☆伝説の人斬り(オリ主)が異世界から来るそうですよ? 作:モン太
白夜叉の店を後にして本拠地に向かったノーネーム一行。彼等を待ち受けていた光景は想像を遥かに絶するものだった。
それは一言で言うのなら廃墟。木造の建物らしきもの・・・・・は見る影もない。剣心は残骸を手にしてみるもそれは簡単に音を立てて崩れ去る。
黒ウサギは"魔王"に負けたのは三年前と言っていた。つまりこの何百年も放置されて風化したような町はたった三年前に引き起こされた現象なのだ。
剣心「.......」
黒ウサギ「……魔王とのゲームはそれほどの未知の戦いだったのでございます。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊ぶ心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ……コミュニティから、箱庭から去って行きました」
飛鳥や耀はこの光景を見てとても複雑そうな顔をしている。しかし十六夜はこの状況を逆に楽しんでいた。
皆はそれぞれの思いを胸に決意を新たにするのだった。
落ち着いた後に4人は黒ウサギを追いかけて廃墟を抜けて徐々に外観が整った家が立ち並ぶ場所に出てきた。そしてそのまま居住区を素通りし、十六夜がギフトゲームで勝利した戦利品である水樹の苗を設置する為に貯水池に来ていた。そこでは既に、リーダーであるジンとコミュニティの子供達が水路を掃除していた。すると、子供達の中の一人が黒ウサギに気付く。
「あ! 黒ウサのねーちゃんお帰り!」
「ホントだ!」
「お帰りー!」
その声に、子供達はワイワイと騒ぎながら黒ウサギの元に群がる。
「眠たいけどお掃除頑張ったよ!」
「ねえねえ、新しい人達ってどんな人!?」
「強い!? カッコイイ!?」
「Yes! とても強くて可愛い人達ですよ! では皆に紹介するから一例に並んで下さいね」
そこで黒ウサギがパチン、と指を鳴らすと、子供達は一糸乱れぬ動きで横一列に並ぶ。コミュニティに居る子供達の数は全員で一二○人。その内、約六分の一である二○人前後がこの場に居た。その中には人間だけで無く、猫耳や狐耳の恐らく獣人であろう少年少女も居た。
十六夜(おお、マジでガキばっかだな。半数は人間以外のガキって所か?)
飛鳥(じ、実際に目の当たりにすると想像以上ね。これで六分の一ですって?)
耀(……むぅ。私、子供嫌いなのに大丈夫かなぁ……)
問題児達は三者三様の感想を心中に呟く。コミュニティの一員になる以上、彼等と共に生活しなければならないのだ。子供嫌いだろうが何だろうが、それは個人の問題だ。早々に改善するのが筋と言うものだ。しかし、1人だけは違う考えてでいた。
剣心(まさかここまで追い詰められてるとは。黒ウサギ殿やジンさんは、一体どれほどの苦労を)
剣心は黒ウサギ達の苦労を心中で察する。
剣心(しかし、この子供達の眼には絶望の色は無い。むしろ、明日への希望を宿している。この子供達は、このコミュニティの次の時代を担っていく、新時代の申し子。生きる意志は、何よりも....何よりも.....強い。)
子供達の眼を見て、剣心は頼もしくあると同時にこれから先、将来が楽しみになっていた。
剣心(俺の剣でこの苦しんでいる人達を護れるのなら、俺は.....)
