ネルソン商会記 ~黒い商人の道筋~   作:富士富士山

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第71話 簡単なことじゃねぇか、それ以外に何があるってんだ

偉大なる航路(グランドライン) 『中枢地域(エリア)』 シャボンディ諸島

 

 

ガレーラの“愛”、もとい爪楊枝は少々お高かった。

 

1本1万ベリー。最高級品らしい。少々どころではない。こんな金額で買っていては利益を上げるのは至難の業としか思えないため、チムニーに値下げ交渉をしてみたが、これがまたタフネゴシエーターで私を前にして一歩も引かない。

 

天竜人を分かってない。あいつらは本当にバカみたいにカネを出すから大丈夫と言い包められてしまった。

 

私としたことが、……面目ない。

 

チムニー曰く、ひとまず1,000本送ってやればいいとのこと。おかげで爪楊枝に1,000万ベリーの出費だ。1,000万で買った“愛”に天竜人は一体いくら出してくれるだろうか。

 

それこそ神のみぞ知るね。

 

 

消耗する交渉のあとには癒しが必要である。食堂があるそうなので行ってみようと階下に下りてみれば、ナミに出くわし、更なる麦わらの一味の到着に出くわした。

 

ぐるぐるまゆげとモフモフトナカイ。

 

ちょっぴりツンデレなあの子をいじめてやるのもいいかもしれない。モフモフだし。

 

でも近寄って来るのは目をハートにしたあいつだ。そして締りのない文句が垂れ流されるのを耳にした瞬間には私の中に現れ出でた怒気という怒気のすべてを一言に凝縮して叩き込んでやった。ナミとシンクロするようにしてはもってしまうのもしょうがない。

 

あ~、もう、癒し……、癒しが欲しい。甘いもの食べに行~こうっ!!!

 

 

 

 

 

アイス……、美味しい♪

 

舌の触りはとっても滑らかで、それでいて蕩けるように甘い、至福♪

 

小じんまりとした食堂はカウンターとテーブルがいくつか。そのカウンターの脚の高い椅子に腰掛けて思う存分癒しに浸っている。

 

隣席に座るぐるぐるまゆげがさっきから何か言ってるけど気にしない。このアイスがそんなノイズは綺麗に消し去ってくれる。

 

シャボンに乗ってやって来ただなんて、もうそのままシャボンに乗ってどっか飛んでっちゃえばいいのに。

 

大丈夫! こんなマイナスは至福のアイスでプラスになる。だからプラマイゼロ!!

 

ってあれ? プラマイゼロならダメじゃないの? 私、癒されてる? ちゃんと癒されてる??

 

向こうのテーブルではナミとモフモフトナカイ君が仲睦まじそうにアイスを食べている。実にけしからん。でも羨ましい。アイスにモフモフだなんて、あれこそ本当の癒しじゃない。

 

あんな光景を目にしてしまうとつくづくロビンがこの一味を離れたことが理解出来なくなってしまう。あんな癒しにずっと浸ってたと言うのによく離れられたものだ。今夜本当に来るというのなら説教してやるべきかもしれない。あの子との時間を失って平気なのかと。

 

はぁ~~、アイスは美味しいけど、周りのマイナス要素が強すぎる。私の脳内に浮かびあがってくる思考も。

 

「もう、シャボンも恋も愛もいいから……。あんたはナミさん命なんでしょうが。さっさと向こうに行きなさいよ」

 

何だか面倒くさくなって、手で払いのけるようなジェスチャーと共に言葉を放ってみれば、

 

「YES!! ナミさん命ですっ!! でも、あなたも素晴らしい!! アイスを食べてる時の幸せそうな笑顔は可愛らしいですよ。やっぱり女性(レディ)は笑顔じゃないとね」

 

満面笑顔でウインクまで混ぜ込みながら言葉が返ってきたのだ。そうして静かに立ち去って行く。そんなこと言われたからって私は何とも思わないんだからねっていう思いを意識的に心の中へ引っ張りだしながらも、一方で何だかとってもくすぐったいような、自分の顔が赤くなってないかちょっと心配になってしまいそうな気分に陥ってしまう。

 

「ウフフフ……、もしかして射貫かれちゃった? ああいう不意打ちは結構ぐっとくるわよね」

 

