お待たせしました。
前回近いうちに更新すると言いましたが、結局ひと月経過してしまいました。少々集中講義やら介護実習やら、期末試験やらで忙しくて更新できなかったのです。
まぁそれは置いときまして、今回もどうぞごゆるりと。
グロウプとの邂逅から早二週間、やはりというべきか、ハグリッドは停職になった。まだ森番の仕事はあるものの、恐らくまたありもしない理由で退職になるのだろう。シロウ曰く、最悪を想定してもう潜伏場所を用意しているそうだけど、あのオババのことだから潜伏する前に何かしらアクションを起こしそうな気がする。
グロウプに関しては一応問題ない。私たち三人はちょくちょく顔を見せに行ったので、今は拙いながらも顔と名前が一致し、私たちを姉や兄のように扱ってくれている。彼は授業で習うような狂暴なものではなく、ハグリッドと同じで優しい気質なのだろう。
まぁそれはそれとして、もうそろそろO.W.L試験が来るということで、私たちの課題の量や授業の進む速度が尋常じゃない。なので「P.T」も活動回数を制限し、各々の寮で自主練しつつ、次の会合を待つ状態である。そんなことを考えながら私は目の前のレポートと向き合う。今現在私がいるのは談話室、ロンとハーマイオニーの二人と一緒に魔法薬学の宿題をしている。今日作った薬についてのレポートなんだけど、「安らぎの水薬」についてまとめるのは難しい。
何しろ薬を作っても飲んでもらって効果を実証する方法がない。誰かに呑んでもらうのは悪いし、生き物に飲ませるのもダメ。じゃあ自分で飲もうものなら他の二人と何故かスネイプ先生から盛大なストップがかかる始末。そんなこんなでレポート書くのに苦労している現状だ。
「そういえば『防衛術』の試験はどうなるんだろう?」
ふと羊皮紙に書き込む手を止め、ロンが声をあげた。それは私も気になっていた。例年通りなら実技が入ってくるのだけど、あのオババは徹底して教科書を黙読することを強制している。このままでは私たちの世代は、防衛術の成績がガタ落ちした低質な魔法使いになりかねない。これは「P.T」での練習をより短時間で高密度なものにしないといけないだろう。
そう考えた私は少しでもやることを減らそうと羽ペンを取り、再び羊皮紙に向かい合った。この後、何が起こるのか全く想像することもなく。
◆
事件はその日から一週間後に起きた。
私たちはいつも通り、細心の注意を払いながら「必要の部屋」へと赴き、いつものように練習していた。今日はみんな共通で「守護霊呪文」を練習していた。本来なら習得の難しい高等魔法なんだけど、みんな筋がいいのか殆どの人が最低でも
そんな時外から衝撃が来た。「必要の部屋」は入り方がわかっている、若しくは誰かが入っていても全く同一のものを必要としない限り、部屋への干渉は出来ないはずである。しかし現に部屋の壁には決して小さくない亀裂が入り、壁の欠片がパラパラと床に落ちている。
「……皆下がって」
私はみんなを後ろに下がらせ、壁の亀裂に近寄った。一際大きな亀裂に穴がいており、そこから壁の向こうを除くことができた。そこから見えた光景に私は思わず固まってしまった。
胸に銀と緑のエンブレム―スリザリンだーの数人の生徒と共にいるフィルチさん。そしてその一段の戦闘にいる、全身を毒々しいピンク色のふくでまとめ上げた、ギトギト、いやデブデブ、いや丸々と太ったガマガエ……オババがとても嬉しそうな顔で立っていた。それを見て私は悟った。ああ、これはもう逃げられないと。
「みんな、聞いて」
「どうしたの?」
私の言葉に不安そうな言葉が返される。もう何人かは悟ったのだろう、諦めの空気が感じられる。
「見つかった。もう逃げられない」
その言葉と、オババが杖を構えるのは同時だった。
「衝撃に備えて、頭を護って!!」
「『
私が後ろに叫ぶと同時に、壁がRPG-7ロケットランチャーを撃ち込まれたかのように吹き飛ばされた。他の子たちはいい。壁から離れ、態勢を低くし、頭を護るようにしていたのだから。でも私は違った。吹き飛ばされた瓦礫にまともに当たり、頭に大きめの欠片が直撃し、倒れたところに幾つもの瓦礫が重なって圧迫されるような感じになった。
朦朧とする意識の中、私が雑賀に見たのは、これ以上ない至福といった表情を浮かべたオババと、倒れる私に向けられた悪趣味な杖先だった。
「『
◆
目を覚まして最初に感じたのは、体を拘束されている感じだった。ボウッとする頭を無理やり働かせ、周囲状況を把握する。どうやらここは校長室、私は椅子に座らせられ、ロープで縛りつけられているようだ、まるで下手人みたいに。まぁオババにとって私は下手人だろうね。
「アルバス、その話は本当かね?」
私の後ろから魔法大臣の声が聞こえた。そちらに顔を向けると、魔法大臣、キングズリーさん、パーシー、そしてオババがいた。大臣の手には「P.T」のメンバーリストが握られていた。大臣の顔を見る限り、大臣はアンブリッジ側の人間ではないらしいけど、今は当てられた役割を熟さなければならないというのが実情だろう。
「その通りじゃコーネリウス、わしがこの組織を作った。ヴォルデモートに対抗する後の人間を作るためにの」
「え?」
校長先生の言葉に私は思わず声をあげてしまう。校長先生がやろうとしていることは、身に覚えのないことで泥を自ら被るような行為だ。当事者が私であるだけに、その行動を取らせたくないと思った。
しかし何も言いだせない。校長先生と目が合った瞬間、私は黙っていなければならないと感じた、いや黙らされた。校長先生は止まらない、それに私たちがしてきたことをほとんど把握し、大臣と口裏を合わせ、その上でこの学校から一時いなくなるという方法を取るのだと。でも理解しても納得できるほど私は人間が出来ていない。何とかしようと体をよじるけど魔法で縛られているのか、縄はびくともしない。
「コーネリウス、三年前も言ったの? ホグワーツでは救いを求める限り、それが与えられると」
「……うむ」
「!? 貴方たち、捕まえなさい!!」
アンブリッジが声をあげると、とこからともなく―恐らく扉の外で待機していたのだろう―何人かの魔法使いが殴り込み、杖を構える。そしてその全員が口を開こうとしたとき、校長室の窓を突き破るように何かが飛来し、それらの前に突き刺さった。考えなくともわかる、外からシロウが狙撃したのだ。
彼の事情を知るものならすぐに対応できたものの、所詮は魔法に依存した有象無象。突然撃ち込まれた剣に反応できず固まっている。
ダンブルドア先生がその隙を見逃すはずがない。
先生が寮の手を真上に掲げると、綺麗に歌いながら不死鳥が彼の手を掴んだ。途端に先生もろとも燃え上がり、部屋の中は熱気に包まれる。思わず目を瞑り、暫くして目を開けた頃には、既に先生も刺さっていた剣も消えていた。
「いやはや大臣、彼は色々とやってはおりますが。しかしあの人はとにかく粋ですよ」
キングズリーさんのゆったりした声が、静まり返った室内に響き、染み込んでいった。
――やれやれ、校長室への狙撃など二度とやりたくない。
――すまないなバックビーク、滞空などという面倒なことをやらせて。
――さて、賽は投げられた。この先、好転するか悪転するかはお前次第だぞ、大臣。