりと囲んでいる柵の手すりに掴まって顎を上に乗せてカジノを眺めている。

 

「べポさん。もう随分経つよ。そろそろいいんじゃない?」

 

 大体一緒に行動している白クマのべポさんも湖をずっと眺めている。僕と眺め方が少し違うのはさっきから、うんうん唸ってるから。

 

 何をそんなに唸ってるかって、湖に入るタイミングを計ってるんだって。僕には分かるような気がして、実際のところ良く分かってないんだけど。

 

「まだまだ、もう少し待った方が良さそうだ」

 

 さっきからこの繰り返しだよ。

 

 そりゃあ、べポさんは僕のような人間よりも毛がフサフサしているわけだから、この太陽が照りつける国では相当暑いことは理解できるし、水浴びすればさぞ気持ち良いことも理解できる。極限まで我慢すれば入った時もっと気持ち良いからギリギリまで我慢するってのも分からなくはないんだけどさ。

 

 僕としてはそろそろ冷たそうな水の気持ちよさを味わいたいよ……。

 

 湖の水面はこんなにも光り輝きながら僕たちを誘惑してくるというのに。べポさんよく耐えられるなって、僕は尊敬してしまうよ。

 

 

 あ~、時間が勿体ないから鍛錬でもしてようかな。

 

 僕は船に乗ってからずっと総帥の傍で小間使いとして働いてきたんだけど、ついこの前その任を外して貰ったんだ。ツリーハウスの島で僕は悟ってしまったんだよね。このままじゃいけないって。

 

 だから、いつもだったら寝てる時間であるはずの総帥の当直時間にも起きていて、話をしに行ったんだよね。

 

 あの日以来、暇を見つけては鍛錬をするようにしている。べポさんに付き合ってもらうことが多いけど、総帥やロー船医も時間があれば付き合ってくれる。まずは肉体そのものを鍛えるところからだけど……。

 

 僕も総帥やジョゼフィーヌ会計士みたいに空を飛べたり出来るかな~。

 

 僕の想いは青々と広がる空をビュンビュンと自分が駆けている姿へと移りゆき、自然と僕の視線も上へと向かう。そこには、正三角錐の頂にワニが載っているカジノの裏側が見える。

 

 あの六式ってやつを使えるようになれば、あのワニの背にも軽々と降り立てるんだろうな~。あの青い空をバックにしてさ…………。

 

 

 青い空?

 

 

 あれ? 空の手前に何か1枚あるような気がする……。もしかしたら……。

 

 

 心当たりに行き着いて、隣に視線を移してみればべポさんは既に湖の手摺の上に立っていて、もう今にもダイブしようとしている。

 

「わあ、べポさん。ちょっと待った!! そんな体勢でごめんだけど、ちょっと上を見てみてよ」

 

「カール!!! 俺が折角、最高のタイミングで湖に入ろうとしてるのに、何でお前は邪魔してくるんだよ」

 

 べポさんの言い分は尤もなんだけど、そこをなんとか困った表情を浮かべて何度も上を指差すと、べポさんもしょうがないなって表情で顔だけ上を見てくれる。

 

「あれ、ロー船医の“ROOM”じゃない?」

 

「……うん、そうだよ。あれはドクターの技だ」

 

 べポさんの返事の口調には後に続く、それがどうしたって言葉が隠れているような感じがして、

 

「もう水浴びしてる場合じゃないよ、べポさん。こんなに大きな範囲で“ROOM”を張ってるってことは中で何か問題が起きてるのかも」

 

僕は事の重大性をべポさんに気付かせようと言葉を放つ。

 

 僕の言葉に対し相槌を打っているべポさんだけど、上に真っすぐ伸ばしたままの腕と腰を落とすような体勢は湖に飛び込む気満々の様子であるため、

 

「突然そこにロー船医が現れるかもしれないし、僕たちが別の場所に移動させられてしまうかもしれないし、そこに何かが突然送られて……」

 

 やばい状況かもしれないことを何としてでも分からせようと言葉を続け、後ろ手に手すりを持ったままもう片方の手で背後の路面を指差して、こうなるかもしれないことを説明していると……。

 

 指差した先に、さっきまではなかったものがまるで手品のようにして現れてきた。10個のアタッシェケースが。

 

「べポさん、べポさん、ほら見てよ。本当に送られてきたよ、これはきっとお金だよ」

 

 口にしていたことが目の前で本当に起きたことで、半ば興奮しながら思っていることを言葉にし、べポさんの方へ振り返ってみれば……、

 

 手すりの上にべポさんはいなかった。

 

