錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

111 / 115


新年一発目の投稿、遅くなりました。あけましておめでとうございます。
ちょいと親戚が年末年始に立て続けに往生されたので、その葬儀などで時間が取れませんでした。
ようやく全てが滞りなく終えられたので、執筆を再開しました。


それでは皆様ごゆるりと。





20. 現か夢か

 

 

 

 

 翌日ハグリッドの小屋の近くに行くと、やはりというべきか規制線が引かれていた。そりゃそうだ。その場所には底に見えない大きな穴が空いていたのだから。もしかしたら「秘密の部屋」の深さよりも深いかもしれない。加えて穴の大きさはクィディッチ競技場の半分ほどである。ちょっと躓いただけで穴に落ち、二度と這い上がるどころか、落下の途中でショック死するかもしれない規模だ。事態の収拾を付けるためとはいえ、地形を変えるのは少々やり過ぎではないかと思う。けれども、現状これぐらいしか対策がないのは仕方がない。

 朝食を摂り、変身術の試験場に向かう。とは言っても筆記も実技も大広間で行われるため、朝食時間が終わるまで待機だった。結果は上々、ちゃんと普段勉強していたおかげか、筆記はほぼ完ぺきにできたと思える。加えて最後の論述問題は、珍しく己の思想のようなものも記述できるような出題だった。なので私は問われたことへの現在の常識と、私なりの術式に関する考察を記入した。

 実技に関しても、しっかり「O:優」レベルの点数は取れただろう。唯一不安があるとすれば、蟻を爪楊枝に変身させる際、本来ならば木製の爪楊枝にする予定が金属製の爪楊枝に差せてしまったこと。勿論すぐに気づいて正しく木製爪楊枝に変身しなおしたものの、減点対象になっているだろう。それがどれほど引かれるのかがわからないのが現状だ。

 午後は占い学実技と魔法史の筆記だけで、私の「ふくろう試験」は終わる。それからは夏の結果発表を待つばかりだ。明日からは「閉心術」の修業を再開しようとも考えている。

 

 でもここで問題が起きた。

 占い学の試験ではオババが監視している前ではあった。それは問題ない。

 問題は占った内容だ。茶の葉、ルーン文字、水晶玉、タロットなど様々にある売らないから二つを選び、自らを占うという試験内容だ。これに関しては基礎部分が出来ていれば良いと言うものであったから、内容が変でも基本に則っていればいい。そう考えて私は得意なルーンを一つ目に選び、もう一つは水晶玉にした。

 ルーン文字をランダムに選び出し、円状に配列していく。しかしその結果は良くないものだった。ルーンのそれぞれの意味は「力」や「男」などの意味でしかないが、どのルーンと出てきて、どう並ぶかで意味合いが変わってくる。そして私の占いで浮かび上がったのは喪失。何か大切なものを失ってしまうというもの。それが人か物かはわからないし、いつなのかもわからない。

 

 

「ふーむ、珍しいの。こんな結果が出るとは儂も予想がつかなんだ」

 

 

 目の前の教官がそうごちているのも聞こえなかった。

 水晶玉に関しても変わらなかった。今まで特に意識しなくとも、水晶の中の影が何か形作ることはあった。三年生の時は何も見えなかったけど、四年生の時から、低確率でなにか見えることがあった。しかし今回の試験ではいつもと違い、よりハッキリとしたものが目に映った。

 何やら大きな部屋で二人の人間が向かい合っている。老若男女はハッキリしないけど、言い争っているのが見えた。その時点で靄がかかり、一瞬現実に戻された。どうやら私が妙な状態になっていたのだろう。向かいに座っている試験教官が顔を覗き込んできていた。

 

 

「ミズ・ポッター、大丈夫ですかな?」

 

「あ、はい。問題ありません」

 

「そうですかの。じゃあ何か見えましたかな?」

 

「はい、えっと……」

 

 

