☆伝説の人斬り(オリ主)が異世界から来るそうですよ?   作:モン太

17 / 33
決着!

ゲームが開始されたと同時に突然、地鳴りと共に黒い光に包み込まれる。

 

次の瞬間、街はその姿を全く別のものへと変えていた。天を衝くような境界壁は消え、黄昏時を髣髴とさせるようなキャンドルやランプはなくなった。その代わりにパステルカラーの木造建築物が一帯を作り変えている。

 

ハーメルン側も謎が解かれた時の対策は怠ってはいなかったのだ。

 

剣心「これは、以前白夜叉殿がやっていた」

 

黒ウサギ「いえ、これはおそらくここに直接ハーメルンの街を召喚したのでしょう」 

 

黒ウサギは剣心の疑問に対して答える。

 

突然街が変貌したことで少なからず動揺してる者も多いが、ジンやマンドラが指揮をとってなんとか落ち着かせている。

 

黒ウサギ「サンドラ様、剣心さん。とにかくペストを探しましょう」

 

ペスト「その必要はないわ」

 

その声に三人は足を止めて上を見上げる。斑模様のワンピースにその身を包んだ少女、"魔王ペスト"がフワフワと空中に浮いている。

 

ペスト「あなた達の様子を見る限り、こちらが出題した謎は解けたようね」

 

そう言いながら他の参加者をチラリと目で追うペスト。勝利条件が明かされたというのにどこまでも余裕の態度だ。

 

黒ウサギ「ええ。ですがここであなたを倒せばこちらの勝ちです」

 

どこまでも強気なペストに対して黒ウサギも悠然とした態度をとる。ペストは鼻で笑い、黒い風を巻き起こした。

 

ペスト「一つだけ忠告してあげる。以前の私達・・と同じだと思わない方がいいわよ?」

 

ここはハーメルンの街。ここがホームタウンであるハーメルン側は以前よりも力が増している。

 

サンドラ「まずは私が先陣を切る。二人とも、サポートを頼むぞ!」

 

黒ウサギ「はい!」

 

剣心「ああ」

 

サンドラの幼くも雄々しい声に剣心と黒ウサギは強く頷き、剣心は千本桜を解放する。

 

剣心の周りを舞う桜の花びらにペストは顔をしかめる。

 

サンドラ「何処を見ている!」

 

剣心の千本桜に気を取られていたペストをサンドラは側面から球体の炎を吐いて狙う。しかしペストは悠々と避けていった。黒ウサギも飛び交いながら"疑似神格ヴァジュラ・金剛杵レプリカから雷撃を放つも黒い風に阻まれて攻撃を当てる事ができない。

 

黒ウサギ「くっ」

 

ペスト「言ったでしょう、以前の私達と同じだと思うなって」

 

サンドラの炎も黒ウサギの雷撃も神格級のギフト。しかしペストにはそれがまるで通用しない。攻撃をしてこないのはタイムオーバーを狙ってのことだろう。

 

剣心「殲景・千本桜景義」

 

剣心が千本桜の刃を押し固めた刀を連続で発射し、ペストを狙う。

 

ペストはサンドラの炎と同じように黒い風で打ち消そうとする。

 

だが、そうはいかなかった。

 

パァン!

 

飛来する刀は、黒い風のガードを簡単に突破した。

 

ペスト「やっぱりこの中で一番やっかいなのはあなたね、緋村剣心」 

 

ペストは軽く深呼吸をする。今まで余裕を崩さなかったペストがここで始めてペースを乱した。剣心の力は力を増したペストにも通用する。

 

黒ウサギが横を見ると、サンドラの息が上がってきている。才があるとはいえ、この中で最も実戦経験が不足している彼女は慣れない戦いに民の命を預かっているというプレッシャーも相まって疲弊してきていた。

 

黒ウサギ「"黒死斑の魔王ブラック・パーチャー"、貴女の正体は神霊の類ですね」

 

サンドラ「え?」

 

ペスト「そうよ」

 

サンドラ「えっ!?」

 

二人のやり取りに思わずサンドラは声を上げる。剣心も声こそ上げなかったが驚いていた。目の前にいる魔王は白夜叉と同レベルの霊格の持ち主だということになる。

 

黒ウサギ「貴女の持つ霊格は『百三十人の子供の死の功績』ではなく、十四世紀から十七世紀にかけて吹き荒れた黒死病の死者――――『八千万人もの死の功績を持つ悪魔』」

 

サンドラ「それだけの功績があれば神霊に転生することも」

 

黒ウサギ「無理です」

 

ペスト「無理よ」

 

黒ウサギとペストにキッパリと否定されてしまい歳相応の子どもらしくシュンと落ち込んでしまった。

 

神霊となるには一定以上の"信仰"が必要。つまりはその神の存在を信じること。"信仰"は恐怖という形でも構わないのだが、当時は不死の病と恐れられた黒死病も現在の医学では治療法が見つかり、神霊に至るまでの信仰は集められなかった。

 

黒ウサギ「だから貴女は、最も貴女を恐怖する対象として完成されている形骸として"幻想魔道書群グリム・グリモワール"の魔道書に記述された"斑模様の死神"を選んだ――――」