「……カール、急げー。こうしちゃいられねぇ」

 

 その言葉が上方から聞こえたので、もう一度振り返ってみれば湖とは逆方向にダイブではなくてジャンプしたべポさんが既に走り出していた。

 

 一体どの口がそんなこと言ってるんだよ~。

 

「カール、俺はあの亀を準備してくるよ。それを載せておかないとすぐに出発できないだろ。……だから、そっちを亀まで運んでくるのはお前に任せたからな。カール良かったなー、いい鍛錬になるぞ」

 

 どこの世界にベリーで鍛錬する人間が居るって言うんだよ~。

 

 そう思いながらもべポさんの後を追っていくが、べポさんがアタッシェケースを置いて本当に遠くへ行こうとしているのが見えて、僕も急いでアタッシェケースの所まで行く。ひとつ持ってみると、べポさんの言う通り丁度良いダンベルになりそうな適度な重さだ。

 

 いけない、いけない。今そんなことを考えている場合じゃなかった。

 

 素早くアタッシェケースを開けてみると、中には本当にベリー札がびっしりと敷き詰められている。

 

 10個あるから……、右腕と左腕で3個ずつ持って……、ナノハナで見た壺を上に乗せて歩いていた町の人みたいに僕も頭の上に4個載せて……、水平を保ちつつ前に進む……。

 

 って、ないよ、ないよ。そんなの有り得ないよ……。僕はロッコ爺みたいに見るからにパワーが有るわけでもないし、総帥みたいに見た目そうでもないのにパワーが有るわけでもないし、ロー船医みたいに能力があるわけでもないし……。

 

 僕が10個のアタッシェケースを一人で全部抱えながら運ぶ姿が全く想像できなくて、むしろギャンブルの町で盛大にベリー札をばら撒いてしまう姿しか想像できなくて、

 

「べ~ポさ~ん!!!!! 待ってよ~!!!! 戻ってくれないと、僕たち今度は反省文どころじゃ済まないことになっちゃうよ~!!!!!」

 

僕の歴代で3指に入る気がする大音声でべポさんに向けて叫んでいた。

 

 

 

 

 

 10億ベリーをこのギャンブルの町の真っ只中でばら撒く破目にならずに済んだのはジョゼフィーヌ会計士のお蔭かもしれない。なぜなら、ジョゼフィーヌ会計士の名前を出した途端にべポさんは危機感を募らせた表情で戻って来てくれたから。

 

「で、問題は組み分けをどうするかだが……。もう全員答えは決まってるよな?」

 

 僕たちは10億ベリーをどうにか亀が曳く客車の上に積み込んだ後、カジノの入口付近から聞こえてくる騒ぎの声に誘われて移動して来てみれば、そこに居たのがこのサンジ料理長とチョッパー船医、たしぎさんの麦わら一味の人たちと……、空を飛べるペル副官。

 

 その場所では沢山の人相が悪そうな人達が倒れこんでいて、多分この人達の仕業なんだろうけど。カジノの中で起こっていることに対して胸騒ぎがしていた僕たちは仲間を助けに行くっていうこの人達と行動を共にしようと今ここに居る。

 

 さっきまで小電伝虫片手にクソレストランって名乗りながら敵と通話をして、捕えた敵の部下を使ってこっちがやられてしまった様に見せ掛けていたサンジ料理長が考えた作戦というのは、敵を偽情報でおびき出して仲間の近くから敵を引きはがし、おびき出した敵に対しては誰かをなりすませて陽動撹乱の上で情報に信憑性を与え、カジノに入るために湖に架けられた橋を落とすことで敵が陽動撹乱に気付いて戻ってくる時間を稼いで、まんまと仲間を脱出させるというもの。

 

 ですかって僕が作戦を分析して示してみたら随分と驚かれた。これでも闇取引に精通するネルソン商会の端くれ、これぐらいは朝飯前だよ。

 

 そんなことよりも、僕が逆に驚かされたのはサンジ料理長は実は王子(プリンス)だったのかってこと。

 

 だって、敵との通話の中でそう言っていたんだよね。俺はMr.プリンスだって。クソレストランって言ってみたり、よく分かんない人だな~って思っちゃうよ。

 

 

 で、作戦の役割分担での組み分けなんだけど。誰がここに残って陽動撹乱に回るのかってのを全員でそれぞれ指差すことになってるみたいなんだよね。

 

 円形になった状態で、せーのでみんな一斉に指差してみたら結果は一人を除いて一致した。

 

「決まりだな」

 

