錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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連チャンです。

それではごゆるりと






1. ドビーの警告

 

 

 

部屋にいた奇っ怪な生き物を確認した途端、シロウが何やら膜みたいなもので部屋を包みこんだのを感じた。生き物もそれに気がついたようで、こちらに顔を向けた。そして恭しく頭を下げた。

 

 

「マリー・ポッター。なんたる光栄」

 

「……あなたは?」

 

「ドビーでございます、屋敷下僕妖精のドビーです」

 

 

生き物、ドビーはキィキィ声でそう言った。妖精の一人なのか。

 

 

「下僕妖精。つまり、ブラウニーのようなものか?」

 

「似て非なるものでございます、東洋……の……」

 

 

シロウの質問に対してドビーは答えたけど、シロウを見た瞬間、大きな目を更に大きく見開いた。そして神様に礼拝するように床に膝をつき、何度も頭を床に打ち付けた。

 

 

「も、もも、申し訳ございません!! このドビー、貴方様に対してなんたるご無礼を!!」

 

 

そう一声叫び、頭をガツガツと床にって!!

 

 

「ドビー待って!! 音をたてないで!!」

 

「ドビーの悪い子!! ドビーの悪い子!!」ガンガンッ!!

 

「お願いだから音をたてないで!! ドビーってば「大丈夫だ」……え?」

 

「ドビーの悪い子!! ドビーの悪い子!!」ガンガンッ!!

 

「遮断結界を張った。こちらからの音と衝撃は漏れることはない。向こうからの音は聞こえるがな」

 

「そうなの?」ガンガンッ!!

 

「ああ。だからいい加減頭を打ち付けるな」

 

 

シロウの言葉で漸くドビーは動きを止め、話をすることになった。私とシロウはベッドに座り、ドビーには椅子に座ってもらった。まぁこのとき、またドビーが頭を打ち付けていたけど。

どうやら今の主人に対して不忠な思考や発言をすると、自分で自分をお仕置きしなくてはならないらしい。

 

 

「いい加減本題に入るぞ」

 

「そうだね。ドビー、話って?」

 

「はい、実は……マリー・ポッター。今年はホグワーツに戻ってはなりません!!」

 

「「……は?」」

 

「恐ろしい、非常に恐ろしい罠が仕掛けられております!!」

 

「……その罠とは?」

 

 

シロウが質問すると、ドビーは突然唸りだした。そして椅子からかけ降りると、箪笥に突進し、またヘッドバンキングをした。いや、しようとした。突然真っ赤な布がドビーの腕に絡み付いて、ドビーの動きを強制的に止めてしまったのだ。布の端は、シロウが握っていた。

 

 

「確信はなかったが、妖精でも男なら効くのだな」

 

「……シロウ、それは?」

 

「これか? これは『マグダラの聖骸布』だ。対男性用拘束具だな」

 

「へ? 聖骸布!?」

 

「ああ」

 

 

ええ~……それってキリスト教の信者が耳にしたら絶対に怒り狂うと思うよ、たぶん?

 

 

「これは動きだけでなく、能力も封じる。だから魔法を使っても無駄だぞ、ドビー?」

 

 

シロウの言葉に、ドビーは泣きそうになっていた。少しやり過ぎ……ん? 何か落ちた?

私はドビーの汚れた服から落ちた、何かの束を拾い上げた。

 

 

「ッ!! ダメです!! それを見てはダメです!!」

 

 

ドビーがキィキィ声で叫ぶけど、私は無視してそれを見た。それは私宛に届くはずだった、友人たちからの手紙の束だった。

 

 

「……やはりな。おかしいと思い、何かに妨害されているとは思ってはいたが。まさかドビー、お前だったとはな」

 

「……ねぇドビー。これってどウいうコト?」

 

「ひっ!? ……マリー・ポッター?」

 

「答エて?」

 

 

私がドビーに問い詰めると、ドビーは渋っていたけど、やがて細々と話し出した。何でも私はこの家にいたほうが安全であるため、こうして妨害したと。手紙が届かなければ、ホグワーツに戻りたくなくなると思い、全て回収していたと。

