「シャボンディパークって楽しい
「黙れッ!! 下等種族がッ!!! 俺も全く同じことを考えてたところだッ!! わざわざ言葉にしてんじゃねェよッ!!! ここへ来たのはそういう目的じゃねェって言ってるだろうがッ!!!」
何の因果か知らんけど、わいはアーロンと連れ立ってシャボンディパークっちゅう遊園地に来とる。周りは家族連れとか、どう見てもカップルにしか見えへん奴らばっかりで、楽しそうな歓声が聞こえてる中や。何で野郎二人でこんな
お前も
わいらはプッチで
まあ、正直アーロンを盾にしとった面は否めへんからなぁ、まあ勘忍やで。
戻って来たら戻って来たで、海軍大将がおるわ、生意気な小っこい姉ちゃんがおるわで、面倒くさそうやったから、
アーロン、わいは意地悪したわけやないんやで、ほんま、勘忍やで。
「何だ? さっきから俺の顔チラチラと……」
「心の中でお前に謝ってたんや。お前には散々悪いことしてもうたなぁって……」
「てめぇッ!! そういうことこそ言葉にしろッ!! 口にしねェと伝わらないだろうがッ!!!」
「ほーう! あのアーロンが、言うようになったやんけ! ええ兆候や、ええ兆候やでェ」
また下等種族がッて叫んどるアーロンが、シャボンディパークへ来た目的は向こうのメリーゴーランド乗ってはしゃいでる麦わら達を見守るためらしい。正確には麦わら達と一緒におる、人魚の嬢ちゃんとタコの魚人のやつとヒトデみたいなやつやな。何かあったら直ぐに駆けつけるつもりらしいわ。
「せやけどや、アーロン、お前こそこんな
「そんなこと出来るかッ!! 言ってんだろッ、麦わらの奴らとは因縁がある。俺が出て行ってみろ、あんな雰囲気にはなりゃしねェんだ」
あんな雰囲気か……。まあ、確かに楽しそうにしとるわ。麦わらと眼鏡掛けた姉ちゃんと小っこいたぬきにしか見えへんトナカイと骸骨と。何があったんか詳しいことはまだ聞いてへんけど、アーロンのやつ、悪いと思うてる自覚はあるんやろうになぁ。
「……そう簡単に素直にはなられへんか、しゃあないやっちゃなぁ。まあ、付き
相も変わらず下等種族がッて返してきよるアーロンは、ジェットコースターが一気に駆け抜けてくコース越しに、きゃっきゃっしとるんを眺めとった。
わいも、さっきの
正直、暇や。暇すぎるくらいに暇やで、これ。
ところがどっこい、アーロンは満足気そのものなんやな、これが。毎度毎度、下等種族がッって喚き散らしとるこいつがやで。まあ、ええことなんか、ええことなんやろなぁ……。
「って、ええわけあるかいーッ!! 一人突っ込みしてもうたやないか―ッ!!! アーロン、わいはアイスをやな……」
「やっぱり……、いいもんだな。観覧車ってのは」
さすがの暇さ加減に気狂いそうなって、一人突っ込みしたあげくにアイス
「さよかー、……せやったら、乗ってみるか、アレ? ……いや、タンマや、忘れてくれ。
「下等種族が。お前がだろ。……観覧車ってのは乗るもんじゃねェ、眺めるもんだ」
お前がそんなこと抜かすんか?
「ガキの頃だ。毎日飽きもせずに近くまで上がって来てはあの観覧車を眺めてた。あれはな、俺たち魚人、いや違うな、海中で暮らす奴らにとっては憧れそのものだ。無数に湧き上がるシャボンに包まれた中で、それは優雅に優雅にゆっくりとな、回りやがる。あれは俺たちにとって、どうしようもねェくらいに憧れ……、なんだ」
アーロン、お前もそんなええ顔するんやな。
「……お前がそないなこと言うもんやさかい、思い出してもうたやないか。……わいもな、故郷にはあったんや、観覧車。あんなでっかいやつちゃうでェ、もっともっと小っこいやつや。あの頃は乗りたーてしゃーなかったなぁ」
確かに、あの観覧車はキレイなもんや。シャボンに包まれて、キラッキラッ輝いとるやないか。言葉はいらんっちゅうやつやなぁ。
「って、アーロンッ!! あいつら、どこ行きよった?? お前、ちゃんと見てるか??」
「おいッ!! 下等種族がッ!! 俺が浸ってる時はお前が把握してるもんじゃねェのかッ!! 付き合ってやるって言ったじゃねェかッ!!」
「何やとッ!! お前が見ぃひんでどないすんねーんッ!!!」
観覧車に見惚れとったわいらは不覚にも麦わら達を見失ってもうてたわけや。血相変えてもうたアーロンが、わいの反論なんかお構いなしに、物すっごい勢いで走っていきよったわ。
おった! おったでェ! いや、おったけどや……。
電伝虫置き場ん前で集まっとるけど、えらいこっちゃな感じになっとるやないか。どうした、どうしたんや。
