ネルソン商会記 ~黒い商人の道筋~   作:富士富士山

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第42話 問い

偉大なる航路(グランドライン)” キューカ島

 

 

眼下で一気に広がってくる視界。ホテルの緑(あふ)れる庭園とその外側に続いている瀟洒(しょうしゃ)な街並みを思い出させる沢山の屋根色。

 

そして襲いかかってくる風。

 

俺は今、中空に佇んでいる。つまりは飛んでいた。

 

真っ二つにされた空中会議室の切れ目から飛び出し、己の体の隅々にまで飛べと命令を下して久しぶりの浮遊感を味わっている。目に見えはしないが六式の月歩(ゲッポウ)によって、まるで空気を踏み固めているような感覚だ。

 

その何とも懐かしいような感覚を噛み締めながら向き合わねばならない相手を探し出してみれば……。

 

 

いた。

 

 

空中会議室と呼ばれていたホテルのアーチ形の建物を除けばこの界隈では最も高いと思われる屋根の上に据え付けられた風見鶏の先端。確かにそこに奴がいる。えんじ色柄と黒のマント姿、主張の強い羽飾りを付けたハット帽、手には既に抜剣している大剣。

 

そうだ。抜刀じゃない。あれは刀じゃないな。剣と呼ぶのが相応しいだろう。

 

ソファでふんぞり返っている姿からは想像出来なかったが、奴は背に剣を負っておりそれは身長と大差なかった。立ち上がったところを見るからに俺と変わらないであろうから、2m近い大剣ということになる。尋常ではない大きさだ。それをあのように軽々と構えている姿からして只者ではないということだろう。

 

遠目から窺ったところの奴の表情は何も垣間見ることは出来ない。

 

さて、どうしたものかな。

 

上を見上げてみれば空中アーチの上でこれまた早速両手に“猫の手”を装着しているクラハドールの姿を認めることが出来るかと思っていたのだが、まだ両手は手袋を嵌めたままである。

 

「どう思う?」

 

己の体を中空で浮かび続けさせることに意識を向けながらも、そんな余裕綽々(しゃくしゃく)で大丈夫かと問いたくなる奴に対してこの場の見立てを訊ねてみる。

 

「間違いなく勝利は覚束(おぼつか)ねぇだろう。勝てる相手じゃねぇことだけは確かだ」

 

だろうな……。

 

はっきり過ぎるほどにはっきりとした答えが返ってくるが、俺も同じように考えていたため返事をする気にもならない。

 

正直俺も勝てるとは思っていないのだ。そんなに思い上がってはいないつもりではある。相手の方が上であること。そんなことは分かり切っている。そもそもに打ち負かす必要もない。暇つぶしを吹っ掛けられたに過ぎないので適当に付き合ってのらりくらりとはぐらかせばいいのである。ただ、そんな簡単にのらりくらりとはぐらかせる相手であるのかという問題は存在しているし、こいつの背後に存在する政府上層部に対し幾許(いくばく)かの恐怖心を抱かせてやるためにも何かしらを見せつけておきたいところだ。

 

コントロール出来ると思われてはならない。舐められるわけにはいかないのである。

 

「……ただ、筋書きを組み上げることは可能だ。結末は申し分ないものとなるだろう、多分な」

 

「そいつはいいな。……で、どうするんだ?」

 

クラハドールは今回どのような筋書きを描き出しているだろうか? 出会った頃よりもあいつの想像能力は精度が上がってきている。あいつは一見何の関係もない点と点の間に線を見出し、それを面に広げてくる能力だが、その精度が確実に高まっているのだ。

 

今も満足そうにして、己のメガネの位置を例の仕草で直している。

 

「ひとまずだが……、俺は今回、契約条項を厳格に守って従い戦闘不参加だ。じゃあな」

 

「ああ、分かった。契約遵守が第一だからな。鷹の目は任せとけ……って、おい」

 

おいおい、じゃあな……じゃないだろうよ。この期に及んで戦闘不参加とはどういう料簡だ。想定外すぎて滅多に出来たためしなどないノリツッコミなるものをしてしまったではないか。

 