 Mr.プリンスが銜えタバコしながら放った科白のように、結果はチョッパー船医と副官ペルさんになった。一人だけ違う人を指差していたのがそのペルさんなんだけどね。なんと僕とMr.プリンスを指差していたんだ。ペルさん曰く、君達二人をビビ王女に極力会わせたくないんだって。心外だな~。

 

「脱出が最悪、湖からかもしれねぇんだ。助けに行った方が足手纏いになったら本末転倒だろうが」

 

 Mr.プリンスのお言葉は尤もだよね。なんせチョッパー船医自身が自分で自分を指差してるんだから。ペルさんの方は足手纏い扱いされて随分と心外な表情を浮かべているけど。

 

「ビビ様をお守りするのが我らの仕事。私が行かずして一体誰がビビ様をお守りするというのだ」

 

「Mr.プリンスがお守りするよ。王女(プリンセス)を守るのは王子(プリンス)でしょ」

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」

 

 ペルさんが嘆いているから、僕は安心させてあげようと思って言ったんだけどな~。Mr.プリンスには喜ばれたけどペルさんには嫌な顔をされてしまったよ。

 

 

 でも時間はあんまり無さそうだし、好む好まざるに関わらず作戦決行だ。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

「あいつら、やられてしまったわ……」

 

「おい、どうすんだよ……。あいつら強ぇんじゃなかったのかよ」

 

 砂塵に覆われていたこの地下室内の視界が徐々に回復して、茫然自失とした静寂に包まれた後、ナミさんやウソップさんが呟く通り、ネルソン商会の人たちの変わり果てた姿が目の前に広がっていた。

 

「口先だけの奴らなんざこの海にはごまんといる。こいつらはバナナワニに食われて終わりだ。ここは直に水に浸かる。てめぇらも仲良く揃って死ねばいい。……なんなら生意気なMr.プリンスもここへ運んでやろう。……死体でよけりゃぁな……、ハハ」

 

 クロコダイルはもう階段の上方に移動してミス・オールサンデーと共にいてこちらを睥睨し、高らかに笑い声を上げている。

 

 

 さっさと行ってしまえばいいのよ……。

 

 

 モシモシの能力で外にサンジさんたちがいるのは分かっている。そこにはペルもいるし、ネルソン商会の少年と白クマさんもいる。小電伝虫の通話内容によれば、やられてしまったように聞こえたが私の能力からすればそれが演技であることは容易にわかる。

 

 助けが来てくれることは分かっている。問題なのはクロコダイルがこの場に居ては邪魔だったということ。私ひとりではあいつをすり抜けて助けを誘導することはできない。

 

 よって精一杯私も演技をして見せた。絶望と憤怒、はたから見れば見苦しい程の抗いをして見せた。演技などしなくても9割方は本心が出ていたとは思うが。

 

 こうしてクロコダイルとミス・オールサンデーは扉の向こうへと消えようとしている。あとは私が助けを呼びに上へ向かえばいいだけである。

 

 目の前には見るからに凶暴そうなバナナワニが手ぐすね引いて待ち構えているが、私の能力なら問題はない。倒すことはできないけれどもやられてしまうことはない。相手の動きを先読みできるから。筋肉の動き、骨の動き、神経の動き、心の動きまでも私の能力は音として拾って聞くことが出来る。

 

 ただ気がかりなのは、乾涸びた状態でいるネルソン商会の人たち。私が上へ助けを呼びに行っている間に誰がこの人たちを守るのか。

 

「ビビ……。ここはいいから、大丈夫だから、行ってくれ」

 

 私の懸念をかき消す様にして力強いルフィさんの言葉が横から聞こえてくる。

 

 

 そうか……、そうだよね。仲間を信じなきゃ……。

 

「俺たちがそのバカバナナを引きつける。一匹なら何とかなる」

 

「助けてもらったんだから、見殺しになんかできないわ。この人たちをお願い!! ルフィさん、みんな、私は上に行ってサンジさんたちを呼んでくるから」

 

「おう、任しとけ」

 

「ってルフィ、どうやって引きつけんだよー」

 

「叫んでこっちに注意を向ければいいのよ。ほらー、かかってきなさーい、バカワニー!!!!」

 

「そうだぞウソップ、そうしねぇとあいつらミイラになったまんまであのバカなバナナに食われちまうじゃねぇか。俺がバカなバナナを食いてぇのによ」

 

「だから、あれはバナナが生えてるワニであって、ワニが生えてるバナナじゃねぇって言ってんだろー。あーもうかかってこいってんだ、おらー。こっちだバカワニー!!!!」

 

 相対するバナナワニの動きを音で丹念に察して、相手が飛びかかろうとするタイミングの少し手前で素早く背に乗って、上方へと抜ける階段に飛び移る。背後から聞こえてくるあまり緊張感を伴ってない言葉の応酬が私に特大の安心感を与えてくれて、私の歩みは力強くもカジノへと続く扉へと踏み出すことが出来た。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

「……総帥、気付かれましたか? 良かった~!!!」

 

 意識があったのかどうかも定かではない混濁したよく分からない何かから俺は何とか掬いあげられて、ひどく安心したようなカールの声音が耳に入ってきた。

 

 俺の中に記憶として残っている最後の景色は何であったか?

