☆伝説の人斬り(オリ主)が異世界から来るそうですよ? 作:モン太
外へ飛び出した剣心の目に入ってきたものは空からヒラヒラと落ちてくる黒い封筒。剣心はそれを迷わず手に取った。
剣心(これは……まさか!)
火龍誕生祭でペストがギフトゲームを仕掛けてきた時の状況に似ている。つまりこの中には契約書類ギアスロールが入っている筈。
封を開けると剣心の思った通りのものが入っていた。
『ギフトゲーム"SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"
・プレイヤー一覧
・獣の帯に巻かれた全ての生命体
※ただし獣の帯が消失した場合、無期限でゲームを一時中断する
・プレイヤー側敗北条件
・なし(死亡も敗北と認めず)
・プレイヤー側禁止事項
・なし
・プレイヤー側ペナルティ条項
・ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。
・時間制限は十日毎にリセットされ繰り返される。
・ペナルティは“串刺し刑” “磔刑” “焚刑”からランダムに選出。
・解除方法はゲームクリア及び中断された際にのみ適用。
※プレイヤーの死亡は解除条件に含まず、永続的にペナルティが課せられる。
・ホストマスター側 勝利条件
・なし
・プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスター・"魔王ドラキュラ"の殺害。
二、ゲームマスター・"レティシア=ドラクレア"の殺害。
三、砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ。
四、玉座に正された獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
" "印』
剣心(何だこれは……?)
剣心が困惑するのも無理は無い。こちらの敗北条件が無いことや向こうの勝利条件が無いこと、ペナルティについても不明な点が多いが、何よりも"ノーネーム"の同士である筈のレティシアがゲームマスターであることが不可解だ。
剣心(――レティシアが裏切った?)
否、今までそんな素振りは見せなかった。裏切るどころか彼女は"ノーネーム"のことを人一倍心配しているのだ。そんな優しい彼女が進んで敵に回るとは思えない。
考えられるのは第三者の介入だろう。この名前を記載されていない何者か、もしくは"コミュニティ"がレティシアに何かしたのだ。
「――――GYEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaa!!!」
巨龍は雄叫びを上げながら己の鱗を散弾のごとく"アンダーウッド"中に撒き散らす。やがてその鱗は形状を変化させ大蛇、火蜥蜴、大蠍といった魔獣となって"アンダーウッド"を襲う。
最前線には巨人、内部には魔獣、空には巨龍と敵が多すぎる。
剣心(巨人の方にも向かいたいが……)
剣心(まずは魔獣を殲滅する方が先だ。内部には非戦闘要員もいるのだから彼らの安全確保をしなければ。)
そう思い、剣心は魔獣の群れに飛び込んだ。
剣心「散れ。千本桜」
千本の桜の刃が町中に広がり、魔獣達が全身から血を吹き出し倒れる。
突然、大きな破壊音が響く
剣心(あれは……)
大樹を揺らした衝撃と爆音、巨人が最前線から吹き飛ばされて大樹に突き刺さったのだ。
巨人が自分の意思で空を飛んで突っ込んで来たとは考えにくい。
剣心はこんな出鱈目なことをする男に一人、心当たりがある。
剣心(そういえば、そろそろ十六夜が来る頃だったな)
十六夜の強さは剣心も身をもってよく知っている。単純な攻撃力ならとてつもない。そして楽しみにしていた祭りを邪魔されたとあればその心中は穏やかではない筈。
彼が暴れまわっているのなら前線の方は問題無さそうだ。
『"審判権限"の発動が受理されました! 只今から"SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"は一時休戦し、審判決議を執り行います! プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください! 繰り返し――』
黒ウサギのアナウンスは途中で遮られてしまう。
巨龍にとってはただ動いただけ。たったそれだけのことで吹き荒れた暴風は"アンダーウッド"全土の人々全てを吹き飛ばし、震撼させた。
剣心は剣気で耐える。
剣心(図体が大きいと面倒だな)
剣心(あれは......)
剣心は龍の眼で巨龍に隠れて今まで見えなかった上空に浮かぶ古城を見つける。
そこへ魔獣が向かっている。しかも"アンダーウッド"の住人と思しき子ども達を捕まえながらだ。
剣心(不味い)
幸いなことにあの古城周辺の風はそれ程乱れてはいない。
剣心(皆、すまない)
剣心は生体吸収を使い飛行して魔獣達を追いかけて城へと到着する。
剣心(ここは恐らく敵の本拠地だ。)
剣心(まずは子ども達を捜す)
剣心は暗殺業で身につけた気配遮断を使い周りを警戒する。
剣心(あれは……)
敵の本拠地だけあって警戒は強い。水気を含む不快な音を立てて血塊と苔の集合体のような赤黒い怪物がそこかしこに跋扈している
そこまで強くは無さそうだが、数が多い。敵地であまり目立つ行動は控えたい。怪物達が通り過ぎるのをひたすら待った。
――そして、怪物達の足音が一斉に止まった。
剣心(何だ……?)
