まじか!? 指一本分やないか。
「久しぶりにサブいぼ出んで、ほんま」
狙撃手のわいが狙撃される日が来る思わんかったわ。
わいの見聞色でも何とか弾道は感じ取れたんやけどな。
それはほんまにほんまの指一本分で、背中越しで辛うじて抜けていきよった。
「おいッ!! 一体どこからだってんだッ!!!」
アーロンが振り向き様に見せた顔つきもマジのもんやったな。
「ドあほッ!! 分かるかッ、んなもんッ!! 弾
わいも余裕こいてる場合なんかとちゃうから、売り言葉に買い言葉や。
ここは“トルリの丘”。さすがは特産ワインがあるだけあって、周りは斜面一面ブドウ畑そのもんや。咄嗟に腹這いんなって正解やったけど、こっからどないすんねん。
「分からねェな、……見聞色ってヤツか? 俺には何も見えやしなかったが」
隣ん列の木立ん下でわいと
「アーロン、見聞色
歩きはもう無理や。そんなことしてもうたら撃ち殺してくれ云うようなもんやさかいな。気ィ進まんけど。
「
「……本気で言ってんのか? 俺は魚人だぞ」
「魚人もクソもあるかいなァ。お前の背丈で歩いとったらブドウの木なんか超えてまうんや、わけ分からんうちに一撃されたいんやったら好きにどうぞっちゅうこっちゃ」
わいの忠告に納得いったんか知らんけど、アーロンは渋々腕と足を動かし始めよったわ。まァ、気持ちは分かるでェ、わいも好き好んでこんな体勢で移動したいとは思わんさかいなァ。
正直
さすがは黒ワイン生み出すだけあって、ええ土
ワイン作るために用意したようなもんで粘土みたいに粘っこいんは。おかげでしんどさ倍増しや。
そんな愚痴をぶつぶつ言いながら進んどったら、
さっきまで気配を一切消しとった相手がいきなり気配を見せてきよった。
そう来たか……。
ええ根性しとるやんけ。
かかって
「アーロン、ちょっと待てや。あいつが気配見せよったで。……こら反撃するしかないやろ。向こうに小っさい小屋が見えんの分かるか? 狙撃には丁度ええ場所や。あの上登っていっちょやったるかァ。ほれ、瞬間移動や」
「はァァ?? 瞬間移動だと?」
わいより体力があるんを見せつけようとしてんのか知らんけど、えらい先まで進んどったアーロンを呼び止めて何でもないことのように瞬間移動してくれや言うてみたら、ふざけんなっちゅう顔しよったわ。
まあせやろなァ。ローとちゃうんやからなァっちゅう話や。
「冗談や冗談……、こうなったら
「下等種族がッ!! ふざけやがって、魚人を何だと思ってやがる。……“
全速力で走って行くんかと思っとったら、地面におもいっきり踏ん張ったあとに一直線で跳んでいきよったわって、
「瞬間移動できとるやないかァッ!!!!」
思わず叫んでもうたわ。多分、そんなん出来るかっちゅうふざけんなやのうて、そんなん出来るに決まってるやろっちゅうふざけんなやったんやな。ほんま、ややこしいやっちゃで。
なんや知らんけど、向こうの小屋の屋根に鼻から突き刺さっとるし。
さてと、
わいも続いて立ち上がってからに、一気に加速して……、
やのうて、飛び込むんはブドウの木ん下や。隣ん列へ足から滑りこんで一気に狙撃銃を構える。
ドン、ピシャリやな。
わいは迷わずに引き金を引いたった。
狙撃で大事なことのひとつは速射出来るかどうかっちゅうことや。あんまり良いとは言えん体勢からでも即座に撃てるかどうかは生死を分けるんちゃうかと思ってる。
もうひとつは射線。狙撃手っちゅう生き
見聞色で感じるんは人の気配だけやないんや。当然やけど生きてる
高度で上にいる相手やさかい、葉と葉の間、枝と枝とのほんの隙間を縫ってからに生まれてくる奇跡みたいな射線や。
相手はとんでもない見聞色持ってるっちゅう奴っちゃ。少しでも裏を掻かなあかんやろ。
まあ、せやかてこの一発でどうにかなるとは思ってへんけど。まずは牽制ってところやな。
ひとまず次はあの小屋ん上やな。
「アーロン!! 待てやーッ!!!」
ローでもないし、ジョゼフィーヌやハットみたいにあほみたいな体技使えるわけちゃうからわいに出来るんは全速力で走ることだけや。
こんなことやったらわいも六式習っとくんやったなァ。
