☆伝説の人斬り(オリ主)が異世界から来るそうですよ?   作:モン太

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抜き身の刀と鞘

"ハーメルンの笛吹き"とのギフトゲームから早一ヶ月。一同はこれからの活動方針を話し合うために本拠の大広間に集まっていた。

 

大広間の長机には、上座からジン、十六夜、剣心、飛鳥、耀、レティシア、そして年長組の代表としてリリが座っている。この席順はジンと黒ウサギを除けば、"ノーネーム"への貢献度を示していた。十六夜は水神を倒しての水源の確保、レティシアの奪還、ついこの間のゲームでは謎解きだけでなく神格保持者となった悪魔、ヴェーザーをも倒した。十六夜が次席に座っている理由はこれだ。

 

十六夜「どうした? 俺よりいい位置に座ってるのに随分と気分悪そうな顔してるじゃねえか、御チビ」

 

十六夜はガチガチに緊張しているジンを笑い、からかっている。

 

剣心もレティシア奪還には大きく貢献した。そして実質一人でペストを追い詰めたという功績がある。

本人は末端の席で良いと遠慮していたが、皆に押し切られて十六夜の次席に納まっている。

 

ジン「だ、だって旗本の席ですよ? 緊張して当たり前じゃないですか」

 

ジンはローブを掴みながら反論している。彼はリーダーとはいえ他数名ほど功績を挙げている訳ではないので上座にいることに引け目を感じているのだ。

 

しかし、そういうわけにもいかない。彼はこの"ノーネーム"の顔であり、今まで入手したギフトもジン=ラッセンの名義で届いているのだ。

 

そしてそれだけではない。

 

黒ウサギ「苦節三年……。とうとう私たちのコミュニティにも招待状が届くようになりました。それもジン坊ちゃんの名前で!」

 

黒ウサギは大事そうに胸に抱いていた三枚の封筒を見せると、いつも以上のテンションではしゃぎ出す。無理も無い、今まで名無しと蔑まれてきた事を考えれば、それは大きな進歩だ。

 

飛鳥「ところで今日集まった理由はその招待状の事かしら?」

 

剣心の次の席に座っている飛鳥が話を急かす。十六夜や剣心には劣るものの、彼女も相棒のメルンやディーンと農園区復興に大きく貢献している。剣心に十六夜の次席を譲られたが、それは彼女のプライドが許さなかったようで、不満はあるものの納得して四番目についている。

 

リリ「はい、そうですがその前に報告が……」

 

黒ウサギとリリから"ノーネーム"の現状が伝えられた。

 

ペスト討伐のお陰で多額の報奨金が出たことで備蓄はしばらく問題ないこと、メルンとディーンのお陰で農園の四分の一が使えるようになったことだ。

 

レティシア「――――つまりだ」

 

そして話は先程の招待状にと戻る。

 

レティシア「主達には特区にふさわしい苗や牧畜を手に入れて欲しいのだ」

 

耀「牧畜って、山羊や牛のような?」

 

そう、この居住区にはそういった動物が全くいない。

 

レティシア「そうだ。都合のいいことに、南側の"龍角を持つ鷲獅子ドラコ・グライフ"連盟から収穫祭の招待状が届いている。連盟主催とあって収穫物の持ち寄りやギフトゲームも多い」

 

黒ウサギ「方針については一通り説明は終わりました。……ですが、一つ問題があります」

 

耀「問題?」

 

黒ウサギはとても言い難そうに目を泳がせて、

 

黒ウサギ「この収穫祭ですが、二十日間ほど開催される予定で、前夜祭を含めれば二十五日。約一ヶ月行われることとなります。この規模のゲームはそう無いですし、出来れば最後まで参加したいのですが、コミュニティの主力が長期間不在なのはよくありません。なのでレティシア様と一緒にせめて御一人残って欲し――――」

 

「「「嫌だ」」」

 

剣心「......」

 

この展開はジンも黒ウサギも剣心も予想していた。生誕祭での前科があるお祭りごと大好きな問題児達が留守番なんてするわけがない。

 

剣心「なら、俺が残る」

 

剣心が名乗り出る。剣心は特に祭りに興味はなかった。それに、そのために"ノーネーム"の子ども達を危険に晒すわけにはいかない。第一、話が進まない。

 

耀「――――えっ?」

 

