錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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今回は長くなったので、説教だけです。



それではごゆるりと。






6. 説教と新たな絆、そして人生初めての

Side シロウ

 

 

ふむ……臭いな。トロールの血がここまで匂うとは。いやはや臭いのは体臭だけかと思えばなかなかどうして、これは体を石鹸まみれにしてもとれんかもしれん。

トロールを串刺しにしている剣と『オハン』の投影を破棄すると、マグゴナガルが鬼気迫る表情でこちらにきた。

 

 

「ミスター・エミヤ、ウィーズリー! ミス・ポッター、グレンジャー! 大丈夫ですか!? 怪我はしてませんか!? それにこれはどういう状況なのですか!?」

 

 

どうやらマグゴナガルは混乱しているらしい。

スネイプも努めて冷静でいようとしている。

クィレルは……ん? いやに冷静だな。いつもの彼ならば気絶しているはずだが。それに妙に目が冷たい。今まで以上に警戒しておこう。

 

さて、そろそろマグゴナガルの話を聞かねば。

 

 

「……聞いているのですか、ミスター・エミヤ!! あなたは一体何をしたのですか!? あの剣は、あの盾は、まるで最初からそこになかったかのように……」

 

「それについてはこのあと直ぐ、スネイプ先生とダンブルドア校長を交えて説明します」

 

「……クドクドクド。え? あ、はい、わかりました」

 

 

オレの一言でマグゴナガルは冷静さを幾分か取り戻したらしい。ここでクィレルが吃りながら、

 

 

「わ、私には、な、なな何も?」

 

 

と聞いてきたが、正直信用ならん。

 

 

「ええ。校長を含め、今あげた三人だけです。それに……」

 

 

ここで一時的アーチャーの口調にする。

 

 

「正直貴様のような人種は信用ならん。貴様のような類いの人間はいくらか見てきたが、誰もが仮面を被り、その下に醜いものを隠していた。貴様がそうでないとは言い切れん」

 

 

オレの突然の口調の変わり様とその内容に皆が目を見開いていた。が、同時にスネイプはどこか感心するような視線をオレに向けていた。

 

 

「……それは一先ず置いておきましょう。それよりも」

 

 

マグゴナガルはそう前置き、マリー、ロン、ハーマイオニーに顔を向けた。

 

 

「なぜあなた方がここにいるのですか! 生徒は寮にいるはずでしょう!」

 

 

マグゴナガルが三人を叱る。三人ともどう答えようか迷っているな。

しかし、ここでハーマイオニーが口を開いた。

 

 

「私の責任です」

 

「ミス・グレンジャー?」

 

「私の責任です。授業で習ったことを応用すれば、私でもトロールをどうにかできると。身の程を知らず、独断で行動しました。他の二人は私を止めようと、説得にきたのです」

 

 

……驚いた。まさかハーマイオニーが教師に嘘をつくとは誰が思っただろうか。マリーもロンも唖然としている。

 

 

「ミス・グレンジャー、何てことを。あなたは自分の命だけでなく、他のひとの命までも危険にさらしたのですよ!! グリフィンドール二十点減点です。ミス・グレンジャー、あなたには失望しました。さぁもう寮にお帰りなさい。今回は無事でよかった。次は決してこんなことはしないよう。今回のことは他言しないように」

 

 

マグゴナガルの言葉に従い、ハーマイオニーはこの場を去っていった。マグゴナガルは残りの二人に目を向ける。

 

 

「あなたたち二人も、行動が軽率過ぎます。止めようと説得することは正しいことです。ですがどなたか教師に報告することもできたでしょう」

 

 

まぁ正論だな。

事後とは言え、こう言われるのは仕方がない。二人も顔をうつむかせている。

 

 

「よって十点ずつ、お二人に差し上げます。さぁあなたたちも寮にお帰りなさい。他の生徒は夕食の続きをしています。あなたたちも今回のことは他言しないように」

 

 

そう伝え、二人に帰るように言う。二人もそれに従い、この場から出ていった。最後にマグゴナガルはオレに顔を向けた。

 

 

「ミスター・エミヤ。あなたについてはこのあと話が有るようですし、早急に校長室に向かいましょう。あそこなら盗聴される心配もありませんから。」

 

 

その判断に、こちらも依存はない。だがその前に、

 

 

「この女子トイレのトロールを始末する前に、同じフロアでもう一体トロールを討伐しました。こいつよりも少し大きい。後処理を頼んでいいでしょうか。」

 

「なんと、もう一体いたのですね。迅速な制圧を感謝します。後始末はこちらに任せてください。さぁ今は校長室へ。セブルス、行きましょう」

 

 

そうしてオレたちは校長室に向かった。

 

 

 

………………やはり臭いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マリー

 

 

マグゴナガル先生に言われたので、私とロンはグリフィンドール寮に帰っていた。途中でハーマイオニーがいるのを見つけた。どうやら私達を待っていたみたい。こちらに気付くと駆け寄ってきて、

 

「ありがとう」

 

と一言いっていた。ロンも私も気にしないように言い、三人で寮に帰った。多分私達はこのとき初めてお互いに歩み寄れたと思う。

私達は自然と友達になった。ただ、ハーマイオニーのロンを見る目が少し気になったけど。

帰る途中、廊下が封鎖されていた。そこにいたフィリットウィック先生によると、どうやら十二の剣で急所を串刺しにされたトロールの死体があったらしい。

誰がやったかは知らないけど、当事者の私達以外に知られる前に、後始末をするみたいだ。

 