ちょっとだけ思考停止気味だった私の目の前にコーヒーカップを差し出しながら現れたのはここのマスターかしら。妙齢だと思うんだけど年齢不詳。ボブカットの髪型が綺麗で個性的、タンクトップはピンクで真ん中に印象的なスパイダー。そして銜えタバコ。もうそこはかとなく感じてしまう。大人の女の余裕ってやつを。

 

「そうかもしれません。そんなつもりはまったく無かったんだけど」

 

女としての完敗を感じてしまった私は無駄な抵抗を試みることなく白旗降参。だってあの胸元、一切の弛みが無いんだもん。こんな風に歳を重ねられたらという究極の理想形を目の前に見せつけられたような感じだ。

 

「ウフフフ……、正直でよろしい。でもあなたも捨てたもんじゃないわよ。……綺麗な赤毛ね。もっと自信を持ちなさい」

 

にっこりと励まされて私は思わず手を合わせて拝みたい気分になってしまった。

 

「あ、シャッキー! 来てくれてたんだ」

 

「当然よ。店もヒマだったし、アイスちゃんが心配だったから。チムニーちゃんは大丈夫?」

 

「シャッキー、ありがとう♪ 私は平気」

 

私が心の中で合掌しているところへチムニーがやって来た。

 

「なぁ、チムニー。腹減った。アイスじゃなくてよ。肉はねぇかな」

 

うるさい大食漢も一緒にやって来た。こいつはやることが決まってしまえばあとはお腹を満たすだけなのかもしれない。

 

「うっさい、黙れ。もうあんたが来ると色々台無しになるんだけど……」

 

空気を読もうとしない人間には躾けが必要である。だがこの大食漢、

 

「ん? 何だ? 腹一杯で何も食えなくなるってことか? しょうがねぇな、俺が全部食ってやろうか」

 

何にも分かってない。やっぱりナミはすごいわ。これと毎日向き合ってるんだもん。

 

「シャッキー、海賊船長が腹ペコだってさ。何か作ってあげて」

 

「了解」

 

「おい待てルフィ、麗しき女性(レディ)に飯作って貰おうなんておまえ百万年早ぇんだよ。シャッキーさん、おれが作りますんで、厨房貸して頂けますか?」

 

「あら、そう? いいんじゃない? 私のじゃないけど」

 

「シャッキーは今日たまたま来てくれてるだけだよ。あなたが作ってくれるんならお願い♪」

 

「おぉ、サンジが作ってくれんなら絶対旨ぇな」

 

「任せとけ」

 

海列車の中であの子が散々言っていた。サンジが作る飯は最高だって、世界一だって。ナミも深く頷いてた。一体どれほど何だろうか。オーバンが作るご飯よりも美味しいのだろうか。ちょっと楽しみではある。

 

「ねぇ、シャッキーって、もしかしてハチが言ってた会わせたい人……」

 

「あら、懐かしい名前ね。来てるの、はっちゃん? 10年ぶりくらいかしらね」

 

シャッキーと呼ばれる女性はとっても嬉しそうだ。はっちゃんが本名でハチが渾名だと言うそいつはタコの魚人らしく、どうやら古い友達みたい。

 

それにしても、こうやって人と人が繋がっていくのは何とも素敵なことじゃない。

 

ちょっといい話にほろりとしているところへ兄さんとクラハドールも姿を見せる。それを合図のようにして、

 

「じゃあ改めてみんなに紹介しておくね。ウチの社長の友達、シャッキーです。シャッキーは普段はもっと奥の13番GR(グローブ)でバーをやってるの。『シャッキー‘SぼったくりBAR』って言うんだよ」

 

「はい、よろしく。みんなからはぼったくらないから今度は店に来て頂戴、サービスするわよ。友達の友達は大切にしなきゃね」

 

度肝を抜かれる紹介を受けて皆の反応はそれぞれ。あからさまにぼったくられるぞーって叫んでしまってる子や何ならぼったくられてもいいと言ってしまう兄さん。そして私が思ったことはひとつ。

 

え? まさかぼったくりが若さの秘訣?!

