☆伝説の人斬り(オリ主)が異世界から来るそうですよ? 作:モン太
?「……アカンわ。加減間違えてしもた」
眼帯の男は気を失っているグリフィスを見て『やってしまった』といったふうな困った顔で立っている。
あの二人の喧嘩に割って入るなどと台風に突っ込むに等しい事だというのに目の前の男はそれをさも当然。おまけにグリフィスに気を取られていたとはいえ耀は優れた直感の持ち主だ。それに気づかない程の早さ、この男が只者ではないことを物語っている。
?「あー、そこの……長い髪の君」
剣心「......」
眼帯の男は剣心に目を止めると彼を指名した。
?「君、彼女と同じコミュニティやろ? 一緒におったし」
剣心「ああ」
?「せやったらその顔真っ赤にしてる子、君に任せてもええか? 念のため医者にでも見せてやり。ほらお前らもや」
遠巻きに見ていた"ニ翼"の連中にも声をかける。グリフィスの取り巻き達は気絶しているグリフィスや耀が吹き飛ばした者達を担ぎ上げて次々に運んでいく。
剣心「……あなたは一体」
?「僕はこの喧嘩の仲裁に来ただけや。これ以上のことはせんから安心し。」
男はすぐさま目の届かない場所まで行ってしまう。
この場に留まっていても仕方ない。いつの間にか、気絶してしまった耀を医務室へ運ばなければと剣心は歩いていく。
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検査して貰ったところ、特に目立った外傷も無く、その内起きるだろうという診断結果が出た。
その言葉に嘘偽りは無く、耀は現在泊まっている貴賓室のベッドの上で目を覚ます。
耀「んぅ……ここは?」
『気が付いたかお嬢!』
前回の戦いで怪我をした三毛猫はアンダーウッドで療養していたが、耀が倒れたと聞いて腹に包帯を巻いたまま駆けつけてくれた。
耀「剣心……っ!?」
しかし、彼はここにいない。
耀「私は……負けたの?」
『いや? 喧嘩やったら眼帯の男が相手を伸して納まったみたいやで?坊主はその時、お嬢が殴れるのを阻止してくれたから大丈夫なはずや。』
三毛猫は剣心に聞いたことをそのまま耀へと伝えた。
耀「それで、剣心は?」
『坊主なら眼帯の男を捜しに行ったで。安心し、きっと敵を撃ってくれる』
耀「……多分違うと思う」
耀の目が覚めた頃、その一方で剣心は眼帯の男を探してる訳ではなかった。ただ、歩き回っていただけである。しかし、ただ歩き回る訳では無く、時々立ち止まっては、地面や建物の壁に手をかざしていた。
白夜叉「――というわけでッ! 収穫祭のメインゲーム・"ヒッポカンプの騎手"の水馬貸し出しはッ!!! 全員水着の着用を義務とするッ!!! 当然男女問わずゥゥゥゥゥ!!!!」
剣心「......」
歩き回っている最中にもの凄いものを発見してしまった。壇上の上で暴走しているのは大人の姿となった白夜叉。先程も思ったことだが、中身が全く変わっていない。そして観客席の人達は既にアルコールが回って出来上がっている。
白夜叉「女性用水着は幼児用のスクール水着からマイクロビキニまでありとあらゆる水着全数百種類を取り揃えたッ!!!!」
「ヒャッッッホォォォオオオォオウィ!!!」
白夜叉「そしてぇぇぇぇ!!! なんと専属審判の黒ウサギはァァァァ!!! 審判中は常時セクシー黒ビキニ着用だあああああああああ!!!」
「オールハイール白夜叉ッ!! オールハイール"サウザンドアイズ"ッ!!!」
白夜叉「フハハハハハハ!!! 諸人よ、我を崇めよ! 我を称えよ! 神仏よ、我を恐れ敬うがいい!! 我こそは沈まぬ太陽の具現にして遥かなる地平の支配者ッ!!! "白き夜の魔王"・白夜王也ィィィィィィ!!!」
剣心はこの惨状に唖然とするばかりであった。
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白夜叉「おお!剣心!いいところに来た!」
白夜叉の悪ふざけという名のオンステージが終わった後、歩き回ってた剣心を白夜叉が呼び止める。
剣心「何用でしょうか?白夜叉殿」
白夜叉「これから、一杯やろうかと思うてな。どうじゃ、おんしも酒を飲み交わそうではないか。着いて来い。」
剣心は白夜叉に言われるがまま、その後ろについていった。日が沈み、空には三日月が淡い光を放ってこのアンダーウッドを照らしている。
二人の足音と夜風の音が聞こえる。
