☆伝説の人斬り(オリ主)が異世界から来るそうですよ? 作:モン太
箱庭二一零五三八零外門。ペリベッド通り、噴水広場前。
飛鳥、耀、ジン、剣心のゲーム参加者4名と、今回は不参加の黒ウサギ、十六夜、普段は耀の連れてる三毛猫は“フォレス・ガロ”のコミュニティ居住区画を訪れる道中、“六本傷”の旗を掲げたカフェテラスで声をかけられた。
「あー!昨日のお客さんじゃないですか!あれですか、今から決闘ですか!?」
『にゃー!にゃにゃー!』
ウェイトレスの猫娘が近寄ってくる。
剣心(やはり三毛猫が何を言っているか分からない。試しに龍の眼を使ってみたが、動物の言葉はわからなかった。そしてやはり読心の力は消えてるようだ。)
「ボスからもエールを頼まれました!ウチのコミュニティも散々連中の悪行に苦しめられてきたのですよ!自由区画、居住区画、舞台区画全てでやりたい放題でしたもの!二度とこんな不義理な真似が出来ないようにボコボコにしてやってください!」
ブンブンと両手を振り回して応援してくれる猫娘。
飛鳥「勿論、期待に応えるつもりよ」
「おお、心強いお返事!これは期待大です!」
だが、猫娘が明るい声を一転、ヒソヒソと声を潜め出す。
「実はお話があるのですが…。“フォレス・ガロ”の連中、領地の舞台区画ではなく居住区画でゲームをするつもりらしいんですよ」
黒ウサギ「居住区画で、ですか?」
居住区画に舞台区画。
初めて聞く言葉だが、おおよそは予想がつく。
居住区画は文字通り居住区で、舞台区画はおそらくギフトゲームを行うための舞台のある区画の事だろう。
「さらにですね、傘下のコミュニティや同志やらをほっぽり出して、外部から1人凄腕のプレイヤーを雇っての居住区画でのゲームですよ!?」
飛鳥「……それは、さすがに変ね」
思わず顔を見合わせる飛鳥達。
とはいえ、ここで考えたところで答えが出るハズもなく。
ジン「…何はともあれ、とりあえずゲームの会場へ行ってみましょう」
「何のゲームかはまるで分かりませんが、とにかく気をつけて下さいね!」
熱烈なエールを受けた私達は“フォレス・ガロ”の居住区画に向かう。
黒ウサギ「皆さん!見えてきました!あれが“フォレス・ガロ”の………アレ?」
黒ウサギが言うが、すぐに言葉がつまる。
全員が目を疑っていることだろう。
なぜならば、そこにあるハズの居住区画は無く、森が存在していたからだ。
コミュニティの門にも盛大にツタが絡まり、その奥には鬱蒼と生い茂る木々が見える。
飛鳥「どう見ても人の住む場所には見えないのだけれど…」
耀「……ジャングル?」
十六夜「虎の住むコミュニティだし、おかしくはないんじゃないか?」
ジン「いや、おかしいです…“フォレス・ガロ”のコミュニティの本拠は普通の居住区画だったはずなのに…。それにこの木々は…」
ジンがそっと樹木に触れる。
樹木の表面が脈打ち、まるで生き物の鼓動のようですらある。
ジン「やっぱり…“鬼化”している。いや、でもまさかーー」
飛鳥「ジン君、ここに“契約書類”が貼ってあるわ」
見れば、門柱に羊皮紙が貼られている。
そこに記されたギフトゲームの内容はーー
『ギフトゲーム名 “ハンティング”
・プレイヤー一覧
久遠 飛鳥
春日部 耀
緋村剣心
ジン=ラッセル
・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐
・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は“契約”によってガルド=ガスパーを傷つけることは不可能。