 

そんなこんなで互いの身の上に話を咲かせている間に、

 

「よし、出来たぞ!! 食ってくれ。シャボン鶏のから揚げ定食だ」

 

「すんげ~~、うまほ~う!!!」

 

「あら、いい匂い♪」

 

「美味しそう♪」

 

ほんと、何かスパイシーないい匂いがする香ばしそうな鶏のから揚げ。シャボン鶏はここの特産だって。そして付け合わされた色鮮やかな野菜に、さっぱりしてそうなコンソメスープ。

 

早速口に入れてみればそれはもう至福極まれり♪

 

兄さんもとっても満足げ。

 

美味しいご飯と賑やかな会話は素敵な分だけあっという間に終わってゆき、

 

「すっかりご馳走になったわね。もうお暇するわ。これから忙しくなるんでしょう……、じゃあね」

 

シャッキーが後にしていく。

 

 

宴もたけなわ。

 

 

そう、来るというのであればそろそろ。

 

 

刻限が迫りくるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャッキーと呼ばれる女が麦わら一味のトナカイに綿あめを渡している。眼を爛々(らんらん)と輝かせながら飛びついているトナカイ。そしてそれを幸せそうに見詰めている我が妹。

 

微笑ましい光景と思う一方で、お前はそんなに疲れているのかとも心配になってしまう。

 

そんなことを団欒(だんらん)の輪から離れてひとり、カウンターでの一服に浸りながら思う。

 

そこへ、

 

綿あめを渡し終えてカウンター内へとやって来るシャッキー。無言のまま(おもむろ)にタバコを取り出してゆく。何とも優美な仕草で思わず目を奪われてしまう。

 

さらに、

 

どこからともなく音も立てずに隣へと現れ、恭しくもシャッキーのタバコの先端に火を点けている麦わら一味の男。最高の料理をもてなしてくれた料理人。

 

「どうぞ、マダム」

 

「ありがとう」

 

とんでもないものを見せつけられた俺は思う。もしローがホストになる暁にはまずこいつの下で修業した方がいいのではないかと。

 

「ではおれも失礼して」

 

サンジと呼ばれる男もタバコを銜えてゆく。ならばこいつに火を点けてやるのは俺の役目かと思い、手を伸ばして点けてやれば、

 

「……悪ぃ。だがクソ断りたかったところだ。野郎にされても嬉しくも何ともねぇ」

 

この言い草である。まあ正直なのはいいことだが……。

 

「ウフフフ……、面白い子ね」

 

「そんなシャッキーさんも素敵ですよ」

 

互いに煙を吹かしあい、言葉が交わされてゆく。

 

喧騒から少しだけ離れての静寂。そして、天井へと流れてゆく煙。己の肺を満たしてゆく苦味。これを愛する者だけが共有することの出来る空間がここにはある。

 

「なぁ、あんた、久しぶりにウォーターセブンでビビちゃんに会った。あんたの船に乗ってるらしいな。まあそれはいい。仕方ねぇことだ。おれたちも色々あったし、ビビちゃんにも色々あったんだろ。けどな、ビビちゃん泣いてたぜ。まるであの時みてぇだ。涙を流しちゃあいねぇのに心で泣いてんだ。……これだけは言わせて貰う。またビビちゃんを泣かせるようならおれはあんたを殺しに行く。ビビちゃんはあんたの船に乗ってんだ。何があろうと乗せた以上、ビビちゃんを笑顔にすんのはあんたの仕事だ」

 

静かに紡ぎだされてゆく眼前の男からの言葉に圧倒されてゆく。一時も逸らすことなくこちらを見据えてくる瞳をしっかりと正面から見詰め返し、

 

「ああ、約束する」

 

ただ、そう口にした。

 

そして暫しの沈黙……。

 

互いに吐き出されてゆく煙が空気の流れに呼応してひとつの方向へと収束して漂っていく。

 

「………………」

 

もう言葉は必要ではなかった。必要なのは煙であり、そしてこの場を共有しているという繋がりだ。

 

「頼んだぜ」

 

短くなったタバコを灰皿に捨てゆきながらサンジは去っていく。短い一言を残して。

 

「いいわね、こういうの。……あなたがネルソンちゃんか。今夜はもう時間がなくて残念だけれど、是非またウチの店に来て、いいお酒を用意しといてあげるから。もちろん……いいコレもね」

 

短くなったタバコを掲げながらシャッキーは柔らかに微笑み、言葉を投げ掛けてくれた。

 

 

ああ、是非とも行かせて貰おう。

 

 

そのためにも気合を入れてかねばならない。

 

 

来るというのであるならば、

 

 

きっと刻限は近いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の帳は完全に下りた。

 

襲撃に備えての最終確認は既に終わっている。

 

俺たちの目的はアイスバーグの護衛。ニコ・ロビンとドンキホーテファミリーの誰か、そして現れるだろうCP9から目の前のベッドで目を閉じて休んでいるこの男を守り抜く。

 