剣心の言葉に真っ先に反応したのは耀だった。今の彼女は雨に濡れた捨て犬のような悲しい顔をしている。そして問題児他二人は冷めた目つきで剣心を見ていた。

 

剣心「......何か?」

 

十六夜「いや……だってなぁ?」

 

飛鳥「ねぇ?」

 

耀「剣心、行かないの……?」

 

この何とも言えない空気をジンが無理やりぶった切る。

 

ジン「わ、分かりました! せめて前夜祭を三人、オープニングセレモニーから一週間を全員で、残りの日数を三人と人数を絞らせて下さい!」

 

ジンもこうなることを見越してキッチリ対策は立てていたようだ。しかしこれだと内二人は全部の日数参加が可能なのだ。普通は席順で決まるのだが、問題児達がそんなことで納得する筈がない。剣心はどうしたものかと考えていたが、十六夜にアイデアがあるようだ。

 

決定方法は十六夜の提案で『期日まで最も多くの戦果を挙げた者が勝者』と決まった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

剣心「......」

 

三人はやる気マンマンで早速ギフトゲームを探しに行ったが、剣心は今回の件に関して、それ程勝利に執着してはいなかったので、ただその辺をぶらついているだけだったりする。

 

剣心「......」

 

気が付いたら霧の深い森の中にいた。

 

剣心「......」

 

剣心は引き返そうかと考えたが、あまりに霧が濃くて元来た道すらも見失ってしまった。

 

剣心(まさか幻術!?)

 

剣心は周りを確認するが、術者の気配はない。

 

?「フォッフォッフォッ、まあ落ち着きなされ」

 

剣心「.......」

 

先程周りを見回した時にはいなかった老人が切り株に腰掛けている。足元には老人の持ち物であろうバスケットが置いてあった。

 

剣心「これはあなたの仕業か?」

 

?「いや、これはこの森の特徴なんじゃよ。ワシもここで迷ってしまっていての、疲れて休んでいるところじゃ」

 

?「フゥム……君、ワシとギフトゲームをせんか?」

 

剣心「......何?」

 

何故ここから出ることを考えているのにギフトゲームになるのかと疑問に思う。

 

?「何、ルールは簡単じゃ。ワシをこの森の向こう側まで連れて行ってくれるだけでいい。時間制限も敗北条件も無い。良いと思わんかね?」

 

裏を返せばこの老人を森の向こう側まで連れて行けなければ剣心はこの森の中を永久に彷徨うはめになる。しかし、どちらにしろ剣心はこの森から脱出しなければならないし、この老人をこのまま放置しておく訳にもいかない。

 

剣心はそのギフトゲーム? の条件を飲んだ。

 

『ギフトゲーム名"迷いの森"』

 

 プレイヤー 緋村剣心

 ゲームマスター 老人

 

 クリア条件 老人を連れて森の向こう側まで到達する

 敗北条件 無し

 

 宣誓、上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

 "謎の老人"印』

 

剣心は"契約書類ギアスロール"に記入をした後、老人の希望で彼をおぶって歩を進めた。途中で拾った小石を一つずつ置きながら迷わないように、さながらヘンゼルとグレーテルのように森の向こう側を目指す。

 

老人「重くないかの?」

 

剣心「大丈夫です」

 

彼はとても華奢な体格で、老人をおぶって歩くのは中々に重労働であるが、その程度では剣心は音をあげない。

 

三十分くらい歩いただろうか、そうすると目の前にさっき置いていった小石が等間隔で置いてある。自分と同じように石を置いてこの森を脱出しようとしていたのかと考え、小石を辿ってまた進もうとする。

 

剣心「......」

 

置いてある石には見覚えがあった。剣心がさっき置いておいた筈の石だ。全て覚えているわけではないが、いくつかの形はうろ覚えだが分かる。

 

老人「そうなんじゃよ、どれだけ進んでも元の場所に戻って来てしまうんじゃ」

 

剣心は先に言えと内心ため息をつく。

 

剣心(この三十分間は一体なんだった)

 

剣心(やはり幻覚か)

 

剣心は龍の眼を発動する。

 

剣心(やはりか)

 

そのまま老人をおぶって歩く

 

辿りついた森の向こう側あったのは、花畑。

 

花畑の中央に十字架が立てられている。

 

剣心「お墓……?」

 

