今回は9000字ほど。
よろしければどうぞ!!
“
「……大丈夫……ですか?」
覚束ない足取りを見せていたローさんのために今私はカルーの背中という定位置を譲っている。ローさんの能力であるオペオペの力というのは使えば使うほどに体力を消耗するものらしい。なので、あの海賊のところへ戻るにしても極力能力を使わずに体力を回復する必要があるからとこうして徒歩行なわけであるが、さすがにあのようにふらふらと歩かれてはカルーの背に揺られている自分が申し訳なくなってくるというもの。
今もローさんはカルーの背に体を預けながら何とか姿勢を保っているように見える。
「……ああ」
返ってくる言葉も必要最低限。返ってきたこと自体を良しとしなければならないのかも。
「カルー、ローさんをしっかりお願いね。ローさんかなり疲れてるみたいだから」
「クエーッ!!」
カルーからの答えはいつも通りの元気良さ。これで少しでも体力を取り戻してくれればいいけど……。
「……ひとつ、……お前に忠告しといてやる。敬語はもう使わなくていい。それはカールだけで十分だ。お前自体が使うことを……望んでねぇように思うがな……。さっきの一拍の逡巡は……つまりそういうことじゃねぇのか」
うぅ……、疲れてるくせにローさんは鋭い。全く以てその通りなのだ。大丈夫と訊こうとして結局は踏ん切り付かずににですかを付け足してしまった私。演技には結構自信があったのだけど、どうやら見透かされていたようで、ローさんの方が役者が一枚上手だったみたい。
「はい、その通りです。……あ」
言った側からこれである。追い打ちを掛けるようにしてローさんに涼しげな瞳を向けられると文句を言えなくなりそうだ。それでも、
「うん。……そうね」
何とか言い直してみれば、それでいいとでも言いたげな頷きがローさんからは返ってくる。
こんな調子で私はこの先やっていけるのかしら? 先が思いやられるばかりだ。なんて思いながら意識を周囲へと向けてみる。
辺りを覆い尽くすのは黒い闇。だがフラッグガーランドが縦横無尽に張り巡らされているこの島では闇と共に輝きだす光が存在するようだ。フラッグガーランドには電飾が施されている。なので闇夜の中、至る所に光り輝く曲線が描き出されている。その曲線を移動するパラソルにも抜かりなく電飾は施されており、それらによって照らし出される闇夜の世界はこの島を昼間とはまた趣の異なるものへと変貌させているのだ。
「……コラソンって誰? 大切なヒトなの?」
ローさんが答えてくれるかは分からないけれど、私としては気になってしまって尋ねずにはいられなかったことについて光り輝く電飾の力を借りて、敬語を止めた勢いついでに言葉として紡ぎだしてしまう。
ただ、案の定というか返ってくる言葉は存在しない。
それはそうよね。私たちはまだ出会って間もないわけで互いを知り合っているわけでもないのだから。
この場に生み出される音はカルーの脚が、私の革靴が砂利道を踏みしめる音。そして軟らかな夜風が木々を撫でる音だけ。それは無音の静寂とは言えないけれども心地よい静寂でもある何とも不思議な時間と空間。
それでも、
「……これはちょっと違う話かもしれないけれど私にも大切なヒトが居るの。彼はコーザって言うんだけど、私は昔の癖が抜けなくて彼をリーダーって呼んでしまう。幼い頃に砂砂団っていうグループを作っていてね、彼はそのリーダーだったの。ちなみに私は副リーダー。そんな彼はこの前の戦いで反乱軍のリーダーを務めていたわ」
ローさんについて知っておきたくて、話をしてもらうためにも私は自分を少しづつ曝け出していくという選択を取ってゆく。
「……俺とお前の話は全く違うな。お前のリーダーはまだ生きてるんだろうが、俺のコラさんはもうこの世にはいねぇ。だから全く違う話だ」
自分から曝け出した分答えが返ってきたのだがそれはそれは一刀両断するようなもの。