そんな俺の思いなど素知らぬ風で、我が参謀は軽やかに下へ下へと跳躍を始めている。数珠繋ぎの建物をそれはそれは器用に飛び跳ねているではないか。

 

アラバスタでは二人して青雉とも遣りあったというのに、その青雉と大差ないであろう相手に対してひとまず俺一人で何とかしろっていうのか。まったく総帥を何だと思っているのかと問い質してやりたいが……、

 

 

まあ、とっておきのものを用意しているとも言っていたしな……。

 

 

脳内を駆け巡っていた諸々を閉め出して、下方からこちらへと鋭い視線を寄越している相手へと意識を向けていく。

 

相手は剣士である。しかも世界最強の位置に座する剣士だ。それに対して俺は銃で挑む。剣対銃、古より繰り広げられてきた戦いの構図ではあろうが果たして歯が立つであろうか?

 

「……始めようか」

 

鷹の目を持つ男から放たれた最小限の言葉と共に暇の潰し合いは幕を開けた。

 

 

奴の右手が動く。

 

 

黒刀が滑らかな斜線を描き出し、

 

 

生み出されるのは飛ぶ斬撃。

 

 

強烈という言葉だけでは足りない程の……。

 

 

空気を切り裂いているのが肉眼で確認できるそれはしっかりと覇気が纏われていた。だが制御されている。決して手に負えないようなものではない。まずはこちらに合わせてきたということなのだろうか。ならば、

 

鉄塊(テッカイ)武装“黄金壁(ゴールデンウォール)”」

 

受け止めてみようではないか。能力で自身を黄金化させた上に六式で最硬度まで高め、武装色の覇気を纏ってみる。

 

軽く飛ばしたに過ぎないのにも関わらず尋常ではない切れ味を伴っているであろう斬撃は俺の防御を打ち破ることはなく、何とか受け止めることに成功したようだ。

 

「これは俺がどういうものなのかは知っていると考えていいのか?」

 

制御された第一撃を受ければ、そう問うてみたくなる。

 

「知らんな。貴様のことは聞いてはいたが、交えねば正確なところは知れぬもの」

 

「交えた結果はどうなんだ?」

 

続けての問いに対して言葉による答えが返ってくることはなく、代わりに返ってきたのは……。

 

 

跳躍。

 

 

大剣の(つば)を足場にしてのさらなる跳躍。

 

 

と知覚した瞬間には先程まで俺が浮かんでいたのとまったく同じ高さに奴の姿が存在していた。どうやら見聞色は通用するようだ。(ソル)のスピードで一瞬早くその場をあとにしていなければ今頃は上半身と下半身を真っ二つにされていたことだろう。容赦なく覇気を纏った斬撃は数珠つなぎのアーチ形の建物を重力の(しもべ)とするが如くに切断してしまっている。間違いなく第一撃よりも覇気の力は増幅されていた。

 

奴のポジションはそこが定位置であるかのようにして再び風見鶏の上。下方で生み出されている破壊音を聞くにホテルの庭園は悲惨なことになっていることだろう。

 

また、来るぞ。

 

 

前方に居たはずの奴の姿が消えた。

 

 

至近距離。

 

 

真正面。

 

 

突きの一撃。

 

 

体を紙のようにゆらゆらと変化させ受け流そうとしてみる。しっかりと武装色の王気を纏いながら。もう覇気でどうにかなるような小手調べの時間は終わっている。

 

 

上。

 

 

上段からの再びの突き。

 

 

奴の視線が一段と鋭くなる。

 

 

違う。これは見せかけての、

 

 

横薙ぎ。

 

 

スピードが桁違いに第一撃よりも増している。

 

 

くっ、……これは間に合わない。

 

 

精一杯で急速に高めた武装色を嘲笑うかのようにして軽々と打ち破ったその斬撃は腹に深々と入り込み一瞬にしてスーツに血の染みを作り出す。

 

 

くっ……。

 

久々に脳内を抉り取るような痛みは戦いがどういうものであったかということを思い出させてくれるようだ。もしかしたらこれは血の染みで済んでいるということなのかもしれない。まだ奴にとっては制御された攻撃なのかもしれない。下方の庭園に心なしか真一文字が出来ているような気がしてならないが……。