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。
“フォレス・ガロ”印』
十六夜「ふーん、指定武具ねぇ…」
ジン「ガルドの身をクリア条件にしーー指定武具で討伐!?」
黒ウサギ「こ、これはまずいです!」
ジンと黒ウサギが悲鳴のような声を上げるが、何がそんなにマズイのだろうか。
たしかに、武具が指定されているため闘う術が限られらるが、それだけではないだろうか。
飛鳥「このゲーム、そんなに危険なの?」
ジン「いえ、危険度はそれほどでは。問題なのは、このルールーー指定武具です。ルール上、飛鳥さんのギフトも耀さんのギフトも剣心さんの剣も通じないということです」
耀「………どういうこと?」
黒ウサギ「“恩恵”ではなく、“契約”によってその身を守っているのです。例え神格保持者であろうとも手は出せません。自分の命を勝利条件に組み込むことで、それ自体を自らを守るための鎧としたのです!」
ジン「………すいません、僕のせいです。はじめに“契約書類”を作った時にルールを決めておけばよかったのに……!」
昨日、十六夜に言われた事を思い出しているのか、これでもかと言うほどジンの顔が申し訳なさに歪んでいる。
とはいえ、もはや後の祭りだ。今更どうしようもない。
十六夜「敵さんは捨て身で五分に持ち込んだわけか。中々やるじゃねえか」
飛鳥「気軽に言ってくれるわね…条件は厳しいわよ。指定武具がどんなものかも書かれていないし…このままでは厳しいかもしれないわ」
こちらも、その綺麗な顔を歪ませている飛鳥。自分が売った喧嘩だけに責任を感じているのだろう。
黒ウサギ「だ、大丈夫ですよ!“契約書類”には『指定』武具と書かれています!最低でも何らかのヒントはあるハズです!もし無ければルール違反となり“フォレス・ガロ”敗北が決定!この黒ウサギがいる以上、反則は見逃しません!」
飛鳥「……そうね、むしろこの程度、あの外道のプライドを粉々に打ち砕くのにちょうどいいハンデだわ」
可愛いらしさ満点で励ます黒ウサギ。黒ウサギの言葉に飛鳥も奮起する。
剣心「案ずる事はない」
耀「剣心?」
剣心「指定武具が必ずあるのなら、ガルドから逃げ回りながら探せば良い。しかし、ガルドとしては探しに来る過程で獲物が自分のところに来れば、敵を狩る事できる。」
飛鳥「つまり指定武具はガルドが守ってるって事?」
剣心「ああ」
ジン「では、ガルドを探しつつ、指定武具を探しましょう」
十六夜「おい、オチビ。昨日の事覚えてるよな?」
ジン「はい。覚えてます。」
十六夜「なら、いい。今日勝たないと作戦が実行できない。そうなったら、俺と剣心は抜けるからな。」
十六夜はジンを鼓舞……というよりは、昨日の事で脅していた。
ともかく、こうして参加者4名は門をくぐり、ゲームへと挑んでいった。
〜〜〜〜〜
門が閉じたのが開始の合図なのか、生い茂る森が門絡めるように塞いでいく。
ほとんど光を遮るほどの密度の深い森。どう見ても人の住む環境には思えない。
丁寧に舗装されていたであろう道も、幾つもの巨大な根によって無残な状態となっている。
ジンと飛鳥、耀の三人はさすがに緊張しているのか、真剣な表情だ。
とはいえ、耀は比較的余裕のある顔だ。剣心は相変わらずの無表情である。
耀『大丈夫。近くには誰も居ない。匂いがしないから』
飛鳥『匂い…ということは、犬にもお友達が?』
耀『うん。20匹ぐらい』
剣心(耀のギフトは他種の恩恵を得るものだったな。
おそらく身体能力ならば、人間よりも遥かに上か。)
剣心は龍の眼を発動
龍の眼の望遠能力と透視能力ですぐに、ガルドと指定武具を見つける。