「ただ……、大切なヒトってのはその通り……。コラさんは俺の恩人だ。俺の故郷は
でも、話すきっかけにはなったようで生まれ故郷からの生い立ちとコラソンと呼ばれる人物との関係性についてローさんは話してくれた。それによってコラソンと呼ばれる人物がローさんにとって特別である理由がはっきりと分かったし、私の話なんかよりもよっぽど根が深い話であった。
「だから
話はコラソンからドフラミンゴへと移ってゆく。私のドフラミンゴに対する呼称も自然とローさんと同じようにジョーカーへと変わってゆく。
「そうだ。ジョーカーとのケリを付けることが俺の第一義だ。そこは気が合うかもしれねぇな、俺たちは」
「ええ、そうね。私もぶっとばしてやるつもりだから」
そう答えながら私の視線はローさんの方へ向かい互いに自然と目が合う。そこには秘密の約束を交わし合ったかのような一種の連帯感のようなものが生まれたような気がする。
「だが、ジョーカーへの道のりはまだ遠い。ひとまずはこのヤマを何とかしねぇとな。お前は今回の目的であるダンスパウダーについてどこまで知ってる?」
ダンスパウダー。私の祖国の戦いの端緒となってしまった出来事が否応なく思い出される。口にするだけでも忌々しい悪魔の粉だ。
「多分詳しくは知らないと思う。何なのかは知ってるけど、それ以上のことは……」
バロックワークスに潜入しクロコダイルに近いところで活動していたわけであるが裏の全てを掴めたわけではない。
「ダンスパウダーを製造工場ごと政府に引き渡すことが四商海入りの条件になってることはもう知ってるな。政府は何としてでも回収したがっている。ボスの話じゃ工場には新世界はとある国の科学技術が使われてるって話だ。ダンスパウダー自体もある勢力が集めて回ってるって話だしな。つまりは重要な取引材料になるってことだろう、その勢力とのな。だからカポネ屋も手に入れようとしてんだろうぜ」
でもローさんはかなりの部分について知っているみたい。心なしか表情が生き生きしてきているような気がする。このヒトはこういう話が好きで好きで仕方がないのかも。
「それならどうやって交渉するの? 相手も欲しがっているものを貰うことなんて……」
私が尤もな質問をぶつけてみればローさんは笑みを浮かべながら途端に悪い表情になり、
「……交渉するなんて誰が言った? 交渉の余地なんてねぇ時に取れる選択肢なんざ決まってんだろ……」
海賊みたいなことを言い出すのだ。
「お前の言う通り、カポネ屋の城の中に入ってしまえばこっちのもんだ。奴らには俺たちが出し惜しみをしねぇ金づるだと吹き込んでんだろ。何も問題はねぇはずだ」
もう体力が回復してきたのかしら。淀みなく放たれてくる言葉を聞いている限り何も問題は無さそう。
気付けば私たちの徒歩行は終わりを迎えつつあるみたい。前方の闇の中に煌びやかに輝く電飾の世界が開かれている。島の北に位置するフラッグガーランドの終着点と北の港だ。
「奴ら相手に私はネルソン商会の名代と名乗ってるの。だから言葉づかいも少し変えてる。何とか合わせてくれる?」
そこで、私はスイッチを入れる。完全なる演技に入るスイッチだ。
「……お前がそこに座っているのは不味いな。交代だ」
手振りでカルーの背から下りるように示して見せれば、
「いいだろう。途中で笑っちまいそうだが何とか合わせてやるよ」
すんなりと跳び降りてくれる。
「見ろ、あの電飾の世界を……。これはとびっきりの夜会になるだろうぜ」
ローさんの言葉を頭の中で転がしながら私はカルーの背に体を預けてゆく。私の頭の中を占めているのはこの
そんな内心の心配を余所にして私たちが向かう先は海賊カポネ・”ギャング”ベッジの城の中。
ローさん曰く、とびっきりの夜会になるみたい。
****
城の中に入るのは拍子抜けするぐらいに造作もねぇことだった。カポネ屋は自らの船の前で待っていたわけであるが、俺たちが姿を見せたのを確認しても奴は葉巻を燻らせながら何も言わずにただ佇んでいた。