 

 確か……、視界を完全に遮る程の砂粒。それしか頭の中には映像として残ってはいない。

 

 ジョゼフィーヌ、ロー、クラハドールの様子を見てみれば俺と同じように死の淵を彷徨うような極限の渇きから解放されたことが推測できる。泣いて喜んでいるべポの姿を見れば尚更だ。

 

 どうやら俺たちは命ある身でこの世に戻って来ることが出来たようである。

 

 クロコダイル……。

 

 俺たちは奴を甘く見過ぎていた。しっかりとした準備をもって、手に入れるだけの情報を携えてこの海に乗り込んできたつもりであった。

 

 だがそれでも俺たちが知らないことはまだまだあるということなんだろう。覇気を無効化できる力を持つ宝石など聞いたこともない。そう簡単には手に入るものではないのだろう。闇にしか存在し得ないものか……。

 

 とはいえ、そのクロコダイルは既にこの場には見当たらない。

 

 この場でしっかりと主張していた檻も今は役目を終えており、中に収監されている奴の姿はもうない。檻の扉は開いていて自由を謳歌するようにゆらゆらと水に浸かりながら動いている。

 

 

 水……。

 

 

 よく周りを見てみれば俺も水に浸かっている。

 

 と言うよりも、辺りを支配している怒号のように発せられている水が押し寄せてくる音。この地下室を取り囲んでいた全面ガラスの一部が粉々に砕け散っており、そこから猛烈な勢いで水が入り込んできている。

 

 何があったのかは、向こうの方で腕をブンブン振り回している麦わらとその近くでひっくり返って伸びているワニの姿を見れば想像できるというものだ。

 

 奴らは押し込められていたパワーが爆発してしまって少々以上にやり過ぎてしまったようである。

 

 

 まあいい、何にせよ俺たちは助かった。

 

 カールによれば金は既に積んであると言うし、移動手段の確保も済んであると言う。

 

 なかなか仕事が出来るじゃないか、素晴らしい。

 

 であれば、もうこんな所に長居は無用である。このヤマは終了だ。

 

 やられたままで若干の不完全燃焼な部分は残っているが、俺たちの本当のヤマは次にあるのだ。クロコダイルとはまた出会うこともあるだろう。闇に身を置く限りにおいては……。

 

「総帥!! 脱出しましょう。ご覧の通りですから僕たちが上までお連れしますっ!!! 総帥はべポさんが、僕はクラハドール参謀を、ジョゼフィーヌ会計士がロー副総帥をしっかりとお連れします」

 

 そう……。カールの言う通り、今は脱出することだけを考えるべきである。

 

 確かに俺たちは悪魔の実の能力者。人知を超えた能力と引き換えにカナヅチという一生の弱点を背負いこんでいる。こんな時ばかりはこいつらに頼らざるを得ない。俺たちは水の中では何もできないに等しいのだから。

 

「頼んだぞ、べポ」

 

「アイアイ、ボス!!!」

 

 俺の頼みに対して気持ちよくべポが返事をしてくれた一方で、

 

「フフフ、これでローは私に口応えすることなんか一生できなくなるわね」

 

などと恐ろしい言葉を放っている奴もいたりする。

 

 当の言われたローは何か言い返してやりたいが何も言い返せないような何とももどかしげな表情を浮かべている。

 

「俺を運ぶのはいい鍛錬になるだろう。だが粗相のないようにな」

 

「はい! 最善を尽くします」

 

 執事のクラハドールと元小間使いのカールではこんなやり取りになるらしい。水中を運ぶ際にも執事としてのマナーを求められるとはストイックにも程があるが……。

 

「麦わら!! ありがとう、助かったよ」

 

 俺は意識を向こうで腰半ばまで水に浸からせてやべぇやべぇと騒いでいる麦わらへと向ける。あいつに助けられたという話は聞いてないが、俺の中では確信の様なものがある。

 

 とはいえ、これでナノハナで肩代わりしてやった食事代をチャラにしてやるつもりはさらさらないが……。

 

