錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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クィディッチ編突入です。
今まで投稿した話にちょいちょい修正や加筆をいれたりしていました。

今回は控え室に行く直前までです。

ではどうぞごゆるりと





8. クィディッチシーズン到来

 

 

 クィディッチとは、魔法界において屈指の人気を誇るスポーツ競技である。2つのチームが箒にのり、赤のクワッフル、全自動の妨害玉である黒のブラッジャー、一番小さくてすばしこい黄金のスニッチ、この三つのボールを用いて行われる。いわばマグルの世界でいうサッカーのようなものだ。

 プレイヤーは各チーム七名で構成され、それぞれチェイサーが三名、ビーターが二名、キーパーとシーカーが一名ずついる。

 

 三名のチェイサーはクワッフルを使い、相手の陣に立つ先に輪のついた三つのポールのいずれかの輪に通して点数を取る。キーパーはそれを阻止するポジション。ビーターは棍棒を使い、プレイヤーを箒から落とそうとするブラッジャーを弾く、または敵のチームに当てることを仕事とする。そして残ったシーカーだが、このポジションのプレイヤーは黄金のスニッチを捕まえることが仕事である。

 

 基本クワッフルで獲得する点数は十点であり、試合終了時間は存在しない。ではどうやったら試合が終わるのかというと、ここでシーカーが重要になる。クィディッチは黄金のスニッチが捕まえられると試合が終了する。加えてスニッチを獲得すると、一気に百五十点獲得できる、いわば逆転の手段であると同時に相手との決定的な差をつけるものでもある。

 

 だが試合終了方法なだけはあり、捕まえるのは少々骨がおれる。先述のようにスニッチは小さく、卓球玉程度の大きさである。そして何よりも速くすばしこい。そしてブラッジャーの様な猪突猛進の動きではなく、非常にトリッキーな動きをする。長ければ一日探しても見つからないこともあり、過去には一つの試合に一週間近くかかったこともあるらしい。

 

 さてこのクィディッチだが、ここホグワーツでも各寮に一つずつチームが存在している。そして寮対抗で試合を行い、その獲得点数がそのまま寮に加算されるシステムである。そんな理由もあり、クィディッチの試合があると、生徒は勿論、教師陣も観戦に向かう。だが生徒が選手であるため、最終学年である七年生が卒業し、そのなかに選手がいると翌年から欠員が出てしまう。今年のグリフィンドールがその類いだった。しかも欠員は試合の要であるポジションのシーカー。

 グリフィンドールチームのキャプテンであったウッドは二年生以上から一番骨があり、上手い生徒を選抜しようと考えていた。だがそこに思いもよらぬことがあった。なんと一人の一年生が飛行訓練中に初心者とは思えない技術を見せて、それを見たグリフィンドールの寮監であるマグゴナガル教授が直々にスカウトしてきたのだ。

 喜ばないはずがない。件の生徒を間近に見たが、シーカーに相応しい、動きが速そうな体格をしていた。後日改めて箒に乗るところを見せてもらったが、マグゴナガル教授がスカウトするのも頷ける技量だった。改めてその一年生マリー・ポッターをチームに入れたことは正しかったと実感した。

 他のチームメイトも交えて本格的な練習にも参加させたところ、皆もマリーの入団に両手を上げて喜んでいた。

 

 ハロウィンの騒動も落ち着き、本格的な冬が到来した十一月上旬。ホグワーツではクィディッチシーズンが到来したことにより、生徒教師問わずに熱気が溢れていた。特に今年は例年と違い、皆落ち着きがなかった。それは学校じゅうで噂が流れていたからであった。

 

 ──- 今年は異例の一年生選手がグリフィンドールで試合に出る。何でもその一年生は先生とチームキャプテンが直々のスカウトを受けたらしい、と。

 

 そして今年の第一戦はグリフィンドール対スリザリンである。皆がソワソワするのもわからなくはないだろう。そして今日はその第一戦。噂の当人であるマリー・ポッターはというと、