それでも気付けば俺たちが居る場所は船を見上げる小さな波止場ではなく、貴賓室とでも呼べばいいような一室。天井からは煌びやかなシャンデリアが吊り下がり、市松模様の床と精緻な装飾が施された壁に囲まれた中に真白なクロスを掛けられたテーブルと対面する椅子。テーブルの上には彩りを加えるようにして火が灯された燭台がひとつ。それだけを見ればこの場はただの交渉の席であるが、銃で武装した者が壁一面に等間隔で配置されているところを見るからにただの交渉の席となるはずもない。
っていうか、俺たちがそもそもただの交渉の席にするつもりがねぇんだが……。
対峙する椅子はしばらく空席のままであったが、突如としてハット帽が現れ、さらにはカポネ屋の体が後に続いてきた。
「待たせたな……、ワインでもどうだお前たち?」
「貰おうか」
交渉開始の合図はワインと共に。やはり、良い夜会になりそうだな。
「紹介しよう。こちらがネルソン商会の副総帥であるトラファルガー・ローだ。ロー副総帥、こちらがファイアタンク海賊団船長カポネ・“ギャング”ベッジ殿だ」
ワインを少々嗜んだ後に、交渉の口火はビビ王女の和やかな演技と共に切られてゆく。取り敢えずは笑わずに済みそうだ。
「知ってる。その名はかなり有名だ。発祥は
どうやらカポネ屋はすぐに本題へと移るつもりはないらしく、俺たちに興味津津のようだが、当然ながら俺たちは自分たちの無駄話をするつもりはさらさらないので、
「そこは懸賞金の額で察してもらおうか。……早速だが本題に入ろうじゃねぇか。巨大樹に存在していたダンスパウダーの工場、持ってんだろう? 所持品として……」
さっさと切り上げてゆき、肝心要の話を持ち出してゆく。
「ワインを楽しんでるかと思えば、ゆとりのねぇ男だな……。一体どこから嗅ぎつけやがったのか……、確かにダンスパウダーの工場を持ってはいるが……。王女によれば随分と金を積む用意があるそうだが、肝心のその金はどうした? お前は見たところ手ぶらに見えるが」
ワイングラスを揺らしながら俺の隣に座るビビ王女を一瞥して話を続けてくるカポネ屋。
「ああ、確かに金はここにはねぇな。だが俺は手品師なんだ。指を鳴らせば金は現れるさ、それこそたんまりとな」
勿論、金を払うつもりなど微塵もねぇんだが……。
奴がダンスパウダーの工場と口にした瞬間、表情に変化があった。確かに工場はこの中に存在しているようだ。それさえ確認が取れればあとはどうとでもなる。長居は無用だ。
とはいえ、少しばかり情報を集めておくのもいいだろう。俺たちの情報は何一つとして明かしてやるつもりはねぇが……。
「……それでだカポネ屋、お前たちはダンスパウダーの製造工場を手に入れてどうするつもりだったんだ? それによって金を出す出さねぇが違ってくるだろ?」
「名代、お前のパートナーは随分と知りたがりのようだな。金払いがいいと聞かされたから城内に招いたんだが?」
情報収集するべくカポネ屋に質問を投げ掛けてみれば、奴はここでは俺たちの名代役であるビビ王女へと話を向けてくる。
「……そんなことはどうでもいい。貴様、先程から我が副官と付き人の姿が見えんがどこに居るのだ。答えの如何によっては金を払うどころの話ではないぞ」
一体どこからそんな低い声音を出してやがるのか、ビビ王女は少々ドスを利かせながらカポネ屋に答えを求めている。確かに話に聞いていたビビ王女の連れの副官ともう一人の姿を見掛けてはいない。これは得意の心配性からくる本心からなのかそれとも演技なのか……。
「知らんな……、何の話だ?」
「貴様っ!!」
カポネ屋がのらりくらりとはぐらかすような答えを返してきたことで俺たちの名代は怒りの沸点を超えてしまったのか、椅子から立ち上がってテーブルの上に身を乗り出し、孔雀の羽根飾りのような自らの武器を以てしてカポネ屋へと迫ってゆく。
こいつ……、本当に演技なんだろうな?
