☆伝説の人斬り(オリ主)が異世界から来るそうですよ? 作:モン太
巨龍を倒して一週間
戦いの傷跡はひどくて収穫祭はすぐに再開されることはなく、現在は復興作業をおこなっている。
耀「だ、大丈夫かな......」
剣心「......」
剣心は耀の肩を持ち、頷く。
それだけで、耀には十分だった。
耀がヘッドホンの件で十六夜にどうしても謝りたいと言ってたのだが、どうも一人で行くのに勇気が出ない為、剣心が付き添うことになった。
耀は勇気をふりしぼって、ドアをノックする。
耀「えっと……十六夜、起きてる?」
十六夜「ああ、耀か。鍵なら開いてるぞ」
ドアの隙間から顔を覗かせた耀は、緊張した面持ちで中に入ってきた。剣心はそれに続いて中に入る。
十六夜「……ヘッドホンの一件か」
耀は俯いたまま、十六夜の顔を見れない。助けを求める様に剣心に向かって視線を滑らせるが、剣心は壁にもたれかかり、腕を組んで、眼を閉じている。
剣心としては極力この問題は耀1人の力で解決すべきと考えている。
十六夜「それで?こんな夜分にどんな用件だ?」
耀は床の上に腰を下ろして正座している。
その表情は何時になく強張り、彼女がいかに緊張しているかが見て取れる。
耀「えっと……色々ゴタゴタして遅くなっちゃったけど。実は十六夜のヘッドホン、巨人族が襲いに来た時に壊れちゃって」
十六夜「おい、順序が違う。まずは持ち出した理由についてだぞ」
耀は、ヘッドホンを三毛猫が持ち出したこと、巨人族が収穫祭に襲撃に来たこと、その時にヘッドホンが宿舎の下敷きになったことを話した。
十六夜「………清々しいまでにタイミングが悪いな、春日部は」
耀「そ、そうかな?」
十六夜「ああ、普通はそこまで偶然が重なることはねえよ。そもそも今の話を聞いている限りじゃ耀に落ち度はないだろ」
耀「それは、違う。責任の所在は三毛猫の飼い主の私にある。この話を濁して終らせてしまうのはお互いの関係のために良くない。1つ屋根の下で暮らす者には、最低限の礼儀を尽くすべき」
十六夜「ま、元々たいしたもんじゃねえし……つうか、なんで謝るだけでこんなに遅くなったんだ?」
耀「それはその……用意とか決断に、色々手間取っちゃって。それにレティシアからあのヘッドホンは十六夜の家族が作った物だって聞いて」
剣心(......)
十六夜「いや、だからたいしたもんじゃねえって……というか、用意って何だ?」
耀「ヘッドホンの代わりのものを用意したんだけど、ちょっとした手違いで無くしちゃって……それを探してたら、いつの間にか1週間も経ってた。結局、代わりのものは何も用意できなかったんだけど……何時までも先延ばしにするのが失礼かなって。埋め合わせはこの収穫祭でやろうと思うんだけど………どうかな?」
小首を傾げて十六夜の反応を見る耀。
十六夜はというと呆れ半分、感心半分と言った表情をしてた。
十六夜「そこまで計画的に考えてきてるなら異論はない……けど、春日部ってそこまで律儀だったか?」
耀「うん、現在絶賛自己改革中。新しい私に乞う御期待」
ビシッと親指を立てて胸を張る耀に、何だそれは、と十六夜も哄笑を噛み殺した。
剣心(......無事、事なきを得たな)
耀「実はもう一つ用事があるの」
十六夜「ん?」
耀「飛鳥とも話してたんだけど、私達ってあまりにもお互いの事を知らなすぎる気がして。4人ともそういうこと話さないでしょ?」
小包を引っ張り寄せて広げれば、中には中には収穫祭で買ったと思われる山吹色の木の実と真っ赤な果実の盛り合わせ。