「……人攫いだ。ケイミーのやつが攫われたッ!!! くそがッ!!!!! これだから下等種族の奴らはッ!!!!!!」
俺を睨みつけて、吐き捨てるように声を上げたアーロンは、その後直ぐに、すまんと一言口にしよった。
己自身の不覚もあってか、わいに当たり散らすんはお門違いやと気付いたらしいわ。まあ、良しとしたろう。
「
「麦わら達は?」
「電伝虫を使ってた。多分、他の
「さよか。で、わいらはどうする?」
「捜すッ!! 決まってんだろッ!!」
「分かった。で、持ち込まれる
「この島に
「焦るなやッ!! 取り敢えずここはハットに連絡取ろうやないか。話はそれからや。焦って動いても何も良いことはあらへんのや。お前が助けたいっちゅう気持ちはよう分かったさかいッ!! 落ち着け」
鬼の形相で捲し立てるアーロンを何とか宥め込んで、わいは懐の小電伝虫を取り出した。
ひとまずこっちへ戻って来いとオーバンには伝えたが、どうしたものか。
「麦わら屋達の問題だろ。俺たちに何の義理がある?」
「同感だな」
「最近、私も分かってきたの。ローさん、言ってることと顔に書いてあることが正反対よ♪」
「同感ですね。副総帥殿はお優しい方なので」
「フフフ、さすがビビね。ロー、あんたの仏頂面も意外と分かりやすいって、精進なさい。それと、クラハドールは本気で思ってそうだから、後で私の書類仕事半分あげる。人攫いなら行き着く先は決まってるんだから、やることは決まってるわ」
大体、皆の考えてることは同じようだ。ローは苦虫を噛み潰したような顔をしているし、クラハドールは心外だとでも言うように新調した眼鏡をくいっと上げて見せたが、大変よろしい。
取り敢えずジョゼフィーヌ、そいつらを苛めてやるのはそれぐらいで勘弁してやれ。
「ひとまずは俺たちに出来ることを考えてみることにするか」
皆の総意を受けて方針を口にしてみれば、大小の違いはあれど頷きが返って来た。
この合間にも各電伝虫へのコールは鳴り止まず、対応する所員たちは声だけで対応するにも関わらず平身低頭の姿勢を崩しはしない。その間を行きつ戻りつしながら、カルーが羽の上を器用に使ってメモ紙を各テーブルに配りまわっている。クエーと一際大きく鳴いて見せたのは頷きと取ってもいいのかもしれない。これもまた大変よろしい。
「シャボンディに俺たちよりは土地勘があるだろうあんたのことだ、連れて行かれた先に心当たりがあったりしないか?」
「ンマー、そうだな、俺たちもそこまで詳しいわけじゃねェが、人魚族ってんなら行先は限られる。そうだろう、チムニー?」
「ええ、私たちはやらない商売だけど、シャボンディにある
「やった! 5つに絞り込めるなら何とかなるかもしれないわ、モシモシの能力で人魚って単語をキーワードにして“範囲検索”を掛けてみればヒットする可能性が無いとは言い切れないし」
「ンマー、さすがだな」
「良いな、それ。頼んだ、ビビ」
俺からのGoサインに力強く頷いて見せたビビが集中する為か少し席を外したところで、話を巻き戻すことにする。
「さて、本題をギルド・テゾーロからの話に戻そうか……」
「その前に……総帥殿、私からひとつお願いがございます。この件、極力ビビ様のお耳には入れたくありません。どうかご配慮を願えませんか?」
「ハヤブサ、それは過保護に過ぎねェか?」
「うーん、言いたいことは分かるけどね……」
「……それは受け入れ難いな。王女であるあいつの為にも。女王となる日も遠い未来では無いはずだ。だからこそ耳に入れてやる必要がある。お前がそうしたくないことも理解はするが。それでもだ。一国の王ともなれば、今回以上にシビアな決断を迫られる瞬間はそれこそ無数にあるに違いない。今からそこに触れておくのは有益ではないのか。
クラハドールのみは無言を貫きはしたが、それ以外の俺たちからの意見に対して、一呼吸分、視線を伏せたペルであったが、決心したように顔を上げて強い視線を向けた。
「……私もあの方に生涯仕えて行くことを誓った身です。承知致しましょう」
「有難う。お前たちの立ち位置は特殊だ。これからも気になることは遠慮せず口にしてもらって構わない」
「ええ、勿論よ。……じゃあ、さっきの話に入るわね。私は電話中にも言った通り、反対。私たちはドラッグを扱うつもりは無いし、それこそ奴隷だなんて、問題外だわ」
「だが、ジョゼフィーヌさん、奴からの見返り内容は一考に値するんじゃねェのか?」