麦わらたちの目的はニコ・ロビンの確保。やつから本当の話を聞き出したいとのことだ。寝室に大人数でもアレなので奴らは扉の外にて待機しているはず。ゆえにこの部屋にいるのはアイスバーグに俺とジョゼフィーヌ、そしてクラハドール。チムニーはこの場にはいない。彼女にはどうやら策がありそうだ。その準備のためにもここにいるわけにはいかないのかもしれない。

 

部屋の中ではみな物音ひとつ立てようとはせず、聞こえるのは掛け時計の秒針が刻む音のみ。心地いい緊張感が保たれている。扉の向こうはその限りではないが……。けしからんほどにやかましい。まあいい、あいつらはあいつらだ。

 

ジョゼフィーヌは漆黒の窓外を側で眺めており、クラハドールは扉近くに壁際にて一定間隔で眼鏡をずり上げながら沈思黙考に勤しんでいる。

 

不意打ちはないと思っていいだろう。奴らに見聞色で上回られない限りにおいては。否、あるか、見聞色を無効化するあの石、白烈石を持たれていては少々分が悪くな………………、

 

 

 

 

――――――――来る―――――――――

 

 

 

 

 

時間の無駄とばかりに最高速で堂々と殴り込んで来たか……。

 

ジョゼフィーヌが振り返り、直ぐにもベッドへと寄って来る。クラハドールも瞠目(どうもく)する。

 

 

轟音と共に天井を突き破って舞い降りた二人。フルフェイスの仮面姿。

 

ひとりは二本の角が印象的なおそらく牛の仮面、もうひとりは色鮮やかな羽根飾りが印象的な帽子と一体化した能面である。

 

麦わらたちも何事かと扉を開けてびっくり仰天していた。

 

「暗殺が聞いて呆れる登場の仕方だな」

 

言葉を放ってみるも返ってくる言葉はない。時間が止まってしまったような空間の中でベッドのアイスバーグも目を開けている。

 

 

 

 

そして、

 

 

ニコ・ロビンだ。

 

 

窓枠にふわりと現れ出でる腕、それは直ぐ様に窓の錠をおろし、開いた先から姿を見せたのは紛れもなくやつであった。目元を簡易な仮面にて覆ってはいるが。

 

傍らにもう一人。問題はこっちだ。果たしてどんなやつが来たのか。

 

こいつも仮面。だが女だな。

 

 

二組の襲撃者たちが相見え、対する俺たちもほぼ集結。

 

 

固唾を呑むような空間の中、

 

「ロビン、出てくなんておれは聞いてねぇぞ。お前の口からはっきり聞かねぇと納得できねぇ」

 

最初に言葉を投げ込んでいったのは麦わら。真正面からの言葉を投げ掛けてゆく。

 

だが、

 

「取り込み中悪いが後にしろ。……さて、もう茶番は懲り懲りだ……」

 

「あなたの側に仕えるのも昨日で最後。今日はお礼に参りました、セクハラの……」

 

天上から舞い降りた仮面二人がゆっくりと仮面を外してゆき、現れたのは俺たちからすれば顔馴染み。サイレントフォレスト以来となる。CP9のルッチと最後に俺をアイスピックで殺そうとしてきたあの女だ。

 

アイスバーグも大して驚いている様子はない。こちらも顔馴染みってことか。

 

ただ、俺たちの背後では驚天動地の様子が広がっている。

 

「おいっ、ハトの奴じゃねぇか。何やってんだよ」

 

「どういうこと……」

 

麦わらたちも顔は知っているようだが、どうやらこの場にこんな風に現れるはずがないということのようだ。

 

さてはこいつら……、

 

「ンマー……、流石だな。俺がお前らの正体に気付いてることに気付いていたか」

 

長年ガレーラに潜入していたわけか。

 

「ええ、下らねぇ茶番に付き合ってきたのも今日のため」

 

「あなたには死んでもらいたいけれど……」

 

どうやら随分長い間、狐と狸の化かし合いを続けてきたようだ。それもチムニーによる賜物ってわけだろうか。

 

「あの子にはもっと死んでもらいたい」

 

どうやらそのようだ。

 

だがこうなると随分と妙な事になってきはしないか。

 

「あら、そうなの? 私たちもその男には死んでもらいたいのだけれど、そういうことならお任せしてもいいのかしら」

 