耀『すごい、両眼とも龍の眼だ。』
飛鳥『でも、見た目は猫の眼って感じだわ』
ジン『剣心さん、ガルドと指定武具はわかりましたか?』
剣心『昨日も言っただろ、俺は手を出さない。どうしても危なくなったら、助ける』
ジン『わ、わかりました』
ジン『耀さん、ガルドの詳しい位置はわかりますか?』
耀『ごめん分からない。でも風下にいるのに匂いがしないから、多分何処かの建物か何かの中にいると思う』
ジン『ではまず外から探しましょう』
飛鳥『彼にしてみれば一世一代の大勝負だもの。隠し玉の一つや二つあってもおかしくはないわね』
ジン『そうですね。彼は基本的に戦ってすらいない。強力なギフトを明かさずにいたとしても不思議ではありません。耀さんはガルドを見つけたら、より一層の警戒をお願いします』
ジンと飛鳥の二人が周囲を探索し、耀が樹の上から警戒。
中々悪くないチームじゃないか。
〜〜〜〜〜
十六夜「なあ、俺達は中に入っちゃ駄目なのか?」
黒ウサギ「はい。私達は参加者ではありませんから。」
十六夜「審判権限は使えないのか。」
黒ウサギ「審判権限にそのようなものはありません」
十六夜「ちぇ、箱庭の貴族(笑)使えねぇ」
黒ウサギ「ちょっと、どういうことですか!って、箱庭の貴族(笑)ってどういうことですか!」
GEEEEEYAAAAAAAAaaaa!
そんな風に下らない事を話していると、森の中から獣の咆哮が響いてくる。
森から鳥達が一斉に飛び立って行く。
黒ウサギ「いい、い、今の凶暴な叫び声は…?」
十六夜「ああ、間違いない。十中八九、虎のギフトを使った春日部だな」
黒ウサギ「なるほどなー。ってそんなわけでしょう!?幾ら何でも失礼過ぎますよ!?」
十六夜の発言に怒る黒ウサギ。
十六夜(しかし、黒ウサギのウサ耳は怒ると逆立つのか…ホントにあの耳どうなってるんだ?)
十六夜「春日部じゃなかったら、お嬢様だな」
黒ウサギ「違います!」
十六夜「ジン坊っちゃんだな」
黒ウサギ「このお馬鹿様が!」
スパァーーン
〜〜〜〜〜
耀「ん、ちょっと見てくるね」
そう言って、耀はしゃがんで足に力を込め、近くの木に跳び登る。木の頂上に着いた耀は、鷹の友達から得た遠視を使い周りを見渡す。
森に囲まれる目立つ大きな屋敷に目を向けた時、その屋敷の二階にある一部屋の窓に何か大きな影が動くのを確認する。
耀「見つけた、ガルドはこの先の館」
木から下りてきた耀は三人にそう伝える。
飛鳥「さすがね」
剣心「耀は隠密や諜報活動に向いているな」
ジン「…耀さん、他に何かは見ませんでしたか?」
耀「ううん、ガルド以外何も。指定武具も見当たらなかった」
剣心「……なら、その建物に行ってみるしかないな。もし扉を開けて危なかったら、俺が助ける。」
飛鳥「なら安心ね」
耀「うん」
ジン「ええ!? さすがに無茶ですよ剣心さん!飛鳥さんと耀さんもなんでそんな簡単に納得できるんですか!」
ジンがそう言うのも仕方がない。ジンはサウザンドアイズに行っていないため、剣心とリュウの一騎討ちなど知る由もないからだ。そのため剣心の実力をあまり知らないジンは、その提案に異議を唱える。
耀「大丈夫、剣心は強い」
剣心「もし不安なら、一旦逃げればいい。」
ジン「まあそれなら....」
ようやくジンも納得し、一行はガルドのいる屋敷を目指し歩き出した。
〜〜〜〜〜
飛鳥「……まさか罠も奇襲の一つもないなんて」
屋敷に辿り着いた剣心たち。敵がいる事を想定して耀が扉を開けて先に中に入る。
だが、入り口を開けた先の広いホールには人の気配は全くなく、あるのは二階へ続く階段と屋敷内まで侵食した鬼種化した木々。
飛鳥「すんなり入れたわね」