「確かに借金チャラになるならそれに越したことはないけど。これはお金の問題じゃない。私たちが何のためにこの仕事をやってるのかってことに関わるわ。私たちネルソン商会が何のために存在しているのか、その存在意義に関わってくる。そして、私たちは
俺もローもクラハドールも、ペルも、コール対応する所員に厳密に言えば部外者であるガレーラの者たちまでもが聞き入ってしまったかもしれない。
そう言えば、こんな話はちゃんとしたことはなかったかもしれないな。皆がどのように思っているのかも聞いたことはなかったかもしれない。束の間俺たちは湧き上がるシャボンを見詰めることしか出来ないでいた。
「……悪いが、ここからは俺たちだけの話だ。外してくれないか?」
「……ンマー、仕方ねェか。興味深い話ではあったんだがな。大事なことだ。しっかりぶつかるといい」
「え~~、面白くなりそうなのにー」
チンチクリンのお前にだけは是が非でも聞かれたくない内容だ。俺はアイスバーグよりも、こいつの方が断然怖い。どんな権謀術数のアイデアに繋がるか知れたものではないのだから。
後ろ手に手を振り上げて颯爽と立ち去って行ったアイスバーグとは対照的に、未練たらたらに脛を棒きれでぺちぺちと粘着攻撃しようとしてきたチムニーには、傍らの吸いさしから漂う紫煙をお見舞いしてやった。大人気ない大人の理不尽さを以てして、たまには反撃しておいた方が良いだろう。
さて、再開といこう。
「貴様の言い分だと、武器を扱うことはどうなる? 存在意義に合致するのか?」
「武器の話を持ち出してくるって、クラハドール、あんたってほんとにやなヤツね」
「私は会計士殿のおっしゃること、共感しますよ。武器は大切な者を守ることが出来る。
「なるほど、道理だが、武器で大切な者を奪われた者もいるだろう。そいつは武器によって幸ある未来を奪われたことになるのでは?」
「そこまでだ。どこまでも行ってしまう話になりそうだからな」
クラハドールの奴め、一端の海賊だった奴が口にするには冗談が過ぎるが、この場は反論役を買って出たのかもしれないな。いつもに増して、眼鏡の上げ具合に嫌らしさが
「武器を扱うことは必要悪だ。この世界で生きてく以上、避けては通れねェ。奴隷も必要悪だ。ある一定の奴らにとってはな。とはいえ、俺もそれが良い趣味だとは毛ほども考えてはいやしねェ。俺たち自身が正面切って奴隷を扱う必要は無いだろう。ただ、
「ロー、あんたは奴隷解放しようって云うの?」
「そんな高潔なことは言ってねェ。だが、ジョゼフィーヌさん、あんたなら傍から見たら高潔なその動きに収益化することを盛り込めるんじゃねェのかと考えてるだけだ」
ローは言い終わると同時に口角を上げていた。ジョゼフィーヌ相手にどうなっても知らんぞ。
「フフ、あんたも言うようになったわね。会計士様に対する口の利き方とは思えないけど、でも私にその発想は無かった。いいわよ、やってやろうじゃないのよ」
売られた喧嘩は買う一択しかないジョゼフィーヌの口角も上がっていた。おいおい、俺たち大丈夫か。
「俺も正直言って、高尚な想いを持ってるわけじゃない。高い所にいる奴らを引きずり下ろしたい。ただそれだけだからな。だが、その為に使えるものは何でも使いたい。そんなところだ」
俺も知らずに口角は上がっていたかもしれない。俺たちは大丈夫じゃないかもな。ビビとペル、どうかアラバスタへ帰るまでは俺たちの良心であってくれ。
それに、今更悔やんでも仕方ないことだが、ロッコにも聞いておくんだったな。
「ボス、貴様ら含めて俺が言っておきたいことは3つだ」
タイミングを図ったかのように、指を3本立てながら眼鏡をくいっと上げてみせたクラハドール。
「1つ、ギルド・テゾーロは170億ベリーと口にした。150億ベリーとは言わなかった。20億分の利息が上乗せされてることを奴は知ってることになる。多分に闇金王かイトゥー会に繋がりがある」
「2つ、奴は譲る条件を口にしちゃあいない。正確には仲介する条件だが、両天秤に掛けざるを得ねェ内容になるはずだ」
「3つ、
畳み掛けるように言い放った3つの内容は、どれも俺たちが吟味しなければならない内容そのもの。ジョゼフィーヌとローが揃って物言いたげな表情を見せているではないか。
「見つけたッ!!!」
だが、勢いよく飛び込んで来たのはビビの声。少し離れたところで集中して、遠く五箇所の会話を拾っていたらしい。表情は自信に満ちていた。