……絶対シロウだ。ロンもハーマイオニーも納得した顔だった。

私達三人はたぶん一緒のことを考えてる。『シロウに弓か剣を持たせたら、そこらの魔法使いは成す術なくやられる』と。敵にまわしたら命がいくつあっても絶対に足りないと。

 

私達は少々遠回りをして寮に戻った。

談話室に入ると先輩同輩関係なく、こちらに集まってきて質問をしてきた。でもマグゴナガル先生に口止めされていたので、その旨を話すとみんな渋々ながらも納得して夕食に戻った。ロンのお兄さんで監督生のパーシー以外は。

思えばホグワーツで初めて顔を合わせたときから何となく好きになれなかった。

ロンやそのお兄さんである双子のフレッドとジョージとは違って冗談が通じず、それはまだ生真面目ということで許せるけど、監督生ということが誇らしいのか、何かにつけて自分が自分がと目立つようにする。

 

あれだ。

将来権力者の見てくれだけが良い戯れ言にいいように踊らされる典型的な人間の匂いがする。

今もしつこくこちらに質問をし、あわよくば説教をしようとしている。正直とてもうざったい。

マグゴナガル先生から口止めされていると説明したし、軽率な行動も反省もしている。話せるコトは全て話しタのに、それでモまだ聞いテくル。

 

………………………アァ、ホントウニ。

 

 

「……ウルサイナ」

 

自分でも驚くほどの低く、冷たい声が出た。楽しいおしゃべりの声で満たされていた談話室は水をうったように静かになった。ロン、ハーマイオニー、そしてパーシーは絶句してこちらを見ている。

 

 

「……さっきから黙っていればギャーギャーと。やれ本当のことを話せだの、やれ自分は監督生だから知る義務があるだの。お前はそんなに偉い人間なのか」

 

 

パーシーは口をモゴモゴさせてなにか言おうとしているが、関係ない。

 

 

「私はいったはずだ。寮監のマグゴナガル先生から口止めされていて、話すことはできないと。お前の耳は飾り物か。お前は寮監よりも偉いのか」

 

「そ……それは」

 

「「マリー?」」

 

「違うのならその耳障りな口を閉じろ。お前が今やっていることは完全な越権行為だ」

 

「ッ!! 君は!」

 

「口を閉じろと言ったはずだ。理解しているか? 簡単な言葉で言うとしゃべるな、黙れと言ったのだ。

そもそも大広間での発言はなんだ。皆が集まればトロールなど恐るるに足らず?

馬鹿も休み休みに言え、戯けが。

私を含めた戦闘経験の無いものがどんなに沢山いようと、余計な犠牲が増えるだけだ。少し考えればわかるだろう。もうお前に話すことはないし、お前の話を聞く気も毛頭ない。それと……」

 

 

それから私は談話室を見渡して、

 

 

「せっかくの楽しい夕食を台無しにして申し訳ない。部外者は早々に立ち去る」

 

 

そう言って私は寝室に向かった。後ろでなにか騒いでいたけど無視した。ロンとハーマイオニーは私をおってきた。二人にも申し訳ないことをした。ホグワーツでの初めてのハロウィーンを台無しにしてしまったから。

 

その日、私は初めてキレるということをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side others

 

 

 

「おい! マリー、ロン、ハーマイオニー! 戻ってこい! まだ話は終わってないぞ! おい!!」

 

 

パーシーが怒鳴っていたが、結局三人はそのまま寝室にいったらしい。ハロウィンパーティーはそのままお開きとなってしまった。

一人立っているパーシーに、その弟たちである双子のフレッドとジョージが近づいていった。

 

 

「パース。今マリー本人から言われただろうが。マグゴナガル先生に口止めされてると」

 

「フレッドの言う通りだぜ? もうこれ以上何もわからねぇって。やめとけよ。ロンもハーマイオニーも同じこと言っていただろ? 俺達も心配だったからお前の言いたいこともわかるけど」

 

「違うんだフレッド、ジョージ。 それもあるけど、僕が言いたいのは先ほどの態度だ」

 

「いやまあ、流石にマリーがキレるとは思ってなかったけど」

 

「だな。それにあのときのマリー、どことなくシロウと似たような雰囲気してたし」

 

「…………僕がしつこく詰問したことは確かにやり過ぎた。それは反省している。けどそれを差し引いてもあの態度は看過できるものじゃない」

 

「一度互いに頭を冷やしたほうがいいぜ?」

 

「そうそう。今はひとまず、ほらパース。これ飲んで落ち着けよ」

 

「ああ、ありがとう。…………!? ブホッ!! ゲボッゴボッ!! フレッド、ジョージ! なんだこれは! 何を飲ませた!」

 

「あ、それ? それは俺達がマグルの世界で購入した物を色々と混ぜた特性ドリンクだぜ?」

 

「何でもシロウの生まれた日本じゃちょうど俺達ぐらいの年のやつが遊びで作るとか」

 

「待て! お前たち!」

 

「「あーばよー、パーシー」」

 

「待たないか!」

 

 

そして夜は更けていく。

 

 

 

 

 




はい、ここまでです。

下書きの段階でシロウの魔術についての説明がとても長くなったので、題名を変えて投稿することにしました。

パーシーですが、訂正前は結構痛い目なあわせていました。しかし、やはりどうかと思ったので、原作よりも多少物わかりのいい、だけど責任感が強いあまり少々空回りしてしまう人柄にしました。
…………そうなってますよね?


以前ここで少しアンケートをとっていましたが、規約違反ということで、あらためて活動記録にてとらせていただきます。尚、今まで回答下さったかたの数値は変わらず加算させていただきます。



さて、次回こそシロウの説明回です。

今後も本作品をよろしくお願いいたします。




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