 口を開いて内容を話そうとしたとき、また玉の靄が変化した。話すことも忘れ、再び微妙なハッキリさの映像が流れ込んでくる。

 どこか屋外、けどすぐそばには巨大な建造物がある。あちらこちらに火花が散り、数えるのも馬鹿馬鹿しい人々が地に伏し、ピクリとも動かない。怪我しているのかそれとも……。

 場面は移り、どこか開けた場所。二人の人間が向かい合い、火花を散らしている。その二人の周りには無数の剣が散らばって落ちている。折れていたり、刺さっていたりと様々だ。そこから少し離れた場所でも、いくつもの人影が手に剣を持ち、激しい剣戟を交わしている。まさしく死闘、負ければ死の世界が広がっていた。

 

 

「……っは!?」

 

「ミズ・ポッター!? 大丈夫かの!?」

 

「……ええ、はい。ちょっとどう話すか考えていただけで。申し訳ありません」

 

 

 そう前置き、最初に見たものだけを話していく。二回目に見えたヴィジョンは話すべきではない、そう私の勘が告げていた。理由までは分からない。でもそれを話すのは今この時、そしてこの人ではないと直感が告げていた。

 

 

「ふーむ。予言か、警告か。お主の視得たもの、他には映っていなかったかの?」

 

「いえ、それだけです」

 

「……良くないものであるのは確かじゃの。信じきれとは言わぬが、頭の片隅に置いておくとよい。試験はこれまでじゃ」

 

「はい、ありがとうございました」

 

 

 一つ会釈をし、私は退室した。オババには目もくれず、急いで自室―と言っても女子寝室だけど―に戻り、見た内容を全てメモに書き込んだ。シロウに見せるのは得策じゃない。予言などの類はシロウの専門外、それに内容からしてトレローニ先生やダンブルドア先生に見せたほうがいい。でも今この学校に二人はいない。となると、次に話すときに欠けた部分があってはいけない。そう思いメモを取った。

 

 そして魔法史に試験、そんなモヤモヤしたものを抱えていることと日々の疲れ、そして大広間にいてもわかる外の心地よい陽気に当てられ、問題を解きながらウトウトとしていた。何度か目を覚ますために太ももをつねったりしたけど、それでも迫りくる眠気に抗うことが難しかった。幸いなのは眠気に負けたのが解き終え、見直しも終えたタイミングだったことだろう。私はついに負けて、微睡みに身を任せてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――さぁ答えろ!! ■■はどうした!!

 

――知らんな。知っていても話さない。

 

――ほう? 俺様に逆らうのか。『苦しめ(クルーシオ)』!!

 

――ぐっ!? ああああああ!?!?

 

――さぁ吐け!! ■■は何処にある!!

 

――……吐くわけないだろう。

 

――なんだと?

 

――残念だったな。この程度の拷問、あの十二年に比べたらなんともない!!

 

――さぁ殺せ!! 尤も、この場で俺を殺しても意味はないがな!!

 

――貴様ぁぁぁああ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 緑の閃光が視界を埋め尽くし、そこで目が覚めた。

 私は床に寝転がり、首の傷跡を抑え、汗をかいてべっとりとした感触に襲われていた。床は私の汗で湿っており、私が悶えたであろう軌跡がわかるような様になっていた。そのせいか、周りの生徒は奇怪なものを見るかのような目で、親友二人は心配するような目で私を見ていた。半ば自分の状態を認識しつつも、私は近寄ってくる試験監督を呆然と眺めていた。

 

 

 

 

 






はい、ここまでです。
大変お待たせ致しました、ハリポタの投稿でした。前書きでもちょっと書きましたが、リアルで少し立て込んでました。私も成人を迎えた身、「いつまでも、あると思うな、親と金」とも言いますから、両親兄弟、そして自分が死んだときにどうするかを勉強させてもらいました。

まぁそれは置いて置きまして。次回からはいよいよアレです。

一つ。俺は同時更新の告知を守れなかった。
一つ。そして理由があったとはいえ、小説の執筆をしなかった。
一つ。そのせいで心広い読者を待たせてしまった。

俺は罪を数えたぜ。さぁお前の罪を数えろ、■■■■。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。