「っておい、アーロン、何しとんねんッ!!!」
小屋の上からさっきと
気付いた時には真横でブドウの木ん下に鼻から突き刺さっとるやないか。
「シャハハハハッ!!! 見たか、魚人の
目ェだけこっち向けながら笑っとるわ。
「分かった、分かった、大した奴っちゃで。……ッてなるかァ、ぼけェ!! お前がこっち戻ってきて……、いや、ちょう待てよ」
アーロンは直ぐにも立ち上がって不敵な笑みを浮かべとるやないか。
「乗れっちゅうことか」
「そうだ。俺にも拳を振り上げさせろ。……何となく分かってきた」
「さよかーッ!! ええこっちゃ。お前もそろそろ見えへん色眼鏡外したほうがええさかいな」
あとはアーロンの背に乗って一気に小屋までドーンやで。
って思ったけど、わいは途中降下や。狙撃銃をアーロンの背中に残したままな。
アーロンは小屋の屋根にまた突き刺さりよったわ。それでもわいの狙撃銃はしっかり掴んどる。
「奴はこのブドウ畑の斜面の上におるんやッ!! アーロン、全身で感じるんやで。奴の殺気をッ!!!」
撃ち返して
射線はあるッ!!
「よっしゃあッ!!! 今や、持ってこいーッ!!!!」
わいはブドウの木なんかお構いなしに上へ向かって走り出した。
アーロンに狙撃銃だけをこっちに寄越させる算段や。手段は問わへん。さて、どうやって寄越してくるかって、
口に銜えよったぞ、あいつ。どういうつもりやねん。頼むでほんま。
わいは見聞色で導き出してる射線に向かって全力疾走するしかない。
「しっかり受け取れよーッ!!!
アーロンはあほちゃうかっちゅうことをしよった。自分で自分の顔殴ってからに歯ァ吹き飛ばしよった。その威力は大したもんで、あいつの歯ァに挟まれたまんま狙撃銃が一気に飛んできたわ。
さすが威張りくさってるだけはあるやないか。
「よっしゃあッ!!! いてまうでェーッ!!!」
わいも一気に跳躍して狙撃銃を掴み取ったら、射線までギリギリで
ドン、ピシャリやないかァ。
ほんま、ここしかないっちゅう枝葉の間も間や。
「舐めたらあかんでェェーッ!!!!!」
これでも奴には届かんのかもしれへん。
せやからこそ叩き込まなあかんやろ。
おっ! ようやく奴も動きよったでェ。
「アーロン、小屋やねんから水くらいあるんやろ。1時やッ!! 1時の方向に水ぶっかけたってくれーッ!!!」
わいも移動や。背ェ低くして素早く一気に行ったんでェ。
そしたらや、水は確かにあったんやろなァ。目の前でブドウ畑が一気に更地になりよったわ。
ハハハ……、副市長はんにバレたら蹴り上げられんでほんま。
まあお陰で射線は開けたわ。奴の未来位置目掛けて、ドン、ピシャリ
やな。
最後の一撃はええとこ突いてるんちゃうかと思った。今までの狙撃が掠りもしてへんのは分かってる。そもそもに見せんでもええ気配見せてるっちゅうだけで遊ばれてんのと
撃ち返してきよったわ。
こら速いッ!! メチャメチャ速いでェ。
それくらいではどうとも思わんわいやけど、
肝を冷やしてもうた。
奴が撃ちよった弾は当然やけど肉眼で見えるようなもんとはちゃう。せやから見聞色で追うしかないんやけど、その弾は有り得へん軌道を描きよったんや。
途中で角度を変えよった。確かに変えよったんや……。
こらあかん。悪魔の実か何か知らんけど、ただの弾やないっちゅうことや。
一旦、逃げたほうが良さそうやな。
そう思ったが吉日で、振り返ったら一目散や。
「おい、どうしたーッ!! 退散かーッ??」
アーロンは既に小屋の上から下りて来とって、丁度良かったわ。
わいは言うたった。満面笑顔でな。イメージすんのは副市長はんのあの笑顔や。
「なァ、アーロン。でェェんぐり返ししょうかァァ」
「でんぐり返し?」
半信半疑でおるアーロンに向かって教えたったわ。
「こういうこっちゃ」
斜面の下まで一気になァって、アーロンの背中ひと思いに押したったで。
「おいッ!! おいッ! ……こんのッ、下等種ッッ……」
命あってのモノダネやで。
って、あかん、ほんまに角度がえぐいことになってる。直角やとッ!!! そうなったらもう誘導弾やないか。
わいもでェェんぐり返しやーッ!!!
