錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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時間が出来たので、短めですが更新します。
そして皆々様もう察されているとは思いますが、今回五巻の話数は確実に20話を超えます。原作でも一番分厚い内容でしたね。

さて、今回はアレになります。どうぞごゆるりと。





17. 巣立ち

 

 

 フレッドとジョージが騒動を起こしてから一週間が経過した。授業中の教室内に花火が舞い込んだり、小さな魔法生物が沢山侵入してきたりしたけど、特に先生方は何もしなかった。驚いたのがマグゴナガル先生とスネイプ先生の対応で、侵入したものを一瞥すると、オババを生徒に呼びに行かせ、そのまま授業を継続するといったことを続けていた。今日見かけたオババは非常にやつれており、いつものピンクの衣装も、心なしか色あせているように見えた。

 

 

「いやー先生助かりました!! ねずみ花火は私でも対処できたのですが、何分その()()()()()()()()()()()()()もので!!」

 

 

 フリットウィック先生が実にいい笑顔でそう言い、オババの鼻先で扉をピシャリと閉めたのは記憶に新しい。

 

 まぁそんなこんなであまり退屈しない一週間を過ごせた。でも安心しては居られない。試験の勉強をしなければならないし、何より「閉心術」の修行もしなければならない。最近はスネイプ先生も何やら忙しいらしく、今まで週二で教えてくださっていたのが、今は週一ほどに回数が落ちている。一応口頭詠唱による「開心術」は完璧に防げるようになったけど、無言呪文や不意打ちは、まだ一割程度でしか防御できない。

 

 

「なんとか明日修業を取り付けれないかなぁ」

 

 

 談話室で教科書を目の前に開いたままぼやく。はたから見たら私は阿呆面晒しているんだろうなぁ、なんてぼうっと考えていると、私たちの許に話題の渦中にあるフレッドとジョージが近寄っていた。因みに二人、騒動の原因だろうとほぼみんなにバレてはいるのだけど、何せ現行犯で捕まえられないために、未だに罰則を受けていない。ある意味二人の行動力はすごい。

 

 

「何かお悩みかい?」

 

「うん。次の閉心術の練習、明日の放課後にお願いできないかなと思って」

 

「明日か。丁度いいな」

 

「何が?」

 

 

 何やら考え込みだす双子。不穏な空気を察したのか、ハーマイオニーとロン、ジニーもこちらに近寄ってきた。

 

 

「もうそろそろ頃合いかなと思ってね」

 

「今まではちょっとした混乱を繰り返しやっていたけど」

 

「今度一発デカいのやって」

 

「最後の大混乱をやろうとね」

 

 

 最後の一発って。まさか二人とも。

 

 

「もしかして、学校を抜け出すつもり?」

 

 

 ハーマイオニーが声を潜めつつも問いただす。その顔は心配三割、呆れ三割、咎め三割の声色だ。しかし双子はそれを気にせず、着々と最後の計画をたてていく。本当に、男の子って一度走ると止まらないのかしら。ああ、そういえば一番身近に、そういう放っておけない男がいたわね。

 

 

「潮時さね」

 

「いい加減俺たちもここにある在庫がなくなってきたし」

 

「最後の一発で暗ーい空気を吹き飛ばすさ」

 

「止めてくれるなよ」

 

「だからマリー。悪いけど修業は明後日にズラしてくれ」

 

 

 双子はそう言うと自室に戻っていった。正直スネイプ先生次第なので明日も明後日もないのだけれど。一体二人は何をするのだろうか。

 

 

 

 

 

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 その答えは直ぐにわかった。魔法薬の授業でスネイプ先生に頼み込み、次の日の修行を取り付けてもらったあと、私はロンとハーマイオニーと一緒に大広間に向かっていた。

 暫く廊下を進んでいると、何やら騒がしい音が逝く先のほうから聞こえてきた。どうやら双子が何やらやらかした騒ぎの様で、野次馬に多数の生徒が群がっているようだった。丁度その場所が上階から見れる場所で騒ぎが起こっているようなので、私たちも移動してみると、廊下の中央には沼地が出来上がっていた。

 

 

「さあ!!」

 

 

 双子の前に、オババが勝ち誇った顔で立っていた。その横には今か今かと、乗馬用を鞭をもったフィルチもいた。双子が作った沼地は廊下を塞いでおり、今後誰かが処理しないと確実に通れないだろう大きさにまでなっている。

 

 

「そこの二人、わたくしの学校で悪事を働けば、どのような目に合うか思い知らせてあげましょう!!」

 

 

 オババはこの場を公開処刑場と思っているのだろう。表立った犯行をしている二人を捉え、罰を与える光景を大多数の生徒に見せることができるんだから。となりのフィルチも、嬉しそうに鼻をふんふん鳴らしている。

 でもそれで終わる双子ではない。彼らは人の裏をかくことに関しては、確実にオババたちの何枚も上手である。

 

 

「ところがぁどっこい!!」

 

「思い知らないね」

 

「『アクシオ―箒よこい』!!」

 

 

 二人が杖を構えて魔法を唱えると、どこかから大きな金属音が、続いて何かを引きずる音が高速で近づいてきた。考えるまでもないだろう、没収されていた二人の箒だ。片方は縛られていた時の鎖の残りを、少し残して引き摺っている。

 

 

「またお会いすることもないでしょう」

 

 

 フレッドはひらりと箒に跨り、そういう。

 

 

「連絡もくださいますな」

 

 

 ジョージも続いて箒に乗り、二人して空中に舞い上がった。余りの事態にオババとフィルチは反応できず、オロオロと動揺するばかりである。その光景が少し面白い。

 

 

「今回皆様に見せた『携帯沼地』をお求めの方は」

 

「此度ダイアゴン横町九十三番地に新設された『ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ店』までお越しください」

 

「我々の新店舗です」

 

「我々の商品ををこの老い耄れババァを追い出すために使うと誓う方々」

 

「それらホグワーツ生には特別割引を実施いたします!!」

 

 

 双子は私たちの上をグルグルと飛び回りながら、新事業の宣伝を行っていた。その二人に対してアンブリッジは魔法を放つけど、動くものを相手にしたこのがないのか、ことごとくを外している。

 双子は一度空中で制止し、頷き合うと外に箒を向けた。どうやら外に続く、おおきな門から出ていくらしい。

 

 

「二人を止めなさい!!」

 

 

 オババの声が響くが、誰も反応できない。そのまま外に出ていくと思われた二人だけど、いままで傍観していたピーブスに近づいていった。

 

 

「ピーブス、俺たちの代わりにあのカエルを手こずらせてくれ」

 

 

 フレッドの一言にピーブスは姿勢を正すと、見事な敬礼の姿勢を取った。階下から生徒たちの喝采をオババや親衛隊からは呪いを放たれつつも、フレッドとジョージは外へと飛び出し、真っ赤に輝く夕日へと吸い込まれていった。

 

 

 






はい、今回はここまでです。
さぁ五巻の印象深いシーン、その一つが終わりました。あといくつかありますが。それもあと数話のうちに出し、エンディングまで持っていこうと思います。

それでは皆様、また次回。



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