 

ペスト「残念ながら所々違うわ」

 

元々剣心達の役目はペストを引きつけることであり倒すこと自体が目的ではない。ペストの方も時間稼ぎは望むところだとあえて策に乗り、真相を語り始める。

 

ペスト「私は自分の力でこの箱庭にきたわけではない。私を召喚したのは魔王軍・"幻想魔道書群グリム・グリモワール"を率いた男よ」

 

一気に黒ウサギの顔に驚愕が浮かぶ。

 

ペスト「八千万もの死の功績を積み上げた悪魔……いいえ、八千万の悪霊群である私を死神に据えれば神霊として開花出来ると踏んだのでしょうね」

 

彼女は黒死病が具現化したのではなく、黒死病の死者達の霊群だったのだ。

 

ペスト「でも、私を召喚しようとした魔王は儀式の途中で何者かに敗北してこの世を去った。」

 

ペスト「私……いいえ、私達・・が"主催者権限"を得るに至った功績。この功績には死の時代に生きてきた全ての人の怨嗟を叶える特殊ルールを敷ける権利があった。黒死病を世界中に蔓延させ、飢餓や貧困を呼んだ諸悪の根源――――怠惰な太陽に復讐する権限が!」

 

今まで無表情だった彼女が始めて怒りの表情を見せる。八千万のもの怨嗟に応えるべく彼女はこの神々の箱庭で太陽に復讐をするのだ。

 

剣心「哀れな。」

 

今まで黙っていた剣心がここで口を開いた。

 

ペスト「……何が言いたいのかしら?」

 

太陽に復讐するという大それた発言に戦慄した黒ウサギとサンドラであったが、剣心はまるで泣きそうな子どもを見ているかのような目でペストを見ていた。

 

ペスト「何よ……その目は」

 

剣心の蒼眼を睨む。

 

剣心「運命を呪ったところで、どうしようもない。周りに不幸は撒き散らす悪鬼となる。ましてや、自分自身も救われる事はない。」

 

ペストは身体を怒りで振るわせていた。

 

何も知らないくせに知った風な口を利くな、と表情が物語っている。

 

ペスト「そんな目で、そんな哀れむような目で私を見るなァァァ!!!」

 

彼女の怒りに応じるかのように死を与える黒い風は勢いを増して荒れ狂う。

 

ペストの黒い風と剣心の数億の刃、まるで闇と光がぶつかり合うような光景だ。

 

サンドラ「これが、魔王とのギフトゲーム……」

 

二人の次元が違う戦い振りを見てサンドラは落ちこんだ表情で呟いた。

 

サンドラ「はは、情けないな。これではフロアマスター失格だ」

 

こうも他所のコミュニティに頼りっぱなしだと長としてもフロアマスターとしても面目が立たないだろうとサンドラは落ち込んでいる

 

黒ウサギ「サンドラ様。今、私達にできるのは戦っている皆を信じて待つこと。そして時が来た時に瞬時に動ける体力を残しておくことです」

 

黒ウサギはサンドラを元気付けているが、彼女自身も剣心や十六夜にまかせっきりなことに歯がゆさを感じている。

 

桜の激流が、黒い風を飲み込む。ペストも負けじと黒い風の出力を上げる。剣弾が飛来すれば、黒い風は弾ける。だが、黒い風を操作してなんとか軌道を逸らす。黒い風と数億の刃では、物量が桁違い。

 

圧倒的に剣心が有利だが、ペストは気迫だけで持ちこたえている。

 

魔王ペストは緋村剣心が気に入らない。

最初は自分の能力を封じる桜の刃が原因だと思っていたが、そうではなかった。

死を与えるものと死から救おうとするもの。相反するものが相手だったのだ。気に入るわけがない。

そして極めつけはその人を哀れむような目。

 

ペストの操る死の風がより毒々しい色へと変わっていく。

 

ペスト「さっきまで余興とは違うわ、これは触れただけで死ぬわよ」

 

黒ウサギ「や、やはり"与える側"の力!死の恩恵を与える神霊の御業ですか……!」

 

触れただけで死をもたらす風が剣心へと迫る。

 

それに対して剣心は、左手をかざす。ただそれだけ。そして、桜の激流を死の風に真正面からぶつかって行った。

 

剣心「手掌で操れば、速力は倍。」

 

速力を増した、桜の花びらが死の風にぶつかる。

 

ペスト「そんな……!?」

 

触れた者に死を与える最悪の恩恵を剣心の桜が貫いていくことにペストは驚きを隠せない。

 

だが、その激流も死の風を進むたびに勢いが殺されていき、ペストの目の前で止まった。

 

今の一撃が通っていたらさしものペストも拙かっただろう。ペストは安心する。

 

――そう、ペストは安心して、一瞬行動が遅れてしまった。

 

気がつけばペストの目の前で止まった桜は消え、代わりに数本の刀が切っ先を向けていた。

 

剣心「殲景……」

 

ペスト「しまっ」

 

剣心「千本桜景義」

 

時は既に遅し。零距離からの5本の刀がペストに炸裂する。

 

