☆伝説の人斬り(オリ主)が異世界から来るそうですよ? 作:モン太
ヘッドホンは外装がほとんど粉々になっていて、飛鳥が匙を投げるのも無理は無い。その後、黒ウサギ達とも合流してヘッドフォンを直すより代わりの品を用意しようという相談が行われる。
しかしその時、緊急を知らせる鐘の音が"アンダーウッド"中に響き渡り、その直後に巨人の来襲を知らせる地響きが地下都市を揺らした。
地表へ出た剣心達が見たのは、既に半ば壊滅状態の"一本角"と"五爪"の同志達。鐘が鳴ってからまだそれ程時間は経過していない筈だというのに、一体何があったのかと一同は驚いた。
すると一頭のグリフォンがこちらへ向かって飛んできた。
グリー『耀……! 丁度良い、今すぐ仲間を連れて逃げろ!』
グリーはこちらの軍勢が巨人の大群と竪琴の音色によって瓦解していると言って、東の白夜叉に救援をと叫んだ。竪琴の音色はここから音源がかなり離れている耀達でさえ意識が飛びそうになる。剣心は音で気を失わないように気を強く持った。
目の前でバタバタと倒れていく幻獣や獣人達を見て、剣心は我慢の限界だった。
剣心「行ってくる!」
黒ウサギ「ちょ、剣心さん!」
黒ウサギの制止の声を振り切った剣心は濃霧の中、龍の眼を使い、神速で前線まで駆けていく。その間にも巨人を破竹の勢いで倒していく。
剣心(――こっちか!?)
音がする方目掛けて剣心は加速する。案の定だが、音に近づくにつれて巨人は増えていった。
?『――――どこに逃げたの白夜叉ぁぁぁあああああああああああああああッ!!!』
突如、戦場に響き渡る少女の大声。剣心はこの声をついこの前聞いている。
剣心「まさか……ペストか?」
そう、黒死斑の魔王ブラック・パーチャーペストの声だ。そして彼女は今、白夜叉をもの凄い剣幕になりながらも探している。どうやら彼女は白夜叉に煮え湯を飲まされたらしい。
?「成程、黒死病を操る魔王を隷属させましたか。これなら……」
剣心は声の主の方を見る。白銀の鎧に顔の上半分を覆う仮面、つい先程飛鳥達を救ってくれた人物だった。
剣心「あなたは......」
?「コミュニティ"クイーン・ハロウィン"のフェイス・レスといいます」
剣心「コミュニティ"ノーネーム"の緋村剣心だ」
先程、フェイス・レスが感心しているのは二つある。一つ目は巨人と黒死病の相性、ケルト神話の一説では黒死病を操ることで巨人を支配していたというのがある。二つ目は怒り狂うペストを上手く使役出来ていることだ。剣心は知らないことだが、これはジンのギフト"精霊使役者ジーニアー"によるものだ。
"精霊使役者ジーニアー"とはその名の通り精霊を使役すること。一度隷属させれば、己の霊格に関わらず、例え相手が魔王であっても十全に支配することが出来るのだ。
ペストが巨人をバッタバッタと薙ぎ倒していく中で、霧はより濃くなっていく。竪琴の音色の主は戦況が不利になったことで逃げ出そうとしているのだろう。
しかし、ジンもここでペストを投下した時点で敵が姿を晦まそうとするくらい予想はついている筈だ。
この深い霧の中であっても、彼女であればそれを探すことが出来る。
耀が"黄金の竪琴"を奪い取ったことで、こちら側の勝利は確定した。
だが、一瞬剣心は違和感を覚える。
剣心(これは......一瞬ではあったが、"俺"がいた。)
霧が晴れた後に剣心が見たのは嬉しそうに"黄金の竪琴"を握り締めた耀と憤怒の表情で巨人の残党を片付けていく――何故か白いフリフリのメイド服を着たペストであった。
剣心(これは、久しぶりに荒れるかもしれないな)
剣心は耀に駆け寄った。今回のMVPは間違いなく彼女だろう。
耀「剣心、私やったよ!」
剣心「ああ……――ところで何故ペストがいる? それにあの格好は……」
ペスト「黙りなさい緋村剣心!!」
巨人を狩りながらも剣心の声はしっかりと聞き取っていたようだ。何という地獄耳。何処かで見たことがあると思ったらレティシアが着ているメイド服に似ている。あの格好は白夜叉に無理矢理着せられたのだろうか。
それを聞いた剣心は、
剣心「散れ。千本桜」
ペスト「え、え!? 嘘よ! ごめんなさい!だから、それだけはやめてぇ〜〜」
始解ではあるが、剣心の千本桜を見た瞬間逃げ出すペスト
耀はそんな剣心を見て笑う。
耀「......ふふ」
剣心「......どうした?」
耀「......いや、なんでもない」