 

 

「……聞いていい?」

 

「……なんでしょうか?」

 

「私が外に出ようとしたら急に扉が閉まったのも、脚が扉に挟まれたのも、庭に出ると何故かバスケットボール大の鉄球が飛んできたのモ、全部あなたのやったコト?」

 

「……」

 

「コ タ エ ナ サ イ」

 

 

私が詰問すると、ドビーは小さく首を縦に振った。

 

 

「何でそンナことしタノ?」

 

「……マリー・ポッターは……ここにいた方が安全なのです!!」

 

「……それで私が死んだら意味がないでしょう?」

 

「そんな、殺そうだなんて滅相も「知ってる? 人間ってね? やろうと思えばゴムの球でも殺せるんだよ?」……マリー・ポッター?」

 

 

去年から思ってたけど、魔法界って危険認識がかなりおかしいよ。普通なら死んでもおかしくないことを、平然とやっているのだ。

 

 

「たががゴムボールで死んじゃうんだよ? なのに貴方が投げたのは大きな鉄球。あの場で私が咄嗟に避けてなかったら死んでたよ?」

 

「……」

 

「私のことを思って行動したのはわかった。その気持ちは嬉しい。でも私は迷惑してるの。私の生き死を他人に管理されたくない。人生に忠告やアドバイスをするのはわかるけど、貴方がやってるのは、私に決められたレールを歩けと言ってるのと一緒よ?」

 

 

ドビーは黙りこくって私の話を聞いている。私は思う。ドビーは私が「生き残った女の子」だからここまでしている。ならもし私に片親、両親が残っていたら? 彼はこんなことしないだろう。

結局ドビーはマリー・ポッターではなく、「生き残った女の子」を死なせたくないだけなんだ。

 

 

「私はみんなの人形じゃない。ヴォルデモートから生き残った、というだけで特別扱いなんてされたくない! 私は『生き残った女の子』である前に、一人の人間なんだ!!」

 

「そこまでだ。落ち着け、マリー」

 

 

熱くなったところに、シロウからブレーキが掛けられた。階下からは、バーノン叔父さんの上品(笑)な笑い声が響いてくる。私が深呼吸していると、シロウがドビーに話しかけた。

 

 

「さて、ドビーよ。お前の想いは理解した」

 

「……はい」

 

「だがこの通り、本人は迷惑しているのが現状だ。故に、今後そのようなことはしないでもらいたい」

 

「……しかし」

 

「これでも降りかかる火の粉を払うぐらいはできる。それとも……私が信用ならんか?」

 

 

シロウの質問に、ドビーは大きな耳をパタパタさせながら、首を横に振った。とりあえずはドビーは何もしない、ということで話はつき、シロウはドビーの拘束を解くと、ドビーは指をパチリと鳴らして帰っていった。

何だかどっと疲れが押し寄せてきた。でもメイソン御夫妻は、まだ応接間にいるらしい。仕方ないから宿題の仕上げを、シロウに手伝ってもらいながら終わらせた。

 

 

「ああ、そうだ。明日の昼頃、ウィーズリー家のパーシーとモリーさんがオレ達を迎えに来るそうだ」

 

「え? そうなの?」

 

「ああ、だから準備しておけよ? ペチュニアさんには報告してある」

 

「ありがとう」

 

「礼はいらん。そのまま新学期までウィーズリー家にお邪魔することになるから、忘れ物がないようにな」

 

「はーい」

 

 

メイソン御夫妻は漸く帰ったらしく、下からペチュニア叔母さんに呼ばれた。私とシロウは返事をし叔母さんの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 







はい、ここまでです。


今年は投稿できてあと1回でしょうか?
年末年始は少々忙しいので、もしかすると、これが今年最後の投稿になるかもしれません。

とりあえず、次回は隠れ穴での話になります。お楽しみを。


それでは今回はこの辺で、良い年末年始を。



次回はあの人がでるかも?




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