「人魚というキーワードが出て来たのは3箇所からよ。絞り込む為にルフィさんたちの会話も聞いてみたけれど、ハウンドペッツっていう単語が出てきたの」
「シャボンディを根城にしてる人攫いチームだよ」
ビビの説明に合わせて反応したのはチムニーの声。振り返るとガレーラの仮事務所の扉から、ひょっこりと顔だけ出してやがる。これだからこのチンチクリンは怖いんだ。どこに耳があるか分かったもんじゃない。
「やっぱり! この2つの単語を同時に拾えたのは1箇所だけだったわ。場所は1番
「アハハハ、当たりだね♪ 所有してるのはディスコって人。ジョーカーの息が掛かってるわ」
言いたくて仕方無さそうな奴には言わせてやるに限る。
「ちょっと何、チムニー!! 私たち、嵌められてるの?!」
「出来すぎにも程があるな、クラハドール、お前まさか仕込んでやがったのか?!」
2人がそう思うのも致し方ないところだ。まるで何かに導かれるかのようではないか。裏があるんじゃないかと思いたくもなってくる。
そう思いながらも、ビビ様素晴らしいですねのペルからの言葉に、ガッツポーズで応じているビビの姿が眩しくもある。お前たちは唯一の穢れなき何かだよ、まったくな。
「頼みがあるッ!!!!」
低い声音での叫びがひとつ。頭を下げているアーロンと驚きの表情を見せているオーバンがそこにはいた。
「奴らを助けてやってほしいッ!!!!」
普段なら俺たちが仰ぎ見る必要のある男が頭を下げていた。口を
「もうー、顔上げなさいよッ!! あんたに頭下げられちゃったら調子狂うんだからねー」
「ほんまやで、アーロン。お前がいつ下等種族の
「何だとこの下等種族がッ!!!」
その瞬間俺たちはアーロン除いて皆が皆、コール対応中の船員は送話口片手に持ちながら、カルーは羽の上に器用にメモ紙を載せたまま、今回は大目に見てやるが、向こうの扉からこっそりとチンチクリンもひょっこり顔を覗かせながら、
「はい! だーめー!」
と、両腕交差させて×点を作ってやった。我ながら良いチームになったもんだ。
「話を受ける前にデューデリは絶対に必要よ。毒が仕込まれてるって言うんなら、それは“商品”の可能性がある。クラハドール、書類仕事半分あげる代わりに1番
「貴様に言われずともそのつもりだったがな。トラファルガー、貴様も来い」
「分かった。俺も行く。なぁ、ビビ、カールとベポの所へ行ってみてくれねェか?」
「ええ、もちろん! 私も実は心配だったの。ちょっと様子を見て来るわ。ね、カルーも行くでしょ?」
「クエ、クエ、クエーッ!!!」
「アーロン、お前は麦わら達のところへ行って来い。オーバン、すまんがついて行ってやれ」
「しゃーないやっちゃなー、アーロン、ほな、行こかー」
「黙れッ!!
皆、銘々のやるべきことをやるべく向かったのを見送ったところで、
「で、ペル、お前の姫様には付いて行かなくていいのか?」
同じく見送っていた笑顔の優男に声を掛けてやると、
「ええ。……後から参ります。先ほど皆さんに至言を頂きましたので。可愛い娘には旅をさせよとも、よく言うではありませんか」
男も惚れ惚れするような優しい笑顔でそう
さてと、
「ね~~♪ これから電話かけるなら、紅茶飲みたいでしょ? ウチの社長がへそくりみたいに隠し持ってる取っておきのがあるよ♪」
待ってましたと言わんばかりに側へ寄って来たチンチクリンめ。悪い笑顔をするな、するな。良い大人にならないぞ。
「兄さん、禁煙♪」
一方で、どこぞの厳しい姉さん女房のような声音で、顔も向けずに呟いたジョゼフィーヌからの一言は効いた。
お前、アレ、本気だったんだな。愛煙家的には辛すぎるんだが、我が妹の新たなる一面を垣間見た気がして、何だか嬉しいようなよく分からん気持に陥ったので、こんなに早くにも掛け直す羽目になるとは思ってもみなかった番号にリダイヤルすることにする。
「チムニー、悪いが紅茶のみ、この灰皿は戻しで頼む」
「了解♪」
秘めたる想いは言葉にしないと伝わらないということで、広言させてください。
感想を頂きたいです!! あからさま過ぎてすみません……。
もう随分と頂けていないもので。
一言でも、手厳しいご意見でも大歓迎です。
もちろん、感想を書くというのは、
結構重たいことで、骨が折れることなのは重々承知しておりますが、
もしも頂けたら、やったー!!! わーい!!! わーい!!!
救世主がいらっしゃったっと、
万歳三唱して大喜びしちゃいます♪
どうぞよろしくお願い致します!!