耀(剣心でも、イラッとする事があるんだ)
ペストが最後の巨人を倒したことでこの戦いは終結した。
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次の日の朝、剣心達を迎えたのはフェイス・レスであった。
どうやらフェイス・レスの力を借りて十六夜のヘッドホンの代わりになるものを"箱庭"に持ってくるそうだ。
ジン「しかし、厳密には"クイーン・ハロウィン"の力で召喚するのではなく。星の巡りを操って因果を変えるので、耀さんがヘッドホンを持っていないと成立しないのですが……」
耀「つまり過去を変えるってこと?」
ジン「はい」
ジンは心配そうに頷いた。
耀「それは大丈夫。十六夜のヘッドホンの同じメーカーのが家にある」
話を聞けば、耀は十六夜や剣心よりも未来の世界から来たらしい。もしかしたら十六夜の世界の未来から耀が来たのかもしれないなと、剣心は何とも言えない気持ちになった。
耀「うん。父さんがビンテージ物だって言ってた。あれなら十六夜もきっと許してくれると思う」
飛鳥「でもお父様の物なんでしょう? 勝手に持って行っていいのかしら?」
耀「それも大丈夫。父さんも母さんも行方不明のままだから」
さっくりと述べる耀に対して両親を亡くしている飛鳥は俯き、剣心は黙る。
剣心(そうか、耀も)
剣心は耀の痛みを少しは理解できる。なぜなら、己も9歳の時に親を病気(虎狼痢(コレラ菌))で失っているからだ。もっとも、剣心は人買いや野党に出くわす事になるが、比較的すぐに師匠に拾われる。
剣心(耀にも、師匠の様な人はいたのだろうか)
耀「……剣心?」
剣心「......何でもない。」
耀「嘘」
剣心は真顔で答えるが、どうやら考え事をしているのが、顔に出ていた様だ。
剣心(我ながら、呆れる。)
剣心がこのような隙を見せてしまったのも、きっと耀を幼少の頃の己と重ねてしまっていたからである。
飛鳥ですら剣心が暗い気分になっていることに気がついている。
耀「確かに、父さんと母さんがいなくなったのは辛かった。けど、私にも一緒に笑ってくれる友達が出来た。力を貸してくれる仲間が出来た。だから、そんなに辛くないよ。それに、これからは待ってるだけじゃなくてもっと歩み寄ろうって」
耀は周りの人達を見て、最後に剣心に微笑みかける。
剣心(要らぬ心配であったな。耀は俺よりもよっぽど強い)
そして、珍しく剣心も微笑む。
その笑顔を見て、飛鳥が顔赤らめる。
飛鳥(ううぅ〜、またも不意打ち/////)
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一同は"アンダーウッド"の螺旋階段を登って地表に出る。そこにはフェイス・レスが用意した"黄道の十二宮"を描いた陣があった。
耀はその中心で座ったまま、必死にヘッドホンへの想いを高めている。このまま半日ヘッドホンについて考え続ければ後はフェイス・レスがどうにかしてくれるらしい。"クイーン・ハロウィン"の力を借りているとはいえ、人間がそれだけのことを可能に出来るというのは黒ウサギも驚きであった。
そしてヘッドホンは届いたのだが……。
耀「猫耳?」
飛鳥「可愛い! それ凄く可愛いわ!」
飛鳥には好評のようだが、剣心を含め他は微妙な顔をして見ている。
外装は十六夜のヘッドホンとほぼ同じなのに何故か猫耳がついている。耀が着ける分には問題ないだろうが、これは十六夜に渡すものだ。とても男が着けるようなものじゃあない。最も、十六夜ならもしかしたら喜ぶかもしれないが。
フウと息をついたフェイス・レスは召喚が失敗したことに驚き、その原因と思われる耀のペンダントを確認させて欲しいと言った。
耀は戸惑いながらもペンダントを渡す。
フェイス・レスは耀に2,3質問をした後にペンダントを返した。
フェイス・レス「――召喚に失敗した代わりと言っては何ですが……一つご忠告を」
フェイス・レス曰く、耀のペンダントは他種族からギフトを貰うだけでなく、進化させたり合成させたり出来る代物らしい。
フェイス・レス「気をつけて、そのギフトは本来であれば人間の領域を大きく逸脱したものですから。」
フェイス・レスはそう言って崖を跳び下りて姿を消した。
修繕を諦めた一同は、何か代わりのものをと店を回ったが、結局何も見つからず、猫耳ヘッドホンを十六夜に渡すことになった。