 

「悪いが慎みの時間は終わりだ。それでは楽しめんからな」

 

またもや定位置にてぴたりと留っている鷹の目から投げ掛けられる言葉に容赦などない。このままでは防戦一方である。少しでも時間を稼いだ方が良さそうだ。

 

「……それは結構なことだ。……世界最強の剣士にそう言って貰えて……光栄の極みだよ。そこでどうだ、教えてはくれないか? ……あんたは何で七武海なんかやってる?」

 

腹の痛みに何とか耐えながらも中空に浮かび続けつつ、時間を稼ぐべく言葉を紡いでゆく。とはいえ、これは興味のある質問でもある。この男が七武海をやっているのは極めて謎なことだ。海賊団を持っているわけでもなく一匹オオカミとして加入しているのは一体なぜなのか。そこにどんな思惑が存在しているのか。そもそもにこいつは海賊なのかという根本的な疑問も存在する。

 

そんな数々の疑問を頭の中に並べたてながら奴の表情を眺めてみるのだが、当の本人が思案をする様子は微塵も感じられず、表情を一切変えることなく、

 

「何を目指す?」

 

と、質問に対して質問で返されてしまう始末だ。

 

だがどうだ、いざこの鷹の目を持つ男にそう尋ねられると逡巡(しゅんじゅん)してしまう己が存在している。

 

俺は、俺たちは一体何を目指してこの海に、偉大なる航路(グランドライン)にやって来たんだろうか?

 

世界をとるため? それ即ち五老星を引きずりおろすこと。父の死の真相を掴むことになり、その報いを受けさせてやる? 

 

ドフラミンゴを叩き潰す? 奴には数々の因縁を持ち合わせている。それら一切合財含めてケリをつけてやる?

 

一方で俺たちは商人だ。なぜ商人なんかやってる? この大海賊時代になぜ俺たちは商人を選んで今ここに存在しているのか?

 

「答えられんのか? ……貴様には()()という言葉の意味を思い知らせてやる必要がありそうだな。……弱き者よ」

 

己の思考に割って入ってくる鷹の目の言葉には慈悲の欠片とて存在していない。

 

何だと言うんだ。眼前の相手と力量が違うことくらい分かっている。分かった上で相手をしている。

 

だが、こうもはっきりと言葉にされると納得がいかない。

 

 

などと今は考えている場合ではない。

 

腹から染み出している血は何とか止まった。

 

脳内を右往左往させるものを閉め出し、反撃に出るべく無意識で発動できる動作に体を委ねてみる。

 

右手は連発銃を取り出すと同時に能力によって作り出された黄金弾を装填し、狙いを定めてただ只管に引き金を引く。

 

 

否、狙いを付ける必要はない。

 

前方へ向けてただただ六連の動作を行うのみ。放たれた6つの銃弾は瞬間的に軌道を描いて相手へと向かっていく。対する相手は俺の発射動作に応じて黒刀を構えてみせ、その切っ先で……。

 

 

 

方向を逸らそうっていうのだろうが、そうはいかない。

 

六連星(プレアデス)金糸(スパンゴールド)”」

 

黒刀と接触した瞬間に黄金の銃弾は糸状へと姿形を変えて、奴の右手と黒刀を諸共結わえつけるのだが、皆まで見届けることはせずに、ここぞとばかりに間合いを一気に詰める。

 

月歩(ゲッポウ)(ソル)を掛け合わせた剃刀(カミソリ)によって……。

 

位置するは鷹の目の斜め上方。

 

奴と視線が真っ直ぐに絡まり、瞳に映るは二つ名通りにまで鋭い眼差し。まさに射竦められるような視線。

 

正直成功するかは二分八分ぐらいで考えていたが、しっかりと六本の金糸は黒刀と奴の右手を縛り付けていた。

 

ならば、

 

嵐脚(ランキャク)武装 “黄金嵐(ゴールデンブリザード)”」

 

右足を瞬時に黄金化させ、至近距離からの蹴りで鎌風を叩き込むまでだ。ありったけの王気を纏ってな。

 