老人「ああ、ありがとう。やっとここまでこれたわい。ギフトゲームは君の勝ちだ」

 

老人はギフトゲームに負けたというのに心底嬉しそうに笑い、手に持っていたバスケットを剣心に手渡した。

 

剣心「これは……?」

 

老人「報酬じゃよ。それに、もうワシには必要ないしの」

 

バスケットの中には金色に輝くリンゴのような果物や何かの植物の苗が入っていた。

 

老人「ここを真っ直ぐ行けば君が元いた場所へ辿り着く。さあ、日が暮れない内に帰りなさい」

 

剣心「あなたは、帰らないのか?」

 

老人はフッと笑った。

 

老人「心配せんでもいい。ここがワシの家じゃ」

 

剣心「.......」

 

後日、剣心が貰った植物の苗が"宝樹の木の苗"というとてもレアな代物だと黒ウサギから聞いて再度驚きの声を上げることになる。ちなみに一緒にあったリンゴはその木がつける実だとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アンダーウッドの収穫祭の前夜祭の前日、全ての日数を出れる二人が決まった。

 

一人目は地域支配者レギオンマスターの証である外門の権利証を手に入れた十六夜。彼はトリトンの滝の主である白雪(水樹の持ち主だった蛇)の身柄を白夜叉に引き渡したことでこれを手に入れた。これで"ノーネーム"は恒久的な、それも莫大な収入源を得たと同時に、名実共に七層東区の筆頭となったわけである。

掲げる旗やコミュニティの名が無くてもジン・ラッセルの率いるコミュニティとして名が広まっていくことだろう。

 

二人目は"宝樹の苗"を手に入れた剣心である。

 

その夜に小さな宴が設けられた。十六夜の白ける一言があったものの、とても楽しい宴となった。

だが、その中で一人、耀は浮かない顔をしている。

 

彼女は気分転換に三毛猫を連れて居住区の外れまで来ていた。

 

耀「三毛猫。私は収穫祭が始まってからの参加になったよ。残念だけど、前夜祭はお預けだね」

 

『……そうか。残念やったなお嬢』

 

耀は膝の上に乗っている三毛猫に向かって話している。彼女は今まで取り立てて"ノーネーム"復興に手柄を立てて来た訳ではない。しかし、他の三人は違う。十六夜も飛鳥も、気になっている剣心だって目に見える活躍をしているのに、自分だけ大したことが出来ていない。"ぺルセウス"や"ハーメルンの笛吹き"とのギフトゲームだって肝心なところで何も出来ていないのだ。

 

耀「剣心達は凄いよね」

 

『……せやな』

 

耀「でも、私はあんまり凄くないね」

 

剣心「そんなことはない」

 

耀は、この場にいる筈のない第三者の声に反応して慌てて後ろを振り向いた。そこには剣心が料理の皿と酒を持って立っている。耀は驚きのあまり、目をパチクリしていた。

 

剣心「そんなことはない。耀は凄い」

 

耀「違う、私だけ足手纏い。流される感じでコミュニティに入ったのが駄目だったんだよ。偶然素敵な友達が出来ただけで、私にはその関係を維持するだけの力が……無い」

 

これが耀の本音だった。彼女の膝の上にいる三毛猫は痛ましそうに耀を見ている。

 

そんな悲しそうな彼女を見た後、剣心は前を向いて独り言のように喋り出した。

 

剣心「俺も向こうでは、友と呼べるような人間はいなかった。唯一、俺によく話しかける者が1人いたが、その者は敵の密偵で裏切り者であった。」

 

剣心「だが、そんな俺だって、今こうして皆といる。友を作るのに力など必要ない」

 

ずっと一人ぼっちで友達の作り方を知らなかった彼女にとって、剣心の言葉は目から鱗が落ちる気分だった。

 

耀「…………かな?」

 

剣心「?」

 

耀「ずっと動物以外の友達がいなかった私でも友達、作れるかな?」

 

耀の不安そうな言葉に、剣心は優しく笑いかける。

 

剣心「大丈夫だ、こんな俺にも出来たんだ。それに、もうここに一人友がいるではないか」

 

剣心の言葉には不思議と安心感がある。耀の今までの劣等感から出たどうにもならないネガティブな気持ちが何処かへ行ってしまうくらいに。

 

耀「......ありがとう」

 

耀は満足そうに頷いた。

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