ニコ・ロビンと共に現れた女が口にした言葉は至極尤もだ。それはそうなる。この女の情報が今直ぐ欲しいところだ。

 

綺麗に下ろされた黒髪のサイドには真っ赤な薔薇の髪飾り。紫紅の水玉模様をあしらった艶やかなワンピースを身に纏った姿は今にも踊りだしそうなダンサーそのものである。こいつもドンキホーテファミリーの一員なのだろうか。

 

「確かに俺たちの目的は一緒かもしれねぇが、少々事情は変わりつつありましてね。優先順位は隣にいるその女となりました。政府としての密命です」

 

「そう。じゃあ私もさっさと仕事をしないといけないわけね。……なるほど、ようやく合点がいったわ。ドフィの考えそうなこと。あなたには悪いけれど、そういうことみたいだからあとは自分でどうにかなさい」

 

俺にも構図が見えてきた。クラハドールのやつは眉尻ひとつ動かそうとしていないあたり、この展開は想定内なのかもしれない。

 

CP9の目的はニコ・ロビンの確保が第一義。アイスバーグには死んでもらって構わないが積極的に殺しにいくつもりもない。

 

ドンキホーテファミリーの女の目的はアイスバーグに死んで貰うこと。

 

そして、ニコ・ロビンは、嵌められたなこれは……。

 

「ンマー……大変だなこりゃあ。だがお前らの目的はもうひとつあるはずだが……」

 

ん? 何だ?

 

ここでクラハドールが少しばかり口角を上げてゆく。

 

「ええ。その()()()確認のためにも参りました。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ンマー……流石だなカリファ。もう()()()()ってわけか」

 

「あなたの兄弟弟子カティ・フラムはフランキ―と名を変えて今も生きている。そして彼は今、サン・ファルド。きっと今頃カクも向こうへ到着してるだろう」

 

サン・ファルドの取引はこれか。クラハドールのやつめ、黙っていたな。

 

「ンマー……そうか。だったら呼んでみようじゃねぇか」

 

アイスバーグの切り返しに初めてCP9の二人が怪訝な表情を見せて来る。

 

寝床にて上半身のみ起き上らせている男が毛布の下から取り出したのは電伝虫。

 

~「ええ。アイスバーグさん、信じたくねぇが目の前にいるのはカクです」~

 

「パウリー、悪いな。お前には辛い思いをさせちまうが、フランキ―を頼む」

 

CP9の奴らにはこの展開は想定外だったらしい。

 

「ンマー……そういうことだ。悪ぃな、ルッチ。チムニーはてめぇらよりひとつ上手だったようだ」

 

こういうことなら俺たちも呼んでみた方が良さそうだ。というわけで俺も電伝虫を取り出し掛ける先は、

 

~「ああ、ボス。近くにクラハドールはいるか? 居るんだろ。あいつに言っといてくれ。最悪に面倒くせぇと」~

 

当然ながらローである。

 

「ああ、聞いているよ。悪いが笑ってるけどな。お前もサン・ファルドにいるのか?」

 

~「そうだ。造船屋の奴の隣にいる。そこに麦わら屋もいるのか?」~

 

「ああ、いるが……、何でそんなこと聞く?」

 

~「ゾロ屋って奴も隣に居る。多分こいつはただの迷子だ」~

 

何だそれは? 一体どうなってる。背後ではぁぁ~~っと言う叫び声とあんの迷子という怒気迫る声が聞こえてくるが俺たちには関係ないことだと思っておこう。

 

~「……それにボス、ターリ―屋もいるぞ。多分な」~

 

通話を終えて分かったことは俺たちの戦いが2箇所に分かれて、それぞれの立場で展開されているということだ。ローは本当に大丈夫だろうか。この離れ過ぎた距離では加勢には勿論行けない。だが信じるしかないだろう。

 

「もうわけ分かんないわ。ねぇ、ルフィ、あんたに聞くことじゃないかもしれないけど、あんたは分かった? この状況」

 

ナミがお手上げという状態で口にした言葉に対し、

 

「何言ってんだ。簡単なことじゃねぇか。ロビンが目の前にいる。それ以外に何があるってんだ」

 

麦わらからの答えには一切の迷いとて存在していない。

 

そうだな。簡単なことだ。

 

だが俺たちは簡単ではない。

 

簡単にはいかないだろう。

 

とはいえ、それこそ俺たちの戦いだ。

 

 

 

だったら始めようじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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