剣心は子供達にこのコミュニティの希望を夢見る。剣心は次の世代のためにも、1人このコミュニティに協力する事を改めて決意した。
剣心(巴。俺はまた、前に進みだせる様だよ)
まだ、子供達が騒いでいたが、黒ウサギがコホン、と咳払いし彼等四人を紹介する。
黒ウサギ「右から逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、緋村剣心さんです。皆も知っている通り、コミュニティを支えるギフトプレイヤーです。ギフトゲームに参加出来ない者達はギフトプレイヤーの私生活を支え、励まし、時に彼等の為に身を粉にして尽くさねばなりません」
飛鳥「あら、そんなのは別に良いわよ? もっとフランクにしてくれても」
黒ウサギ「駄目です。それでは組織は成り立ちません」
そこまでの気遣いは無用だと飛鳥が申し出るが、それを黒ウサギが厳しい声音で断じる。今日一日で一番真剣なのかも知れない。
黒ウサギ「コミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加し、彼等の齎す恩恵で初めて生活が成り立つのでございます。これは箱庭の世界で生きて行く以上、避ける事が出来ない掟なのです。子供の内から甘やかせばこの子達の将来の為になりません。子供達もそれを重々承知していますから」
飛鳥「……そう、分かったわ」
やはり、コミュニティが崩壊して以降、今日までの三年間たった一人で支えて来たものが言わせるのだろう。このコミュニティで余裕と言える余裕など無かったのだから、必然的にこのコミュニティのルールもそうなったのだろう。
そしてプレイヤーに課せられた責任は、想像を超える重さだと言う事だ。
黒ウサギ「此処にいるのは子供達の年長組です。ゲームには出られないものの、見ての通り獣のギフトを持っている子もおりますから、何か用事を言いつける時はこの子達を使って下さいな。皆も、それでいいですね?」
「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」
黒ウサギの言葉に子供達は耳鳴りがする程の大声で返事をする。その元気良さが伺える大声の返事に、四人は音波兵器を受けた感覚がしたのだった。
十六夜「ヤハハ、元気が良いじゃねえか」
飛鳥「え、ええ。そうね」
耀(……うぅ、本当にやって行けるかなぁ、私)
剣心「ああ」
剣心は声は無機質なものだが、顔は自然と微笑んでいた。気が付いた者は居なかったが。
黒ウサギ「さて、自己紹介も終わりましたし!それでは水樹を植えましょう!黒ウサギが台座に根を張らせるので、十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」
十六夜「あいよ」
十六夜はギフトカードから水樹の苗を取り出して黒ウサギへと渡す。
ここの貯水池も昔はギフトのお陰で水で満たされていたらしいが、そのギフトさえも"魔王"に取り上げられてしまい長い間使われていなかったそうだ。
水樹の苗が手に入ったことで子ども達が掃除をしてくれていたらしくすぐにでも使えるようになるだろう。
黒ウサギ「では、行きますよー♪」
黒ウサギが貯水池の中心にある柱に苗を置くと、そこから大量の水が溢れ出した。水は激流となり、瞬く間に貯水池を、そこから伸びる水路を満たしていく。
十六夜がもたらした水樹が、"ノーネーム"の新たな水源となった瞬間であった。
耀「これが水樹の力……!」
飛鳥「凄い……!」
十六夜「へぇ、大したもんだ」
全く水気のなかった水路や貯水池があっという間に水で一杯になる様子は見ていて壮観だ。これで水を態々ギフトゲームで獲得する手間も省けて他のことに余力を回すことができるだろうとジンも喜んでいた。
剣心「黒ウサギ殿」
黒ウサギ「はい。どうしましたか?」
剣心「今日1日この世界を見てきました。少ない時間ではありましが、ここでは、目の醒める様な事の連続でした。しかし、この世界でも虐げられ、苦しんでいる人々がいる。俺の剣で皆を護れるのなら。」
剣心「俺はこんなんだから、いつまで続くかわからないけど、それでもいいならよろしく頼みます。」
剣心が微笑む
黒ウサギ「はい!こちらこそよろしくお願いします!」/////
飛鳥&耀(ふ、不意打ち////)
十六夜(へ〜、あいつもちゃんと笑えるじゃねーか)
十六夜「剣心!俺達も忘れてもらっちゃ困るぜ!」
飛鳥「よろしくね」
耀「よろしく」
剣心「ああ、皆もよろしくお願いします」
十六夜「あ、あと、敬語はいいぞ。お前の敬語何だか、変だし。」
飛鳥「剣心ってあんまり、学なさそうよね。
剣心「人斬りに学問はいらん」
耀「言い訳見苦しい」
なかなか失礼な事を言う十六夜達だが、剣心にとっては十六夜達の気遣いが嬉しかった。