 

 

だが、そこに現れたのは拮抗(きっこう)。否、だがは自惚れが過ぎるというものかもしれない。辛うじて拮抗(きっこう)

 

王気を纏って襲いかかった黄金の鎌風を黒刀一本で相殺されてしまう。確かに右手と黒刀を縛ったところで大した意味はない。何とか一分の隙でも作り出せればと繰り出してみた攻撃ではあったが……。

 

「面白いではないか。だが最後は頂けんな。つまらん横槍だ。自ら剣と銃の真剣勝負に水を差しているぞ」

 

そりゃ、ごもっともなんだが、こっちはそんな余裕をかましている場合ではないのだと言ってやりたいが止めておこう。まあ、相討ちなら上々だ。

 

そして相討ちならば、ここに長居は無用である。逆に反撃を食らってしまう。よって背中から下方へと体を投げ出すようにして垂直落下を試みてみる。鷹の目相手に背中を見せて間合いを再び開けるのは自殺行為のような気がするからだ。

 

ゾクゾクするような浮遊感と共に体は真っ逆さまに下へと向かってゆき、風見鶏の上に立つ鷹の目の姿は遠ざかってゆく。空の青さがこの世のものとは思えない程に現実離れして目に飛び込んでくる。どうやら落ちるという行為には人を感傷に浸らせる力があるらしい。

 

とはいえ、あの青い空の下、くすんで見える金属製の風見鶏に位置していたのは紛れもなく世界最強の剣士であり……。その世界最強の剣士は一輪刺しよろしく黒刀片手に急降下してきている。

 

試してみるか。

 

悪魔の実の能力に限界は存在しない。覇気と掛け合わせることでそれは無限の広がりを見せる。閃きとそれを具現化するための頭脳と身体能力があれば、あとは鍛錬あるのみである。黄金の銃弾から金糸に変化させた技も然り、きっかけは何でもない空想に過ぎないが、突き詰めればそれは新たな形となり得る。

 

鷹の目が言う極みに対する答えがこれでは不足だろうか?

 

「俺の問いに答えて貰うには俺があんたの問いに答えなきゃならないのか?」

 

無言を貫かれるだろうが、そう訊ねてみれば、

 

「無論だ」

 

返ってきた答えはその一言。相手を射殺すような視線というおまけ付きだ。

 

人生甘いものではないということだろう。何かを得たければ何かを差し出さねばならないのだ。

 

答えを知りたければまずは己で答えを出さねばならない。

 

 

銃口を向ける先は上方。繰り返すは一連の動作を6回。即ち全弾発射。

 

 

放った黄金弾は鷹の目へと向かって瞬間で上昇していく。

 

 

黒刀を真っ直ぐ伸ばして急降下中である奴の表情を窺うにそれなりの答えを出せたのではなかろうか。

 

 

見聞色で俺の意図は読まれていることだろうが、

 

 

極みという言葉の意味を体現する男は果たしてどうするのだろうか。

 

 

黄金弾は吸い込まれるようにして奴の黒刀へと向かっていき、その切っ先を掠めようかというところで、

 

 

追跡放物線(トラッキングパラボラ)黄金比(ゴールデンレシオ)”」

 

 

銃から発射された推進力のみで突き進んでいたものから、王気と共に自然と纏っている能力としての意思を滲み出してゆく。6弾をそれぞれ四方八方へと放物線を描くようにして飛散させ、鷹の目の出方を窺ってみる。

 

連発銃より発射した6つの銃弾に己の意思を纏わせて、放物線を描くようにして相手をどこまでも追跡させてゆく。全ては己の匙加減で決まるので、どうなろうともそれは最終的に黄金比となるであろうというわけだ。

 

地上まではもうほとんど余地が残ってはいないというところで、強引に下降を止めて着陸態勢へと準備に入りながらも意識は上空で放物線を描き続けている銃弾6つと鷹の目へと向けている。銃弾のスピードは弧を描きつつも(いささ)かも落ちてはいない。

 

さて、最強の剣士はどう出る?