 俺の感謝の言葉に対して麦わらはこちらへ振り返り、

 

「しししし、気にすんな」

 

ときたもんだ。

 

「お前にはまた会いたいものだよ。クロコダイルを倒したらまた冒険をするんだろ? おまえは。……聞かせてくれよ、おまえが体験した冒険話(ロマン)ってやつを……」

 

「ああ、いいぞ。……またなー、黒いやつ」

 

 何とも自由気儘なこいつには本当にまた会いたいものだ。次に出会う時はどこで、どういった立場でお互い出会うことになるだろうか? それはまだ想像することすらできないが、面白いことになりそうである。

 

 見果てぬ再会に思いを馳せていると、べポに身体を担がれて俺は水の中へと誘われ、視界は揺らめいていき、再び意識は遠いどこかへと消えていった。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

「ロロノア!!! なぜ俺を助けた?」

 

 崩壊するレインディナーズの地下室から何とか脱出出来た私たち。私も能力者であるため、どうやらたしぎさんが私を上まで運んでくれたみたい。

 

 そんなたしぎさんにお礼の言葉を述べて人心地ついたところで、同じくMr.ブシドーの手によって助けられていた海軍本部のスモーカー大佐が起き上がって、軍人としての当然の行動で十手片手にMr.ブシドーに挑みかかったのである。

 

 それに対しMr.ブシドーはと言うと、ルフィさんの気まぐれで助けただけだと言っている。

 

 ルフィさんが言いそうなことね……。

 

 外はやはり暑い、この分ならこれだけ濡れていてもあっという間に乾きそうだ。遠くで大勢の海兵の声がしている。ここもすぐに見つかってしまうことだろう。

 

 一陣の風が吹きつけてくる……。

 

 

「……たしぎ、迎えだ。戻ってこい……」

 

 

 スモーカー大佐がここで職務を全うすると宣言したあと、不思議と濡れていない葉巻にゆっくりと火を点けてこう切り出した。私の横で佇んでいるたしぎさんに……。

 

 

 私はルフィさんの船内でたしぎさんの胸の内を聞いたことがある。

 

 海兵としての立場、全てを取り払って一個人としての自分の想い、正義とは悪とは何なのかについて、迸る彼女の想いの丈を打ち明けられたことがあるのだ。

 

「……たしぎさん……」

 

 彼女に視線を向け頷いてみせる。彼女も力強い眼差しで頷き返してくれる。

 

 彼女もまた決断を迫られている。

 

 

「……スモーカーさん、……戻れません」

 

 彼女が出した答え。そのあとに続くのは静寂、微かに大きくなってくる海兵の声。

 

 

 あまり時間はない。

 

 

 スモーカー大佐はたしぎさんの答えに対し無言を貫き、まるで先を促す様にして押し黙っている。葉巻から漏れ出てくる煙が上にただただ漂っていく。

 

 この状況に対してみんなも言葉を挟むことはない。ルフィさんだけはまだ気が付いていないからだけど。

 

「私には()()麦わらのルフィを悪だと断言することが出来ません!!! 私の中の正義と悪の境界線はよく分からないものになってしまっています。こんな状態では戻ることは出来ません。海軍で求められる正義は絶対的な正義、私は今それを失ってしまったんです。ローグタウンからこれまで私は彼らとかなりの時間を共にしてきました。彼らがやっていることは海賊のそれではありません……」

 

 そこで一旦言葉を切ったあと、たしぎさんは不意に涙を溢れさせ、

 

「……申じ訳ありません、スモーカーさん!!!! 私は…彼らのことを好きになり…始めていまずっ!!!!!」

 

感情の全てを(さら)け出す様にして叫びをあげる。

 

 

 スモーカー大佐は目を閉じていた。たしぎさんが言葉を紡いでいる間ずっと……。

 

 

 と、そこへ……。

 

「クロコダイルはどこだーっ!!! うおっ、けむり!!! やんのか、おまえっ!!!!」

 

 ルフィさんがようやく目覚めたと思ったら、すぐにスモーカー大佐に気付いてファイティングポーズをとる始末だ。

 

 

 海兵の駆けてくる足音までもがもうすぐ近くまで迫ろうとしてきている。

 

 

()()と名乗ることそのものが悪。悪とみなすにはそれで十分だと俺は思うがな……。なんで謝るんだ、たしぎ。何を謝ることがある? それがお前の正義なんじゃねぇのか? ……ふーっ……、そうなると、立場上俺はおまえを追いかけねぇといけねぇな……」

 