見つかったのかと思い、警戒した時
『キャーーー!!』
少し離れた先で子ども達の悲鳴。足音が止まったのはあの怪物が他の侵入者に気づいたからだった。
剣心は神速で、悲鳴が聞こえた方へと飛ぶ。怪物の後ろから素早く奇襲をかけ、抜刀術で怪物を切り裂いた。
手応えで言えば生き物というより硬質化した何かを切り裂いたという感覚だ。
いたのは子ども達だけではない。
耀「剣心!?」
怪物が真っ二つに割れた先には子ども達と一緒に耀もいる。
?「お嬢ちゃん、お仲間かい……!?」
耀「うん!」
共にいた猫のような老齢の獣人に聞かれた耀は赤黒い怪物を素手で打ち砕きながら頷く。耀も以前共に戦ってペルセウス戦の時と比べて格段に強くなっていた。その証拠に赤黒い怪物、正式名称"冬獣夏草"十数匹を難なく倒している。
『きゃぁあ!!』
子ども達が逃げた方でまた新しい悲鳴が響く。待ち伏せをされていたのだ。
その事に気がついた耀は舌打ちをする。
剣心(悲鳴がしたということは最悪子ども達が……。)
耀は子どもを、剣心は老齢の獣人を抱えて大急ぎで子ども達の下へ飛んだ。
そこで見たのは、地獄の業火で焼かれる怪物達。
そしてその業火を操るのはいつもの陽気な道化声を上げる悪魔ジャック・オ・ランタン。
燃え上がる炎は怪物を燃やすだけに留まらず、城下町全てを燃やしつくさんとする勢いで広がる。彼による一方的な殲滅の光景がそこにあった。
これは拙いと耀は慌てて上空へと避難する。剣心は抜刀術の剣圧で炎を防ぐ。ジャックが子どもごと燃やし尽くすなんて非道な真似はする筈もないから、子どもについては心配いらないだろう。
耀「すごい……」
炎が鎮火した時には怪物の影も形も残っておらず、文字通り『骨も残らない』というやつだ。もし巻き込まれたらと思うと想像するだけで恐ろしい。
耀がゆっくりと降りてきたとき、ジャックとその頭に乗っているアーシャはようやく二人の存在に気づいた。
ジャック「おや?」
アーシャ「あ、何だお前らいたのか! もしかしてお前らも子ども達と一緒に捕まってたとか?」
耀「……違う。捕まった人達を助けに来ただけ」
剣心は抱えてた老齢の獣人をゆっくりと降ろす。
剣心「大丈夫ですか?」
ガロロ「わりィな坊主」
ジャック「何はともあれ、ここは危険です。他の参加者とも合流しましょう」
ジャックが指をパチンと鳴らすと、キャンドルスタンドとランタンをぶら提げた小さな人形、総勢15体が現れて、隠れていた子ども達を連れてくる。
全員無事なようで、耀もほっとした。
それから皆で今後の方針を話し合いをすることとなった。ジャックが敵を殲滅したからといって敵の本拠地と思しき場所で油断は禁物だ。
ジャック「お二人とも、ギフトカードはお持ちですか? 持っていたら出してください」
剣心「......わかった」
剣心は緋色のカードを、耀はパールエメラルドのカードをそれぞれ取り出した。その二枚とも奇妙な紋章が浮かんでいる。
耀「変な紋章が浮かんでる……?」
ジャック「これは"ペナルティ宣告"です。主催者側から提示されたペナルティ条件を満たしてしまった対象者には、招待状とギフトカードに主催者の旗印が刻まれるのです」
剣心は持っていた"契約書類ギアス・ロール"を広げる。
『ギフトゲーム名"SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"
*プレイヤー側ペナルティ条項
・ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。
・ペナルティは"串刺し刑" "磔刑" "焚刑"からランダムに選出。
・解除方法はゲームクリア及び中断された際にのみ適応。
※プレイヤーの死亡は解除条件に含まず、永続的にペナルティが課される』
剣心「ゲームマスターとはレティシアのはず? 俺はレティシアと戦っていないのだが……」
耀「私も、あの巨龍の鱗の魔獣と冬獣夏草くらいとしか戦ってない」
ジャック「ですが事実、我々はペナルティ条件を満たしてしまった。ならば考えられる可能性は一つでしょう」
耀はハッとした。
あの巨龍=レティシアだとしたら。その分身である魔獣と戦ってしまえばペナルティ条件を満たしてしまうのではないだろうか。
吸血鬼で有名なドラキュラとはルーマニア語で竜の子を意味する言葉。
ペストの時もそうであったことから、今回も何かの伝承に準えていると考えていいだろう。
剣心「なるほど、ではここにいる者は皆処刑と言う事か。」
ジャック「どちらにしろ"魔王ドラキュラ"を倒さない限り……十日後には、血の雨が降ることになるでしょう。伝説の如く、串刺し刑に処されてね」
ジャックのカボチャ頭の中で揺れる炎の瞳が、古城を囲む雷雲に移る。