 

己の体勢を着陸に備えて90度動かしたのち、破壊の傷跡が(おびただ)しいホテルの庭園に足を付け、こちらへと向かって黒刀の切っ先を刻一刻と近づけてきている鷹の目に対しひとつの銃弾を意識的に突入させてみる。その銃弾はまるで突然気が変わったとでもいうようにして、全く有り得ない軌道の放物線を描きながら、一切の減速を見せずに奴へと突き進んでゆく。

 

上空を睨みつけながらさらなる銃弾を奴にぶつけてやろうと、残り5つの銃弾をそれぞれ時間差を置いて突然の放物線を描きながら動きに変化を加えていく。6つの銃弾があるひとつの意思を持って一点へと向かって集束してゆく。

 

 

奴は自らの攻撃によって傷をつけた大地に黒刀から着地。

 

 

と同時に一回転するようにして体勢を逆転させて、

 

 

黒刀と一体化している右腕を舞うようにして動かし、

 

 

それは加速度的にスピードを増してゆき、

 

 

気付けば奴は自ら作り出した斬撃を自らを守るための鎧のようにして身に纏っていた。

 

 

時同じくして、奴を穿つべく向かっていった六つの銃弾は、

 

 

奴が作り出した斬撃の鎧にぶち当たり、

 

 

王気を纏っていたそれは銃弾とは思えないような衝撃をもたらしている。

 

 

その煙、濛々(もうもう)たる中から覗いてくる人を射竦めるような視線。

 

 

 

不味い、来るぞ。

 

 

 

奴と目が合った瞬間には奴の姿は消え去っており、そこに聞こえたのは空気を切り裂くような音であり、皆まで聞くことはせずに俺はその場で跳躍し、脚に力を加えて瞬間的に剃刀(カミソリ)移動を開始していた。

 

 

 

読まれている。

 

 

 

見聞色を扱う者同士、読み合いになることは致し方ないが、そうなると明らかに分が悪そうだ。黒刀による切り裂きで生み出された斬撃が今度は逆に俺を追跡するようにして向かってきている。

 

「貴様の極み(答え)はこんなものなのか? つまらんな。……極みとはこういうことだ」

 

中空で振り返ってみれば、感じるのは全てを叩き込んだかのように増幅された覇気。最高峰まで高められれているかのような武装色。それが黒刀に纏われており、生み出される斬撃はまるでこの世そのものを斬ろうとするかのよう。

 

黄金弾幕(ゴールデンバレージ)

 

恐怖をもたらす一撃に対して俺は咄嗟に銃弾を発射することに成功していた。6つの銃弾で生み出すのは金色に輝く弾幕。巨大な力を伴った斬撃を少しでも和らげる盾の役割を果たせないだろうかというわけである。

 

 

自らの武装色を纏った黄金弾が飛翔する斬撃と炸裂する。眼前に金色の輝きが斬撃を包み込むようにして瞬間的に広がってゆく。金色化した大気の向こう側、もう庭園とはとてもではないが呼べない地に奴が立っている姿が見て取れる。鷹のように鋭い視線は真っ直ぐに俺に向かい何かを問いかけているようだ。

 

 

貴様は何を目指す? 貴様は何者なのだ?

 

 

二つの根源的な問いを投げ掛けれれたような気がした瞬間、金色を突き破って鋭いまでの斬撃が突き進んでくる。

 

 

それは刹那のことでありながら、スローモーションのように感じられてしまうスピードのようでもある。

 

 

 

俺は何者なんだろうか?

 

 

 

この問いに答えを見出すことが出来なければ、俺に未来はなさそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

私の新たなる戦いが始まりを告げた。いいえ、始まりの鐘は再び祖国をあとにしたあの時、既に鳴っていたのかもしれない。

 

 

再びの密かな出国ではあったが、イガラムにチャカ、そしてリーダーまでもが見送りに来てくれた。さすがにパパは来てはくれなかったけれど。

 

パパにはやるべきことがある。アラバスタにはやるべきことが山ほどあるのだ。リーダーも見送りに来てくれたその足でユバに行くと言っていたし、イガラムはタマリスクにてあの外道から全権を委任された()()()()とかいう人物に会わねばならないらしい。未来へとみんなが動き出していく中での再びの出国。私は決意を新たにして祖国を離れてきた。