十六夜「そりゃまあ、まだ3ヶ月そこらの付き合いだからな。勝手知ったる仲とは言いがたいだろ」
耀「うん。そこで今晩は、親睦を深めようということでそろそろ飛鳥も来ると思うよ」
耀が口にした瞬間、扉がノックされる。
飛鳥「三人共、話は終わった?お茶を入れてきたから、一息つかない?」
十六夜「お嬢様、ナイスタイミングだ」
十六夜「鍵なら開いてるぜ」
飛鳥「そう。でも、お盆で両手が塞がってるから、開けてくれないかしら?」
「「嫌だッ!!!」」
飛鳥「そう。ありがと」
剣心「............」
剣心がドアを開ける
そこには青筋を浮かべた飛鳥が居た。
飛鳥「ありがとう、剣心。あと、十六夜くんと春日部さん」
そう言うと飛鳥は2人に視線を送る。十六夜は気にする様子が無いが、耀はやってしまったと固まってしまった。
大股で部屋に入り備え付けのテーブルにお盆を置き、椅子に腰を下ろす。
十六夜「お嬢様も来たことだし、第一回異邦人の親睦会を開催するか」
「「イエーイ」」
棒読みで喜ぶ女性陣に、呆れる十六夜。
十六夜「ま、人の部屋で勝手に開催するのはいいとして。俺に相談無しだったんだ、進行はそっちで頼むぜ」
飛鳥「もちろん。お題だってキチンと決めてきたわ」
耀「うん。親睦会第一回のお題は、自分の世界の生活観で行こうと思う。」
十六夜「へぇ〜」
思っていたより、実のありそうなお題に十六夜の目に好奇心の火が灯った。
十六夜「想像とは違ったお題だな。お嬢様や春日部がそういうSFチックな話題を振ってくるとは思わなかった」
飛鳥「そうかしら?自分の生きた時代と別の時代の人間と話し合うなんて、なかなかに素敵だと思うわ」
耀「私はそういう会話にはあんまり興味ないな………でも2人を見た感じ、私が一番未来から来てるみたいだし、話題は提供できるし…十六夜や飛鳥や剣心から直接話を聞くのも面白そうだし」
十六夜「それじゃあ、時代順に剣心からだ」
剣心「........」
耀「剣心?」
剣心は一瞬考え込む様な表情を見せたが、耀に声をかけられすぐに話しだす。
剣心「俺が幕末で何をしていたかは、史実や俺が言ってた通りだ。故に今回は、俺の幼少の話をしようと思う。」
耀「楽しみ」
耀が期待の眼差しを向ける
剣心「俺には剣術の師匠がいた。名を比古清十郎と言う。」
剣心は彼が、酒好きだった事やよく喧嘩した事、よくこき使われた事など思い出を普段見せない穏やかな表情で話す。
十六夜や飛鳥は、普段無口な剣心が此処まで、ましてや愚痴を零した事に驚き、耀は愚痴を零しつつもどこか楽しそうに話す剣心にどこか羨ましく思っていた。
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…………………………
…………………………………
十六夜「それで、剣心の師匠は剣心よりも強いのか?」
剣心「.......ああ。今でも手加減されても勝てるとはとても思えないな。」
飛鳥「ど、どんな化け物なのその人」
十六夜「そりゃあ、いいな。いつか戦ってみたいぜ!」
飛鳥は信じられないといった様子。十六夜は闘志を剥き出しに勇猛に笑う。今までめまぐるしい活躍をした剣心が勝てないと断言する人物。一体どんな猛者なのか。耀はその発言を聞いてある決意をする。
しかし、剣心の顔は先程より少し暗くなっていた。
耀「剣心?」
剣心「なんでもない。」
十六夜「師匠の命を取るのは許さないってか?安心しろ、冗談だよ。半分は」
そんな事を言う十六夜だが、剣心は別の事を考えていた。
剣心(師匠はもう、俺がこの手で......)
