☆伝説の人斬り(オリ主)が異世界から来るそうですよ?   作:モン太

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レースの行方

海樹の園の海岸沿い。

 

ここまで辿り着いたのはサポートの十六夜を除けば、飛鳥、耀、剣心、フェイス・レス、そして怒号の追い上げを見せた蛟劉であった。その中でも蛟劉は別格の空気を纏っている。皆が一番警戒しているのはこの男だろう。

 

十六夜「聞け、春日部にお嬢様。あいつはまだ果実を手に入れてない。俺が足止めしておくから先に行け」

 

飛鳥「ここは剣心と一緒に足止めするべきじゃないかしら?」

 

蛟劉は元とはいえ魔王。いくら十六夜が規格外とはいえ容易く勝てる相手ではない。事実十六夜は『倒す』ではなく『足止め』と彼にしては珍しく弱気な姿勢を見せているのだ。

 

十六夜「それはお前一人であの手強い騎士様を相手にするってことだぜ? 俺が蛟劉を、剣心が騎士様を足止めする。悪く思うなよお嬢様。これが一番確実なんだよ」

 

もし十六夜が蛟劉に挑めば、場の均衡は崩れる。それを見逃すフェイス・レスではあるまい。傍から見れば危険から遠ざけるように思えるだろう。しかしそれと同時に、飛鳥は二人が切り開く道を進んで逸早くゴールするという責任重大な役目を背負うのだ。 

 

考え方によっては一番オイシイ役回りなのかもしれない。

 

蛟劉「お~い、作戦会議かどうかは知らへんけど、時間掛けすぎやで?」

 

蛟劉の突然の物言いに合わせたような地響き、否、これは準備が整ってしまった彼からの警告だった。彼の右手が掲げられると地響きはより一層強まって巨大な津波を起こした。

 

十六夜「二人とも早く行け! このままじゃ失格だぞ!」

 

ルール上、馬から離れること自体は反則ではないが、水に沈んでしまえばその時点で失格となる。三名と同じく窮地を悟ったフェイス・レスは一目散に滝へと駆け出した。

 

飛鳥「もうどうにでもなれーーーー!!」

 

飛鳥も半ばやけくそになりながら、三名は滝を跳び下りた。その後ろでは樹海が津波によって飲み込まれていく。

 

フェイス・レス「はぁぁぁぁぁ!!」

 

フェイス・レスは二本の剛槍を振り下ろすことで落下の衝撃を相殺した。飛鳥は自分の持てる力全てを最大限にまで生かすことで水面をまるでトランポリンに着地したかのように『垂直』に跳んだ。耀はグリフォンのギフトで着地に衝撃をやわらげる。

 

剣心「耀。俺は先に行く。途中で決して止まるな」

 

耀「うん、わかった。」

 

剣心は神速でフェイス・レスを追う。

飛鳥の横を弾丸の速度で駆け抜けていく。

 

飛鳥(な、なんて速さなの!?)

 

剣心(見つけた。)

 

フェイス・レスを捕捉するまでそれ程時間はかからなかった。彼女の騎馬は優れているが、剣心の神速と比べれば天と地ほどの差がある。

 

剣心が更に距離を縮めようとした刹那、剣閃が彼を襲う。

 

剣心はそれを難なく弾く

 

フェイス・レス「クッ!」

 

剣心「手筈通り俺がフェイス・レスを押さえ込む。飛鳥は先に行っててくれ」

 

飛鳥「分かってるわ。そっちこそ『負けるんじゃないわよ』」

 

剣心はフェイス・レスへ、飛鳥と耀はゴールへ向けてそれぞれ動き出す。飛鳥の去り際の一言は剣心へのブーストとなる

 

フェイス・レス「……やはり貴方をどうにかしなければ先へは進めないようですね。」

 

剣心「卍解 吭景・千本桜景義」

 

剣心とフェイス・レスを億の刃で包み込む。

 

フェイス・レスは千本桜に剣を振るうが、簡単に弾かれてしまう。

 

剣心「あなたはこれから、2人が走り終えるまで、俺と共にこの刃の牢獄に入ってもらいます。」

 

フェイス・レスの手に現れたのは、ヨーロッパで騎馬兵が用いた突撃槍と円形の盾。その身に纏う純白の鎧と合わせれば、これぞ正しく馬上の騎士と言える姿だろう。

 