 

「ヤバいお腹痛い食べ物入らない緊張するトイレ行きたい誰か助けてお願いブツブツ…………」

 

 結構ナィーブになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side マリー

 

 

 今日は初めての試合がある。しかも魔法界で人気のクィディッチの。私のポジションは一番の要のシーカー。今までしっかり練習していたし、プレゼントされた最新式の現時点最速の箒「ニンバス二〇〇〇」にも体は慣らしてある。それは問題ない。でも…………

 

「だってマグルの世界でもクラブ活動に所属してなかったのに、いきなりすごい人気のスポーツの試合だよ? 緊張しないほうがおかしいよ」

 

 今けっこう気が滅入ってる。食事も喉を通らない。

 

「マリー、少しは食べたほうがいいよ?」

「ありがとう、ロン。でもいい」

「トースト一口だけども」

「ハーマイオニーもありがとう。でも本当にいいんだ」

 

 二人とも心配してくれているのは本当にわかる。でも今は本当にヤバい。

 

「マリー、一度深呼吸してみるといい。お決まりの方法だけど効果はある」

 

 パーシーがアドバイスしてきた。

 あの日の翌日、一度頭を冷やして考え直すと、私けっこう失礼なことをしていた。それにパーシーがあんなにしつこく詰問してきたのも、心配だったからだとわかる。弟とその友人が非常事態にいなかったのだ。普通は心配する。なぜか私とロン、ハーマイオニーはあの夜、トイレで何があってトロールが処理されたのかなんか霞がかったような感じで覚えていないけど。

 まぁその事も踏まえてパーシーに謝罪した。だって私に非があったし。それ以降、パーシーとは良好な関係を築いている。今のようにちょっとしたアドバイスをくれるぐらいに。

 

「うん。………………フゥ…………ダメだ、やっぱり喉を通らない」

 

 ダメだった。実践したけど効果が薄いみたい。どうしよう。

 と、そこで隣のシロウから、

 

「まぁ落ち着く落ち着かないはあるが、一先ず皿にとったものはちゃんと食べておけよ? でないと材料を作った人、送った人、料理を作った人に失礼だからな」

 

 と言われた。うん、正論だ。

 

「…………食べる」

 

 ロンとハーマイオニー、パーシーが

「「「シロウの言うことは聞くのか……」」」

 といっていたけど私ニハキコエナイ。

 お皿にのっている食べ物を無理やりお腹に入れる。あ、ちゃんと丁寧に食べたよ? 詰め込んだり掻き込んだりしません。下品だしね。

 

「ねぇシロウ。マリーって今までこんなにナィーブになったことあるの? 少なくとも僕は初めて会ったときから見てないけど」

「私も見たことないわ。どうなの、シロウ?」

「オレが記憶している限り、殆どないな。マリーは基本的に自分で自分の心を落ち着かせていたから」

「そうなのか。マリー、君はいつもどうしてたんだい?」

 

 ロンとハーマイオニー、シロウの会話を聞いていたパーシーが私に質問してきた。私が落ち着く方法、それは……

 

「可愛いものや生き物をモフモフすること」

 

「「「「………………what? 」」」」

「可愛いものや生き物をモフモフすること」

 

「「「「…………えーっと……」」」」

「可愛いものや生き物をモフモフすること」

「いや、三回も言わなくてもわかるから」

 

 みんながとても困惑した顔をしている。それはそうだろう。今この場に可愛いものや生き物はないし。

 

「君がいつもどうしてるかはわかった。だが残念ながらこの場にはその類いのものはない。他にはないのか?」

 

 シロウが聞いてきたけど、あまり思い当たるものが…………あ、一つあった。

 

「シロウ?」

「どうした?」

「ちょっとごめんね? 失礼します」

 

 私はそう言ってシロウの返事を聞かずに、シロウの膝の上に頭をのせた。

 

 その瞬間みんながポカーンとした表情を浮かべた。

 