ジン「…武具らしい物もなさそうです」
入り口前に待機していたジンたちが中に入り、周りを見渡す。
ジン「耀さんガルドは二階ですよね?」
耀「うん、多分その階段登った先の正面の部屋のはず」
飛鳥「そう、待ち構えているというわけね。ならジンくんと剣心はここで退路を守ってて。私と耀さんで様子を見てくるわ」
ジンの問いに耀は答え、それを聞いた飛鳥はそう提案する。
ジン「えっ!? それなら剣心さんに行ってもらえば! いくらなんでも飛鳥さんたちが行くのは危険です!」
剣心「……それでいいのか?」
ジンが抗議するのをよそに、剣心は静かに問う。
飛鳥「ええ、剣心に甘えてばかりじゃいられないわ」
剣心「…そうか、なら行くといい。あくまで偵察だから、無理をする必要はない。何かあれば、すぐに逃げるか俺を呼べ」
剣心はそれを聞き入れ、飛鳥と耀にそう注意する。
飛鳥「わかったわ」
耀「うん」
飛鳥と耀もそれに頷き、二人は階段を登って行った。
〜〜〜〜〜
二人は階段を登り切り、ガルドが潜む部屋の扉の両サイドに付く。
アイコンタクトで合図し、扉を勢いよく開け、中に入る。
「「ッ!!」」
扉の中にいたのは、白銀の十字剣を守るように佇む白い巨躯の虎。
ガルド『グルルル……』
部屋の侵入者である二人を睨みつけ、そして飛鳥に標的を定めて襲いかかる。
飛鳥「ッ!?」
飛び掛かる虎の右脚の爪が飛鳥に触れようとする瞬間、耀が横からその脚を受け止める。
飛鳥「耀さん!!」
耀「飛鳥、逃げて!!」
耀にそう言われ、飛鳥は迷わず背を向けて入り口に走り出す。
飛鳥(剣心を……!)
〜〜〜〜〜
飛鳥と耀がガルドのもとへ向かっている頃
ジン(沈黙が辛い。)
剣心と2人きりになったジン。しかし、常日頃無口で無表情な剣心に、近寄り難さを感じていた。
剣心「ジンさん」
ジン「は、はい。何でしょう?」
剣心が静かに口を開く。ジンはまさか、剣心から、声をかけてくるとは思っていなかったために驚く。
剣心「ジンさんは鬼種を与えた吸血鬼に心当たりがありそうだったが……どうだ?」
ジン「……はい。…一人、だけ思い当たる人物がいます。ですがもし今回の犯人がその人なら、余計にその意図がわからないのです」
そう答えながら複雑そうな顔を浮かべるジン。
何かありそうだと思いながらも剣心はジンに聞いてみる。
剣心「…ちなみに、その思い当たる人物というのは?」
ジン「彼女はーーー」
ジンがその人物について言おうとしたその時、
剣心「!!」
剣心の顔色が変わる。
剣心の龍の眼が、未来を予知する。
剣心はそのまま神速で窓から2階へ駆けていく。ジンは、剣心から急に殺気を感じて顔を青くするが、気が付いた頃には既に剣心を見失っていた。
ジン「あれ?剣心さん?」
すると、飛鳥と耀が向かった二階の部屋からガタンッ! と大きな物音が響き渡り、その直後に飛鳥が血相を変えて部屋から飛び出してくる。
飛鳥「剣心は?」
ジン「それが、急にいなくなって」
飛鳥「ジンくん!私たちは逃げるわよ!」
飛鳥はそう言って、ジンの手を引っ張る。
「!? でも耀さんと剣心さんがーーー「いいから逃げなさい!」!」
飛鳥がジンにそう命令すると、飛鳥のギフトが発動する。ジンは飛鳥を抱え、一目散に外へと走り出していく
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
剣心が上へ上がると、耀が指定武具の銀の剣に手を掛け、その背後からガルドが耀へ右脚を振り下ろそうとしていたところだった。よく見ると、着ていたノースリーブのジャケットやニーソも所々ボロボロだった。
剣心(不味い!)