黒ウサギ「それでは苗の紐を解いて根を張りますので、十六夜さんは屋敷への水門を開けて下さい!」
十六夜「あいよー」
そして、
十六夜「ちょ、オイ! 少しはマテやゴラァ!! 流石に今日はこれ以上濡れたくねぇぞ!」
黒ウサギ「うわお! この子は想像以上に元気ですね♪」
「あははは! 十六夜のにーちゃんびしょ濡れだー!」
「びっしょびしょだー!」
「あははは!」
問題児たちが起こす騒動にも、無関心な剣心だが、今はこの風景がかけがえのないものに映った。
〜〜〜〜〜
子ども達も寝静まり剣心も今日あった事を振り返ろうと腰を下ろそうとしたとき
剣心「.......」
剣心(まったく、子供ばかりの屋敷を覗いてくる不貞な輩がいるとは。さしずめ、昼のあの外道の手先の者か)
剣心はギフトカードから、白のローブと鬼の模様の仮面を身に着ける。そして、龍の眼を発動する。ゆっくりと開いた双眼は、蒼ではなく黄金に輝いている。
剣心(なるほど、こんな力もあるのか)
剣心が1人納得する。あの闘いで能力は全て判明したと思っていたが、そうではなかった。
剣心(千里眼の力と透視眼の力もある様だな。奇襲なら、確実にリュウに敗れていたな。)
そう奇襲であれば、相手が視認できない距離から幻術をかける事もできるからである。
剣心(しかし、読心の能力が失われているな。仕方ない、今はこれでいくしかないか。)
そして、窓から外へ飛び出し、森に入っていく。
剣心は京都で暗殺を続けていくうちに、ある技術を磨いた。それは、気配を消す事。単純な様だが、本気で気配を消せば、上層の神仏にも奇襲をかける事ができるだろう。また、剣心は逆に人の気配にも敏感である。
剣心は神速をもって、森をかける。そして、一瞬で覗き犯の背後に回り、殺気を少しあてる。
「うっ」
ドサドサ
覗き犯たちは、立てない程の威圧感から地面に縫い付けられる。
剣心「お前達は、何者だ?どうして、ここにいr」
剣心が尋問をはじめようとするが、すぐに中止になる。第三宇宙速度を超える速度で石が飛来してきたからである。
十六夜「げっ!剣心いたのか!全然気付かなかったぜ。って、何だその格好?」
ジン「な、何事ですか!?」
--コミュニティ本拠地で鳴った轟音に気づき、駆けつけたジンはその場に立っている十六夜に問う
十六夜「侵入者っぽいぞ。例の″フォレス・ガロ″の連中じゃねえか?」
ジン「えっ?ガルドの!?」
ジンが驚いていると瓦礫の中からガルドの手下たちが出てきた
「なんというデタラメな力………! 蛇神を倒したというのは本当の話だったのか」
「ああ………これならガルドの奴とのゲームに勝てるかもしれない……!」
「それにさっきのやつは、マジで生きた心地がしなかったしな」
十六夜は侵入者たちに敵意がないのに気づいたのか、見てて気になったことを侵入者に話しかけた
十六夜「おお?なんだお前ら、人間じゃねぇのか?」
そう。侵入者たちの姿は犬の耳や長い体毛と爪、爬虫類の様な様々な姿をしていたのだ
「我々は人をベースに様々な″獣″のギフトを持つ者。しかしギフトの格が低いため、このような半端な変幻しか出来ないのだ」
十六夜「へー、で襲わなかったのにはなんか理由あんだろ?」
「恥を忍んで頼む! 我々の……いえ、魔王の傘下であるコミュニティ″フォレス・ガロ″を、完封なきまでに叩き潰してはいただけないか?」
十六夜「嫌だね」
「なっ!」
十六夜「どうせお前らも人質を取られている連中だろ? ここに来たのはガルドの命令で仕方なくってところか?」
「そ、その通りです。その上、奴の背後には魔王がいる。だから我々はどうしてもガルドに逆らうことが出来ず――」
十六夜「その人質な、もうこの世にいねえから。ハイ、この話題終了」
「なっ!?」
絶句する侵入者一同。
ジン「十六夜さん!!」
十六夜「気を使えってか? 冗談きついぞ御チビ様」
咎めるジンだが、十六夜の返答はどこまでも冷たい。
十六夜「殺された人質を攫ってきたのは誰だ? 他でもない、コイツらだろうが」
そう。殺された人質の半数は彼らが殺したようなものだ。それでも、彼らもまた被害者なのだ。ジンは十六夜の冷徹さには反感を覚える。
「で、では本当に人質は………?」
ジン「………はい。ガルドは人質を攫ったその日に………殺していたそうです」
「そ、そんな………!」
項垂れる一同。彼らの心中は察するに余り有る。そんな彼らを見て十六夜は―――あろうことか、ニヤリと笑った。
十六夜「おまえらの気持ちはよくわかった!」
冷徹だったのが一転して楽しそうに、まるで新しい悪戯を思いついたような笑顔で侵入者の肩を叩く十六夜。
十六夜「ガルドが、そして奴の背後にいる〝魔王〟が憎いだろ? 安心しろ、おまえらの仇はコイツが取ってくれる!」
と、ジンの肩を抱き寄せ、