大胆な行動に出たビビ王女を見るからに、本気なのかどうなのか判断しかねる状況となってきている。
当然ながら下手に先に手を出して上手くいくはずもなく、
「止めておけ。王女と言えど、こいつらは躊躇わねぇぞ。俺がいいと言えば引き金を引く」
壁際に立つ一同から一斉に銃口を向けられている。
「く……、どういうつもりだ我に狙いを定めるとは……」
「自惚れるなよ、アラバスタの王女だか知らんが海賊相手にそんな口の利き方が通用するわけねぇんだ。……いいか。ダンスパウダーの製造技術はかのジェルマが
まったく、俺たちの名代は大した演技力の持ち主じゃねぇか。おかげでボスの話の裏付けがある程度取れた。敢えて下手を打ってカポネ屋の感情を揺さぶり喋らせたってわけか。
もう頃合いだ。
「Room」
よって能力を行使して
「……そんなことをしていいのか? 城内は俺の自在空間だ。全てが俺の支配下に入っているぞ。ヴィト、連れて来い」
カポネ屋も警戒しており、言葉を放つと同時にテーブルクロスは首を絞めんとするロープへと変わり、燭台の炎とシャンデリアの光は切り刻まんとする刃へと変わり、壁や床は叩き潰さんとする大砲へと変わりゆく。
そして、ヴィトと呼ばれた下品にも舌が長く顔大の二丁拳銃を腰に差した男が連れてきたのは鎖で拘束された状態のビビ王女の連れと髪の形状が3と化している男。
「……ペル。どうしてそんな……」
「面目ありません、ビビ様」
変わり果てたテーブルクロス上でビビ王女が呟いた声は先程の演技からは拍子抜けするような心配に満ち溢れているわけであるが、
「私を心配はしてくれないのですガネ」
3と化している男の間髪入れない反応は突っ込みに満ち溢れている。
「お前はいい。3の代わりはいくらでもいる」
ビビ王女の返しがまだ演技に満ち溢れているのもさすがなわけだが、
「戦うというのであれば戦ってもいいがこいつらがどうなっても知らんぞ」
カポネ屋は人質を盾にして俺たちの動きを牽制しつつしっかり金は巻き上げようって魂胆なんだろうな……。
だが、俺からすれば……それがどうしたでしかない。
カポネ屋の城内が奴の自在空間と言うなら俺の
「タクト」
指を動かせば
「観念しろ。何をしようが兵力が違う」
「兵力だと?! この海でそれが物を言ったところを俺は見たことがねぇんだが」
銜えていた葉巻を吐き棄てながらカポネ屋が動き出すことは当然見聞色が逃すことはない。この部屋のあらゆるものが刃と大砲によって一斉に襲いかかろうかというところで、
「
俺たちが居る一室を超えて切り刻んでゆく
それに、人質の拘束も斬撃によって解いているし、ダンスパウダーの製造工場もひとつの形として切り取ってもいる。故に、
「シャンブルズ」
製造工場丸ごと交換移動である。行先は最終地点である灯台の程近く。
「ハヤブサッ!! 行けーっ!!!」
「すまない、副総帥殿。ビビ様、参りましょう」
俺の叫びが無くともビビ王女の連れは動き出していた。縛めが解かれた途端に体は見る間に鳥へと変形してゆきこの室内を羽ばたけばビビ王女を乗せて背後の出口より外へと飛び出していく。
そして3と化した男の行先はオカマ
さて、仕事は済んだ。あと残っているのはここをどう終わらせるか、ただそれだけである。
相手は海賊。容赦はしない。する必要がない。
「兵力が違うと言ったろ。代わりはいくらでもいるから兵力なんだからな」
勝手に言ってればいい。確かに次から次へと銃を手にする奴らが現れてきてはいるが、やはり無駄でしかないのだ。
「お前にひとつ聞かせといてやるよ。この海じゃ代わりが利かねぇことの方が兵力って言うんじゃねぇかってな」
尚も余裕を捨てることのない主の前にヴィト屋が立ちはだかり、二丁拳銃に手を差し伸べつつあるが奴に間を与えるつもりはない。俺が何をするのか大方察してるんだろうが、シャンブルズによって一気に間合いを詰めて繰り出すは、
「
「
増え続ける銃を持って取り囲む者たちからの叫び。ボスを遮るものがなくなったことに対する警告を発してんだろうが当然無駄である。
「ヴィトを……。……表へ来い。本当の兵力差を見せてやる」