先に仕掛けたのはフェイス・レスだった。

 

フェイス・レス「ハァ!!」

 

馬による突進、その速度に突撃槍の突きを乗せて放つ。

 

剣心はそれを神速で避ける。

 

剣心「速いな」

 

フェイス・レス「まさか……私が今まで100%の力量で戦っていたとお思いでしたか?ですが、あなたに言われると嫌味にしか聞こえませんね。」

 

今まで、彼女のやった攻撃は服だけを器用に切り裂いて参加者達を競技続行不能にしていただけ。手を抜いていた訳ではなくても、相手を殺さないように力をセーブしていたのだろうか。

 

フェイス・レスは槍による攻撃を剣心に浴びせ続けるが、全ていなされてしまう。

 

フェイス・レス「……してやられましたね」

 

黒ウサギ『ゴォォォォォォルッ!! "ヒッポカンプの騎手"の優勝は"ノーネーム"の久遠飛鳥選手デス!!』

 

ここからでも分かる黒ウサギのゴール宣言。そしてゴールした飛鳥を祝福する喝采。それと同時に彼女を取り囲む億の刃の壁も消え去った。

 

フェイス・レス「仕方ありませんね」

 

フェイス・レスは口元を微笑ませ剣心を見るが、その姿はすでに無かった。

フェイス・レスは冷汗を流す。

 

フェイス・レス(彼は本当に人間なのでしょうか? 何か別の、それこそ神に近い様な気配がしますね)

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

"ヒッポカンプの騎手"の激闘を制した飛鳥の授与式が行われた後、"アンダーウッド"では連日夜遅くまで宴が続いていた。十六夜の傷も癒えて宴を楽しんでいる。耀は相変わらず食べ歩きを続けて、飛鳥は民芸品を見て歩き、黒ウサギやレティシアは子ども達にとお土産のお菓子をどれにするか悩んでいる。

 

剣心「まだ食べるのか?」

 

耀「うん、だってまだ腹四分目くらいだから」

 

耀の片手にはシシカバブのように大きな串焼きに焼きトウモロコシ。逆の手にはぺリュドン焼き20個入りのケース。そして両手首に吊るされている袋には他の屋台で買った食べ物が数個入っている。既に大分食べているというのにまだ食べる辺り彼女の底が知れない。

 

耀「剣心、あれ見て! あっちでギフトゲームやってる!」

 

屋台の直ぐ横にはこんな紙が張ってあった。

 

『ギフトゲーム―型を抜きし者―

 

 ・参加資格

  ・参加料 銅貨5枚

 

 ・勝利条件

  ・型を割らずに上手にくり抜く事(屋台主が公正な判断を下す)

 

 ・敗北条件

  ・型を割ってしまうこと

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します

                               

                                  "屋台の親父"印』

 

この屋台は昨今では珍しい型抜き屋だった。台の上では子どもだけでなく老若男女がこぞって爪楊枝を使って型をくり抜いている。

 

白夜叉「くっ……このっ、中々難しいの……」

 

蛟劉「フンフーン♪」

 

剣心「......」

 

白夜叉「ぬぁぁァァしまったァァァ!」

 

白夜叉が削っていた"一本角"の旗印のマークが力の加減を間違えたのか割れてしまったんだ。それに対して蛟劉は未だに"四本足"の旗印のマークを削り続けている。

 

白夜叉「おい親父! もう一回だ!」

 

蛟劉「白夜王、もう諦めたらどうや? これで25回目やで?」

 

白夜叉「いーや! 今日は勝つまで続けるぞ! 何が何でもあの黒ウサギ10分の1スケールのフィギュアを……」

 

白夜叉は既に泥沼に嵌まってしまっている。蛟劉が止めても彼女は懐のがま口から銅貨を5枚取り出した。たかが銅貨5枚と侮っていればいつの間にか持ってきた小遣いを使い果たしている。それが祭りの屋台が持つ恐ろしい魔力なのだ。

 

それと何やら不穏当な単語が聞こえた気がするが、剣心と耀は聞かなかったことにしてその場をゆっくりと立ち去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