 スモーカー大佐はもう目を開いている。見つめる先はたしぎさんとルフィさん。でも一瞬だけまた目を閉じて、

 

「行け……。今回だけは見逃してやる。……たしぎ、この件が終わるまでは上にはお前は麦わらに攫われている身だと報告しといてやる。…………今回だけだぜ。……ったく、くいなは納得しねぇだろうがな……」

 

そう言葉を発するスモーカー大佐。

 

 くいなさんという件で顔を歪ませているのをみると、余程苦手なんだろうなってことが想像できる。

 

「くいなさんについてはよろしくお伝えください」

 

 神妙な面持ちでそう告げるたしぎさん。

 

「しししし!!! 俺たちは()()だからな、その方がいいかもな。俺、おまえのこときらいじゃねーなぁー!!!!」

 

 満面の笑顔で言っているルフィさん。

 

「さっさと行かねぇかーっ!!!!」

 

 顔を赤らめながら十手で攻撃してくるスモーカー大佐。

 

 

 なんだか素敵……。

 

 

「さぁ、行こうぜ、海軍が来る。アルバーナはこっちだぞ」

 

 サンジさんの声が聞こえてくる。

 

 

 

 うん。行こう。アルバーナへ……。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

偉大なる航路(グランドライン)” サンディ(アイランド) アラバスタ王国 アルバーナ北方

 

 

 

 砂漠で見る夕焼けは素晴らしいの一言に尽きる。

 

 一日の最後の輝きが赤、オレンジの光となって降り注ぎ、辺り一面に茫漠と広がっている“砂の海”を真っ赤に染め上げつつある。その中を亀車が俺たちを乗せて進んでいく。

 

 何ともロマンに溢れているではないか……。

 

 俺は今、バンチと呼ばれる亀が曳く客車の上で寝そべっている。周りには砂漠の道中で吹き飛ばされないようにとアタッシェケース10個がしっかりと固定されている。ベリー札がぎっしりと詰まったアタッシェケースが……。

 

 俺たちの進行方向は東、夕焼けが広がり太陽が沈みつつあるのは俺たちがやって来た方向、西だ。

 

 

 俺の手はこれまた無造作に煙草を掴み取っては口元へと持っていき、火を点けて煙が風で吹き流されてゆく。

 

 

 

 レインベースにおいてカナヅチではないべポ、ジョゼフィーヌ、カールにより、湖の中を抜けて脱出した俺たちは、用意されたバンチに乗りこんで夢の町を後にした。

 

 長い砂漠越えと亀車という組み合わせに俺は満足の言葉を洩らしたものだが、我が会計士はF-ワニとは比べようもないスピードの違いに難癖をつけてきた。そこはクラハドールの亀でも十分間に合うの一言で押し切ってやったが。

 

 

 客車の上は凹凸の激しい地形の為せる業なのか結構揺れる。ただし、揺れが激しい理由はそれだけではないだろう。

 

 南に見える王都アルバーナ……、ここまで響いてくる地鳴り……、大地が震えている音……、まるでこの国の民衆があげる心からの叫びのようだ。

 

 

 戦いは……、この国が行き着くところまで行き着いた最後の戦いは始まっている。

 

 

「総帥。コーヒーをいかがですか? オーバン料理長が淹れたものではなくてレインベースで買い求めたものですが、ジョゼフィーヌさんは美味しいと……」

 

カールが揺れの激しい客車の側面を器用にも水筒を抱えながら登って来た。

 

「ああ、貰おうか」

 

 

 

 

 

 美味い……。

 

 コーヒーをこんなにも美味く感じるのはこの景色、目の前に広がる情景も多分に影響しているだろう。

 

 横ではカールが南の方向を、地鳴りを響かせてくるアルバーナの方向を、最後の戦いが幕を開けてしまっている方向をずっと見つめ続けている。

 

「……カール、よく見ておけ、それから……よく感じておけよ。これが“時代のうねり”ってやつだ……。こうなってしまったからにはな、そう簡単に止めることはできない。時代の節目、節目で必ず起こることだ」

 

「……はい、総帥……」

 

 俺の言葉にカールは短く言葉を返し、尚も砂煙舞い上がる南方を見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

 コーヒーを携えたカールが下へと戻り、俺は小電伝虫へと手を伸ばす。相手はオーバンだ。俺が見つめる先、砂煙舞い上がる南方アルバーナに奴はいる。

 

~「丁度ええ眠気覚ましになりそうやな」~

 

 オーバンの開口一番は戦い真っ只中でもあいつらしくて苦笑を洩らさざるを得ない。

 