白夜叉「そういえば、この姿……どうだ? 私の白夜王としての姿は」
剣心「......とてもお似合いですよ。」
急な白夜叉の問いかけに剣心は戸惑った。見た目は一級品の美女ではあるものの、中身はおっさんという概念が出来上がっていて、素直に彼女が美人だとは思えない。
言うなれば残念美人。
?「なんや、随分懐かしい御方の登場やね。それに後ろのは昼間の子?」
白夜叉「おっと。おんしと会うのは久しいな、蛟劉」
二人が辿り着いたのは大樹の天辺。そこで眼帯の男は杯を煽っている。白夜叉は蛟劉と呼んだ男に無遠慮に近づくと、断りもなく座り込んで虚空から酒瓶を取り出して、自らで酌をしてそれを飲んだ。
白夜叉「まったく、何処ほっつき歩いてるかと思えば」
蛟劉「あれ? 僕のこと探してたん?」
蛟劉の白々しい物言いに白夜叉は睨みつける。失せ物の探索にはうってつけである"ラプラスの小悪魔"が無ければ場所の特定すら困難だっただろう。
世間話もそこそこに、蛟劉は白夜叉に"平天大聖"の封蝋がしてある封筒を白夜叉へと手渡した。
白夜叉「何の手紙だ?」
蛟劉「例の"階層支配者"襲撃事件について。北を襲った魔王とその主犯格らしい連中。それと最近妙な連中がちょいちょい見られることについてや」
白夜叉は顔を強張らせた。彼女が今一番欲しかった情報だ。牛魔王は情報を奪われる可能性を考慮して信頼できる義弟にこの封筒を託したのだろう。
そして剣心にとっては『妙な力』というのに引っかかった。
剣心「......妙な連中とは」
蛟劉「それは僕もようわからん。なんか、ここ数ヶ月急に箱庭に二桁から四桁の魔王級の者が現れては、そのどれもが七桁に向かって集まって来ているらしい。ただ、どれもあんまり暴れたりせえへんから、害は少ないんやけどな。それにもうほとんど、滅ぼされて数が減ったしね。」
蛟劉は背筋を伸ばして肩を回す動作をした。
蛟劉「やーっと終わった。百年ぶりに会ったと思ったら手紙の遣いやで? ありえへんやろ?」
白夜叉「仕方あるまい。この封書の中が真実であるなら連中に襲撃される危険もあった。だからこそ、信頼出来るおんしに任せたのだろうよ」
しかし、これが偶然だと白夜叉は思えない。前回の戦いで"階層支配者"を解任された彼女はその後任を欲しがっていた。そこに現れたのが蛟劉。これが唯の偶然で済ませられる筈が無い。
白夜叉「今はどこぞでコミュニティの長をしておるのか?」
蛟劉「はっ、まさか。柄じゃないの知ってるやろ? このチンケな"覆海大聖"の旗下は一人しか入れんよ」
蛟劉は笑っていたが、その目あったのは強い拒絶であった。"ノーネーム"がそうであったように蛟劉もまた戦いで多くの仲間を失った。失って失って、そして戦うことに疲れてしまった。
――そうして彼は"覆海大聖"から"枯れ木の流木"になった。
剣心「蛟劉さん、あなたは今飲んでいる酒は美味いですか?」
蛟劉「?いきなりなんや?」
剣心「俺の師の言葉です。『春には夜桜 夏には星 秋に満月 冬には雪
それで十分 酒は美味い
それでも不味いんなら それは自分自身
の何かが病んでいる証だ』」
剣心「今、あなたは酒が美味いですか?あなたはそうやって酒を煽っているが、とても美味そうには見えない」
剣心の言葉に何も返せない蛟劉
白夜叉「……蛟魔王よ。もう1つ話しがある」
白夜叉は腑抜けてしまった彼を今一度奮い立たせようととある提案をした。頼みを聞いてくれたら彼の義姉である斉天大聖――孫悟空に会わせてやっても良いと言うのだ。
蛟劉「……なんやと?」
蛟劉はその話に喰いついた。彼にとってそれだけ孫悟空の存在は大きいのだ。
白夜叉の出した条件は二つ。
1、サラ=ドルトレイクが"階層支配者"になれるように手を貸すこと。
2、"ヒッポカンプの騎手"で優勝すること。
蛟劉「……ええんか? 僕が出たらゲームそのものが滅茶苦茶になるで?」
蛟劉も自分が乗せられていることに気が付いていないわけではない。それを知った上であえてその話に乗った。
白夜叉「さて、それはどうかな? 私はむしろおんしが優勝する確率のほうが低く思えるがの」
蛟劉「それはそこにいる君のお気に入りのことを言ってるん?」
白夜叉「さあ、それだけどは限らんぞ?」
蛟劉はその隻眼で白夜叉を睨んだ。
白夜叉「私の話は終わりだ」
蛟劉(孫悟空に会える)
いつも味気ない酒だと思っていた蛟劉だったが、少しばかり美味いと思った。