最終日に行われたサラの階層支配者就任式では流石に一度中断されて荘厳な空気に包まれている。龍角を折ったことで失われた力も、白夜叉から賜った"鷲龍の角"があれば問題ないだろう。

 

そして"ニ翼"の長であるグリフィスはというと、サラが階層支配者に就任すると決まるとコミュニティを去って行った。流石に階層支配者の候補者を侮辱しておいて、その挙句ゲームで負けたのだ。その後も連盟に居続けられるほど豪胆な性格はしていなかったのだろう。

 

剣心「無事、事が終わって何よりだ」

 

十六夜「俺としちゃ不完全燃焼甚だしいんだがな」

 

就任式を斑梨のジュースを飲みながら剣心と十六夜は喋っている。実際、十六夜と蛟劉の戦いは十六夜の勝ちではあったが、それはあくまで蛟劉がレースを辞退したからだ。蛟劉に決定打を与えていない十六夜からすれば不満でも無理は無い。しかし、それと同時にいつか来るであろう蛟劉との真剣勝負はこの箱庭での一つの楽しみとなった。

 

剣心「だが、フェイス・レス殿や蛟劉さんが勝ってもサラ殿が階層支配者になれてたがな」

 

十六夜「分かってねえな。そんなチンケな理由・・・・・・で俺達が勝ちを譲るわけないだろうが」

 

それもそうかと剣心は納得した。問題児三名にそんな殊勝な考えの持ち主などいるわけが無い。

 

黒ウサギ「お疲れ様ですサラ様」

 

"ノーネーム"崩壊からずっとコミュニティを守り続けている黒ウサギには復興を成し遂げたサラは強い励みとなった。きっと旗印を取り戻して散り散りになった仲間達を連れ戻してみせる。そう、改めて心に誓いながら天高く上がった炎を眺めている。

 

リリ「あの、黒ウサギお姉ちゃん」

 

黒ウサギ「どうしたのですか?」

 

リリを中心とした年長組は今がそのタイミングだと黒ウサギに走り寄ってきた。黒ウサギはリリ達が神妙な顔をしていることに頭を捻る。

 

リリは頭に生えている狐耳を赤くしながら抱きしめていた小袋を黒ウサギへと差し出した。

 

リリ「黒ウサギお姉ちゃんにプレゼントです。いつもお世話になってるから、十六夜さん、剣心さん、飛鳥さん、耀さん、ジン君、それに私達皆で選びました」

 

黒ウサギ「わ、私にですか!?」

 

耳をピンと逆立たせて驚く黒ウサギ。問題児達+αを見るとそれぞれが別方向に、剣心だけその三人を見て珍しく微笑ましそうにしていた。

 

十六夜「……ま、こんな面白くて楽しい素敵な場所に招待してくれたからな」

 

飛鳥「連盟も組んで、一つの節目ができたわけだし」

 

剣心「ああ、感謝している、黒ウサギ」

  

耀「これからもよろしくね」

 

十六夜と飛鳥は照れ臭そうに、そして剣心と耀はにこやかに、黒ウサギへと感謝の言葉を送った。その不器用ながらも温かな心遣いに黒ウサギは思わず涙を流す。

 

黒ウサギ「あ、ありがとう……ございます。とても大切にするのですよ………!」

 

黒ウサギはそう言って袋を開けようとすると、問題児三名は慌ててそれを遮って彼女を広場へと連れて走り出した。

 

十六夜「プレゼントの確認なんて後でいいだろ!」

 

飛鳥「今夜は収穫祭の最終日なのよ!? 遊ばないでどうするの!?」

 

耀「さあ、行こう!」

 

黒ウサギ「え、ちょ、ちょっと待ってください!」

 

プレゼントをリリに預けて広場に出る四人。それを剣心とリリは優しい目で眺めていた。

 

僅かに開いた小袋の中に、実はプレゼントとは別に手紙が入っている。

 

宛名にはこう書いてある。

 

 『親愛なる同士・黒ウサギへ』と。

 

剣心「皆、もう少し素直ならいいものを」

 

リリ「ふふっ、そうですね。」

  

剣心「俺達も行こうか」

 

リリ「はい!」

 

剣心は年長組を連れて四人の後を笑顔で追いかけるのだった。こんな笑いに満ちた日々がもっと長く続けば良い、そんな優しいことを思いながら。

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