「ははっ、寝てる場合じゃないだろ。俺たちは今丁度おまえの北側を駆け抜けているところだ。そっちはどうだ?」

 

 俺たちの状況を知らせて、アルバーナの状況をオーバンに訊ねてみる。

 

~「200万の反乱軍が押し寄せとるわ。どうなるかは何とも言えんわな。奴らも戦っとるで、アルバーナのあちこちでな、相手は多分バロックワークスのオフィサーエージェントたちやろ。まあおもろい奴らやったけど、真剣勝負の命のやり取りやっとるわ。……ただ、麦わらだけはおらんけどな……」~

 

 奴らの戦いも始まってるみたいだな。麦わらがアルバーナに居ないというのは想像が付く。レインベースを発ってすぐ後方に舞い上がる砂嵐を見た。多分にクロコダイルだ。大方サシを挑まれたか挑んだかしたんだろう……。

 

 結果は目に見えているが……。だがそれでも、奴は諦めないだろうな、これっぽっちでさえも。奴は多分そういう奴だ。そして、だからこそ末恐ろしいんだ。

 

「……そうか。で、肝心の気になる動きはあったか?」

 

 ローとクラハドールがドンキホーテファミリーの金庫番と邂逅した際に感じたという気配の正体。それはアルバーナへと向かったのではないかと俺たちは推測していた。

 

~「……うっすらとな。得体の知れへんもんは見え隠れしとる。やろうとしてることも何となくわかる。せやけど、多分今はここにはおらん……。俺が予想するにやけどな、これはそっち早よ片づけてこっちへ来た方がええかもしれんな」~

 

 俺たちの方でも想像していることはある。だが、こっちの問題をさっさと片付けるのはオーバンが言う程簡単でないのは確かである。相手が相手なのだから……。

 

「わかった。善処するよ。オーバン、お前も気を付けろよ。いきなり背後を襲われてなんざ、洒落にもならないぞ」

 

~「何言うてんねん。それはこっちの科白やろが……。なぁ、ハット……、すまんな。こんなとこにおったら、今回はお前が危のうなっても引き戻せへんさかいな。……命だけは大事にせぇよ」~

 

 オーバンの最後の言葉に俺は胸を衝かれてしまうが、何とか口調には乗せずに、

 

「お前こそ何を言ってるんだ? お前をそこに残したのは俺だぞ。何も問題なくそっちへ戻るつもりがあるからそうしたんだ。大丈夫さ。だが、おまえの忠告は肝に銘じておく。じゃあな」

 

そう言葉を伝えて通話を切る。

 

 南方の砂煙は益々もって高く舞い上がりつつある。

 

 

 そして、

 

 

俺たちの背後が暗さを増していくのに合わせるようにして、向かう先である東の方向もまた陰りを帯びつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偉大なる航路(グランドライン)” サンディ(アイランド)北東部

 

 

 

 亀車は駆け抜けている。

 

 夜の帳が下りた砂漠の中をただ只管(ひたすら)にだ。

 

 

 サンディ(アイランド)北東部、オアシスひとつでさえあるかどうか、アラバスタ王国の管轄内なのかどうかさえ疑わしい島の果て。

 

 そこに俺たちは入り込んでいる。

 

 ドフラミンゴが口にしたというポイントという単語……。取引が行われる座標……。

 

 クラハドールが奴の金庫番から能力によって想像し座標数値を割り出している。俺たちは太陽を使って、太陽が沈んだ後は月を観測することでその座標数値へ向けて駆け抜けている。

 

 べポは副航海士だ。その辺りはロッコから薫陶を受けている。それに、ジョゼフィーヌもそういうことはお手の物である。

 

 俺は客車の上から下へと降りて進行方向に向かっている座席中央に身を沈めている。右にロー、左にクラハドール、前方にはジョゼフィーヌその両脇にはべポとカールだ。

 

 客車内の四隅に据え付けられたランタンが俺たちを照らしている。窓ガラスには俺たちが映り込んでいる。その向こうに広がっているのは闇の中で茫漠(ぼうばく)と広がっている“砂の海”だけだろう。

 

 

 

 緊張感と共にある高揚感……。

 

 

 

 なぜなら、

 

 

 

音が消えたからだ。

 

 

 

 それが意味するところはひとつ、

 

 

 

ナギナギだ……。

 

 

 “静寂なる森(サイレントフォレスト)”を出航する間際、あれだけ音が消えていた世界には音が存在していた。そして今、音が存在していた世界から音が消えている。

 

 ナギナギの実が生み出す力としか考えられないではないか。

 

「面白くなってきたな……」

 

 俺が何の気なしに呟いてみれば、

 