 

サンディ(アイランド)沖合の海上にて落ち合った海軍船に座乗していたヒナさんと再会してみれば、開口一番にも大剣幕でこっぴどく怒られてしまったけれど、その後は姉のようにして優しく接してくれた。ペルとカルーを交えながら、今後どうするのかという相談にも親身になってくれた。

 

お陰でヒナさんの伝手を頼りにすることが出来ることになり、私たちはここキューカ島へとやって来たのだ。ヒナさんとネルソン商会の関係については詳しくは知らない。聞いてはいけないことのような気もするので、本人が話してくれるまでは私の方から聞くつもりはない。何かの深い関係で結ばれているのだろうけれど……。

 

そして今、私はカルーの背に身を預け、このキューカ島を駆け抜けている。この島に着いてからの出来事はジョゼフィーヌさんによればおふざけが過ぎるみたい。

 

私たちは結構真剣だったんだけどな~。

 

「……ねぇ、カルー!」

 

「クエーッ!」

 

カルーはいつだって私の味方だ。

 

私たちが先を急ぐ道からは徐々に建物の姿は消え始め、牧歌的な風景へと変わりつつある。右側にはこちらへと迫るようにして並走しつつあるあのフラッグガーランドと色とりどりのパラソルたち。その下でのんびりと草を食んでいる牛の姿。

 

風が心地良い。

 

「あーひま、回ってようかしら。回ってることにするわ、あちし」

 

え?

 

何か聞き慣れた声が聞こえた気がするのだけど……。

 

「カルー、あなたは何か聞こえた?」

 

「クエッ、クエッ、クエーッ!!」

 

首を左右に何度も振りながらカルーは全力の否定をして見せてくれる。

 

「そうよね。気のせい、気のせい」

 

ここでMr.2 ボンクレーに再会するなんて、私の嘗てのパートナーに出会うなんて、それこそおふざけが過ぎるというものだ。

 

あの男との出会いは強烈だった。オカマという存在を知ったのもその時が初めてだったし、何よりも私が対を成すようにしてオナベという存在を演じることになろうとは思いもしていなかった。あの経験があるからこそ今があるだなんて私は断じて思いたくはない。ひとつ分かったことがあるとすれば、それは私にはそっちの気はなかったということぐらいだろうか。ただそんなことを知りたかったか知りたくなかったかと言えば、それは前者であることは間違いない。

 

とにかく、あれは私が葬り去りたい過去のひとつであることだけは確かだ。

 

「オォ~~~カマ~~~ウェ~~~イ~~~♪」

 

何? 幻聴?

 

最近何だか周りの気配を感じやすくなっているような私、心なしか並走してきているフラッグガーランドをゆくパラソルの上で何だか回っている誰かがいるような気がしてならない。

 

草を食んでいる牛がのんびりしている牧場の上をぐるぐると回りながら移動しているオカマの絵柄だなんて、

 

 

シュール過ぎる……。

 

 

もう、ジョ~~~ダンじゃな―――いわよ~~う!!

 

 

って、口ずさみそうになっちゃうじゃない。

 

これは危ないわ。

 

「カルー!! 全速力よ!!!」

 

「クエーッ!!!」

 

カルーにとっても私の元パートナーはトラウマのような存在だろう。何せアルバーナではあの断崖絶壁を恐怖の形相で追い掛けられたことで、カルガモであるにも関わらず飛ぶことが出来たのだから。あれを火事場の馬鹿力というのだろう。カルーにしてみれば相当怖かったに違いない。けれども、あの時はそんなこと言ってる場合じゃなかったのも確かだけれど……。

 

ついこの間のことであった祖国での激闘に一瞬思いを馳せたのち、また恐怖の歌声が聞こえたような気がして、

私たちは何も聞こえなかったことにし、何も感じ取らなかったことにした。勿論、右側上方なんて絶対に見ない。

 

 

早くカール君たちを探さないと。

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きましてありがとうございます。

このキューカの章、意外と結構長くなりそうです。

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