 デモ私ニハ関係ナイ関係ナイ。

 うん、やっぱりこれは落ち着く。特にシロウの膝の上というのが。周りから生暖かい視線で見られている感じがするけど、無視無視。心の平穏を優先させなきゃ。ああ、安心する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side シロウ

 

 

 

 はぁ…………昔から甘え癖はあったが、まさかここでそれが出るとは。一時期成りを潜めたから年相応になったのかと思いきや、ただ抑えていただけだったんだな。こうも人目を憚らずに甘えてくるのは、どことなくイリヤや娘のシルフィに通じるところがある。あの二人も大勢の人がいる場で堂々と引っ付いてきたものだから、息子の剣吾が呆れた顔をしていたのは懐かしいものだ。

 …………さて、そろそろ現実逃避はやめにするか。流石に周りの視線が痛い。マリーにいたっては寝息をたてはじめている。

 

「こら、マリー。起きろ」

「……うにゅう」

「ほら、このあと試合があるんだろう? 時間までに控え室に行かねばならんし、君はユニフォームに着替えてもいない。ここで寝ては遅刻するぞ?」

「…………ぅん……もうちょっとだけ」

「本当に遅刻するぞ? 初試合が寝てて欠席なぞ笑い話にもならん。ほら、立って」

「うぅ…………暖かいからやだ……」

「控え室まで着いていってやるから。ほら」

「シロウ、おんぶして」

「自分で歩きなさい」

 

 …………まったく、ここまで甘えん坊だったか、この子は? 

 だが聞いた話によるとハロウィンの日の夜、パーシーにキレたらしい。そのときの様子を聞くと、「悪魔が…………桃色の悪魔が!!」なんて声をよく聞いたし、いったいこの子は何をしたんだ? ただ口調がどことなくオレに似ていたらしい。変な影響を与えてなければいいのだが。

 というか、いい加減みんなはその生暖かい視線をこちらに向けるのはやめろ。ハーマイオニーもロンもそんな目でこちらを見るな。グリフィンドール生だけじゃなく、レイブンクローやハッフルパフ、果てはスリザリンの上級生までも同じような目をしているだと? 

 おい、そこの双子のウィーズリー兄弟、そしてリー・ジョーダン! 砂糖吐くな、カメラで写真撮ろうとするな、新婚夫婦言うな! 

 何が「エミヤ夫妻のおなーりー」だ! というかお前ら選手と実況だろうが、移動しなくていいのかよ! 走って行くから大丈夫? そういう問題なじゃないだろ!? 大丈夫だ、問題ない? 問題ありすぎだ! ジョーダンはここの実況をするな! 「新婚さん、いらっ○ゃ~い」じゃないわ! それ日本のテレビ番組だろうが、なぜお前が知ってる! お前も早く実況席に行けよ! 

 っていつの間にマリーが背中に………………まったく。

 ああもう、みんな砂糖吐くな! というかパーシー、お前は彼女がいるはずだろう! お前まで砂糖吐いてどうする! それとこれとは話が別? 

 

 

 なんでさぁぁぁあぁぁぁぁぁぁああああ!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、ここまでです。

いやはや、自分で書いたのを読み返して思ったんですが、けっこうシロウさんがはちゃめちゃが過ぎました。
ですので、台詞の口調や表現、会話の内容を改訂しています。

次回はクィディッチの試合とスネイプ先生に疑いがかかります。


今までおもしろいといってくれた方々、ここが悪い気に入らないといってくれた方々、感謝いたします。
これからも本作品をよろしくお願いいたします。

今後の展開がシロウの無双になると考えている方々へ
この作品基本方針について、活動記録に書かせていただきます。
その他の方々も興味のある人たちは、読んでみてください。


では今回はこの辺で

「説教と新たな絆~」の後書きでアンケートをとっておりましたが、規約違反ということで、改めて活動記録にてとらせていただきます。
ご協力してくださる方々、よろしくお願いいたします。




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