錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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さて、一ヶ月ぶりの更新になりました。
というか前話更新した際、お気に入り登録者数がごっそり減りましたねぇ。少し、いやだいぶこれは堪えました。

さてさて五巻クライマックスの序章に入りますが、皆さま、暖かい心でご拝読お願いいたします。





22. 四戦目開幕

 

 

 マントを被った状態で廊下をひっそりと歩き、防衛術の教室に向かう。基本的に教師の個人オフィスは各々の専門教室に付属しており、そこはそれぞれの寝室にも繋がっている。今丁度他の試験も行われており、オババはその監督に行っている。だから今は目的地には誰もいない。

 ただオババのことだ、何かしら魔法的な見張りや警報を備えているだろう。教室は兎も角、特にオフィスには厳重に張り巡らされているに違いない。だからこその透明マントである。勿論単純に見えなくなるだけなので、匂いや音は消えない。だからそういうものに反応するものを使われた場合、この透明マントも意味を為さないだろう。でもないよりかはマシだろう。

 教室につき、ゆっくりと扉を開く。幸い教室内には警報の類はなく、オフィスの扉前までは難なく辿り着けた。けどすぐにに扉を開けない。杖を取り、扉の鍵穴に杖先を詰めた。

 

 

敵意を(エクスプロラトレス)探れ(・オスティウム)

 

 

 杖先から部屋に魔法が広がり、部屋の中を視ていく。詳しい構造までは分からないけど、この魔法は一定範囲内の、自身に害を及ぼすものを探るのに重宝する。この魔法はスネイプ先生に秘密に教えてもらったもので、意外といろんな場面で重宝する。例えばトイレに変なお化けが潜んでいないかとか。それにこの「自分に害を及ぼすもの」というのは、広義的解釈がされるみたいである。だから警報やマグルのセンサーの類も感知してしまうのだ。

 というわけでこの魔法を使ったのだけど、早速感知に引っかかった。どうやら壁に何かが沢山かけられているらしく、そのうちの一つがオババに異常を通知する役割を持っているみたい。ただこれが魔法力や熱、音に反応するのかわからない。だから煙突飛行を使う場合、それによって発生する炎も感知対象になってしまうだろう。

 そう言えばフレッドとジョージが私たち魔法使い(ウィザード)が使えるよう改変したシロウたちの術式。確かその中に認識阻害も入っていたはず。ならば話は早く、侵入する前に自分から言一定範囲に指定して魔法を使えばいい。そして念のためにマントも被ればいいだろう。

 そう考え、早速自らに認識阻害をかける。そして取り出すのは一本のヘアピン。魔法で開錠すればいいと思うかもしれないが、これがなかなかに馬鹿にできない。魔法使いは、どうしても魔法が便利すぎるために、それに頼ってしまう。勿論無理やりこじ開けれるため、開錠呪文は重宝するけど、それ故に使われた痕跡が察知されやすい。

 ここで使われるのがマグルのピッキングだ。最近はこれが通用しない鍵が一般化されているけど、一昔前の南京錠や錠前などは、実は特別な道具などなくともヘアピン一本で開錠できる。ホグワーツのドア鍵はそれよりもはるか以前のもので、一度中身を見てみたらヘアピンでも十分すぎる程単純な構造をしていた。

 慎重にピンを差し込み、少し上下左右に動かす。すると小さな音ともに鍵が難なく開いた。ゆっくりと開いた扉の先には、毒々しいピンク色の地獄が私を待っていた。

 

 

(……いつ見ても趣味が悪いわね。壁のたくさんの猫の皿も、まさかこれがセンサーの類だったとは思わなかったけど)

 

 

 運よく認識阻害をかけていたものの、皿の猫の目の動きが気になって仕方がない。今は全ての目が外れているけど、いつ何時認識阻害の効力が切れるかわからない。

 急いで暖炉に近寄り、予め購入していた「煙突飛行パウダー」の袋を取り出す。さて、暖炉には既に火が付いており、あとは粉を落すだけ。今回は安否確認だけなので頭だけを向こうの暖炉に出せばいい。確か頭を暖炉に突っ込み、交信先の住所を正しく言えばよかったはず。

 袋から一つまみ粉を出そうとすると、後ろから肩を叩かれた。驚いて振り返ると、そこにはオババではなく、ハーマイオニーがいた。

 

 

「ハァ、ハァ……間に合ったわ」

 

「ハーマイオニー……なんで?」

 

 

 ハーマイオニーは肩で息をし、私の肩を掴んでいた。どうやら私を止めるために追いかけてきたらしい。私のことを心配して追いかけてきたのだろうけど、そのせいか認識阻害を書けていない。となると結論は一つ、オババに侵入がバレた。こうなると安否確認どころではない。さっさと逃げ出すに限る。

 

 

「……ハーマイオニー、話は後にしよう」

 

「何言ってるの? あなた本当に……」

 

「それ以前の問題。ハーマイオニーは認識阻害かけ忘れたでしょう? 早く逃げないと……『逃げないと……なんですか?』……存外早いこと」

 

 