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飛鳥の話としては飛鳥の家、久遠家は日本でも五本の指に入るぐらいの規模を持った財閥だそうだ。
そのことに十六夜が何か気になったらしいがそれ以上何も聞かなかった。
十六夜の話では“アンダーウッド”並の絶景を話した。
どちらも剣心には未来の事で興味は尽きなかった。
十六夜の話は特に、日本人が平和に暮らしていることだけでなく、人々が更に前に進んでいた事に喜びを感じていた。
十六夜「最後はとうとう、自称未来人・春日部の番だが」
飛鳥「そうね、でも随分と時間が遅くなってしまったわね」
耀「うん、明日も早いし今日は切り上げようか」
十六夜「それじゃあ、最後の締めとして春日部は別のお題……そうだな〝春日部の時代の流行品〟なんてどうだ?」
耀「………流行?服とかそういうの?」
十六夜「別になんでもいいが…できれば面白いのか未来人だと思えるようなのを頼む」
腕を組み耀は暫し考える。
耀「それじゃあ……私の時代の、流行のヘッドフォンを紹介します」
十六夜「は?」
耀「私の時代には――――ウサ耳ヘッドフォンが、世界的に流行ります。」
耀がひょコン!と両手でウサ耳のモノマネをする。
十六夜と飛鳥は2人して瞳を丸くした後―――弾けるような高笑いを上げて、その場で笑い転げた。
あの献身的な黒ウサギのシルエットが世界中にあることを想像して。
そして、そんなヘッドフォンが世界的に流行るような世界はもう…この上なく平和なのは確実だ。
そんな皮肉と称賛を込めた爆笑は…当分の間止まらなかった。
剣心(.......ああ、日本は本当平和になったのだな。俺達の戦いは無駄ではなかった。平和な世の中を次の時代の者に贈る事が出来たのだから)
剣心は晴れやかな表情で微笑み、一筋の涙を流した。
耀「剣心?どうしたの?」
涙を流していた剣心に耀が心配そうに声をかける。
剣心「なんでもない」
剣心は耀の頭に手を当て、優しく撫でる
耀は眼を開いて驚きが、すぐに顔を赤くして微笑む。
剣心はそのまま窓に向かって歩く。
手を離された耀はどこか寂しそうであったが、ニヤニヤしている2人に気付き、顔を赤くして睨む。
剣心は窓から見える月を眺める。
剣心(なら、俺が今できる事はこの平和を守っていく事)
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十六夜の部屋を後にした剣心は自分の部屋へ向かっていた。その背後から声がかかる。
耀「あの......剣心」
剣心「なんだ?」
耀「ちょっと、相談したい事があるんだけど」
先程の十六夜の謝罪同様、どこか話しにくそうに剣心に声をかける
耀「私に飛天御剣流を教えてください」
耀は剣心に頭を下げる。
しばらくの間、沈黙が支配する。
剣心「駄目だ。」
耀は優しい剣心に断れるとは思っていなかったため驚く。
剣心「耀は耀の"道"で強くなればいい。耀が自分の無力に苦しんでいるのは知っている。だが、生命の目録は父親からの贈り物であろう?ならば、それを信じて強くなればいい。」
耀「でも、じゃあ十六夜や飛鳥ならいいの?」
耀は今度は剣心に捲したてる。
剣心「もとより 誰にも継がせるるもりはない 御剣流は俺で終わりだ」
剣心「俺の飛天御剣流は殺人剣だ。時代の苦難から弱き人を守るのが御剣流の理。平和な世の中に生まれてきてくれた耀には必要のないもの」
耀「........剣心」
剣心「なまじ、力など持つと余計なものまで背負うことになり、一生苦しむことになる。十六夜がいい例だ。あいつは皆を守る事に固執している。一種の脅迫観念の様な物だ。」
剣心「話は終わりだ」
剣心は自室に帰ろうとする。
耀「色々な物を背負ってるのは、剣心も同じじゃないの?」
剣心「....................」
剣心は歩みを止めようとはしない。
耀「なら、私にも背負わせて欲しい。」
剣心(!?)
剣心は再び立ち止まる
剣心「気持ちだけは感謝する。だが、まずは自分の力を信じるところから始めることだ。生命の目録を信じて進めばいい。いずれ俺も超え、誰にも負けない力になる。」
剣心はそのまま部屋へと帰って行った。その後ろ姿を見つめる耀
耀「いつか、必ず.....」