十六夜「このジン=ラッセルが、全ての魔王を倒すためのコミュニティを作ってくれる!」
ジン「なっ!?」
侵入者+ジンが一斉に驚愕する。
何故だか、我がコミュニティの討伐目標が『名と旗印を奪った魔王』から『魔王全て』にすり替えられようとしていた。
「魔王を倒すためのコミュニティ? そ、それはいったい?」
十六夜「言葉通りさ。俺たちは魔王の脅威にさらされたコミュニティを守る。守られたコミュニティは口を揃えてこう言ってくれ。〝押し売り・勧誘・魔王関係お断り。まずはジン=ラッセルの元にお問い合わせください〟」
ジン「じょ―――」
冗談でしょう!? と言いたかったのであろうジンの口はあえなく塞がれる。
十六夜「ガルドを倒した後の心配もしなくていいぞ! なぜなら、俺達のジン=ラッセルが魔王を倒すために立ち上がったのだから!」
「おお………!」
十六夜の言葉に希望を見たのか、顔を輝かせる侵入者一同。
十六夜「さあ、コミュニティに帰るんだ! そして仲間に言いふらせ! 俺達のジン=ラッセルが〝魔王〟を倒してくれると!」
「わ、わかったよ! 明日は頑張ってくれ、ジン坊ちゃん!」
ジン「ま………待っ―――」
最後までジンの口は塞がれたまま、侵入者一同は走り去ってしまうのだった。
〜〜〜〜〜
三人が来たのは本拠の最上階・大広間。剣心はローブと仮面を外している。十六夜を引きずってきたジンは、堪りかねて大声で叫んだ。
ジン「どういうつもりですか!?」
十六夜「言ったとおりだぜ? "魔王"にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください〟―――キャッチフレーズはこんなところか?まあ、落ち着けって。」
ジン「これが落ち着いていられますか! 魔王の力はあの土地を見て理解できたでしょう!? 僕らの仇敵だけでも脅威なのに、魔王を倒すためのコミュニティなんて馬鹿げた宣誓が流布されたら、他の魔王にまで……!」
十六夜「そうだな、あんな面白そうな力を持った連中がゾロゾロと押し寄せてくる。ワクワクするじゃねぇか」
長椅子に座って踏ん反り返っている十六夜はどこまでも強気だ。
ジン「お、面白そう!? まさか十六夜さんは自分の趣味の為にコミュニティを滅ぼすつもりですか!?」
十六夜「そうじゃねーよ。」
ジン「い、十六夜さん?」
十六夜「俺はこのコミュニティに足りないものを手っ取り早く集めようと考えてる」
ジン「コミュニティに……足りないもの?」
それは知名度であり、仲間であり、目標だ。
十六夜「俺たちには名前も旗印も無い。コミュニティを象徴出来る物が何一つないわけだ」
名前が無ければ宣伝ができない。宣伝ができなければ人は集まらない。人が集まらなければコミュニティは大きくなれない。コミュニティが大きくなれなければ―――魔王には勝てない。
十六夜「コイツはとんでもないハンデだ。それを抱えたまま、お前は先代を超えなきゃならないんだぜ?」
ジン「先代を……超える……!?」
その言葉に慄くジンは、まるで頭を金槌で叩かれたような顔をしていた。
それは彼が魔王から奪われた全てを取り戻すためには絶対に必要なことで、しかし目を逸らし続けていた現実だ。
だからこそ、十六夜はジンの名前を売り込んだ。
だからこそ、わかりやすくインパクトのある"打倒魔王"を掲げた。
そしてその御旗は同じく"打倒魔王"を心に秘めた者達を呼び寄せることだろう。"魔王"の被害者はこの"ノーネーム"だけではないのだから。
十六夜「今のコミュニティに足りないのは人材だ。俺並み・・・とは贅沢言わないが、せめて俺の足元並み・・・・の奴らは欲しい。そういう奴らなら、どっかに消えちまった昔のお仲間よりは役に立つだろうぜ」
十六夜の策は筋が通っていて面白半分で考えていることではないというのは分かる。しかしリスキーであることに変わりはない。それを踏まえてジンは条件を出した。
ジン「この件、受ける代わりに一つだけ条件があります。今度開かれる"サウザントアイズ"のゲームに、その昔の仲間が出品されるんです」
十六夜「へぇ? そいつを取り戻せって?」
ジン「そうです。それも只の仲間じゃない。彼女は元・魔王なんです」
ジンの言葉に十六夜の瞳が光る。
つまりこの"ノーネーム"は以前"魔王"を倒して隷属させていた。そしてその"魔王"を現在隷属させているコミュニティを倒せば仲間は戻ってくる上にコミュニティの名も一気に上がる。
十六夜が断る理由がない。
ジン「それと心配を掛けたくないので、黒ウサギにはまだ内密に」
十六夜「あいよ」
話はついた。十六夜は自室に戻ろうと大広間の扉に手をかけ―――悪戯を閃いたとばかりにニヤリと笑った。
十六夜「明日のゲーム、負けるなよ? 負けたら俺と剣心はコミュニティ抜けるから」
ジン「え?」
なぜか、巻き込まれた剣心であった。