 逃げる前に、既にオババが帰っていた。壁に視線を向けると、猫は全て飾り皿にいた。しかしよく見ると、暖炉の上に小さい皿が一つあり、そこには陰から覗く猫の絵が描かれていた。成程、あまりにも小さかったから、私の探知にも引っかからなかったのか。

 

 

捕縛せよ(インカーセラス)。さぁ捕まえましたよ」

 

 

 私たちはそのまま縛られ、椅子に括りつけられた。そしてオババと親衛隊に囲まれる形で尋問を受けることになった。色々と質問してくるけど、余りにも見当違い過ぎて、こちらは尋問されているのになんだか気が抜けてしまう。先ほどからダンブルドアの居場所がどうとか、シロウの弱みがどうだとか言っているけど、私たちが知るわけがない。頬を叩かれたり、つねられたりしたけど、知らないものは知らない。

 

「いい加減、吐く気になったのかしら。言いなさい、ダンブルドアは何処にいるの? そしてあの黄色い猿の弱点は何?」

 

「……」

 

「……あくまで白を切るつもりね。いいでしょう、誰かセブルス・スネイプを呼んできて」

 

 

 オババがそう言うと、親衛隊の一人が退室していき、程無くしてスネイプ先生を連れて戻ってきた。室内に入るとき先生は私を一瞥したけど、流石は閉心術のエキスパート、眉一つ動かさずにオババに目を戻した。ついでに言うとオババは気色の悪いニヤけ面を浮かべており、スネイプ先生はずっと無表情だった。

 

 

「これはこれは新校長殿。御取込み中の様ですが、我輩に何か用がおありで?」

 

 

 おおーいきなりジャブを打ち込んだ。以前たまたま耳にしたけど、先生はどうやらオババが嫌いらしい。それを表に一切出さないのだから、本当にこの先生はすごい。

 

 

「ええ。この小娘二人の尋問に『真実薬』が欲しいの。だから持ってきてほしいのだけれど」

 

 

 オババはジャブに気付くことなく、先生に魔法薬を要求していた。「真実薬」は強力な自白剤、一度(ひとたび)飲まされると、全て質問に本当のことを話してしまうと言ったもの。マグルの自白剤よりも絶対に強く、そして魔法薬なので飲用者のメンタル以外には特に体調面で被害はない優れもの。

 

 

「ほう、真実薬?」

 

「そう、それが今すぐ欲しいの」

 

「それは困りましたなぁ。遺憾ながら現在在庫がない」

 

 

 しかしオババの希望は崩れる。スネイプ先生は薬の在庫がないという。あ、オババの米神がピクピクしている。思い通りにならなくて、苛々しているときのサインだ。

 

 

「お忘れですかな? 以前全校生徒の『面談』に使いましたなあ、あるだけ渡せと仰って。使用法をしっかり報告、連絡していたと記憶していたのですが?」

 

「え、ええ。それで全部使ったから新しいのが欲しいのよ」

 

「それはおかしいですな。我輩がお渡しした量があれば、全校生徒に二回ずつ使ってもお釣りがくる筈。まさかとは思いますが、用法を守っていなかった、とでもいうおつもりですかな?」

 

「え、ええと……」

 

 

 おおー、オババが押されてる。というか全部表情に出ている時点で先生にかなうはずがない。それに、真実薬のレシピを以前見たのだけど、あれは本当に作るのが面倒だ。材料が面倒なのも然ることながら、完成の年月も馬鹿にならない。もしあの面談後に一から作ったとしたら、今はまだできていないだろう。

 だから先生がおっしゃることもあながち間違っていないのだ。

 

 

「私は今すぐその薬が欲しいの!! 『真実薬』がないのなら他のものはないの!?」

 

「あるにはありますが、あとは全て毒薬ですからなあ。強力なものとなると飲ませてから自白させるまでにコロリと逝ってしまいます」

 

「……もう結構よ。役に立たないのなら帰っていいわ!!」

 

 

 オババがヒステリーを起こし、先生は表情に出さないものの、疲れたという空気をほんの少しだけ出して退室していった。

 スネイプ先生がいなくなり、本番はここからだろう。オババは薬による尋問をあきらめた。ということは魔法による尋問を行ってくるだろう。この女のことだ、誰も見ていないことをいいことに、違法なことをするかもしれない。

 

 

「仕方ありません。ええ、仕方がないのです。これも大臣を思い、魔法界を思ってのこと……」

 

 

 何やらブツブツ言いながら杖を懐から取り出し、机の上の写真を伏せた。そして妙に据わった目をしながら、私を見つめてきた。

 

 

「そう魔法界の膿を一掃するために。『磔の呪文』ならば、貴方も口を割るでしょう」

 

 

 さて、ここからが正念場かな。

 

 

 






はい、ここまでです。
序盤に出てきた策定魔法ですが、あれは完全に本作品のオリジナルです。「索敵」というラ単語をラテン語に翻訳しただけです。

さて、原作ではスネイプにしかわからない言葉を放ったハリーでしたが、今回マリーはそうしませんでした。理由としましては、スネイプが騎士団員であることを知っているか知らないかで別れたためです。ハリーは知っていましたが、マリーは知らないのでこういう展開にしました。

さてまた次回お会いしましょう。


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