サンドラ「や、やった!」

 

黒ウサギ「いえ、まだです」

 

黒ウサギの言う通り、ペストはまだ倒れていない。剣弾を浴び、上半身が吹っ飛ぶが、不死性により再生されていく。着ていた斑模様のワンピースもほとんどなくなり上半身はほとんど露出してしまっている。

 

ペスト「こ、これは!?」

 

一際大きく響いた震動。

 

剣心「十六夜、勝ったのか」

 

主であったペストはヴェーザーとラッテンが消えたことを直感で感じ取った。

時間稼ぎのために戦力を分散させてしまったことが一番の失敗。もし最初から纏まってかかれば、あるいは目的のために敵の被害を最小限に抑えようなどと欲張らなければ、ここまで戦況を悪くすることはなかったかもしれない。

 

残りのステンドグラスも60枚をきった。その上自分もここまで追い詰められてもう後がない。

 

ペスト「……止めた」

 

ペスト「時間稼ぎは止めた。白夜叉だけ手に入れて――――皆殺しよ」

 

ペストは、死の風を周りに無差別に放出する。

 

しかし、

 

剣心「吭景・千本桜景義」

 

ペスト「こ、これは!」

 

ペストを死の風ごと、数億全ての刃がペストを包み込む。

 

剣心「吭景・千本桜景厳。千本桜景厳の億の刃。その全てで球形に敵を覆い、全方位から斬砕する…刃の吭に呑まれて消えろ」

 

ペスト「クッソォォォーーーー!!!」

 

ザアァァン

 

そして、景色が一転した。

 

まず最初に皆の肌が感じ取った急激な気温の低下。地面はそこかしこにクレーターがあり、周囲には石碑のような白い彫像が乱立している。周囲は数多の星が輝いて、天には箱庭の世界が逆様になって浮かんでいた。

 

今、剣心達はアポロ11号が初めて降り立ったとされる月にいる。

 

サンドラ「チャ……チャンドラ・マハール! 軍神インドラではなく月神チャンドラの神格を持つギフト……」

 

黒ウサギ「YES。このギフトこそ我々月の兎が招かれた神殿。帝釈天様と月神様から譲り受けた月界神殿でございます」

 

サンドラに答える黒ウサギ

 

ペスト「う、ぅうぅ....」

 

剣心「......しぶといな。さすが魔王だな。この刃を受けても、まだ人の形を保てるとは」

 

ペストは全身を斬り刻まれ地面に倒れている。今のペストの状況は正にボロ雑巾である。

 

剣心の言葉とペストの姿を見て、顔を青くするサンドラと黒ウサギ。

 

ペスト「そ、そんな!」

 

ペストは自身の力が急激に弱まっていることに気がつく。ハーメルンの街から離れてしまったことでフィールドからのブーストを受けられなくなってしまったのだ。

 

剣心「黒ウサギ、止めを」

 

黒ウサギ「ですが、これでは...」

 

やり過ぎだと言いたいのだろう。

 

剣心「黒ウサギ、その槍を貸してくれ」

 

黒ウサギ「....わかりました。」

 

そして、ボロボロのペストのもとへ剣心がインドラの槍をもって近づく。

 

皆が見守るなか、倒れているペストの心臓にインドラの槍を突き刺す。

 

ペスト(か……身体が焼ける……。あ……つい……え? 違う……温か……い……?)

 

槍が身体の内を焼いていくの中、己の身体が消滅していく中で、ペストは身体を焼く痛みではなく、母親に包み込まれているような温かさを感じた。

 

ペスト(ひむら……けんしん。何て顔……してるのよ……)

 

消え行く中で見えた彼女を倒した少年の顔は、いつもの無表情。しかし、彼女には、どこか悲しそうな顔している様に見えた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

一週間が経過し、皆が"ノーネーム"の本拠地に帰って最初に始めたのは農地の復興であった。

 

新しい加入メンバーである地精メルンであれば土地の修復に目処が立つかと思っていたのだが。

 

メルン「むり」

 

飛鳥「そんなあっさり!?」

 

荒れ果てた農地を見て、メルンはばっさりと言い捨てた。

 

飛鳥「ど、どうしても無理かしら?」

 

メルン「むーり」

 

可愛い見た目と舌足らずな喋り方の割りに厳しい性格をしているようだ。

 

メルンの発言で"ノーネーム"の子ども達は肩を落とす。

 

飛鳥「き、期待させるような真似してごめんなさい」

 

しょんぼりする飛鳥を黒ウサギと耀が励ます。

 

そんな中、十六夜は土を見て、あることを思いついた。

 

十六夜「おい、極チビ」

 

メルン「ごくちび?」

 

十六夜「土壌の肥やしになるものがあったら、それを分解して土地を復活させることは出来るか?」

 

その言葉を聞き、少し考え込むメルン。

 

メルン「……できる!」

 

飛鳥「ホント!?」

 

メルン「かも」

 

その言葉にやや右肩下がりにガクっと気が抜ける飛鳥だが、試してみる価値はあるらしい。

 

皆は早速肥料になりそうなものを集めだし、飛鳥はディーンを召喚して土地を耕し始める。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定