覚悟を決めて一回転したわ。
もうぐ~るぐ~る回るわなァ、そら。
しかもや、でェェんぐり返しでもどうにもならんかもしれへんやんけ。来とる。来とる。後ろからぴったりくっ付いて来とるで弾が。
こらあかんって思った時や、
「ザイ様、アーロン様、如何お過ごしですか?」
ちょっと前に聞いた声が聞こえてきた。視界の端で副市長はんやと何とか分かったけど、双眼鏡持っとったんや。そんで満面笑顔、怖いくらいの満面笑顔やった。よう見えてへんねんけど分かってもうた。殺気が尋常ちゃうかったさかい。それでも答えたらなあかんやろ。せやからや、
「まあ……、ぼちぼち……でんなァ……」
って何とか言葉にしてみたわけやけど、
「……ウチのブドウ畑に、何してくれとんじゃーッッッ!!!!!!!!」
多分、返しは最高の蹴りが飛んできたんやと思うわ。
わいらは星になったんちゃうかと本気で思ってもうたわ。
それくらい強烈な蹴りやった。何ちゅう嬢ちゃんや、まったく。
「アーロン、どないや? 星になった気分は?」
「バカ言ってんじゃねェ。俺たちは真っ逆さまに落ちてんだよ」
そういうことや。
副市長はんの蹴り上げで方向転換してもうたわいらの行先は“アメルの海岸”。断崖絶壁に突き落とされたようなもんや。
しかもあの弾まだ追って来よるっちゅう至れり尽くせり具合やでほんま。
どうすんねーんッ!!!!
「おいッ!! 鳥だぞ」
「ああ鳥やな」
捨てる神あったら拾う神もおるんかっちゅう具合に鳥が羽ばたいとった。
正確に
「とんでもねェ奴に狙われてるってのに、おかしな奴らだ」
青白く、燃えるような鳥やった。
「ただ……、偵察に来た甲斐はあったよい。“ブリアード”か」
多分、こいつは不死鳥や。
そんで不死鳥
後ろからどこまでもわいらを追い掛けて飛んで来よった一発の弾。あれは途中で加減速も自由自在なんちゃうやろうかと思うしかない。せやないとわいらは既にやられてておかしないんやからな。
その弾に向かって不死鳥はんは羽広げてや、
一瞬で爆発するかっちゅうくらいのエネルギーを感じたんやけど、一気に吸収してしまいよったわ。
「行きがけの駄賃だよい。おめェら、乗ってくか?」
「アーロン、ここはお言葉に甘えようやないか。頼むわァ、不死鳥はん」
「おいッ、ほんとに乗れんのか? 燃えてるじゃねぇか」
「まあ、堅いこと言わんとや、大丈夫やろ。なァ、せやろ、不死鳥はん」
「……馴れ馴れしい奴だよい。大丈夫だ。乗ってくれ」
不死鳥はん、多分噂に聞く白ひげ海賊団の1番隊ん隊長か。
ははーん、ええこと思いついたで。
「なァ、不死鳥はん。早速ですまんけど、ものは相談や。あんたの見聞色はどんなもんなんや?」
長らくお待たせ致しました。再スタートと参ります。