「……、言ったはずだ。奴らの背後には相当きな臭いものが存在していると」

 

左のクラハドールが間髪いれずに考えを口にしてくる。何とも不敵な笑みを浮かべながら。

 

 なるほどな、取引相手は黒髭海賊団ってことか。

 

 “静寂なる森(サイレントフォレスト)で出会った男、クラハドールによればラフィットは黒髭海賊団に所属しているという。ファミリーの()()()()()()()()……。

 

 ここからは奴の推測だ。ドフラミンゴは黒髭の情報を掴み、ラフィットを潜入させたつもりでいたが、当の本人がいつの間にか心酔する相手を変えてしまったと……。

 

 ラフィットという男は信頼されて潜入させていた男なんだろう。故にナギナギの実を任せたが、それを受け取る段階になって奴は本性を露わにしてきたわけだ。自分のボスはお前じゃなくて黒髭だとでも言ったのかもしれない。

 

 これは取引と言えるだろうか?

 

 ドフラミンゴは裏切りを許さないだろう。容赦はしないだろう。

 

 ナギナギの実とダンスパウダーの取引なのだろうか?

 

 まあいい、真相は行ってみればわかることだ。

 

「ロー……」

 

 右横で優雅にふんぞり返っている我が副総帥の名前だけを呼んでみる。言外にかなりの含みを持たせて……。

 

「奪う。それ以外にねぇだろ……」

 

 ああ、そうだな。そう言うと思っていた。

 

「まず俺とローで殴り込みを掛けよう。不意を衝いてダンスパウダーとナギナギの実の両方を手に出来れば、あとは一目散に逃げを打つ。まあそう簡単には逃がしてはくれないだろうから、当然戦う必要はあるがな」

 

 作戦と言っていいレベルではないお粗末なものであるが、正直出たとこ勝負だ。ここまできたら精緻もへったくれもない。

 

「見えたわ、気配を感じる。私たちはそこに真っすぐに進んでる。気配の数は6、固まってる。離れたところに1。多分に奴らにも気付かれてる」

 

 ジョゼフィーヌが見聞色の覇気でこの辺境の砂漠のど真ん中、しかも闇の中に気配を感じた。

 

 間違いない。奴らだ。

 

 もう時間はない。

 

 

 だがそれでも俺はゆっくりとした動作で頭の上に載っているシルクハットを取り、前へと(かざ)す。

 

 俺の動きに応じて皆が一様にシルクハットもしくはファー帽子を取って同じように(かざ)してくる。

 

「もう引き返すことはできない。ここまで来てしまったからな。目的のものは貰っていくぞ。そして命ある身でこの島を出る。誰一人欠けることなくだ。俺たちの商売はこれからも続いていく。いいな……、それを俺たちのシルクハット(シンボル)に誓う」

 

 士気を高める言葉を己の中から紡ぎ出して一拍置く。

 

 翳されたそれぞれの帽子がひとつの円を形作って俺たちをひとつにしてくれる。

 

 

 

「「「「「「俺たちの商売に繁栄を!!!!!!」」」」」」

 

 

 

「「「「「「奴らの商売に死を!!!!!!」」」」」」

 

 

 

 全員の声が合わさり、客車内を駆け巡っていく。

 

 

 音が消え、俺たちは闇の中でもさらに暗い漆黒の闇の中へと突入するのだ。

 

 

 俺の中にある魂は歓喜しているか?

 

 

 そう問い掛けられれば、間違いなくこう答えることだろう。

 

 

 俺の魂は今、狂喜乱舞していると。

 

 

 間違いなく、ドフラミンゴは相当ご立腹な状態だ。そこへ俺たちが現れたのであるから……、どんな状態であるかは考えるまでもないことである。

 

 

「ROOM」

 

 ローが静かに、とても静かな声音で能力を行使し始める。

 

 

 亀車は闇の中を駆け抜けている。ただひとつのポイントへと向かって……。

 

 

 気配はもうすぐそこまで近付いている。

 

 

「ロー、やってくれ。お前たち、突入だ」

 

 俺も静かに開始のベルを告げる。

 

 

「シャンブルズ」

 

 

 

 

 ようやく俺たちは漆黒の闇の中で開かれる“狂喜乱舞”という演目に舞台入りを果たした……。

 

 

 今この時、……俺の中の魂は怖いくらいに歓喜している……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきましてありがとうございます。

アラバスタも大詰めへと入って参ります。

誤字脱字、

どうしても気になるところございましたら、ご指摘、

心動かされるものがございましたならご感想、

魂が迸るままにどうぞ!!
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