剣心は、耀とガルドの間に入り、ガルドの右脚を全刃刀で受け止める。しかし、剣心は神速の速さはあっても力は弱い。むしろ、戦士としては力は無い方で、小柄な体格もあり、一般人よりは少し力がある位なのだ。普段剣心は、回転による遠心力や跳躍から落下への重力などの補助で、パワー不足を補っている。
よって、鍔迫り合いなどに弱く、耀の様に右脚を受け止めきれずに、ガルドの攻撃を受けてしまう。
ぶしゅぅぅ
耀「剣心!」
剣心は胸から腹にかけて傷を負う。だが、剣心の顔色に変化は無い。
剣心(耀は無事に指定武具を手に入れたな。ここは、一旦体制を立て直すか。)
剣心(やつの攻撃を止めた時の感覚が、変だったがおそらく"契約"に守られているのだろう。しかし、触れる事はできるようだな。)
剣心は耀をそのまま抱える
耀「え////、ちょっと、剣心⁉︎」
いきなり、お姫様だっこされて顔を赤くする耀。しかし、次の瞬間には、外に出ていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
飛鳥たちは撤退後、屋敷から少し離れた森の中で待機していた。
ジン「いったい二階で何があったんですか?」
飛鳥「えっと…恐ろしい虎が待ち構えていたわ。白銀の十字剣を守っているようだった。ガルドの姿は見えなかったわ。
…とっさに耀さんが時間を稼いでくれて。剣心がおそらく向かってくれたと思うし、無事に逃げてくれているといいのだけれど…」
ジン「…飛鳥さん」
飛鳥から聞いた話を元に、ジンは一つの推測を立てる。
ジン「おそらく…その虎がガルドです」
飛鳥「…どういうこと?」
ジン「ガルドはもともと人・虎・悪魔から得た霊格…3つのギフトによって成るワータイガーです。しかし、その人を成す部分を"鬼種"に変質させられたのだと思います。
ーーー吸血鬼によって」
飛鳥「なるほど…植物だけに鬼種を与えたわけじゃないのね」
飛鳥とジンは鬼種化した植物のツルを手に取る。ツルは血が流れているかのようにドクッドクッと波打っていた。
飛鳥「……となると指定武具って」
ジン「ええ、飛鳥さんが見たという剣で間違いないでしょう。十字と白銀も吸血鬼の弱点ですから」
だが推測通りその指定武具はガルドが所持しており、加えて耀と剣心がどうなったかも現状ではわからない。
実質二人は八方塞がりでいい打開策が浮かばない。
そんな時、ガサッと何かが動く音が聞こえてくる。
加えて、何かがパタタッと滴る音も聞こえた。
飛鳥「誰!」
二人は勢いよく振り返り、その音の発生源を見る。
剣心「......」(みんな無事なようだな)
それは胸から腹にかけて血を流している剣心と、お姫様抱っこされてる耀だった。
剣心は耀を木の根元に下ろし、耀が持っていた剣を置く。
剣心「すまない。服が血で汚れたな。」
耀「大丈夫。それより、ごめん。私のせいで」
飛鳥「け...剣心!大丈夫なの!?」
剣心の容体に焦る飛鳥。
剣心「......大事ではない。」
飛鳥「大したことない訳無いでしょう!」
剣心「傷の痛みなど、それを超える気迫と覚悟で耐えればいい。闘いの中に身を置く者にすれば、そんな事は至極当然。」
さらに飛鳥が何か話そうとするが、それより先に剣心が口を開く。
剣心「.......それよりも、早くこのゲームの攻略の作戦を考えたらどうだ?俺は今みたいに危なくなった時しか、力を貸すつもりはない。」