とはいえ、カポネ屋の姿は消えた。城外にて真の力を見せつけるってことらしいが俺には分が悪いと見て城内に己を留めておくことを止めたとしか思えない。どちらにせよ無駄だが。俺の執刀領域内に居る限り何の問題解決にもなっちゃいない。
俺も奴の城内から飛び出したところでやることは何一つとして変わらなかった。
カポネ屋は自らの城内に残っている部下にしっかりと砲撃準備をさせている。さらには俺を取り囲むようにして城外にも銃撃準備をさせている。
何一つとして無駄なことだ。
俺は
葉巻を銜え直しているカポネ屋がこちらへと左手を翳してくる。
掌には穴が開いておりその中には準備完了した数々の大砲。
燻らす葉巻と共に笑顔で顔を歪めたのちに、
「
四方八方から放たれてくる砲弾、銃弾。
「タクト “オーケストラ”」
刹那の瞬間に放たれた砲弾、銃弾は俺の支配下となり、指揮下となり同士討ちという名の演奏へと変えてゆく。
そして、
「ガンマナイフ “ブレイクハート”」
凝縮されたオペオペの刃で刻むはカポネ屋。自らの部下が放った銃弾に穿たれたのちに容赦ない武装色のマイナスを叩き込んでやるまでだ。
体内の内臓を潰したその一撃はカポネ屋に血反吐を吐かせ、奴を背中より地へと斃れ込ませた。
「互いに
ぴくりとも動かないカポネ屋であるが意識はあるはずだ。それぐらいには加減をしている。なぜなら訊くべきことがあるからだ。
「ダンスパウダーの件。どこで知った? そうそう耳に入ってくるようなことじゃねぇはずだ」
俺の問い掛けに対し、虚ろな瞳でこちらを見上げてくるカポネ屋。今なお口からは血が止めどなく流れてきており体の内部が相当に壊れてしまっていることが想像できる。
「…………コラ…………ソン。………情報…………屋」
何だと?! ここでその名前が出てくるのか。ビビ王女が先ほど口にしたコラソンは情報屋でそいつがカポネ屋にダンスパウダーの情報を吹き込んだってのか。
「おい、答えろ!! コラソンってのはどんな奴だ? どこで会った? 」
奴の体を揺すりながら何とか聞き出そうとしてみるがカポネ屋は気を失いつつあった。
くそっ!!
どうなってやがる。こいつはコラソンに、さらにはジョーカーに繋がってるってのか。いや、落ち着け。奴はそんなことは億尾にも出してはいやしなかったじゃねぇか。多分に情報屋としてのコラソンとつながりがあっただけ。もしくは単に駒として使われただけかもしれねぇ。だが奴はジェルマと新世界の四皇を橋渡しすると言ってやがった。つまりは何らかのパイプを双方に持っているってことになる。どういうことだ? クラハドールがいねぇと埒が明かねぇな。奴らの相関図が全く見えてこねぇ……。
そんなところへ、
「わっしもそいつには聞かなきゃならんことがあったんじゃがな」
この場に予想だにしない人物が現れたことが俺の脳内をさらに混乱の渦に呑み込んでゆく。
ロッコさんだ。しかも全く気配を消したうえで現れている。この場にて意識を保っているカポネ屋の奴らは既に誰一人として存在はしていない。
つまりはこの場に居るのは俺とロッコさんだけということになる。
先程までの喧騒だった戦いの場が嘘みたいに静まり返っている島の北の小さな波止場。
「あんた船に居たはずだろ。何でこんなところに居るんだ?」
俺は海上にて全幅の信頼を置いているはずの航海士に対して警戒心を露わにして尋ねざるを得ない。
だが無言。それについて答える気はないという答え。
「……ロー、悪いがここはわっしに任せてはくれんか?」
言葉尻は柔らかいが立ち居振る舞いが有無を言わせぬもの。
能力を解き放って変形しているわけではない。
ただ、そこには途轍もない武装色の
ここは引くしかねぇか。
まだ、まだ何かを掴んでいるわけではない。脳内の警鐘は鳴り続けてはいるが、
まだ何も起こってはいないのだ。
「ロッコさん……、船で待ってる」
俺が言えたのはそこまでであった。
だが、これで分かったことがある。
読んで頂きましてありがとうございます。
ここで切るのは不本意ではありますが致し方なく……。
そろそろです。
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