強さとはなんだろうか。正しいとはなんだろうか。己の生まれた意味はとうの昔に忘れた。望まぬ役目を押し付けられ、持て余す力に翻弄される己は只々滑稽なのだろう。全てに滅びを与えんとするこの力。悍ましくも凄まじいこれを望む者が目の前にいる。敵うはずがないと理解できないようだ。なんて愚かなんだろう。何度私を攻撃してもこの身体には切り傷はつかない。溢れ出る力は止めどなく、勝手に魔力弾を形成し周囲へと解き放っている。
ああ、なんて無様なのだろうか。自分はただこの暴走を眺めることしか出来ない。無駄と知っていながらも戦い続ける少女たちを見つめることしか出来ない。
とは言ってもだ。目の前の魔導師の力量は素直に称賛に値するものだ。放たれる魔力弾を全て先回りして切り裂いている。速度で言えば自分よりも遥かに上をいっているだろう。暴走している身体が勝手に動いて攻撃を放っても到底捉えることなど出来ない。これで目の前の魔導師に私を傷つけるほどの攻撃力があればあるいは私は滅び、暴走は終わっていたかもしれない。
それももしかしたらという話。実際には私の暴走を止めるには足りない。障壁はどこまでも強固に、高速修復も行われており、私の暴走を止めるには時間が足りない。
何も彼女達のことを見下しているわけではないのだ。ただ、彼女達には荷が重すぎるだけ……せめて自分達でも助かるようにと逃げればよかったのに……
このままでは全てが無に帰してしまう。だけど、私にはどうしようもなくて……
「フェイトちゃん!離れて!!」
突然、目の前で魔力弾を切り裂いていた魔導師の姿が消える。
それと同時に自分を中心とし囲むように一定の距離離れた場所で凄まじい魔力の力を感じる。私の身体はその魔力を危険と感じたのか回避のために魔力を貯め、動き出す。
「させないよ!チェインバー!!」
『トランザムシステム、クアンタムシステム。共に良好』
「GNビットは全部使うよ!!」
目の前に白と青で彩られた機械を身に纏う少女が瞬間的に現れる。その片手に持つ刀身が大きな剣は空間が歪むほどの魔力を放っている。私の身体は魔力弾を放つのを中断し障壁を強化する。避けられないとの判断なのだろうが、正直ここまで効率よく動く身体が憎い。暴走中なのに何故そこまで的確に判断を下せるのだろうか。このままでは結局意味のないことだ。いかに魔力を貯めようともエグザミアの放つ魔力障壁を破れるとは思えない。
「トランザム!!」
『ツインドライブシステム、起動』
目の前の少女の纏う機械が赤く光り、その手に持つ剣の魔力が急激に膨れ上がる。
いきなりのことで暴走体の身体は対処ができない。魔力障壁を強化したまま少女の剣を真正面から受け止める。
「クアンタフルセイバー!!!」
エグザミアによる膨大な魔力が込められた障壁は少しも拮抗すること無く、少女の剣で切り裂かれる……
「行くよ、レイジングハート」
そして、視界が桃色の魔力に包まれた………
◇
「……………ねえ、レイジングハート」
『
砕け得ぬ闇がスターライトブレイカーの直撃を受けたのを見届けた私は自身の手に持つデバイスへとあることを聞くために語りかける。
最初に攻撃されていた魔力弾を吸収して魔力を溜めたのはいいのだ。途中でフェイトちゃんが魔力弾を止めて、その方法で吸収は出来なくなったけど特に問題はなかった。寧ろ狙いを定められて確実に当てることが出来たのでフェイトちゃんはいい仕事をしたといえる。
それで、私が今レイジングハートに聞きたいことなんだけど……
「ブラストモードの時のスターライトブレイカーってこの目盛りでどれくらいの魔力で使えてたの?」
『
つまり、この………ジェノサイド………モードは約1.5倍で放てるってことなんだよね?
でもね、一つおかしなことがあるんだよ。
「何で目盛りが16も減ってるの?」
『
うん。ブラストモードでもビットから放てたよ。でもね。あれはただ加算しただけで私が放てる魔力より格段に少ない砲撃した出来なかったんだよ?でも、あの4つのビット。普通に私が放った最大威力のスターライトブレイカーを放ったよね?残りのビットで変な結界も出来てたし………
つまりね。私が言いたいことは……
「やり過ぎなんじゃ」
『
気絶した砕け得ぬ闇を必死に呼びかけるはやてちゃん似の女の子を遠目に見ながら私は考えるのをやめた。
短いですがここまで
最近忙しくてあまり執筆できません。まだ学会もあり、忙しいのは変わりないので更新スピードが少し落ちます。
気分が乗ったら寝る前に書いて更新していくので大目に見てください。