剣心「ジンさんには、このコミュニティの"明日"がかかっている」
剣心「あと、耀は軽傷ではあるが、今回はここで退け」
耀は頷く。至近距離で虎と対峙していたことににより恐怖で手足は震えていた。
それを見て、飛鳥は覚悟を決め、立ち上がって落ちていた剣を拾う。
飛鳥「じゃあ耀さんの無念は私たちが払いましょう。行きましょう、ジンくん」
ジン「ええ、行きましょう!」
飛鳥「ふふ、どんなに強くても知性のない獣には負けないわ」
飛鳥とジンはそう言って、剣心と耀にふわりと笑った。
絶対的な自信と、プライドと誇りを持って。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
侵入者がいなくなり、ガルドは静かに眠っていた。
しかし、突如何かが焦げる臭いと黒い煙が漂ってくる。
ガルドはその異変に気付き、目を覚ます。
その異変の発生源を探しに部屋を出て、ホールに出る。
そこには、紅々と燃える火の海が屋敷の中に広がっていた。
その炎を見たガルドは本能的に恐怖する。
人としての知能は失い、今現在ガルドを支配するのは野獣としての本能。炎に対する警戒と恐怖心。
ガルドは一心不乱に屋敷を飛び出し、燃える森の中の一本道・・・を駆け巡る。
飛鳥「待っていたわ」
ガルドがしばらく走り、火もなくなってきた地点にまで来たところで目の前から声が掛かる。
剣を持った飛鳥がガルドの行く手に立ちはだかる。
ガルドは止まり、目の前に対峙する二人の敵に警戒する。
飛鳥「剣心と耀のこともあるし…」
飛鳥「これ以上時間を割いていられないの」
飛鳥「だから…」
飛鳥「来なさい!!」
飛鳥がそう叫ぶのを皮切りに、ガルドは飛鳥とジンに向かって襲いかかる。
飛鳥がゆっくり瞼を落とし、集中する。
飛鳥という少女の本質は、とても優しい子である。
飛鳥はもともと、自身の力を嫌っていた。
自信が命令すれば、すべてが思い通りになる。
すべてがすべて、飛鳥の言いなりで動く。
だが飛鳥はそんなことを微塵にも喜んだことはない。
人々は飛鳥の力を欲し、羨み、そして恐怖し、ほぼ箱庭娘のような暮らしをさせていた。
故に飛鳥は自身のギフトを嫌い、そしてそれを黒ウサギに相談していた。
自分の力は、他人を支配することしかできないのか。
飛鳥はずっとその悩みを抱えていた。
そんな飛鳥を、黒ウサギは微笑ましく、そして慈しみを込めてこう助言した。
黒ウサギ『……では、こうしましょう。
〝支配する〟という属性はあえて受け入れ、違う新しい使い方を見出すのです』
つまり、支配する対象を変えるということ。
この箱庭世界にてもっとも有効な〝支配〟の使い方。
〝ギフト・・・を支配するギフト〟へと
飛鳥「今よ!」
飛鳥が叫ぶと、飛びかかってくるガルドに向けて鬼種のギフトを宿した植物のツル・・・・・・・・・・・・・・・がガルドの体を縛り、拘束する。
『ゴァッ!? グウゥゥゥ……ゥガァッ!』
ジン「飛鳥さん」
飛鳥「ええ、わかってるわ」
ジンの呼びかけに頷き、飛鳥は動けないでいるガルドにゆっくりと近づく。
そして飛鳥は持っていた剣を構える。
飛鳥「終わりよ……」
そう呟き、飛鳥はガルドの額に剣を突き刺す。
ガルドは刺された瞬間風化していき、跡形もなくなる。
ゲーム【ハンティング】終了。
勝者は、『ノーネーム』